クイアバ (Cuiabá)
正式名称:Cuiabá Esporte Clube
略称:CUI
創立:2001年
本拠:マットグロッソ州 クイアバ
《 主要タイトル & クラブ概略 》
タイトル | 優勝回数 | 優勝年 |
---|---|---|
N/A | N/A | N/A |
クイアバECが本拠を置くマットグロッソ州は、全国規模の大会で好成績を収めるような伝統的なサッカークラブは存在せず、著名なサッカー選手は僅かにいるものの、育成世代から他州のクラブに入団し、州内のクラブからは輩出してこなかった。
クイアバECは、2001年12月にマットグロッソ州クイアバに設立された新興のクラブ。設立後間もなく州選手権1部に昇格、優勝を果たし、全国選手権3部に参入するなど順調にクラブは成長するかと思われた。しかし、財政上の問題から2007年にライセンスが停止される。
クイアバ市を拠点とし、クイアバEC設立当初からのスポンサーだった企業グループが、クイアバECに資金を注入し実質的に経営権を獲得すると、2009年に州選手権2部に復帰。翌年には州選手権1部に参入し、2011年に州選手権1部優勝。全国選手権も2011年に最下部の4部リーグに参入すると、一年で3部リーグに昇格。2部リーグに昇格するまで7年を要したものの、2部リーグは2年で通過。2021年に初めて1部リーグに参入した。
トップチームの成長と並行して、クイアバECは、地元のクイアバ市やマットグロッソ州の人材を発掘し、社会人やサッカー選手として成長を促し、社会やトップチームに人材を還元することを目的として、育成部門に積極的な投資を行ってきている。
育成カテゴリーは、U-17チームが2022年、2023年のU-17コパ・ド・ブラジルとU-17全国選手権に出場。U-20チームが2023年U-20全国選手権に出場。そして、U-23チームは2022年U-23全国選手権で優勝を果たす。
2023年4月には、地元クイアバ市出身のヒケウミがクラブ史上初めて世代別代表のU-20代表に招集。クラブでもトップチームでレギュラーとして活躍。クラブの努力が着実に成果として具現化している。
《 直近3年成績(2021年-2023年) 》
大会 | 2023年成績 | 2022年成績 | 2021年成績 |
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ブラジル全国選手権 | 12位 | 16位 | 15位 |
コパ・ド・ブラジル | 1回戦敗退 | 3回戦敗退 | 2回戦敗退 |
コパ・スウアメリカーナ | ― | 予選R敗退 | ― |
コパ・ヴェルジ | 準決勝敗退 | 準々決勝敗退 | ベスト16敗退 |
マットグロッソ州選手権 | 優勝 | 優勝 | 優勝 |
各大会の概要は、当ブログ記事「主要大会と年間日程」を参照ください。
《 全国選手権 順位推移(2006年-2023年) 》
現行レギュレーション(20チームによるホーム&アウェイ方式2回戦総当たり)で開催された2006年以降の全国選手権順位推移。
《 2023年 》
<戦績>
大会 | 試合 | 勝利 | 引分 | 敗北 | 得点 | 失点 | 得失差 | 順位等 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
全国選手権 | 38 | 14 | 9 | 15 | 40 | 39 | 1 | 12位 |
コパ・ド・ブラジル | 1 | 0 | 0 | 1 | 3 | 4 | -1 | 1回戦敗退 |
コパ・ヴェルジ | 5 | 3 | 1 | 1 | 7 | 3 | 4 | 準決勝敗退 |
マットグロッソ州選手権 | 13 | 12 | 1 | 0 | 34 | 4 | 30 | 優勝 |
計 | 57 | 29 | 11 | 17 | 84 | 50 | 34 |
<全国選手権 年間順位推移>
<振り返り>
【シーズン前・補強】
2022年シーズン終了後の2022年12月8日にイヴォ・ヴィエイラ(Ivo Vieira)監督の就任を発表。
