最新更新日 : 2024/08/21
更新履歴 : 2024/02/16, 01/16, 2023/03/26
アレキサンデル・クリスチャン・ゴメス・ダ・コスタ
Alexsander Cristhian Gomes da Costa
ポジション:ボランチ、左サイドバック/ラテラウ
利き足:左
2003年10月8日生まれ
<幼少期>
リオデジャネイロ州リオデジャネイロ市北部カヴァウカンチ地区に育つ。 幼い頃から地元の友達とサッカーをしていたアレキサンデルは、8歳でマッキンゼースポーツクラブでフットサルを始める。 フルミネンセとの対戦でスカウトがスピードに注目、フルミネンセの入団テスト受けるよう勧められる。 入団テストは無事合格。
<クラブ経歴>
≪育成時代≫
10歳の時フルミネンセのフットサルチームに入団。入団後の数回の練習で監督が絶賛。 しかし、アレキサンデルの家庭は貧しく、家族はアレキサンデルが練習に通えるよう可能な限りサポートはするが、金銭面で練習に参加できない日が度々訪れる。 また、アレキサンデルが育った地区は麻薬取引が横行し、ギャング間の抗争や、警察とギャングとの銃撃戦がしばしば起こる地域で、家から外に出ることができず練習に参加できない日も少なからずあった。
フルミネンセでのキャリアはフットサルでスタートしたが、やがてサッカーに転向。スピードを活かしたウイングやサイドバックも経験したが、守備でのマークが巧みなことからボランチが適性として見いだされる。 しかし、U-15チームへ昇格することができず、一度はフルミネンセを去る。一週間ヴァスコダガマの入団テストを受けたが結果は芳しくなく、中堅クラブのマドゥレイラで1年プレーする。 アレキサンデルはフルミネンセでのプレーにこだわり、フルミネンセのフットサルU-15チームになんとか入団。フットサルチームでの活躍が認められサッカーのU-15チームへの編入が認められる。
U-17チーム昇格時にも再び「昇格見送りリスト」に名前が記載される。しかし、当時のU-17チーム監督エドゥアルド・トーヘス(Eduardo Torres)氏の強い要望で昇格が認められた。
U-17チームでは当初は控えに甘んじていたが、レギュラー選手のケガを機に試合出場のチャンスを得てものにする。その後ポジションを譲ることなくレギュラーとしてU-17カテゴリーの2020年全国選手権を制覇。世代別代表にも度々招集されるようになる。
2021年、2022年はU-20チームでレギュラーとしてチームを牽引。
≪フルミネンセ≫
– 2022 –
2022年8月1日、フェルナンド・ジニース(Fernando Diniz)監督によりトップチームに招集され、第20節サントス戦にベンチ入り。その後ケガで練習から遠ざかるが、再び10月26日第34節でベンチ入りを果たす。
11月5日、第36節サンパウロ戦に後半開始と同時に左SBクリス・シウヴァ(Cris Silva)と交代しプロデビューを果たす。本職のボランチではなく、左SBとしてポジションにつく。 後半開始30秒過ぎ、フルミネンセ右からの攻撃が行き詰まり、ゴール正面ペナルティアークから5mほど離れた位置でボールを受けると、思い切りよく左足でミドルシュート。このシュートはGKに阻まれるものの、その跳ね返りをFWヘルマン・カーノ(Germán Cano)が押し込み、アレキサンデルはゴールに関与。守備でもインターセプトから相手のイエローカードを誘発する働きを見せる。
プロデビュー戦を監督に評価され、続く第37節、最終第38節には、左SBにスターティングイレブンとして抜擢される。 アレキサンデルはシーズン終盤の3試合で225分の出場機会を得たが、チームはこの時間帯に得点を許していない。
– 2023 –
2023年1月はU-20南米ユース選手権出場のためチームを離れるが、帰国後間もない2023年2月25日州選手権予選ラウンド第9節ポルトゲーザRJ戦でクラブでのシーズン初出場を左SBとしてスタメンで果たすと、以降の州選手権決勝までの7試合にすべてスタメン出場。 3月18日準決勝ヴォウタ・ヘドンダ戦2ndレグでは前半26分にプロ初ゴール。 4月9日決勝フラメンゴ戦2ndレグでは左SBのポジションを元代表でレアルマドリードで活躍したマルセロ(Marcelo, 1988)に譲り、自身は本職のボランチとしてVOLアンドレ(André, 2001)とコンビを組み先発出場。この試合でもゴールを記録。チームの州選手権優勝に貢献する。
