ヒケウミ (Rikelme)

投稿者: | 2023年8月18日
最新更新日 : 2024/08/09
更新履歴 : 2024/07/19, 02/16, 2023/08/18

若手 ブラジルサッカー フォワード サイドバック クイアバ ヒケウミ Rikelme

ヒケウミ・エルナンデス・アモリン・ホッシャ

Rikelme Hernandes Amorim Rocha

ポジション:フォワード/アタカンチ、サイドバック/ラテラウ

利き足:左

2003年7月16日生まれ

<幼少期>

 ブラジル連邦共和国の中西部マットグロッソ州の州都クイアバ市に生まれる。

<クイアバECについて>

 マットグロッソ州は、州南部に観光地としても有名なパンタナールがあり、畜産や農業を主な産業としている。サッカーに関しては、全国規模の大会で好成績を収めるような伝統的なサッカークラブはなく、著名なサッカー選手は僅かにいるものの、育成世代から他州のクラブに入団し、州内のクラブからは著名な選手を輩出してこなかった。
 クイアバECは、2001年12月にマットグロッソ州クイアバに設立された新興のクラブ。設立後間もなく州選手権1部に昇格、優勝を果たし、全国選手権3部に参入するなど順調にクラブは成長するかと思われた。しかし、財政上の問題から2007年にライセンスが停止される。
 クイアバ市を拠点としクラブ設立当初からのスポンサーだった「ドレッシュ・グループ」が、資金を注入し経営権を獲得すると、2009年に州選手権2部に復帰。翌年には1部に参入し、2011年に州選手権優勝。全国選手権も2011年に最下部の4部リーグに参入すると、一年で3部リーグに昇格。2部リーグに昇格するまで7年を要したものの、2部リーグは2年で通過。2021年に初めて1部リーグに出場。
 また、2020年にはコパ・ド・ブラジルで準々決勝にまで駒を進める。

<クラブ経歴>

≪育成時代

 2018年、15歳でクイアバECの下部組織に入団。
 U-15チームで中盤の攻撃的なポジションでプレー、その後、体格を生かしたセンターフォワードとしてプレーする。公式戦に出場するようになると、他州のビッグクラブが注目するような活躍をみせる。
 2019年にクイアバとプロ契約。
 2019年4月、期限付きでクルゼイロU-17チームに移籍、2020年11月のクイアバEC復帰まで26試合2得点の成績を収める。
 2021年2月5日、中西部地域州のクラブによる地域大会(コパ・ヴェルジ)において17歳でトップチームデビュー。その後は、トップチーム、U-23、U-20の各カテゴリーで試合経験を積んでいく。
 2022年の州選手権を期限付き移籍先のドンボスコで9試合3得点と活躍。州選手権を終えクイアバECに復帰すると、5月18日のコパ・スウアメリカーナで主要大会での初出場を飾る。
 その後は、トップチームへの招集は途絶え、U-20、U-23チームの試合に出場。
 U-23全国選手権には主力として出場、チーム11試合中グループリーグでの1試合を除く10試合に出場(うち先発9試合)2得点を記録し、U-23全国選手権の優勝に貢献。このタイトルは、全カテゴリーにおいてクラブとして初の全国規模の大会でのタイトルとなった。