GK、最終ラインに大きな変動はなく、MFはグレミオへ移籍したMFペペ(Pepê, 1998)と入れ替わるように、ウルグアイ国籍選手MFセペリーニ(Ceppelini, 1991)を獲得。FWには、2022年の絶対的なレギュラーFWアンドレ・ルイス(André Luís, 1997)が退団したものの、パラグアイ国籍のFWイシドロ・ピタ(Isidro Pitta, 1999)と2021‐22年にガンバ大阪でプレーしたFWウェリントン・シウヴァ(Wellington Silva, 1993)を獲得。
全体として、選手の出入りは少なく、前年終盤の主力選手を軸に、登録選手数を絞りながらも内部の競争を促す選手構成で2023年シーズンを迎える。
【マットグロッソ州選手権】
マットグロッソ州はクラブサッカーが盛んではなく、州選手権に出場する10チームは、クイアバECを除いて、全国選手権4部のチームが2チーム、他の7チームは州の代表枠で参加するコパ・ド・ブラジルや、州内の大会にのみ参加するチームで構成されている。
2023年1月21日に開幕した州選手権を、予選9試合、準決勝と決勝のH&A各2試合の計13試合を12勝1分の成績で終え、3連覇を達成する。
【コパ・ヴェルジ】
コパ・ヴェルジは、2014年に第1回大会が行われたブラジルの地域大会。2023年大会は、北部地域州の7州、中西部地域州の3州、ブラジリア連邦直轄区、および、エスピリトサント州の各州代表1~2チームと、該当州に本拠を置くCBFランキング上位4チーム、計24チームによるノックアウト方式で開催された。
クイアバECは、シードで二回戦からの出場。 2023年3月1日二回戦全国選手権4部セイランジアとの一発勝負を3-0の勝利。準々決勝の全国選手権2部ヴィラ・ノヴァ戦は、3月15日(A)2-0勝利、3月22日(H)1-1引分けで終え、準決勝に進出。 準決勝ゴイアス戦は、3月26日(H)は1-0の勝利を収めるが、3月29日(A)を0-2で落とし準決勝での敗退となった。
【コパ・ド・ブラジル】
2023年2月22日に迎えたコパ・ド・ブラジル一回戦の対戦相手は、全国選手権4部サン・ハイムンド。セットプレーでの2失点など前半を1-3で折り返すと、後半40分に一度は追いつくが、後半45+2分に再び突き放され、3-4の敗戦。コパ・ド・ブラジルを一回戦で敗退する。
【全国選手権】
チームが州選手権やコパ・ヴェルジを戦う中、フロントは補強を進め、不安の残る中盤にVOLフェリピ・アウグスト(Filipe Augusto, 1993)、VOLハニエリ(Raniele, 1996)などを獲得して全国選手権開幕に臨む。
2023年4月15日に全国選手権開幕節を迎えるが、1分2敗と開幕ダッシュに失敗。5月7日第4節アメリカ・ミネイロ戦で2-1の勝利を収めるが、5月10日第5節ホームでのアトレチコ・ミネイロ戦で0-4の敗戦を喫すると、クラブはイヴォ・ヴィエイラ監督を解任する。
ルイス・フェルナンド・ユーベウ(Luiz Fernando Iubel)監督代行は第6節フルミネンセ戦で敗戦を喫するが、第7節クルゼイロ戦では守備を立て直し、チームは全国選手権7試合目にして初の無失点試合を達成、1-0の勝利を収める。
第8節を前にクラブは、2022年終盤に指揮を執り、4月の開幕節直後にコリチバを解任されていたアントニオ・オリヴェイラ(António Oliveira)氏を監督に迎える。
アントニオ・オリヴェイラ監督は、ワントップにFWデイヴェルソン(Deyverson, 1991)を置き、自陣で4-5または5-4のツーラインを敷き、自陣で堅く中を閉じる守備網を構築。ボールを奪うとシンプルにFWデイヴェルソンに当てるか、もしくは、サイドにボールを送り速い攻撃を展開する。
シンプルで守備的な戦術にチームはフィット。ユーベウ監督代行が指揮を執った第7節を含め第18節までの12試合は失点わずかに「7」、FWデイヴェルソンの8得点1アシストの活躍もあり、7勝3分2敗の成績を残す。この時点で順位は8位まで浮上し上位進出の芽も膨らんできた。 12節までは複数得点が一度、合計得点数は「9」にとどまっていたが、第13節サントス戦は3-0、第16節サンパウロ戦、第17節インテルナシオナウ戦はいずれも2-1、第18節フラメンゴ戦では再び3-0の勝利。ボール支配率で相手に大きく上回られながらもカウンターの精度が上がり、複数得点での勝利数が増えていた。