その後もレギュラーに定着し、守備面では高い位置でのマーク、ボール奪取、攻撃面では守→攻のつなぎ役として監督の全般の信頼を得てプレーする。
しかし、5月10日全国選手権第5節クルゼイロ戦の試合後に左膝にケガ。さらに復帰を目前にした6月14日に右太ももにケガを負い、約3か月半チームを離脱する。 8月24日に復帰を果たすが、以前のように90分間プレーすることはなく、先発と交代出場を繰り返す。リベルタドーレス決勝は1stレグはベンチ外、2ndレグはベンチ入りを果たしたものの、出場機会を迎えることなかった。 2023年チーム最終戦の12月22日クラブW杯決勝戦マンチェスターシティ/ENG戦は後半15分にボランチとして交代出場し、自身の2023年も締めくくった。
– 2024 –
2024年1月20日開幕のパリ五輪南米予選に参戦。
2024年2月17日州選手権にてボランチとしてフル出場を果たし、2024年のクラブでの初試合を迎える。その後はリベルタドーレスが開幕するが出場機会は訪れず、州選手権、4月に開幕した全国選手権、コパ・ド・ブラジルでも僅かな試合での交代出場に止まる。
5月に入り3試合で交代出場が続くと、5月13日全国選手権第6節にボランチとしてスタメン出場。その後、5試合でスタメン出場が続くが、6月中旬以降は再び、交代出場や出場機会のない試合も増えてくる。
2024年8月20日、フルミネンセから、アル・アハリ・サウジ/SKAへの移籍が発表。選手保有権の85%について900万ユーロ(約14億5000万円)。チームメートには8月17日全国選手権第23節の終了後に挨拶を済ませ、その後、渡航。メディカルチェックを終え、移籍が発表された、
≪アル・アハリ・サウジ≫
– 2024/25 –
2024年8月20日、フルミネンセの発表から約一時間後に、アル・アハリ・サウジ/SKAからも公式HPにて獲得のアナウンスが行われた。
≪シーズン別クラブ出場記録≫
シーズン | 所属 | 大会 | 試合 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2022年(18歳) | フルミネンセ | 全国選手権 | 3 | 225 | 0 | 0 |
合計 | 3 | 225 | 0 | 0 | ||
2023年(19歳) | フルミネンセ | クラブW杯 | 1 | 30 | 0 | 0 |
リベルタドーレス | 7 | 402 | 0 | 1 | ||
全国選手権 | 19 | 1194 | 0 | 1 | ||
コパ・ド・ブラジル | 2 | 180 | 0 | 0 | ||
州選手権 | 7 | 623 | 2 | 0 | ||
合計 | 36 | 2429 | 2 | 2 | ||
2024年(20歳) | フルミネンセ | リベルタドーレス | 4 | 241 | 0 | 0 |
全国選手権 | 15 | 786 | 0 | 1 | ||
コパ・ド・ブラジル2 | 2 | 81 | 0 | 0 | ||
州選手権 | 4 | 214 | 0 | 0 | ||
合計 | 25 | 1322 | 0 | 1 | ||
2024/25年(21歳) | アル・アハリ・サウジ/KSA | |||||
合計 |
イタリック斜体は、2024年8月21日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。
<代表経歴>
– 2021 –
2021年年初にU-18代表に招集、世代別代表に初めて招集される。 2021年9月には2度目の招集を受ける。
– 2022 –
2022年6月に開催されたパラグアイ代表、エクアドル代表、ウルグアイ代表とのU-20国際親善大会では、全3試合にボランチとして出場。 6月8日の初戦パラグアイ戦では開始3分、敵陣センターサークルの外から、PA左に侵入するカイオ(Caio, 2004)へスルーパス。アシストを記録。
