2022年11月25日代表経歴加筆
ガブリエウ・テオドロ・マルチネリ・シウヴァ
Gabriel Teodoro Martinelli Silva
ポジション:フォワード/アタカンチ (Atacante)
利き足:右
2001年6月18日生まれ
<クラブ経歴>
≪育成時代(コリンチャンス)と国外トレーニング参加≫
幼少時からフットサルで「至宝(jóia / ジョイア)」と呼ばれていたガブリエウ・マルチネリは、2010年9歳時に名門コリンチャンスの下部組織に入団。 U-11、U-13のカテゴリーでは5年間で、サッカーとフットサルの両大会で通算200を超すゴールをあげ、素質の片鱗を見せていた。
しかし、家庭の事情によりサンパウロ州内陸部に引っ越すことになり、2015年にコリンチャンスを退団。決して強豪とはいえないイトゥアーノ(Ituano)の下部組織に入団する。 イトゥアーノでも、2年目にはユースカテゴリーで定位置を確保し15得点を挙げた。そして、その活躍がマンチェスターユナイテッド/イングランドの目に留まることになった。
「2015-2017年の間に計4回、1回につきだいたい15日くらいトレーニングに参加したよ。みんな同じトレーニングセンターで練習して、同じカフェテリアで食事を取るんだ。プロの選手がすぐ目の前にいるんだ。パトリス・エヴラ選手やマルアン・フェライニ選手とかに写真をお願いしたよ。ポール・ポグバ選手は僕がブラジル人だと知っていて、大丈夫かい?どこでプレーしてるんだい?って話しかけてくれたね。一緒に写真も撮ったよ」とマルチネリは当時をふり返る。
2016年にはKAAヘント/ベルギーの練習に参加。
2018年10月にはバルセロナ/スペインに呼ばれ、施設を見学したり、ラ・マシア(La Másia、バルセロナ下部組織の有名な練習場)で数日、トレーニングを行った。
海外クラブでの練習参加について、「僕のサッカー人生で最高の経験だったよ。クラブが世界最高レベルというだけでなく、練習で求められるレベルがとても高くて、プレー面だけでなく戦術面や考え方の面ですごく成長できたからね。それに僕のサッカーを気に入ってくれているクラブや人がいるってわかって、すごく気分が高まるんだ。だから、いつもピッチに立つときはベストを尽くそうって思うんだ。」と語る。
≪イトゥアーノ≫
2017年11月4日、イトゥアーノとプロ契約を結ぶ。
2018年3月17日、サンパウロ州選手権にて途中交代で16歳9ヶ月にしてプロ初出場。 9月8日、サンパウロ州サッカー連盟主催のコパ・パウリスタでプロ初得点を決める。
2019年には、イトゥアーノで定位置を確保し、同年のサンパウロ州選手権では6得点を記録し、チームのベスト8進出に貢献。また、同大会の新人賞、ベストイレブンに選出。
さらには数々の印象的なゴールが海外クラブの注目を集めることとなった。
≪アーセナル≫
2019年7月2日、アーセナル/イングランドと5年契約を結ぶ。
8月11日、プレミアリーグ第1節ニューキャッスル/イングランド戦、途中出場でクラブデビューを果たす。
9月24日、EFLカップ3回戦ノッティンガム・フォレスト/イングランド戦でクラブ初ゴールを記録し、10月3日にはUEFAヨーロッパリーグ、スタンダール・リエージュ/ベルギー戦で2得点1アシストの活躍をみせた。
10月30日のEFLカップ4回戦リヴァプール/イングランド戦、チームは5-5の末PK戦で敗退したものの、マルチネリは2得点の活躍をみせた。リヴァプール監督ユルゲン・クロップ(Jürgen Klopp)は、マルチネリを「百年に一人の才能」と称し、対峙した自軍の同年代のディフェンダー、セップ・ファン・デン・ベルフ(Sepp van den Berg、現シャルケ04/ドイツ)の健闘を称えている。
2020年1月21日アウェイのチェルシー戦で決めたゴールは、クラブでニコラス・アネルカ(Nicolas Anelka)以来のティーンエイジャーによるシーズン二桁ゴールとなった。
