アルトゥール・アウグスト (Arthur Augusto)

投稿者: | 2022年12月21日
最新更新日 : 2023/12/29
更新履歴 : 2023/06/16, 04/03, 03/10

アルトゥール・アウグスト・デ・マットス・ソアレス 若手 ブラジルサッカー アメリカ・ミネイロ Arthur Augusto de Matos Soares
2004年生まれ サイドバック ラテラウ

アルトゥール・アウグスト・デ・マットス・ソアレス

Arthur Augusto de Matos Soares

ポジション:右サイドバック/ラテラウ・ジレイト

利き足:右

2003年3月17日生まれ

<クラブ経歴>

≪育成時代≫

 2018年、クルゼイロ下部組織での昇格が見送られ退団を余儀なくされたアルトゥール・アウグストは、ミナスジェライス州の西部にある人口約10万人の小さな町アラシャーで、サッカーを続けるためにU-15、U-17チームしかないアマチュアクラブのジナモ・デ・アラシャーで選手登録を行う。
 すると、間もなく、ジナモでのプレーがアメリカ・ミネイロのスカウトの目に留まる。2018年3月、アルトゥールはアメリカ・ミネイロのU-17チームに入団。再びプロサッカー選手への可能性が開かれる。
 アメリカ・ミネイロU-17チーム加入当初はベンチ入りにとどまるが、やがて途中交代で試合に出場するようになる。そして、チームの粋な計らいなのか、U-17州選手権では古巣ジナモ・デ・アラシャー戦にスターティングイレブンとして起用されフル出場を果たす。
 その後は再びベンチ入りや途中交代出場の日々が続くがシーズンが終盤に差し掛かるとスタメン出場の機会が増えていく。
 2020年は、レンタルという形でフラメンゴに移籍。U-20チームでの2試合に出場(うち1試合はスタメン出場)もしたが、主にU-17チームでプレー。同カテゴリーの全国選手権、コパ・ド・ブラジルを戦う。
 2021年、アメリカ・ミネイロに復帰するとU-20チームの主力メンバーとしてプレー。U-20州選手権決勝の2ndレグでは、4年前に昇格を見送られたクルゼイロを相手に、試合終了間際に優勝を決定づける得点をあげ、クラブ史上初となるU-20カテゴリーの州選手権制覇に大きく貢献。

≪アメリカ・ミネイロ≫

– 2022 –

 2022年、トップチームに昇格。
 1月25日のミナスジェライス州選手権開幕節で、プロ初出場をスターティングイレブンで果たすと、試合終了間際に右サイドからのクロスでアシストを記録。
 州選手権には全13試合のうち8試合に出場(うち3試合にスタメン出場)、出場時間は379分に達した。
 4月に入り全国選手権が開幕するが、それまで若手選手を多く起用したマルキーニョス・サントス(Marquinhos Santos)監督が開幕節での敗戦を受け解任。後任にヴァギネル・マンシーニ(Vagner Mancini)氏が就任するが、アルトゥールの出場機会は大きく減り、最終的には全国選手権は8試合に出場(うち1試合にスタメン出場)、出場時間は174分に過ぎなかった。
 ヴァギネル・マンシーニ監督は、出場した試合のプレー内容にポジティブな評価をするものの、現段階では少しずつ経験を積み重ね成長していく必要があるとの見解を示している。
 なお、2022年6月1日に契約を更新しており、更新後の契約は契約期限が2025年末で高額な違約金が設定されている。

– 2023 –

 2023年2月25日ミナスジェライス州選手権予選ラウンド第7節、クラシコのアトレチコ・ミネイロ戦の後半36分にシーズン初出場を果たす。
 2月28日のコパ・ド・ブラジル1回戦ではスタメンに起用されフルタイム出場。
 3月4日州選手権第8節トンベンセ戦もまたスタメンに起用。後半24分、相手最終ラインのディフェンダーの間に右サイドから侵入。縦パスを受けると、中に切れ込むフェイントを挟み縦へ。相手ディフェンダーを振り抜き速いクロスボールを送ると、ボールは飛びつくGKの脇を抜け、走り込んだウェリントン・パウリスタ(Wellington Paulista, 1983)が足に合わせゴール。アルトゥールはアシストを記録。
 2023年4月29日全国選手権第3節アウェイでのサントス戦。全国選手権3試合目にしての初出場は初スタメン。開幕2連敗中のチームを助けいところだったが2-3の敗戦。軽度のケガや代表に選出されたU-20W杯への出場もあり、この試合がアメリカ・ミネイロでの最後の試合となった。