ところが、第19節アトレチコ・パラナエンセ戦、第20節パウメイラス戦では、ボール奪取からの速い攻撃を得意とする相手に、ボールを持たされるような場面が多くなり、得意のカウンターもしっかりと対応され、いずれも0-2の敗戦。その後も引分けを挟み連敗が続き、第19~24節は1分5敗。5敗はいずれも無得点。ボールを持った際の崩しやボールロスト時の対応に課題が残り、上位進出の夢が一気に遠ざかった。
第25節以降も、堅守速攻の戦術は変わらず、ボールを奪われた際の対応が改善。一方で、ボールを持った際の攻撃面での課題は解消できず、第25節以降は6勝4分4敗。
最終成績は14勝9分15敗、全国選手権1部3年目のシーズンは、過去2年を上回る12位の成績で幕を下ろした。
全国選手権では、FWデイヴェルソンがワントップで攻撃の軸として12得点をマークする活躍。
VOLデニウソンとVOLハニエリは、守備的な役割はもちろんのこと、攻撃時にも積極的にボールに絡み、MFフェルナンド・ソブラウ(Fernando Sobral, 1994)はウィングのサポートや自らがゴールライン際まで上がるなど、中盤はこの3選手が印象に残った。
シーズン途中(7月)の移籍ウィンドウで攻撃面を立て直すため、サイドアタッカーFWクレイソン(Clayson, 1995, 2023年6月までV・ファーレン長崎所属)、高さのあるセンターフォワードFWデリキ・ラセルダ(Derik Lacerda, 1999)、司令塔タイプのMFルーカス・ミネイロ(Lucas Mineiro, 1996, 2020年セレッソ大阪所属)を獲得。
FWクレイソンは、スピードを生かしたプレーでチャンスを作り出すだけでなく自らも積極的にシュートに持ち込み、加入後間もなくスタメンに定着し7得点2アシストを記録。FWデリキ・ラセルダは、FWデイヴェルソンとの交代や併用で出場機会を得たが、目覚ましい結果を残せなかった。MFルーカス・ミネイロは、チーム全体が自陣深くで守る時間が長く、ボールを受ける位置も必然的に低くなり、本来の攻撃的なセンスをあまり試合で見せることができなかったように思われる。
本職がFWのヒケウミ(Rikelme, 2003)が左SBとしてレギュラーの座を掴む。まだまだ粗削りとはいえ、一対一の守備や空中戦で奮闘、スピードのあるオーバーラップで攻撃にアクセントをつけた。
CBエンペレウール(Empereur, 1994)の第9節ゴイアス戦でのFWデイヴェルソンへのアシストが印象深い。SBマテウス・アレシャンドレ, 1999)とCBマルロン(Marllon, 1992)は年間を通して右サイドしっかりと閉じる役割を完遂。
GKヴァウテル(Walter, 1987)は再三にわたる好セーブでチームのピンチを何度も救った。
選手権前半 : 8勝 4分 7敗、得点21失点21 選手権後半 : 6勝 5分 8敗、得点19失点18 選手権合計 : 14勝 9分15敗、得点40失点39
選手権ホーム : 6勝 6分 7敗、得点23失点22 選手権アウェイ : 8勝 3分 8敗、得点17失点17
得点数40 : リーグ16位タイ 失点数39 : リーグ14位(の多さ)
【世代別代表】
<U-20代表>
〇ヒケウミ(Rikelme, 2003) … 4月親善試合
<チーム内個人成績・記録>
* 参照元:サッカーサイト「Ogol」
記録 | 選手 | 公 式 戦 計 | 全 国 選 手 権 | ブ ラ ジ ル 杯 | 州 選 手 権 | コ パ ・ ヴ ェ ル ジ |
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最多試合出場 | マルロン Marllon CB, 1992 | 54 | 36 | 1 | 12 | 5 |
(2位タイ) | マテウス・アレシャンドレ Matheus Alexandre SB, 1999 | 51 | 35 | 1 | 10 | 5 |