2022年9月に開催されたアルゼンチン代表、ウルグアイ代表、ウズベキスタン代表とのU-20国際親善大会に招集。 初戦のアルゼンチン戦、第3戦のウズベキスタン戦に出場する。
– 2023 –
2022年12月8日に発表された2023年U-20南米ユース選手権の代表メンバーに落選。 しかし、複数の選手がクラブ事情を理由に代表を辞退したため、大会前に追加招集を受ける。
U-20南米ユース選手権
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-20代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日 | 節 | 対戦 相手 | 試合 結果 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2023/01/19 | 予選R第1節 | ペルー | 3 – 0 | 61 | 0 | 0 |
2023/01/23 | 予選R第3節 | アルゼンチン | 3 – 1 | 66 | 0 | 0 |
2023/01/25 | 予選R第4節 | コロンビア | 1 – 1 | 75 | 0 | 0 |
2023/01/27 | 予選R第5節 | パラグアイ | 2 – 1 | – | – | – |
2023/01/31 | 決勝R第1節 | エクアドル | 3 – 1 | 90 | 0 | 1 |
2023/02/03 | 決勝R第2節 | ベネズエラ | 3 – 0 | 87 | 0 | 0 |
2023/02/06 | 決勝R第3節 | パラグアイ | 2 – 0 | 64 | 0 | 0 |
2023/02/09 | 決勝R第4節 | コロンビア | 0 – 0 | 79 | 0 | 0 |
2023/02/12 | 決勝R第5節 | ウルグアイ | 2 – 0 | 90 | 0 | 0 |
19 – 4 | 612 | 0 | 1 |
アレキサンデルの高いポリバレント性に驚かされる大会となった。
予選R第1節ペルー戦、3トップの一角、左ウィングとしてスターティングイレブンに起用される。パトリッキ、ギリェルミ・ビロとのパス交換や、フリーランニングでパトリッキが攻め上がるスペースをつくるなど、左サイドからの攻撃に大きく関与。 予選R第3節アルゼンチン戦、ヴィトル・ホッキとの2トップとして先発出場。実質的にはセカンドトップ、インサイドハーフの位置でプレー。主に左サイドで前後のつなぎ役、左SB/LAEのオーバーラップのタメを作る。 予選R第4節コロンビア戦では、ジオヴァーニとの2トップとして先発出場。前2試合よりもゴールに近い位置でプレーするが、いい形でボールを受けることができない。
決勝R第1節エクアドル戦もまたヴィトル・ホッキとの2トップとして先発出場。試合の立ち上がりからエクアドルが攻撃の起点となるアンドレイ・サントスにマン・ツー・マンに近い形でマークにつくと、中盤深くまで下がり、前半7分にはその位置から相手ライン裏に抜け出そうとするヴィトル・ホッキにスルーパスを通す。前半28分には、相手2ラインの間で横に動きアンドレイ・サントスからのパス。このパスは受け損ねるが、流れたボールをヴィトル・ホッキがゴールにつなげる。
決勝R第2節ベネズエラ戦。この試合もフォワードとしてスタートするも、前半んは状況に応じて、左サイドでのパトリッキやギリェルミ・ビロとの連携、自陣でのディフェンスやボランチの位置でのプレー、ビルドアップへ参加。後半19分にはポストプレーでギリェルミ・ビロのシュートをサポート。後半40分には、ペナルティエリア内でアンドレ・ドミニーキのマイナスのクロスをスルーし、そのボールをペドロ・エンヒキがゴールを決めるなど、多種多様なプレーを見せる。
決勝R第3節パラグアイ戦では、前半10分にアレキサンデルが起点となり、パトリッキが上げたクロスをジオヴァーニが頭で合わせ先制点。前半29分には、ギリェルミ・ビロへ丁寧なパスを送りゴールポスト直撃のシュートにつなげる。