クイアバ≫

– 2023 –

 2023年1月のU-20全国大会カップ戦で5試合4得点。同大会終了後はトップチームで州選手権に出場。3月にU-20全国選手権が開幕すると、U-20チームで試合出場を重ねていく。
 2023年4月6日、大きなニュースが飛び込む。
 2023年4月15日~27日にスペインで行われるU-20代表合宿および同期間に予定が組まれた3試合の国際親善試合への招集を受ける。さらに驚くべきことに、本職のフォワードではなく、左サイドバックとしての招集だった。
 これは、ヒケウミにとっての初の世代別代表への招集だけではなく、クイアバECとして初の在籍選手、下部組織出身の代表招集であった。
 国際親善試合は3試合すべてに出場、2試合を先発、1試合を途中交代で出場した。
 帰国後、U-20全国選手権2試合に出場すると、トップチーム左SBの2選手が相次いで負傷したこともあり、トップチームへ招集。
 2023年5月22日全国選手権第7節クルゼイロ戦でスターティングイレブンに抜擢。翌節以降も先発起用が続く。
 2023年7月2日全国選手権第13節サントス戦の後半40分、右CKのクリアボールをペナルティエリア左手前で拾うと左足を一閃。低い弾道のボールがゴール右サイドネットに突き刺さる。トップチームでの初ゴールを記録。
 その後、負傷した2選手が戦列に戻ってきたもののスタメンを維持。全国選手権は31試合(うち先発27試合)の出場を果たし、プロデビュー、初めての世代別代表招集を飾った2023年は、左SBとしてクラブでレギュラーの座を獲得、クラブ史上最高位に大きく貢献しシーズンを終えた。

– 2024 –

 2024年1月5日、CBFより2024パリ五輪南米予選(2024年1月20日~2月11日)U-23代表への追加招集が発表された。
 2024年2月18日パリ五輪南米予選最終節アルゼンチン戦から一週間後の州選手権第8節にて、同年のクイアバでの初試合を迎える。
 しかし、アントニオ・オリヴェイラ前監督がコリンチャンスに引き抜かれ、それに合わせ、ヒケウミのコリンチャンスへの移籍が報道されるようになったことが原因なのか、前年は絶対的なレギュラーとして試合に出場していた状況が一変し、SBハモン(Ramon, 2001)とポジションを争うようになり、プチ(Petit)監督が就任した5月半ばには、左サイドバックでは2番手に甘んじるようになっている。

アル・アハリ・ドバイ/UAE≫

– 2024/25 –

 2024年8月7日、アル・アハリ・ドバイよりヒケウミ獲得が公式に発表された。契約期限は2028年7月末。移籍金は選手保有権60%に対し固定330万USドル(約4億8000万円)、2026年7月末までに複数のインセンティブが達成されれば、選手保有権15%に対し満額で100万USドルがクイアバに支払われる。
 アル・アハリ・ドバイには、すでに2000年~2004年生まれのブラジル国籍選手がすでに6選手在籍。いずれも主力または準主力として試合経験を積み、2024/25年初戦のAFCチャンピオンズリーグ予備予選では5選手が先発、1選手が交代出場から得点を記録している。
 またアル・アハリ・ドバイは、2024/25年をフラメンゴでの監督経験のあるポルトガル国籍のパウロ・ソウザ(Paulo Sousa)氏が指揮。言葉の壁も軽減する。
 中東への移籍は、エリート街道からやや逸れた感はあるが、欧州での監督経験の豊かなパウロ・ソウザ監督のもとでサッカーを学び、西ヨーロッパ進出や、ブラジルへの凱旋の足掛かりとしての成長を期待したい。

≪シーズン別クラブ出場記録≫

シーズン所属大会試合出場
時間
得点アシ
スト
2023年(20歳)クイアバ全国選手権31235011
コパ・ド・ブラジル11801
州選手権421700
 合計36258512
2024年(21歳)クイアバコパ・スウアメリカーナ749600
全国選手権849500
コパ・ド・ブラジル14500
コパ・ド・ノルデスチ29300
州選手権537200
 合計23150100
2024/25年(22歳)アル・アハリ・ドバイ/UAE
 合計
イタリック斜体は、2024年7月19日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

世代別代表経歴

 2023年4月15日~27日にスペインで行われるU-20代表合宿および同期間に予定が組まれた3試合の国際親善試合に左サイドバックとして招集。ヒケウミにとって初の世代別代表への招集となった。
 当初招集メンバーの辞退による追加招集だったが、この合宿は、目前に迫ったU-20W杯に向けたセレクションの意味合いが強い合宿。U-20W杯の出場が期待された。
 合宿期間中の国際親善試合は3試合すべてに出場。1試合目のドミニカ共和国戦、3試合目のイラク戦の2試合に先発出場、2試合目のウズベキスタン戦では途中交代出場を果たした。
 しかし、残念ながらU-20W杯への招集は見送られた。

