クラブ別2023年振り返り:バイーア (Bahia)

投稿者: | 2023年12月18日

クラブ紹介 バイーア ブラジル サッカー Bahia

バイーア (Bahia)

正式名称:Esporte Clube Bahia

略称:BAH

創立:1931年

本拠:バイーア州 サウヴァドール

《 主要タイトル & クラブ概略 》

タイトル優勝回数優勝年
ブラジル全国選手権21988, 1959
 バイーアは、全国選手権を2度制覇する名門。しかし、現行のレギュレーションとなる2006年以降は、優勝争いはおろか2度の2部降格を経験し、2006年、2007年は3部に所属するなど、低迷期が続いている。
 コパ・ド・ブラジルの最高位はベスト16。
 リベルタドーレスは3度出場、最後に出場した1989年のベスト16が過去最高位。
 コパ・スウアメリカーナは8度出場し、2018年と2020年のベスト16に進んでいる。
 2022年12月22日、クラブはサッカー部門のスポーツ専門株式会社(SAF)への移行を決議。同時にシティフットボールグループによる発行株式の90%取得を承認。2023年5月4日、シティフットボールグループの株式取得が正式に完了した。

《 直近3年成績(2021年-2023年) 》

大会2023年成績2022年成績2021年成績
ブラジル全国選手権16位18位
ブラジル全国選手権2部4位
コパ・ド・ブラジルベスト16敗退ベスト16敗退ベスト16敗退
コパ・スウアメリカーナ予選R敗退
バイーア州選手権優勝グループR敗退準決勝敗退
コパ・ド・ノルデスチグループR敗退グループR敗退優勝
各大会の概要は、当ブログ記事「主要大会と年間日程」を参照ください。

《 全国選手権 順位推移(2006年-2023年) 》

現行レギュレーション(20チームによるホーム&アウェイ方式2回戦総当たり)で開催された2006年以降の全国選手権順位推移。
バイーア 全国選手権 ブラジルリーグ 年度別順位推移

《 2023年 》

<戦績>

大会試合勝利引分敗北得点失点得失差順位等
全国選手権38128185053-316位
コパ・ド・ブラジル84401459準々決勝敗退
コパ・ド・ノルデスチ8233915-6予選R敗退
バイーア州選手権1391320128優勝
   6727162493858

<全国選手権 年間順位推移>

バイーア 全国選手権 ブラジルリーグ 2023年間順位推移

<振り返り>

【シーズン前・補強】

   バイーアは、2023年に向けた監督として、ヘナト・パイヴァ(Renato Paiva, 1970)氏を招聘。2022年12月6日に監督就任の発表が行われた。ヘナト・パイヴァ監督は、約20年間、ベンフィカ/PORの育成カテゴリーやBチームの監督を務め、2021年に初めてポルトガル国外での指揮となるインデペンディエンテ・デル・バジェ/EQUの監督に就任すると、同年、チームをエクアドルリーグ優勝に導いた。
   補強については、クラブ史上最大の投資を実施。すべてのポジションで中堅クラスの即戦力と将来を見据えた若手選手の獲得を進め、シーズン開幕直後の1月16日までに12選手を獲得。
   即戦力としては、2022年にフルミネンセで正GKを務めたマルコス・フェリピ(Marcos Felipe, 1996)、ボタフォゴでレギュラーを務めた時期のあるCBカヌー(Kanu, 1997)、コリンチャンスでレギュラーを務めた時期のあるCBハウーウ・グスタヴォ(Raul Gustavo, 1999)。2020-2022年に鹿島アントラーズ/JPNでプレーしたFWエヴェラウド(Everaldo, 1991)などを獲得。
   左SBにエクアドル世代別代表ジョアネル(Jhoanner, 2002)、中盤にはウルグアイの世代別代表歴のあるVOLニコラス・アセベド(Nicolás Acevedo, 1999)の世代別代表歴を有する外国籍選手と契約。
   獲得選手の中には、マンチェスターシティからの期限付き移籍加入となるFWカイキ(Kayky, 2003)やMFジエゴ・ホーザ(Diego Rosa, 2002)の名前も見られる。
   シーズン開幕後も次々と選手を獲得していき、2月上旬にはバイーア州出身ながら家族と共に11歳でドイツに渡り、ドイツ下位リーグでプロデビュー。ブルガリアの強豪ルドゴレツ・ラズグラドで多くのタイトルを獲得し、ブラジル初挑戦となるMFカウリー(Cauly, 1995)など、国外で実績を残す選手獲得も積極的に行う