決勝R第4節コロンビア戦では、中盤での激しい攻防に前後の動きで打開を図るが、連戦の疲れのためかいつもの切れがみられない。また、自陣での守備にまわる時間も長くなり、試合の中で消える時間も多くなる。
決勝R第5節ウルグアイ戦。警告累積で出場停止のマルロン・ゴメスに代わりボランチに入る。前半は守勢にまわる時間が多くなるが、前半33分には相手ライン裏を狙うギリェルミ・ビロへピンポイントのパスを通し、ギリェルミ・ビロはシュートにつなげる。 後半に入りウルグアイが守備を固めるようになると積極的に前に出る。後半3分、左サイドからヴィトル・ホッキへのクロスを供給。ヴィトル・ホッキのシュートは僅かに右に外れる。その後もセカンドボールの回収や中盤でのマークで相手カウンターを事前に防ぐなど奮闘。チームの優勝の瞬間をピッチ上で迎える。
– 2024 –
≪2024年パリ五輪南米予選≫
2023年12月21日にCBFより発表された2024パリ五輪南米予選(2024年1月20日~2月11日)U-23代表選手、23選手の一人として選出された。
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-23代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日 | 節 | 対戦 相手 | 試合 結果 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2024/01/20 | 予選第1節 | 対戦なし | – | – | – | – |
2024/01/23 | 予選第2節 | ボリビア | 1 – 0 | 19 | 0 | 0 |
2024/01/26 | 予選第3節 | コロンビア | 2 – 0 | 90 | 0 | 0 |
2024/01/29 | 予選第4節 | エクアドル | 2 – 1 | 90 | 0 | 0 |
2024/02/01 | 予選第5節 | ベネズエラ | 1 – 3 | 22 | 1 | 0 |
2024/02/05 | 決勝第1節 | パラグアイ | 0 – 1 | 90 | 0 | 0 |
2024/02/08 | 決勝第2節 | ベネズエラ | 2 – 1 | 89 | 0 | 0 |
2024/02/11 | 決勝第3節 | アルゼンチン | 0 – 1 | 90 | 0 | 0 |
合計 | – | 490 | 1 | 0 |
予選第3節コロンビア戦でスリーボランチの一角で先発出場。 予選第5節ベネズエラ戦では、ペナルティエリア入口でFWガブリエウ・ペッキからボールを受けると、ルーレットターンでディフェンダーをかわすゴールをマーク。
決勝第2節ベネズエラ戦では主戦のVOLではなく左SBとしてスタメン出場。攻撃に絡むことはほとんどなかったが、守備的な戦術の中で左サイドを守備面で安定させる働きを見せた。 決勝第1節パラグアイ戦、第3節アルゼンチンでは本来のボランチとしてスタメン起用。セグンドボランチとしての起用だったと思われるが、特にパラグアイ戦では自陣に閉じこもる戦術の中で、自身の特長である前への推進力や最終ラインと前線とのつなぎ役としてのプレーを発揮する場面は、残念ながらほとんど見られなかった。
<プレースタイル>
巧みなボール奪取。そして、ボールを奪った後の展開力。 フットサルで鍛えられた攻守での一対一の強さ。ドリブル。 一本で相手守備ラインを崩す縦のスルーパス。縦への推進力。 スピード。 左SB/LAE、第一ボランチ、第二ボランチ、ウィングと多くのポジションを高いレベルでこなすユーティリティ性。
2023年U-20南米ユース選手権では、一つの大会でボランチ、ウィング、セカンドトップでプレー。 一方でフルミネンセでは左SB/LAEとしてフェルナンド・ジニース監督から絶大な信頼を獲得している。
<エピソード etc.>
