クラブ別2023年振り返り:サントス (Santos)

投稿者: | 2023年12月16日

サントスFC ブラジルリーグ ブラジル選手権 ブラジルサッカー ブラジルサッカークラブ  Santos FC

サントス (Santos)

正式名称:Santos Futebol Clube

略称:SAN

創立:1912年

本拠:サンパウロ州 サントス

《 主要タイトル & クラブ概略 》

タイトル優勝回数優勝年
ブラジル全国選手権82004, 2002, 1968,
1965, 1964, 1963,
1962, 1961
コパ・ド・ブラジル12010
コパ・リベルタドーレス32011, 1963, 1962
クラブワールドカップ(*)21963, 1962
(*)インターコンチネンタルカップおよびトヨタカップを含む
   サントスが本拠を置くサントス市は南米最大の港町を有することから、サントスは『ペイシ(Peixe, 魚の意)』の愛称で親しまれている。また、本拠地とするスタジアム「ヴィラ・ベウミーロ(Vila Belmiro)」から『ヴィラ』と呼ばれることも多く、サントス下部組織(出身)の選手は、『メニーノ・ダ・ヴィラ(Menino da Vila, ヴィラの少年)』とも呼ばれる。
注:以下、この項目の「現~所属」は2023年12月現在所属の意。
   ペレ―(Pelé)を始め多くの世界的な選手を輩出。近年ではFWホビーニョ(Robinho, 1984)、現役選手ではバルセロナ/ESP、パリSG/FRAでプレーしたFWネイマール(Neymar, 1991)、現レアルマドリード/ESP所属FWホドリゴ(Rodrygo, 2001)などが、サントス下部組織出身でサントスからプロデビューを果たしている。(ペレ―はサントスでプロデビューを果たしているものの、デビュー前はサントス下部組織でプレーしていない。)
   全国選手権では、現行のレギュレーションとなった2006年以降、3度の2位があるもののタイトルはない。
   2010年コパ・ド・ブラジル優勝時は、FWホビーニョ、現ユベントス所属SBアレクサンドロ(Alex Sandro, 1991)、FWネイマール、現フルミネンセ所属MFガンソ(Ganso, 1989)が、決勝戦ヴィトーリアとのホーム&アウェイの試合に出場。
   2011年コパ・リベルタドーレス優勝時には、SBアレクサンドロ、FWネイマール、MFガンソ、現ユベントス所属SBダニーロ(Danilo, 1991)が、決勝戦ペニャロール/URU戦のホーム&アウェイの試合に出場している。
   日本人選手では、三浦泰年選手が1984-85年、三浦知良選手が1986年と1990年、水島武蔵選手が1988年、前園真聖選手が1998年、菅原智選手が1999年に、それぞれサントスでプレーしている。

《 直近3年成績(2021年-2023年) 》

大会2023年成績2022年成績2021年成績
ブラジル全国選手権17位12位10位
コパ・ド・ブラジルベスト16敗退ベスト16敗退準々決勝敗退
コパ・リベルタドーレス予選R敗退
コパ・スウアメリカーナ予選R敗退ベスト16敗退準々決勝敗退
サンパウロ州選手権予選R敗退予選R敗退予選R敗退
各大会の概要は、当ブログ記事「主要大会と年間日程」を参照ください。

《 全国選手権 順位推移(2006年-2023年) 》

現行レギュレーション(20チームによるホーム&アウェイ方式2回戦総当たり)で開催された2006年以降の全国選手権順位推移。
サントス 全国選手権 ブラジルリーグ 年度別順位推移

《 2023年 》

<戦績>

大会試合勝利引分敗北得点失点得失差順位等
コパ・スウアメリカーナ612335-2予選ラウンド敗退
全国選手権381110173964-2517位
コパ・ド・ブラジル6420817ベスト16敗退
サンパウロ州選手権123541417-3予選ラウンド敗退
   621919246487-23

<全国選手権 年間順位推移>

サントス 全国選手権 ブラジルリーグ 2023年間順位推移

<振り返り>

【シーズン前】

   12位に終えた2022年全国選手権閉幕直後の2022年11月16日、サントスはオダイール・エルマン(Odair Hellmann)監督の就任を発表。オダイール・エルマン監督は2018年に再昇格1年目のインテルナシオナウを3位に躍進させているが、タイトル獲得の実績はない。
   コロナ前は身の丈に合わない監督招聘や選手補強を要因とする過大な人件費などの過度な支出や、契約上の不備による有望な下部組織選手の流出による収入面の機会損失など、収支両面に問題が山積。元々脆かった財務基盤がコロナ禍でさらに悪化すると、コロナ以降は流出する選手を引き留めることが難しくなり、その補充は下部組織からの若手選手の供給や、全国選手権下位チームや下位リーグからの選手獲得が中心となる。
   州選手権開幕後もオダイール・エルマン監督はクラブに補強を訴え続けるが、監督の意に沿う補強はほとんど行われることがなく、シーズンが経過していく。