【バイーア州選手権】

   バイーア州選手権開幕節は2023年1月11日。バイーア選手権はECバイーアの一強状態で、ヘナト・パイヴァ監督は新チームの主力クラス中心に多くの若手選手を起用。
   しかし、予選ラウンド最終節、バイーア州選手権にのみ参加するイトゥバーナ戦に若手選手中心のメンバーで挑み0-4の敗戦。決勝ラウンド一回戦(準決勝)に再度イトゥバーナと対戦するが、1stレグは主力選手中心のメンバーながら0-1と連敗。2ndレグに巻き返し決勝に駒を進め、最終的に州選手権は優勝を果たすが、多くの不安材料を残す内容となる。

【コパ・ド・ノルデスチ】

   2023年1月22日に開幕節を迎えた北東部州のクラブで競われるコパ・ド・ノルデスチ。予選ラウンドは、全国選手権での1部チームと1試合、2部チームと4試合、4部チームと3試合の計8試合の対戦となったが、2勝3分3敗の成績で予選ラウンドで敗退する。

【コパ・ド・ブラジル】

   2023年3月1日の一回戦、3月8日の二回戦は、それぞれ、4-1、1-0の勝利。
   4月11日(A)、4月27日(H)の三回戦、全国選手権3部ヴォウタ・ヘドンダ戦も、2-1、4-0の連勝を飾り、ベスト16へ駒を進める。
   ベスト16の対戦相手はサントス。
   全国選手権でもどかしい内容の試合が続く両チームの対戦は、もどかしい内容で5月17日の1stレグを0-0で終える。
   5月31日の2ndレグは、後半24分にMFカウリーのゴールで先制。試合終了間際にCKから同点に追いつかれるも、PK戦の末、準々決勝へ駒を進める。しかし、この試合では、前半34分に右WBジャカレー(Jacaré, 1999)、後半15分に左WGビエウ(Biel, 2001)のそれまでチームを攻撃面で牽引してきた2選手が、いずれも左足ハムストリングの筋肉系のケガで途中交代を余儀なくされ、不振に苦しむ全国選手権に向け暗雲が立ち込める。
   準々決勝グレミオ戦は、7月4日(H)、7月12日(A)、いずれも1-1の引分け。PK戦は3-4に終わり、3年連続で準々決勝を突破することができず、コパ・ド・ブラジルを後にする。

