ガブリエウ・マルチネリ (Gabriel Martinelli)

投稿者: | 2022年10月28日
2022年11月25日代表経歴加筆 
ガブリエウ テオドロ マルチネリ シウヴァ ガブリエル マルティネッリ マルティネリ ブラジル サッカー 若手 CBFリスト イトゥアーノ アーセナル 2001年生まれ

ガブリエウ・テオドロ・マルチネリ・シウヴァ

Gabriel Teodoro Martinelli Silva

ポジション:フォワード/アタカンチ (Atacante)

利き足:右

2001年6月18日生まれ

<クラブ経歴>

≪育成時代(コリンチャンス)と国外トレーニング参加≫

 幼少時からフットサルで「至宝(jóia / ジョイア)」と呼ばれていたガブリエウ・マルチネリは、2010年9歳時に名門コリンチャンスの下部組織に入団。
 U-11、U-13のカテゴリーでは5年間で、サッカーとフットサルの両大会で通算200を超すゴールをあげ、素質の片鱗を見せていた。
 しかし、家庭の事情によりサンパウロ州内陸部に引っ越すことになり、2015年にコリンチャンスを退団。決して強豪とはいえないイトゥアーノ(Ituano)の下部組織に入団する。
 イトゥアーノでも、2年目にはユースカテゴリーで定位置を確保し15得点を挙げた。そして、その活躍がマンチェスターユナイテッド/イングランドの目に留まることになった。
 「2015-2017年の間に計4回、1回につきだいたい15日くらいトレーニングに参加したよ。みんな同じトレーニングセンターで練習して、同じカフェテリアで食事を取るんだ。プロの選手がすぐ目の前にいるんだ。パトリス・エヴラ選手やマルアン・フェライニ選手とかに写真をお願いしたよ。ポール・ポグバ選手は僕がブラジル人だと知っていて、大丈夫かい?どこでプレーしてるんだい?って話しかけてくれたね。一緒に写真も撮ったよ」とマルチネリは当時をふり返る。
 2016年にはKAAヘント/ベルギーの練習に参加。
 2018年10月にはバルセロナ/スペインに呼ばれ、施設を見学したり、ラ・マシア(La Másia、バルセロナ下部組織の有名な練習場)で数日、トレーニングを行った。
 海外クラブでの練習参加について、「僕のサッカー人生で最高の経験だったよ。クラブが世界最高レベルというだけでなく、練習で求められるレベルがとても高くて、プレー面だけでなく戦術面や考え方の面ですごく成長できたからね。それに僕のサッカーを気に入ってくれているクラブや人がいるってわかって、すごく気分が高まるんだ。だから、いつもピッチに立つときはベストを尽くそうって思うんだ。」と語る。

≪イトゥアーノ≫

 2017年11月4日、イトゥアーノとプロ契約を結ぶ。
 2018年3月17日、サンパウロ州選手権にて途中交代で16歳9ヶ月にしてプロ初出場。
 9月8日、サンパウロ州サッカー連盟主催のコパ・パウリスタでプロ初得点を決める。
 2019年には、イトゥアーノで定位置を確保し、同年のサンパウロ州選手権では6得点を記録し、チームのベスト8進出に貢献。また、同大会の新人賞、ベストイレブンに選出。
 さらには数々の印象的なゴールが海外クラブの注目を集めることとなった。

≪アーセナル≫

 2019年7月2日、アーセナル/イングランドと5年契約を結ぶ。
 8月11日、プレミアリーグ第1節ニューキャッスル/イングランド戦、途中出場でクラブデビューを果たす。
 9月24日、EFLカップ3回戦ノッティンガム・フォレスト/イングランド戦でクラブ初ゴールを記録し、10月3日にはUEFAヨーロッパリーグ、スタンダール・リエージュ/ベルギー戦で2得点1アシストの活躍をみせた。
 10月30日のEFLカップ4回戦リヴァプール/イングランド戦、チームは5-5の末PK戦で敗退したものの、マルチネリは2得点の活躍をみせた。リヴァプール監督ユルゲン・クロップ(Jürgen Klopp)は、マルチネリを「百年に一人の才能」と称し、対峙した自軍の同年代のディフェンダー、セップ・ファン・デン・ベルフ(Sepp van den Berg、現シャルケ04/ドイツ)の健闘を称えている。
 2020年1月21日アウェイのチェルシー戦で決めたゴールは、クラブでニコラス・アネルカ(Nicolas Anelka)以来のティーンエイジャーによるシーズン二桁ゴールとなった。
 2020年7月3日に契約更新を行う。その後間もなく、練習中に負った怪我の手術を受け、翌シーズンの初出場は12月19日まで持ち越された。2021年1月には試合中にくるぶしに違和感を感じ途中交代。2月18日に復帰したものの、4月4日のシェフィールド/イングランド戦まで、このシーズンの初得点は持ち越された。
 2021/22年シーズンは怪我に悩まされることなく、順調なシーズンを送った。このシーズンにはキャリア初のレッドカードを受けることになったのだが、1プレーの中で2枚のイエローカードを提示されるという珍しいケースであった。(カードの対象となるファールを犯したがアドヴァンテージによりプレーが続行。その流れで再び警告の対象となるファールを犯してプレーを止めたため、レッドカードが提示された。)