≪バイエル・レバークーゼン≫

– 2023/24 –

 2023年4月3日、バイエル・レバークーゼンによるアメリカ・ミネイロ所属右SBアルトゥール(Arthur, 2003)の獲得について、クラブ間合意が両クラブから発表された。
 契約期間は2023年7月から2028年6月まで。移籍金はアルトゥールの所有権90%に対して約700万ユーロ、10%はアメリカ・ミネイロが引き続き保有する。
 2023年8月12日のドイツカップ一回戦、後半24分に交代出場を果たしクラブデビュー。
 8月19日ブンデスリーガ開幕節RBライプツィヒ戦でベンチ入りを果たすと、後半33分に交代出場。
 2023年9月7日ブラジルU-23代表でのモロッコU-23代表戦で左太ももに筋肉系のケガを負い、約3か月間の離脱を強いられる。12月に入り、トレーニングに復帰するが、再び前回と同様のケガを発症。発症後に手術を受け、再び約3か月の離脱が見込まれている。

≪シーズン別クラブ出場記録≫

シーズン所属大会試合出場
時間
得点アシ
スト
2022年(19歳)アメリカ・ミネイロ全国選手権717400
コパ・ド・ブラジル12400
州選手権837901
合計1657701
2023年(20歳)アメリカ・ミネイロコパ・スウアメリカーナ19001
全国選手権19000
コパ・ド・ブラジル325800
州選手権639801
合計1183602
2023/24年(21歳)バイエル・レバークーゼン/GERブンデスリーガ23300
ドイツカップ12100
合計35400
イタリック斜体は、2023年12月29日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<代表経歴>

 2022年9月に開催されたアルゼンチン、ウズベキスタン、ウルグアイとのU-20国際親善大会に初めて世代別代表に招集されると、9月6日の初戦アルゼンチン戦の後半15分に途中交代で出場を果たす。第2節ウズベキスタン戦、第3節ウルグアイ戦にはスタメン出場を果たした。
 11月に行われた、2023年U-20南米ユース選手権に向けた最後の代表戦、チリとの2試合の親善試合に招集。1試合目は出場機会が訪れなかったが、2試合目にスタメンで出場。
 2022年12月8日に発表された2023年U-20南米ユース選手権代表メンバー22人に右SBとして選出される。
2023年U-20南米ユース選手権
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-20代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日対戦
相手
試合
結果
出場
時間
得点アシ
スト
2023/01/19予選R第1節ペルー3 – 09000
2023/01/23予選R第3節アルゼンチン3 – 19000
2023/01/25予選R第4節コロンビア1 – 13100
2023/01/27予選R第5節パラグアイ2 – 15800
2023/01/31決勝R第1節エクアドル3 – 18901
2023/02/03決勝R第2節ベネズエラ3 – 09001
2023/02/06決勝R第3節パラグアイ2 – 09000
2023/02/09決勝R第4節コロンビア0 – 08600
2023/02/12決勝R第5節ウルグアイ2 – 0
19 – 462402
予選R第1節ペルー戦
 初戦の緊張感があったのか、立ち上がりからパスミスが多く、得意のフットサル仕込みのドリブルを仕掛けるも簡単にボールを奪われる。
 前半半ば過ぎには落ち着きを取り戻し、VOLマルロン・ゴメスや右WGエステーニオとのパス交換やドリブルで右サイドからの攻撃の形を作っていく。
予選R第3節アルゼンチン戦
 立ち上がりから積極的に攻めあがりチャンスを創出。サイドチェンジのパスや、中央で相手最終ラインの裏に抜け出ようとするヴィトル・ホッキへピタリとあうパスなどを通し、長い距離のパス精度の高さ、視野の広さをみせる。
 サイドライン際でイラースチコ(足の外側でボールを押し出し、すかさず同じ足の内側に当てて、相手選手をかわすプレー)を披露し足元の技術の高さを見せ、得意のドリブルの成功率も高く、相手の脅威になる。
 守備面でも、相手ボール保持者に体を当てバランスを崩してのボール奪取やインターセプトを敢行。一対一の局面でも粘り強く守りぬく。
 失点の場面では、FKからニアサイドで頭に合わせた選手をフリーにしてしまったポジショニングが悔やまれる。
予選R第4節コロンビア戦では、後半24分にツーボランチと交代で出場。そのままボランチに入る。
予選R第5節パラグアイ戦は、相手の球際の強さやコンパクトな陣形、寄せの速さに、なかなか持ち味が発揮できない。しかし、アルトゥールが前線へ駆け上がる際にできたスペースをエステーニオが使い得点につなげる。
決勝Rに入り、全5試合にスタメン出場。
決勝R第1節エクアドル戦では、FKのキッカーを務め、アンドレイ・サントスの得点をアシスト。
決勝R第2節ベネズエラ戦では、ゴールライン際左サイドからのロングスローが流れきたところをマイボールにすると、そのボールをアンドレイ・サントスがゴールに押し込み、2試合連続となるアシストを記録。
決勝R第3節パラグアイ戦、第4節コロンビア戦では、相手が優勢になる時間帯が多くなるが、粘り強く対応。ボランチが途中交代でベンチに退くとボランチに入り、攻守のつなぎ役を務める。
決勝R第5節(最終節)は警告累積による出場停止。