2024年パリ五輪南米予選

 2024年1月5日、CBFより2024パリ五輪南米予選(2024年1月20日~2月11日)U-23代表への追加招集が発表された。
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-23代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日対戦
相手
試合
結果
出場
時間
得点アシ
スト
2024/01/20予選第1節対戦なし
2024/01/23予選第2節ボリビア1 – 0
2024/01/26予選第3節コロンビア2 – 01400
2024/01/29予選第4節エクアドル2 – 16600
2024/02/01予選第5節ベネズエラ1 – 39000
2024/02/05決勝第1節パラグアイ0 – 16000
2024/02/08決勝第2節ベネズエラ2 – 12000
2024/02/11決勝第3節アルゼンチン0 – 18300
 合計9 – 833300
左SBカイキ・ブルーノのケガもあり、予選第5節以降は決勝第2節を除きスタメン出場。
予選第4節エクアドル戦ではしばしばオーバーラップからゴール前にクロスを上げるものの、クロスの精度は低く、チームのゴールに繋がることはなかった。以降は、守備的なチーム戦術の中でオーバーラップの回数も減り守備に専念。
守備面では予選第5節に逆サイドからの鋭いクロスへの対応でオウンゴールを記録してしまったが、決勝第1節パラグアイ戦では局面で数的優位に立たれる場面が散見されたものの粘り強く対応。全体としてもしっかりと左サイドを守り切った。
元FWとしての攻撃的な持ち味を戦術的な理由で十分に発揮することができない大会となった。

<プレースタイル、雑感 etc.>

 利き足は左。
 サッカーサイト「oGol」によると、身長184㎝、体重80㎏。
 ポジションは、フォワード、攻撃的ミッドフィルダー、サイドバック。
 左足からのシュート力、キック力があり、クロスの精度も高い。
 瞬間的にディフェンダーを抜く爆発的なスピードも、オーバーラップで駆け上がるスピードも水準以上のものを持つ。
 育成カテゴリーではキャプテンを務め、キャプテンシーや責任感を併せ持つ。
 上記の特長が、攻撃時に両サイドを広く使うアントニオ・オリヴェイラ(António Oliveira)監督の戦術にフィットし、負傷者が復帰を果たしてもスタメン起用が続く要因だと思われる。
 守備面では改善すべき点も多々あるだろうが、ファールが少なく、イエローカードは育成カテゴリーも含めた全国選手権、コパ・ド・ブラジルでの計68試合の出場に対し僅かに1枚を受けるのみ。こういったクリーンなプレーも監督から評価されているのかもしれない。

 2023年6月には、MLS(アメリカサッカーリーグ)のクラブから、100万USドル(約1億4000万円)でのオファーをクイアバECは受領。クラブは金額面での低評価に即座に交渉を打ち切ったものの、すでに国外からの視線が注がれていることが明らかになった。

 冒頭に記載したように、クイアバECはプロサッカー不毛の地で生まれたクラブチーム。トップチームの躍進と並行して、地元のクイアバ市やマットグロッソ州の人材を発掘し、人として、サッカー選手として成長を促し、社会やトップチームに人材を輩出するため、育成部門に積極的な投資を行ってきている。
 その努力が、チームとして、2022年、2023年のU-17コパ・ド・ブラジル出場、2023年U-17全国選手権出場、2023年U-20全国選手権出場。そして、2022年U-23全国選手権優勝という形で結実。
 そして、地元クイアバ市出身のヒケウミが、U-20代表招集、トップチームでの活躍という形で着実に成果が具現化しつつある。
 ヒケウミを育てた育成のノウハウがクラブに蓄積され、ヒケウミはトップチームでの活躍や世代別代表への招集で地元の少年たちの憧れとなった。これからは多くの少年たちがヒケウミを目標としてクラブに入団するはず。
 クラブの地元に対する姿勢、投資が、ヒケウミの登場で好循環となって回り始めている。
 ヒケウミの活躍とともに、クラブの成長も応援していきたい。

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