【全国選手権】

   州選手権やコパ・ド・ノルデスチの内容、結果を踏まえ、3月末に2021年以来の復帰となるVOLタシアーノ(Thaciano, 1995)、2023年4月1日に約1200万レアル(約3億2000万円)の移籍金でアトレチコ・ミネイロからFWアデミール(Ademir, 1995)を獲得。
   2023年4月15日に開幕節を迎えた全国選手権は2連敗のスタート。第3、4節は、3-6-1の中盤を厚くした布陣でカウンターを狙う戦術が功を奏し、2連勝で星を五分に戻す。
   しかし、後が続かない。ボール支配を高める試合を模索するようになるが、それが裏目に出て失点を重ねる。さらに、第8節終了後のコパ・ド・ブラジルで、右WBジャカレーと左WGビエウがケガで戦列を離脱。開幕から固定できない左WBの問題は解決できないまま試合を消化。前半の19試合を4勝6分9敗で折り返す。
   前半戦の不振は若手選手の起用を制限することになる。僅かに試合に起用されていた3月上旬にシティフットボールグループ傘下ロンメルSK/BELから期限付き移籍で加入したFWアルトゥール・サーレス(Arthur Sales, 2002)は第8節以降出場機会が一気に減少し、7月末に期限付き移籍契約を解除。代わるように第10節以降先発に定着したFWカイキ(Kayky, 2003)は、公式戦7試合で2得点2アシストをマークするが、7月16日第15節アトレチコ・パラナエンセ戦で膝前十字靭帯に重傷を負い、期限付き移籍契約が解除されイングランドへの帰路に就く。
   後半戦初戦の第20節RBブラガンチーノ戦で4-0の完勝を収め後半戦の巻き返しが期待されたが、翌第21節ボタフォゴ戦は0-3の完敗。第22節、残留争いのライバル、ヴァスコ・ダ・ガマとの対戦を0-0の引分けに終えると、クラブはヘナト・パイヴァ監督を解任、第23節コリチバ戦からはホジェリオ・セニ(Rogério Ceni)監督が指揮を執る。
   クラブは、7月の移籍ウィンドウで、SB(WB)にベンフィカ/PORで準レギュラーのジウベルト(Gilberto, 1993)、ナシオナル/URUでレギュラーを務めたカミーロ・カンジド(Camilo Cándido, 1995)、2部で好調のエスポルチを牽引しウィングとしてもプレーできるルシアーノ・ジュバ(Luciano Juba, 1999)を獲得。前線にも複数の即戦力選手と契約を交わし選手層に厚みをもたらす。
   ホジェリオ・セニ監督は、最終ラインを高く敷き、コンパクトな3ラインで中盤を厚くし、自陣に入るボールに素早く寄せ、時間帯によっては相手陣高い位置でプレスを仕掛ける積極的で守備的な戦術を採用。
   10月7日第26節の残留争いのライバル、ゴイアス戦での6-4の勝利から始まる3連勝や、第35節コリンチャンス戦での5-1の大勝があるかと思えば、一方で16試合で6度の無得点試合を記録するなど、嵌まる試合と嵌まらない試合の白黒がはっきりするものの、勝ち星は着実に増え勝ち点を積み上げていく。
   降格圏の17位で迎えた第37節では、最下位が確定しているアメリカ・ミネイロに2-3のまさかの敗戦、最終節はたとえ試合に勝ったとしても他チームの結果次第では降格となる状況に陥る。
   最終節は僅かに優勝の可能性を残すアトレチコ・ミネイロとの対戦だったが、ホームで4-1の快勝。残留争いのライバルの敗戦を受け、最終節で辛うじて1部残留を決めた。
   選手権前半 :   4勝 6分 9敗、得点18失点25
   選手権後半 :   8勝 2分 9敗、得点32失点28
   選手権合計 :  12勝 8分18敗、得点50失点53
   選手権ホーム  :   8勝 5分 6敗、得点29失点21
   選手権アウェイ :   4勝 3分12敗、得点21失点32
   得点数50  :  リーグ8位
   失点数53  :  リーグ5位タイ(の多さ)

【所感】

   2023年シーズンに向けた補強として26名もの選手を獲得。シティフットボールグループ内の無償の期限付き移籍を含め、移籍金額非公表を除き、少なくとも1億3000万レアル(BRL1=JPY30換算で約40億円)を越えるクラブ史上最大の投資を実施。4月の移籍ウィンドウが締まった時点では19選手を獲得、うち23歳以下の選手が8名を占め、内部昇格も多く、育成型のチーム作りが行われるのかと思われた。
   ところが、カップ戦の早期敗退、全国選手権でも苦戦が続くと、7月の移籍ウィンドでも多くの即戦力の獲得。若手選手の出場機会は奪われ、残留争いを繰り広げる他チームとの比較でも、若手選手の出場機会は僅かなものとなった。
   選手起用の面において、クラブとして一貫性に欠き、シティフットボールグループ内での選手の融通も成果を表さず、豊かな財務基盤に支えられた選手獲得によって辛うじて1部残留。
   シーズン当初の期待が高かっただけに、その落差は大きく、第三者の素人目には「単なる小金持ちが選手をかき集めただけの全国選手権の数合わせ的なチーム」という印象だけが残ったシーズンとなった。