フルミネンセ下部組織で複数のポジションの中からボランチが適性として見いだされる。トップチームのアンドレ(André, 2001)、国外に目を向けるとカゼミーロ(Casemiro, 1992)がボランチとしての目標の選手。 チームメートでボランチのポジションには、ユヴェントス/イタリアやガラタサライ/トルコで活躍し、2010年にはW杯を戦ったベテラン、フェリピ・メロがいる。フェリピ・メロは”教えたがり”で、強いリーダーシップや国外の経験を教えてくれるいい先輩だ。そして、なによりも言葉だけでなく”ブルドッグ”と呼ばれる獰猛なプレー、ピッチ内でのリーダーシップを背中で教えてくれる。
下部組織の選手へのアンケートでの「サッカー選手でなければ何になりたいか?」という質問に「プランBはない。サッカー選手になる。」と答えている。 その回答のとおり、決して諦めることなく、幾つもの逆境を乗り越えてきた。そして、来るべきチャンスに向けて地に足をつけて一日一日を焦ることなく夢に向けて取り組んできた。そして、一旦チャンスが訪れると死に物狂いになってチャンスをものにした。 一度はフルミネンセ下部組織での昇格が見送られたが、フルミネンセでのプレーを諦めることができず、他クラブでサッカーを続け、フルミネンセフットサルチームを経て「より上手く、より強く逞しくなって」(本人談)帰ってきた。そして、チーム内でレギュラーの座を掴み、世代別タイトルを獲得。2022年には18歳でトップチームに昇格。 2021年に世代別代表に選出されるようになると、2023年にはブラジルU-20代表としてU-20南米ユース選手権を戦い、ポリバレントな活躍でチームの優勝に貢献。
U-20南米ユース選手権を前にして、すでに国外からの視線を浴びている。 シティフットボールグループは、2020年U-17全国選手権を制したフルミネンセU-17チーム出身のカイキ(Kayky)、メチーニョ(Metinho)の獲得に続き、アレキサンデルの情報を収集している。 ブラガ/ポルトガル、スペインの複数クラブもアレキサンデルの動向をモニタリングしているという。
”Gerado para vencer”『 勝つために生まれてきた。』 自分が今までに積み重ねてきた事実や経験を通してこそ、自分は人生の勝者だと考えることができる。 ”Muitos falam, poucos sabem.”『多くの者は語るが知る者は僅か。』 多くの人は、裏に隠された多くのものを知らずに、ほんの一部分を垣間見ただけで話したがる。
生まれてから様々な逆境を跳ね返し現在地にたどり着いた。 人知れず努力に励み、それゆえに人生の勝者たりえるのだと考えるアレキサンデルは、この2つのフレーズを体に刻んでいる。
<雑感>
巧みに相手選手の体とボールの間に体を入れるボール奪取。 フットサルで培ったボールさばきからのパス、ドリブル、一対一からの突破。 ブラジルでは、特に攻撃的な選手には、しなやかな動き、瞬間的なスピード、そして、何よりも卓越した足元の技術に基づく「魅せるプレー」が好まれる傾向にあり、アレキサンデルはこれらのいずれも持ち備えている。
一方で、ボールの奪い合いやゴール前での肉弾戦が重要視され、しなやかさはひ弱さだとみなすリーグや監督、指導者もいる。 ブラジルで好まれるプレースタイルを持ち、助っ人としての活躍や将来への投資として期待され国外に移籍したものの、当地のサッカースタイルや監督の要望に自分のスタイルを適応させることができずにキャリアを送る選手が多くいる。また、監督の要望に応えようとして、自分の長所を見失ってしまう選手も多くいる。
アレキサンデルは、体格的にはもう一回り大きくなり、パワーアップする余地があるように見える。日々のトレーニングで、自分の長所を殺さず、接点で負けない体を作り、少しずつパワーアップすることが大事だ。 しかし、U-17昇格見送りに反対したエドゥアルド・トーヘス元U-17チーム監督のように、選手のプレースタイル、性格を含めた長所・短所をしっかりと認識し、先を見据え、選手に成長の機会を用意する指導者に巡り合う「運」も選手のキャリアアップには必要なように思える。 幸い現在のフルミネンセ監督フェルナンド・ジニース氏は、自分の戦術にこだわりを持ち、多くのものを選手に要求するものの、多くの選手にチャンスを与え試合での成長の機会を提供する監督だ。
性急に国外に飛び出さず、フルミネンセで地に足をつけ成長していき、飛躍するタイミングを見極めて国外にチャレンジしてもらいたい。