 2023年3月25日開催の親善試合モロッコ戦に向けたハモン・メネゼス監督代行率いるフル代表に招集。
 モロッコ戦は、ヘナン・ロッジの負傷を受け、後半44分に交代出場。代表デビューを果たす。

 2023年9月7日開催の親善試合モロッコU-23戦に向けたハモン・メネゼス監督率いるU-23代表に招集。
 試合は先発出場するものの、試合中に太ももに違和感を覚え、後半31分に交代する。

≪シーズン別代表成績≫

開催日大会・対戦相手試合出場
時間
得点アシ
スト
2023年(20歳)2023U-20南米ユース選手権862402
2023国際親善試合
2023/03/25 – モロッコ1100
イタリック斜体は、2023年12月29日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<プレースタイル>

 ブラジルらしい攻撃的なサイドバック。
 細かなタッチのドリブル、スピードに乗ったドリブルが得意。
 相手ゴールライン際まで何度も駆け上がり、そこから上げるクロスも精度が高い。また、スタミナも豊富で、何度もアップダウンを繰り返すが試合終了までスピードはほとんど鈍らない。
 ボランチやサイドハーフでプレーするユーティリティ性も併せ持つ。
 足元が器用で、ブラジル人らしく、イラースチコやヒールリフトで相手ディフェンダーを交わす場面を試合中にみせることもある。

<エピソード、雑感 etc.>

 2023年U-20世代(2019年U-15南米ユース選手権優勝世代)の右SBは、レアルマドリード/ESPに所属するヴィニシウス・トビアス(Vinícius Tobias)が頭一つ抜けているが、試合の度に異なる選手が招集され試されているポジションである。
 アルトゥール・アウグストは、2022年9月に初めて招集され、11月にも再招集、その2回の招集での結果を受け、2023年U-20南米ユース選手権の代表に選出された。
 しかし、その先にある2023年U-20W杯で代表の座を掴むためには、南米ユース選手権でのパフォーマンスや、クラブでの体作りや戦術理解を含めたプロサッカー選手としての成熟度をさらに高める必要がある。
 2022年末現在、クラブで同時期にトップチームに昇格した下部組織出身の多くの選手がレンタルを含めた移籍でクラブを離れる中、2023年のヴァギネル・マンシーニ監督の構想に残った。同監督のもとでどのように経験を重ね、プロサッカー選手としての成熟度を高めていくことができるかが、2023年U-20W杯の代表メンバーに招集される鍵になるだろう。
 一度はビッグクラブの下部組織から脱落したものの、そこから這い上がり、世代別代表に辿り着いた精神的な粘りや成長力。この”雑草魂”を武器に、U-20W杯、そしてはいずれはフル代表に招集されるような選手になってもらいたい。

2023/03/10 追記

 U-20南米ユース選手権では、開幕節ペルー戦での立ち上がりの拙さが強く印象に残ったが、振り返ってみると、ドリブルやパスの成功率も高く、相手陣深くまで駆け上がってのクロスや中に切れ込む動きで攻撃に参加。守っても粘り強い守備をみせるなど攻守に活躍。視野の広さや中盤としてのプレーも器用にこなすユーティリティ性を発揮。
 U-20代表監督ハモン・メネゼス氏が代行監督を務める2023年3月25日のモロッコとの親善試合に向けた代表に選出。アメリカ・ミネイロからは1975年以来約48年ぶりの代表招集となる。
 「GOAL」紙によると、アメリカ・ミネイロは契約違約金を900万ユーロに設定、契約期間2025年末までとする内容でアルトゥールと契約を更改。
 すでにドイツのバイエル・レバークーゼン、アイントラハト・フランクフルト、ヴォルフスブルクの3クラブが関心を寄せているとのこと。また、バルセロナ/ESPもアルトゥールに関する情報収集を開始した、と報道されている。

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