【サンパウロ州選手権】

   2023年1月14日開幕節こそ、FWマルコス・レオナルド(Marcos Leonardo, 2003)と、2部降格のセアラーから獲得したFWメンドーサ(Mendoza, 1992)のゴールで2-1の勝利を収めたものの、第2節以降は勝ち星から遠ざかり、一時は全16チーム中下位2チームが該当する2部降格が懸念される。
   2月上旬、代表経歴を持ち、過去にサントスに在籍、2023年は所属クラブがなくフリーだったMFルーカス・リマ(Lucas Lima, 1990)を州選手権限定の契約(後に複数年契約に更新)で獲得、試合を重ね選手間の連係も高まり、最終的に予選ラウンドは3勝5分4敗で終了。恥辱的な州選手権2部降格は回避したものの、屈辱的な3年連続の予選ラウンド敗退で州選手権を終えた。

【コパ・ド・ブラジル】

   2023年2月23日、コパ・ド・ブラジル一回戦は、全国選手権4部セイランジアを相手に1-0の勝利。
   3月9日二回戦も全国選手権4部イグアトゥを相手に3-0の完勝。いずれも格下が相手とは言え、州選手権で苦しむ中、無失点での白星は明るい材料。
   三回戦の対戦相手はサンパウロ州選手権で決勝ラウンドに進出した全国選手権2部ボタフォゴ-SP1stレグは全国選手権開幕前の4月11日、2ndレグは全国選手権、コパ・スウにアメリカーナとの並行開催で中2~3日での試合が続く4月26日に開催されたが、この2戦を、2-0、1-0と無失点で連勝、ベスト16へ駒を進める。
   ベスト16の対戦相手はバイーア。5月17日ホームでの1stレグは0-0。5月31日アウェイでの2ndレグは、後半24分に先制を許すが、後半45+5分、全国選手権開幕前に加入したFWメゼンガ(Mezenga, 1988)がFWソテウド(Soteldo, 1997)のCKを綺麗に頭に合わせ土壇場の同点ゴール。準々決勝進出はPK戦に委ねられたが、サントスGKジョアン・パウロ(João Paulo, 1995)がPKを一本阻止するものの、サントスはPKを二本止められ、準々決勝進出を逃した。

【コパ・スウアメリカーナ】

   2023年4月4日に開幕節を迎えたコパ・スウアメリカーナ。グループラウンド第1節は、直近のコパ・ド・ブラジル二回戦から4週間ぶりの試合。一週間後にコパ・ド・ブラジル三回戦1stレグ、さらにその5日後に全国選手権開幕を控え、トレーニングの成果を試すにはもってこいの舞台となる。試合は前半からボールを支配、後半13分に相手から退場者が出て数的有利となるが、守備に徹する相手守備網を崩すことができない。後半45+8分にCKからのゴールで勝利を収めるが。今後に不安を残す内容で試合を終えた。
   第2節以降は、全国選手権での不振、過酷な日程もあり、2分3敗。最終的に1勝2分3敗でグループ3位となり、コパ・スウアメリカーナも予選ラウンドで姿を消した。