2020年7月3日に契約更新を行う。その後間もなく、練習中に負った怪我の手術を受け、翌シーズンの初出場は12月19日まで持ち越された。2021年1月には試合中にくるぶしに違和感を感じ途中交代。2月18日に復帰したものの、4月4日のシェフィールド/イングランド戦まで、このシーズンの初得点は持ち越された。
2021/22年シーズンは怪我に悩まされることなく、順調なシーズンを送った。このシーズンにはキャリア初のレッドカードを受けることになったのだが、1プレーの中で2枚のイエローカードを提示されるという珍しいケースであった。(カードの対象となるファールを犯したがアドヴァンテージによりプレーが続行。その流れで再び警告の対象となるファールを犯してプレーを止めたため、レッドカードが提示された。)
≪シーズン別クラブ成績≫
シーズン | 所属 | 大会 | 試合 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2018年(17歳) | イトゥアーノ | 州選手権 | 3 | 41 | 0 | 0 |
コパ・パウリスタ | 17 | 1468 | 4 | 0 | ||
合計 | 20 | 1509 | 4 | 0 | ||
2019年(18歳) | イトゥアーノ | 州選手権 | 14 | 1081 | 6 | 3 |
合計 | 14 | 1081 | 6 | 3 | ||
2019/20年(19歳) | アーセナル / イングランド | ヨーロッパリーグ | 7 | 424 | 3 | 2 |
プレミアリーグ | 14 | 656 | 3 | 0 | ||
FAカップ | 3 | 203 | 0 | 1 | ||
EFLカップ | 2 | 180 | 4 | 0 | ||
合計 | 26 | 1463 | 10 | 3 | ||
2020/21年(20歳) | アーセナル / イングランド | ヨーロッパリーグ | 6 | 101 | 0 | 0 |
プレミアリーグ | 14 | 587 | 2 | 1 | ||
FAカップ | 1 | 58 | 0 | 0 | ||
EFLカップ | 1 | 49 | 0 | 1 | ||
合計 | 22 | 795 | 2 | 2 | ||
2021/22年(21歳) | アーセナル / イングランド | プレミアリーグ | 29 | 1867 | 6 | 6 |
FAカップ | 1 | 90 | 0 | 0 | ||
EFLカップ | 6 | 377 | 0 | 0 | ||
合計 | 36 | 1867 | 6 | 6 | ||
2022/23年(22歳) | アーセナル / イングランド | ヨーロッパリーグ | 5 | 283 | 0 | 0 |
プレミアリーグ | 14 | 1186 | 5 | 2 | ||
FAカップ | 1 | 28 | 0 | 0 | ||
合計 | 20 | 1497 | 5 | 2 |
イタリック斜体は2022年11月15日現在の記録。 ※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。
<代表経歴>
2019年4月、ブラジルサッカー連盟(CBF)により新しく設けられた育成世代の年齢別強化方針に従い、2001年生まれの代表として27人のメンバーに選出。
5月、コパ・アメリカに向けたフル代表のトレーニングに10人の育成世代選手を帯同させる決定がCBFにより行われ、そのメンバーに選出される。
10月25日、スペインで開催される大会に向けたU-23代表にメンバー最年少の18歳で選出。
12月16日、翌2020年1月に行われるオリンピック南米予選に向け招集されるも、クラブ事情により予選参加は辞退。
2021年7月、コロナ感染症拡大により1年延期された東京オリンピック2020で、いずれも途中交代で予選2試合、準決勝の計3試合に出場。準決勝ではPK戦3人目のキッカーとしてゴールを左隅に決める。
2022年3月11日、W杯南米予選に向けたフル代表に初招集。3月29日第18節ボリビア戦後半9分、フィリペ・コウチーニョ(Philippe Coutinho、現アストン・ヴィラ/イングランド)と交代で代表デビューを果たす。