【U-20代表】

   バイーア下部組織出身で2022年にプロデビュー、22試合に出場した右SBアンドレ・ドミニーキ(André Dhominique, 2003)が、2023年U-20南米ユース選手権(7試合)、2023年U-20W杯(4試合)に出場。クラブでの2023年出場記録は7試合359分。度重なるケガもあり、7月16日全国選手権第15節アトレチコ・パラナエンセ戦での出場を最後にベンチ入りメンバーからも外れている。

<チーム内個人成績・記録>

* 参照元:サッカーサイト「Ogol」

記録選手






















最多試合出場マルコス・フェリピ
Marcos Felipe
GK, 1996
63378117
(2位)エヴェラウド
Everaldo
FW, 1991
60338118
(3位)ニコラス・アセベド
Nicolás Acevedo
VOL, 1999
5431896
最多出場時間マルコス・フェリピ
Marcos Felipe
GK, 1996
56673330720987630
(2位)ヘゼンジ
Rezende
VOL, 1995
43372713678703243
(3位)カヌー
Kanu
CB, 1997
42662913540636177
最多得点エヴェラウド
Everaldo
FW, 1991
209263
(2位)ビエウ
Biel
FW, 2001
115330
(3位)カウリー
Cauly
MF, 1995
104330
最多アシストカウリー
Cauly
MF, 1995
98001
(2位タイ)ビエウ
Biel
FW, 2001
71231
(2位タイ)タシアーノ
Thaciano
MF, 1995
77000
最多デュエル勝利ヘゼンジ
Rezende
VOL, 1995
188
(2位)アデミール
Ademir
FW, 1995
158
(3位)カヌー
Kanu
CB, 1997
147
最多キーパスカウリー
Cauly
MF, 1995
71
(2位)ビエウ
Biel
FW, 2001
38
(3位)タシアーノ
Thaciano
MF, 1995
32
最多CBIカヌー
Kanu
CB, 1997
143
(2位)ヘゼンジ
Rezende
VOL, 1995
127
(3位)ヴィトル・ウーゴ
Vitor Hugo
CB, 1991
103
※
デュエル勝利 : 一対一でのイーブンボールの奪い合いでボールを獲得すること
キーパス : パスの受け手がシュートを打てた時にカウントされる指標
CBI : クリア、ブロック、インターセプト

《 2024年に向けて 》

   監督については、ホジェリオ・セニ監督が2025年末までの複数年契約を結んでおり、2023年のミッションも達成しており、2024年も引き続き指揮を執る。
   ホジェリオ・セニ監督は、就任時に、シティフットボールグループの干渉を排除し、選手の獲得、放出に関するイニシアティブを握る確約を取り付けており、同監督主導による補強が進められる見込み。とは言え、2023年に加入した選手の多くは複数年契約を結んでおり、2023年終盤のメンバーが主軸をなすだろう。
   MVP級の活躍をしたMFカウリーは、パウメイラスが関心を示しており、退団の可能性を残す。
   一方で、クルゼイロでチーム内得点王の活躍をしたFWブルーノ・ホドリゲス(Bruno Rodrigues, 1997)の獲得に乗り出す。FWブルーノ・ホドリゲスはトンベンセからの期限付き移籍でプレーしていたこともあり、競合するチームはあるものの、金銭的に有利に立つ。
   また、2018-20年にバイーアで攻撃陣の中心的役割を果たし、2021年以降はインテル・マイアミでプレーするVOLグレゴーリ(Gregore, 1994)の獲得交渉を進めている。
   さらには、多くの競合がいるものの、コリチバでの活躍が目立ったMFマルセリーノ・モレノ(Marcelino Moreno, 1994)の獲得にも動いている。
   2023年終盤は、MFタシアーノをワントップに置いたカウンター主導の攻撃陣だったが、軸になるセンターフォワードやスピードのあるウィングを獲得したいところだ。

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