≪シーズン別クラブ成績≫

シーズン所属大会試合出場
時間
得点アシ
スト
2018年(17歳)イトゥアーノ州選手権34100
コパ・パウリスタ17146840
合計20150940
2019年(18歳)イトゥアーノ州選手権14108163
合計14108163
2019/20年(19歳)アーセナル / イングランドヨーロッパリーグ742432
プレミアリーグ1465630
FAカップ320301
EFLカップ218040
合計261463103
2020/21年(20歳)アーセナル / イングランドヨーロッパリーグ610100
プレミアリーグ1458721
FAカップ15800
EFLカップ14901
合計2279522
2021/22年(21歳)アーセナル / イングランドプレミアリーグ29186766
FAカップ19000
EFLカップ637700
合計36186766
2022/23年(22歳)アーセナル / イングランドヨーロッパリーグ528300
プレミアリーグ14118652
FAカップ12800
合計20149752
イタリック斜体は2022年11月15日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<代表経歴>

 2019年4月、ブラジルサッカー連盟(CBF)により新しく設けられた育成世代の年齢別強化方針に従い、2001年生まれの代表として27人のメンバーに選出。
 5月、コパ・アメリカに向けたフル代表のトレーニングに10人の育成世代選手を帯同させる決定がCBFにより行われ、そのメンバーに選出される。
 10月25日、スペインで開催される大会に向けたU-23代表にメンバー最年少の18歳で選出。
 12月16日、翌2020年1月に行われるオリンピック南米予選に向け招集されるも、クラブ事情により予選参加は辞退。
 2021年7月、コロナ感染症拡大により1年延期された東京オリンピック2020で、いずれも途中交代で予選2試合、準決勝の計3試合に出場。準決勝ではPK戦3人目のキッカーとしてゴールを左隅に決める。
 2022年3月11日、W杯南米予選に向けたフル代表に初招集。3月29日第18節ボリビア戦後半9分、フィリペ・コウチーニョ(Philippe Coutinho、現アストン・ヴィラ/イングランド)と交代で代表デビューを果たす。
 2022年6月の親善試合(韓国戦、日本戦)は招集されるも出場なし。
 2022年11月7日、FIFAカタールW杯2022 の代表メンバーとして招集される。
 2022年11月24日、グループラウンド セルビア戦の後半42分にハフィーニャ(Raphinha)と交代でW杯初出場を果たす。

≪シーズン別代表成績≫

開催日大会・対戦相手試合出場
時間
得点アシ
スト
2019年(18歳)オリンピック代表親善試合214000
2019/11/14 – アメリカ合衆国7500
2019/11/17 – アルゼンチン6500
2021年(20歳)オリンピック代表親善試合311410
2021/6/5 – UEA1410
2021/6/8 – セルビア7200
2021/7/15 – カーボヴェルジ2800
東京オリンピック202037500
2021/7/25 – 予選R コートジボワール1600
2021/7/28 – 予選R サウジアラビア600
2021/8/3 – 準決勝 メキシコ5300
2022年(21歳)2022W杯南米予選13600
2022/3/29 – 第18節ボリビア3600
2022W杯1300
2022/11/24 – GR セルビア1300
2022年11月25日現在
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<エピソード、雑感 etc.>

 クリスチャーノ・ロナウドのファンだというマルチネリは、17歳の時、2019年1月掲載のインタビュー記事で次のように自己分析している。
 「僕はストライカーだけど、必ずしもセンターフォワードじゃない。センターフォワードとして中央でプレーするときは、より近代的なスタイルを意識している。例えば足元にボールがなくてもスピードでかき回したり、素早く動きまわったり。
 僕はクリスチャーノ・ロナウドが大好きなんだ。僕も(彼のように)ディフェンダーを背中で抑えてボールをおさめるような昔ながらのプレーはあまり好きじゃない。そんなプレーが必要なときにはそのようにプレーできるけどね。」
 アーセナル前監督のウナイ・エメリ(Unai Emery)は、マルチネリについて、技術面やフィニッシャーとしての素質だけでなく、彼のサッカーに対する渇望、時には度が過ぎるほどのサッカーへの”気持ち”を讃えている。
 現監督ミケル・アルテタ(Mikèl Artéta)もまた、2022年10月9日に行われたプレミアリーグ第10節、マルチネリが1得点1アシストを記録したリヴァプール戦後に次のコメントを残している。「彼は素晴らしい選手だ。今日の試合でも違いを創り出していた。彼はもう私に自分のプレーを見せようとする必要はない。彼のサッカーに対する渇望、決意、愛情はもう明確だ。彼が今後どこに辿り着くのか誰にもわからない。なぜなら彼は常に今以上のことを求めているからだ。」
 将来を有望視される多くのブラジルの若手選手と異なり、名門チームの下部組織から外れ、ブラジルの有力チームに所属することなくヨーロッパの強豪チームに移籍したガブリエウ・マルチネリ。敵将からも「百年に一人」と呼ばれる才能だけでなく、10代半ばに肌で実感した世界最高レベルのクラブでの経験、感情、サッカーへの思いが彼を導いているのだろう。
 ストイックな求道者として知られる、彼が敬愛するクリスチャーノ・ロナウドのように、ガブリエウ・マルチネリもまたストイックに、世界最高峰への道を歩んでいくのだろうか。

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