2022年6月の親善試合(韓国戦、日本戦)は招集されるも出場なし。
2022年11月7日、FIFAカタールW杯2022 の代表メンバーとして招集される。
2022年11月24日、グループラウンド セルビア戦の後半42分にハフィーニャ(Raphinha)と交代でW杯初出場を果たす。
≪シーズン別代表成績≫
年 | 開催日 | 大会・対戦相手 | 試合 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2019年(18歳) | オリンピック代表親善試合 | 2 | 140 | 0 | 0 | |
2019/11/14 | – アメリカ合衆国 | 75 | 0 | 0 | ||
2019/11/17 | – アルゼンチン | 65 | 0 | 0 | ||
2021年(20歳) | オリンピック代表親善試合 | 3 | 114 | 1 | 0 | |
2021/6/5 | – UEA | 14 | 1 | 0 | ||
2021/6/8 | – セルビア | 72 | 0 | 0 | ||
2021/7/15 | – カーボヴェルジ | 28 | 0 | 0 | ||
東京オリンピック2020 | 3 | 75 | 0 | 0 | ||
2021/7/25 | – 予選R コートジボワール | 16 | 0 | 0 | ||
2021/7/28 | – 予選R サウジアラビア | 6 | 0 | 0 | ||
2021/8/3 | – 準決勝 メキシコ | 53 | 0 | 0 | ||
2022年(21歳) | 2022W杯南米予選 | 1 | 36 | 0 | 0 | |
2022/3/29 | – 第18節ボリビア | 36 | 0 | 0 | ||
2022W杯 | 1 | 3 | 0 | 0 | ||
2022/11/24 | – GR セルビア | 1 | 3 | 0 | 0 | |
2022年11月25日現在 ※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。
<エピソード、雑感 etc.>
クリスチャーノ・ロナウドのファンだというマルチネリは、17歳の時、2019年1月掲載のインタビュー記事で次のように自己分析している。 「僕はストライカーだけど、必ずしもセンターフォワードじゃない。センターフォワードとして中央でプレーするときは、より近代的なスタイルを意識している。例えば足元にボールがなくてもスピードでかき回したり、素早く動きまわったり。 僕はクリスチャーノ・ロナウドが大好きなんだ。僕も(彼のように)ディフェンダーを背中で抑えてボールをおさめるような昔ながらのプレーはあまり好きじゃない。そんなプレーが必要なときにはそのようにプレーできるけどね。」
アーセナル前監督のウナイ・エメリ(Unai Emery)は、マルチネリについて、技術面やフィニッシャーとしての素質だけでなく、彼のサッカーに対する渇望、時には度が過ぎるほどのサッカーへの”気持ち”を讃えている。
現監督ミケル・アルテタ(Mikèl Artéta)もまた、2022年10月9日に行われたプレミアリーグ第10節、マルチネリが1得点1アシストを記録したリヴァプール戦後に次のコメントを残している。「彼は素晴らしい選手だ。今日の試合でも違いを創り出していた。彼はもう私に自分のプレーを見せようとする必要はない。彼のサッカーに対する渇望、決意、愛情はもう明確だ。彼が今後どこに辿り着くのか誰にもわからない。なぜなら彼は常に今以上のことを求めているからだ。」
将来を有望視される多くのブラジルの若手選手と異なり、名門チームの下部組織から外れ、ブラジルの有力チームに所属することなくヨーロッパの強豪チームに移籍したガブリエウ・マルチネリ。敵将からも「百年に一人」と呼ばれる才能だけでなく、10代半ばに肌で実感した世界最高レベルのクラブでの経験、感情、サッカーへの思いが彼を導いているのだろう。
ストイックな求道者として知られる、彼が敬愛するクリスチャーノ・ロナウドのように、ガブリエウ・マルチネリもまたストイックに、世界最高峰への道を歩んでいくのだろうか。