クラブ別2023年振り返り:アメリカ・ミネイロ (América Mineiro)

投稿者: | 2023年12月12日

アメリカ ミネイロ ブラジルリーグ ブラジル選手権 ブラジルサッカー ブラジルサッカークラブ  Internacional

アメリカ・ミネイロ (América Mineiro)

正式名称:América Futebol Clube

略称:AME

創立:1912年

本拠:ミナスジェライス州 ベロオリゾンテ

《 主要タイトル & クラブ概略 》

タイトル優勝回数優勝年
N/AN/AN/A
 アメリカ・ミネイロは、ミナスジェライス州ベロオリゾンテに1912年に創立された名門クラブ。ブラジル全国選手権初年の1971年から1部リーグ(Série A)に所属。1979年に降格すると、1980年からは主に2部リーグ(Série B)が主戦場となり、1部への昇格と3部への降格を繰り返すこととなる。
 2020年に2部リーグ2位で1部昇格を果たすと、2021年には8位に食い込みクラブ史上初となるリベルタドーレス出場権を獲得。
 アメリカ・ミネイロは、若手選手の発掘に定評があり、元日本代表キャプテンの中澤佑二選手は1997‐1998年にかけてU-20チームに所属し、主力メンバーとしてU-20州選手権のタイトルを獲得。
 フレッジ(Fred, 2006年・2014年W杯代表)、ダニーロ(Danilo, 2018年・2022年W杯代表)、ヒシャルリソン(Richarlison, 2022年W杯代表)はアメリカ・ミネイロの下部組織出身、同クラブでプロデビューを果たしている。
 2023年7月には、前年にトップチームに昇格し、U-20南米ユース選手権(8試合2アシスト)、U-20W杯(4試合)に出場した右SBアルトゥール(Arthur, 2003)がバイエル・レバークーゼン/GERへ移籍。
 2024年1月にバルセロナ/ESPに入団するFWヴィトル・ホッキ(Vitor Roque, 2005)はアメリカ・ミネイロの下部組織でキャリアをスタートさせている。

《 直近3年成績(2021年-2023年) 》

大会2023年成績2022年成績2021年成績
ブラジル全国選手権20位10位8位
コパ・ド・ブラジル準々決勝敗退準々決勝敗退3回戦敗退
コパ・リベルタドーレスグループR敗退
コパ・スウアメリカーナ準々決勝敗退
ミナスジェライス州選手権準優勝5-8位決定戦
初戦敗退
準優勝
各大会の概要は、当ブログ記事「主要大会と年間日程」を参照ください。

《 全国選手権 順位推移(2006年-2023年) 》

現行レギュレーション(20チームによるホーム&アウェイ方式2回戦総当たり)で開催された2006年以降の全国選手権順位推移。
アメリカ・ミネイロ 全国選手権 ブラジルリーグ 年度別順位推移

《 2023年 》

<戦績>

大会試合勝利引分敗北得点失点得失差順位等
コパ・スウアメリカーナ1243524204準々決勝敗退
全国選手権3859244281-3920位
コパ・ド・ブラジル85121587準々決勝敗退
州選手権1273221129準優勝
   70211633102121-19

<全国選手権 年間順位推移>

アメリカ・ミネイロ 全国選手権 ブラジルリーグ 2023年間順位推移

<振り返り>

【シーズン前】

   2022年4月12日に就任し全国選手権2022を10位の成績で終えたヴァギネル・マンチーニ(Vagner Mancini)監督が引き続き指揮を執る。
   2022年全国選手権では得点数が前半戦13得点→後半戦27得点と倍増。その原動力となったMFマルティン・ベニテス(Martín Benítez, 1994)を完全移籍で獲得。中心的な選手の多くは複数年契約を結んでおり、契約終了や移籍による主力選手の流出が最小限に抑えられ、ピンポイントの補強を行い、前年を上回る成績が期待され2023年シーズンを迎える。

【ミナスジェライス州選手権】

   2023年1月22日に開幕した州選手権。開幕2連勝で迎えた第3節クルゼイロ戦に1-0の勝利、第7節アトレチコ・ミネイロ戦は1-1の引分けに終え、予選ラウンドは5勝3分無敗で決勝ラウンドに進出。
   決勝ラウンド一回戦(準決勝)クルゼイロ戦、(A)2-0、(H)2-1の連勝で決勝進出を決める。
   2023年4月1日決勝アトレチコ・ミネイロ戦1stレグは、前半に2点のリードを許すが、前半アディショナルタイムにMFマルティン・ベニテスのミドルシュートのゴラッソで1点を返すと、後半6分に再びMFマルティン・ベニテスが同点弾。後半8分に得点機会阻止で退場者を出しPKを献上するが、GKカヴィキオリ(Cavichioli, 1986)が阻止。後半45+7分、実質的に最後のプレーでアトレチコ・ミネイロFWフッキにゴールを許し、惜しくも敗戦。
   4月9日2ndレグでは、前がかりとなったこともあり2-0の敗戦で終えたものの、全国選手権でも優勝候補に挙げられるアトレチコ・ミネイロを相手に、全国選手権に向け手ごたえを感じる内容で州選手権を準優勝に終えた。