【全国選手権】

   2023年4月16日全国選手権開幕節は、2部からの再昇格一年目ながら、FWルイス・スアレス(Luis Suárez, 1987)を擁し、リオグランデドスル州選手権を優勝に終えたグレミオとのアウェイの試合。試合は0-1で敗れたものの、互角以上の内容で終える。
   第2節ホーム開幕戦は、FWフッキ(Hulk, 1986)を擁し爆発的な攻撃力を誇り、ミナスジェライス州選手権を制したアトレチコ・ミネイロを相手に0-0のドロー。
   4月29日第3節アメリカ・ミネイロ戦で初勝利を挙げると、第4節は敗れたものの、第5、6節を連勝。第7節はサンパウロ州選手権王者のパウメイラスとの試合だったが、前半は互角、後半は試合を優位に運び相次いでゴールに迫るも最後までゴールを奪えず引分け。白星こそ逃したものの、州選手権からの成長を感じさせる試合だった。
   ところが、第8節以降は試合内容が悪化。元々開幕節から守備的に試合を進めていたが、高い位置でのプレスを掻い潜られると、全体が自陣ゴール前に下がり、前線はFWマルコス・レオナルドが常に厳しいマークに会い孤立。スピード豊かなサイドアタッカーにボールを送りロングカウンターを狙うも簡単に対応され、再び自陣ゴール前に押し込まれる展開の試合が続く。
   6月21日第11節ホームでのクラシコ、コリンチャンス戦に0-2で敗れると、サントスはオダイール監督を両者合意の上、解任。パウロ・トゥーハ(Paulo Turra)監督を招聘する。
   パウロ・トゥーハ監督は、最終ラインを高く保ち、コンパクトな陣形から以前よりも相手ゴールに近い位置でボールを奪いゴールを狙う戦術を採用。しかし、得点は増えたものの失点も増加。
   7月9日第14節ゴイアス戦で4-3の撃ち合いを制し、チームは第6節以来の勝ち星を挙げるが、翌15節サンパウロ戦では1-4の完敗。
   パウロ・トゥーハ監督のサッカーは機能せず、8月5日第18節アトレチコ・パラナエンセ戦の敗戦でチームが降格圏の17位に転落すると、この試合を最後に、サントスはパウロ・トゥーハ監督を解任する。
   ディエゴ・アギーレ(Diego Aguirre)監督が第19節から指揮を執ると、第20節グレミオ戦で2-1の勝利。しかし、その後3連敗、特に残留争いのライバル、アメリカ・ミネイロ戦、クルゼイロ戦での連敗が決定打となり、クラブは僅か5試合でディエゴ・アギーレ監督を解任する。
   9月18日第24節バイーア戦、マルセロ・フェルナンデス(Marcelo Fernandes)アシスタンスコーチが監督代行として指揮を執る。すると、この試合から3連勝を収め残留圏を脱出。
   サントスは、7~8月の移籍ウィンドウで、FWアンジェロ(Ângelo, 2004)、FWデイヴィジ・ワシントン(Deivid Washington, 2005)の移籍金を原資に、ベネズエラ代表VOLトマス・リンコン(Tomás Rincón, 1988)、モナコ/FRAからMFジアン・ルーカス(Jean Lucas, 1998)など、積極的な補強を実施。
   マルセロ・フェルナンデス監督代行は、VOLトマス・リンコンとMFジアン・ルーカスを中盤に据え、MFルーカス・リマ、FWソテウドのボールを握れる両選手を高い位置に配置し、FWマルコス・レオナルドをワントップに起用。最終ラインは、右SBにCBを本職とするジョアキン(Joaquim, 1998)を配置する4バックと、左CBにSBが本職で身長177㎝のドドー(Dodô, 1992)を起用する3バックを併用する。
   3バック、4バック、いずれの布陣でも、VOLトマス・リンコンを中心にボールを獲得すると、推進力のあるMFジアン・ルーカスにボールを送り、さらに前線へボールを繋ぐサッカーを展開。それまでとは大きく異なるサッカーでサントスを一新する。
   3連勝の後は2連敗、10月22日第28節インテルナシオナウ戦では1-7の惨敗を喫するが、翌節にはチームを立て直し、続く5試合を3勝2分とし、勝ち点を積み重ねていく。
   しかし、残留争いの中心となる3チームがいずれも監督交代を通してチーム力を上げていき、残留のボーダーラインは試合を経るごとに上がる状況となり、サントスは勝ち点を積み上げていくものの残留争いから抜け出すことができない。
   4節を残し迎えた2026W杯南米予選でVOLトマス・リンコンが負傷。VOLトマス・リンコンは第35、36節に欠場。第37、38(最終)節は先発するものの、状態は以前とは程遠く精彩を欠き、第38節は前半42分にベンチに退く。チームは第35節こそ引分けに終えたものの、第36、37節は連敗。勝てば自力で残留を決めることができる第38節も1-2で敗れると、他チームの試合結果を受け、111年の歴史を持つクラブ史上初の降格を味わう。
   選手権前半 :   4勝 6分 9敗、得点19失点31
   選手権後半 :   7勝 4分 8敗、得点20失点33
   選手権合計 :  11勝10分17敗、得点39失点64
   選手権ホーム  :   6勝 7分 6敗、得点26失点28
   選手権アウェイ :   5勝 3分11敗、得点13失点36
   得点数39  :  リーグ18位
   失点数64  :  リーグ3位(の多さ)