(2位タイ) | ジョナタン・カフー Jonathan Cafú FW, 1991 | 51 | 32 | 1 | 13 | 5 |
最多出場時間 | マルロン Marllon CB, 1992 | 4815 | 3240 | 1035 | 450 | 90 |
(2位) | ヴァウテル Walter GK, 1987 | 4405 | 3150 | 90 | 715 | 450 |
(3位) | マテウス・アレシャンドレ Matheus Alexandre SB, 1999 | 4291 | 2980 | 72 | 810 | 429 |
最多得点 | デイヴェルソン Deyverson FW, 1991 | 17 | 12 | 0 | 3 | 2 |
(2位) | イシドロ・ピタ Isidro Pitta FW, 1999 | 12 | 5 | 0 | 6 | 1 |
(3位) | クレイソン Clayson FW, 1995 | 9 | 7 | 2 | 0 | 0 |
最多アシスト | セペリーニ Ceppelini MF, 1991 | 12 | 3 | 2 | 6 | 1 |
(2位タイ) | ジョナタン・カフー Jonathan Cafú FW, 1991 | 8 | 3 | 0 | 3 | 2 |
(2位タイ) | イシドロ・ピタ Isidro Pitta FW, 1999 | 7 | 1 | 0 | 6 | 0 |
最多デュエル勝利 | デイヴェルソン Deyverson FW, 1991 | – | 209 | – | – | |
(2位) | ハニエリ Raniele VOL, 1996 | – | 198 | – | – | |
(3位) | マテウス・アレシャンドレ Matheus Alexandre SB, 1999 | – | 144 | – | – | |
最多キーパス | デニウソン Denilson VOL, 2001 | – | 38 | – | – | |
(2位) | デイヴェルソン Deyverson FW, 1991 | – | 33 | – | – | |
(3位) | セペリーニ Ceppelini MF, 1991 | – | 27 | – | – | |
最多CBI | エンペレウール Empereur CB, 1994 | – | 151 | – | – | |
(2位) | マルロン Marllon CB, 1992 | – | 130 | – | – | |
(3位) | セペリーニ Ceppelini MF, 1991 | – | 120 | – | – |
※ デュエル勝利 : 一対一でのイーブンボールの奪い合いでボールを獲得すること キーパス : パスの受け手がシュートを打てた時にカウントされる指標 CBI : クリア、ブロック、インターセプト
《 2024年にむけて 》
監督はアントニオ・オリヴェイラ監督が続投。
2023年12月23日現在、即戦力として、2023年末で契約が満了するパウメイラス所属VOLジャイウソン(Jailson, 1995)、2022年にクイアバECでプレーした全北現代所属FWアンドレ・ルイス(André Luís, 1997)の獲得が間近。 全国選手権2部ロンドリーナで44試合出場したCBガブリエウ(Gabriel, 2003)、全国選手権2部ポンチプレッタで31試合4得点1アシストのFWエリエウ(Eliel, 2003)を獲得済。
一方で、主力級では、チーム内得点王でチームの攻撃を牽引したFWデイヴェルソンの獲得をグレミオが検討。 FWウェリントン・シウヴァ、FWデリキ・ラセルダとの契約は更新されず、VOLハニエリは選手保有権の60%を250万ユーロ(約4億円)相当額でコリンチャンスへ売却。(なお、FWウェリントン・シウヴァは全国選手権1部の4チームが獲得を検討中。) VOLデニウソン(Denilson, 2001)は、正式オファーに至っていないが、全国選手権1部上位の複数チームと、ブンデスリーガのボルシア・メンヒェングラートバッハが関心を示しており、提示された条件次第で退団の可能性がある。