【コパ・ド・ブラジル】

   2023年2月28日の一回戦全国選手権4部トカンチノポリス戦こそ1-1の引分けで規定により辛うじて二回戦に進出したものの、二回戦、三回戦は、難なく突破。
   5月17日ベスト16インテルナシオナウ戦ホームでの1stレグ。守備的な戦術を採用するインテルに対しなかなかゴールが奪えないが、後半45+3分、後半45+17分と相次いでFWアロイージオ(Aloísio, 1988)がPKを決め2-0の勝利。
   5月31日のアウェイでの2ndレグは、前半の内に3点を奪われ2試合合計で逆転を許すが、後半32分、右SBマルシーニョ(Marcinho, 1996)のクロスにゴールサイドでMFジュニーニョ(Juninho, 1987)がヘディングシュートをゴールに突き刺し同点。PK戦にもつれ込むと、インテル3人目のキッカーが軸足にボールをあて2度蹴りとなりゴールが取り消された一方、アメリカ・ミネイロは全選手がPKを決め準々決勝に進出。
   7月5日準々決勝コリンチャンス戦ホームでの1stレグは、前半31分のMFジュニーニョのゴールを最後まで守り抜き1-0の先勝。
   7月15日2ndレグは、2試合合計で逆転に次ぐ逆転の展開。後半37分のFWマストリアーニ(Mastriani, 1993)のゴールで2試合合計3-3に追いつきPK戦に持ち込むが、PK戦は2人が止められ1-3で敗戦。
   コパ・ド・ブラジルは準々決勝で敗退した。

【コパ・スウアメリカーナ】

   全国選手権開幕に先立ち、4月5日に開幕節を迎えたコパ・スウアメリカーナ。開幕節ホームでのペニャロール/URU戦は4-1で完勝。第2節以降は、全国選手権、コパ・ド・ブラジルが並行開催される厳しい日程の中、多くの選手を試合に起用し、攻撃的なスタイルを貫いて、グループ2位でプレーオフに進出する。
   7月11日プレーオフ、コロ・コロ/CHL戦アウェイでの1stレグは、2点のリードを許すも試合終了間際のVOLアレー(Alê, 1990)のゴールで1点差に詰め寄り試合を終える。ホームでの2ndレグは、前半6分に2試合合計で同点、前半21分、26分と立て続けにゴールを奪い一気に逆転。試合は5-1、2試合合計6-3の逆転勝利で決勝ラウンドに進出。
   決勝ラウンド一回戦(ベスト16)は、全国選手権で調子を上げるRBブラガンチーノとの対戦。戦前の予想ではRBブラガンチーノ有利の意見が大勢を占めたが、8月3日ホームでの1stレグでは、圧倒的にボールを支配されるものの、後半28分のFWマストリアーニのゴールで同点に追いつき1-1で終了。
   8月10日アウェイでの2ndレグは、前半5分の失点以降、追いついては突き放される展開となるが、後半45+10分、パワープレーでペナルティエリアに上がったCBジュリオ(Julio, 2003)が空中戦で相手のハンドを誘発。FWマストリアーニがPKを沈め、PK戦に持ち込む。PK戦はアメリカ・ミネイロは1人が枠を外したが、アメリカ・ミネイロGKマテウス・パジナット(Mateus Pasinato, 1992)が2本のシュートを止め、準々決勝に駒を進めた。
   準々決勝フォルタレーザ戦は、8月24日ホーム1stレグ、8月31日アウェイ2ndレグが行われたが、それぞれ、1-2、1-3の敗戦。コパ・スウアメリカーナは準々決勝で姿を消した。
   なお、FWマストリアーニ(Mastriani, 1993)は大会通算9得点を記録し得点王に輝いた。