【若手選手】

   7月中旬にFWアンジェロ(ângelo, 2004)が移籍金1500万ユーロ(約23億円)、8月上旬にFWデイヴィジ・ワシントン(Deivid Washington, 2005)がインセンティブを合わせた移籍金2000万ユーロ(約31億円)で、いずれもチェルシー/ENGへ移籍。
   2023年は残留争いに巻き込まれたこともあり、8月にローマ/ITAからのオファーを受けた(クラブが拒否)FWマルコス・レオナルドを除き、あまり多くの下部組織(出身)の若手選手の起用はなかった。しかし、マルセロ・フェルナンデス監督代行就任以降は、攻撃的な左SBケヴィソン(Kevyson, 2004)がコンスタントに試合に起用され、ポジションを獲得するまで成長した。

<チーム内個人成績・記録>

* 参照元:サッカーサイト「Ogol」

記録選手




















最多試合出場ジョアン・パウロ
João Paulo
GK, 1995
59366125
(2位)ルーカス・リマ
Lucas Lima
MF, 1990
5035645
(3位)マルコス・レオナルド
Marcos Leonardo
FW, 2003
49314113
最多出場時間ジョアン・パウロ
João Paulo
GK, 1995
521032125401008450
(2位)マルコス・レオナルド
Marcos Leonardo
FW, 2003
41302603360910257
(3位)メシアス
Messias
CB, 1994
36652392450373450
最多得点マルコス・レオナルド
Marcos Leonardo
FW, 2003
2113341
(2位)メンドーサ
Mendoza
FW, 1992
106040
(3位タイ)フルチ
Furch
FW, 1989
33000
(3位タイ)ルーカス・バルボーザ
Lucas Barbosa
FW, 2001
30120
(3位タイ)バウエルマン
Bauermann
CB, 1996
31011
(3位タイ)メシアス
Messias
CB, 1994
32100
最多アシストルーカス・リマ
Lucas Lima
MF, 1990
105320
(2位)ソテウド
Soteldo
FW, 1997
86110
(3位タイ)マルコス・レオナルド
Marcos Leonardo
FW, 2003
42020
(3位タイ)ジョアキン
Joaquim
CB, 1998
44000
最多デュエル勝利ジョアキン
Joaquim
CB, 1998
210
(2位)ソテウド
Soteldo
FW, 1997
132
(3位)ルーカス・リマ
Lucas Lima
MF, 1990
127
最多キーパスルーカス・リマ
Lucas Lima
MF, 1990
62
(2位)ソテウド
Soteldo
FW, 1997
50
(3位)ジアン・ルーカス
Jean Lucas
MF, 1998
39
最多CBIジョアキン
Joaquim
CB, 1998
210
(2位)メシアス
Messias
CB, 1994
175
(3位)ジョアン・バッソ
João Basso
CB, 1997
78
※
デュエル勝利 : 一対一でのイーブンボールの奪い合いでボールを獲得すること
キーパス : パスの受け手がシュートを打てた時にカウントされる指標
CBI : クリア、ブロック、インターセプト

《 2024年にむけて 》

   2024年の監督候補第1プランとして、ジュヴェントゥージを1部昇格に導いたチアゴ・カルピニ(Thiago Carpini)氏、第2プランとして、2021年9月~2022年5月までサントスで指揮を執り、2023年はV・ファーレン長崎/JPNを率いたファビオ・カリーリ(Fábio Carille)と交渉を進めているものの、両者とも違約金の負担が障害となり、監督人事は難航している。
   2023年終盤にチームを立て直したマルセロ・フェルナンデス監督代行の去就は不明。サントスに残りアシスタンスコーチを務める可能性も残されている。
   シーズン終盤に主力として試合に出場した選手の多くは複数年契約により2024年もサントスでのプレーが見込まれている。ただし、FWマルコス・レオナルド、ベネズエラ代表FWソテウドは移籍が濃厚。
   2022年のレギュラーながら2023年はケガで棒に振った左SBフェリピ・ジョナタン(Felipe Jonatan, 1998)は、全国選手権1部の複数チームからのオファーがあり、退団の可能性も。2023年末で契約が満了する選手の多くは、契約が更新されず退団する見込み。
   鹿島アントラーズ/JPNからVOLジエゴ・ピトゥーカ(Diego Pituca, 1992)の4年ぶりの復帰が実質的に確定。2023年半ばの加入で終盤に途中交代ながら頻繁に試合に出場したFWマキシ・シルベラ(Maxi Silvera, 1997)は契約更新交渉が進められている。
   以上から、2024年に向けた選手構成は、2023年との比較でベースに大きな変動はないように思われる。
   FWマルコス・レオナルドに代わるセンターフォワードは、2023年7月にFWフルチ(Furch, 1989)を獲得。FWフルチはすでに交代出場やスタメン起用で多くの試合に出場しており、実戦でもチームにフィットしていることから、FWマルコス・レオナルドの移籍による戦力ダウンは最小限にとどめられている。

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