【全国選手権】

   2023年4月15日開幕節から3試合連続で3失点を喫するなど、攻撃的なスタイルを標榜しているとはいえ、守備面での苦戦が続き、5月20日第7節フォルタレーザ戦での初白星まで1分6敗と開幕スタートに大きく出遅れる。
   6月3日第9節コリンチャンス戦で完封勝ち(2-0)を収めるが、無失点試合は9月3日第22節サントス戦との僅か2試合のみ。
   勝てない試合が続く中、7月5日のコパ・ド・ブラジル準々決勝コリンチャンス戦1stレグで、それまで25試合12得点4アシストを記録していたFWアロイージオが右太ももを痛め戦列を離れ、攻撃面での不安も広がる。
   8月6日第18節、残留争いのライバル、バイーアに1-3で敗戦を喫すると、クラブはヴァギネル・マンチーニ監督を更迭。ファビアン・ブストス(Fabián Bustos)氏を後任の監督に据える。
   ファビアン・ブストス監督は就任後の2試合は黒星に終えたものの、ケガのFWアロイージオに替え、それまであまり出場機会の多くなかったFWマストリアーニを抜擢。スーパーサブとしてFWヴァランダ(Varanda, 2003)、中盤の汗かき役としてMFホドリギーニョ(Rodriguinho, 2003)の若い選手を起用。
   すると、8月27日第21節サンパウロ戦、9月3日第22節サントス戦で連勝を飾り、最下位を脱出する。
   しかし、その勢いは続かず、その後は5引分けを挟み10連敗。
   11月8日第33節コリチバ戦での敗戦により5試合を残し降格が確定する。
   降格確定後の5試合には、CBジュリオ(Julio, 2003)をスタメンに起用、FWヘナト・マルケス(Renato Marques, 2003)も途中交代と最後の2試合にはスタメンに抜擢。第37節バイーア戦ではFWヘナト・マルケスが2得点、MFホドリギーニョが1アシストと2003年生まれ選手の活躍で3-2の勝利。
   最終節には、さらにプロデビュー戦を迎える2選手をピッチに投入。
   2016年途中からアメリカ・ミネイロでプレーするMFジュニーニョがシーズン終了後に「今までアメリカ・ミネイロに在籍した中で一番いいチームだった」と話した攻撃的で雰囲気のいいチームは、最後まで組織的な守備を構築することができず、最下位でシーズンを終えた。
   選手権前半 :   2勝 4分13敗、得点20失点44
   選手権後半 :   3勝 5分11敗、得点22失点37
   選手権合計 :   5勝 9分24敗、得点42失点81
   ホーム  :   5勝 2分12敗、得点21失点38
   アウェイ :   0勝 7分12敗、得点21失点43
   得点数42  :  リーグ13位
   失点数81  :  リーグ1位(の多さ

<チーム内個人成績・記録>

* 参照元:サッカーサイト「Ogol」

記録選手




















最多試合出場ジュニーニョ
Juninho
MF, 1987
653671210
(2位)エマヌエル・マルティネス
Emmanuel Martínez
MF, 1994
62357911
(3位)アレー
Alê
VOL, 1990
542761110
最多出場時間ジュニーニョ
Juninho
MF, 1987
532229156361003768
(2位)ヤゴ・マイダナ
Iago Maidana
CB, 1996
37282161570796201
(3位)エマヌエル・マルティネス
Emmanuel Martínez
MF, 1994
37192545380370424
最多得点マストリアーニ
Mastriani
FW, 1993
2111109
(2位)アロイージオ
Aloísio
FW, 1988
123441
(3位)マルティン・ベニテス
Martín Benítez
MF, 1994
93231
最多アシストマルティン・ベニテス
Martín Benítez
MF, 1994
114124
(2位)ジュニーニョ
Juninho
MF, 1987
102143
(3位)エマヌエル・マルティネス
Emmanuel Martínez
MF, 1994
95103
最多デュエル勝利エマヌエル・マルティネス
Emmanuel Martínez
MF, 1994
171
(2位)ダニーロ・アヴェラール
Danilo Avelar
CB, SB, 1989
125
(3位)ジュニーニョ
Juninho
MF, 1987
112
最多キーパスエマヌエル・マルティネス
Emmanuel Martínez
MF, 1994
61
(2位)ジュニーニョ
Juninho
MF, 1987
41
(3位)マルティン・ベニテス
Martín Benítez
MF, 1994
29
最多CBIヤゴ・マイダナ
Iago Maidana
CB, 1996
127
(2位)ヒカルド・シウヴァ
Ricardo Silva
CB, 1992
115
(3位)エデル・フェヘイラ
Éder Ferreira
CB, 1995
104
※
デュエル勝利 : 一対一でのイーブンボールの奪い合いでボールを獲得すること
キーパス : パスの受け手がシュートを打てた時にカウントされる指標
CBI : クリア、ブロック、インターセプト

《 2024年にむけて 》

   MFマルティン・ベニテス、MFエマヌエル・マルティネス、FWマストリアーニの中盤から前線の中核を担った3選手は、2024年以降も契約は継続しているが、全国選手権1部の複数チームが獲得の意向を示しており、移籍流出の可能性がある。
   守備陣では、チーム2位の出場時間を記録した守備の要CBヤゴ・マイダナ(Iago Maidana, 1996)の契約更新が決まっていない。
   シーズン前半の攻撃陣を牽引したもののケガでシーズン後半を棒に振ったFWアロイージオなど、シーズン終盤にかけ出場機会に恵まれなかった選手の多くが、契約解除も含め、クラブを離れることが見込まれている。
   一方で、来季で在籍9年目を迎えるベテランMFジュニーニョをはじめとした複数年契約選手はもちろんのこと、2023年末に契約満了を迎える主だった選手の契約更新交渉は、先述のCBヤゴ・マイダナを除き、順調に進んでいるようだ。
   2024年は、MFジュニーニョを精神的な支柱として、2023年の主力を中心に、昨季から今季にかけてデビューを果たした多くの下部組織出身選手がレギュラー争いに加わり、選手間競争を通してチーム力を高めていくことになるだろう。
   そのためにも、一日も早く監督人事を固め、一日も早くチーム作りに取り掛かかりたい。

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