クラブ別2023年振り返り:インテルナシオナウ (Internacional)

投稿者: | 2023年12月28日
クラブ紹介 インテルナシオナル インテルナシオナウ Internacional ブラジル サッカー 全国選手権 タイトル 順位推移 2022年 個人成績

インテルナシオナウ (Internacional)

正式名称:Sport Club Internacional

略称:INT

創立:1909年

本拠:リオグランジドスル州 ポルトアレグレ

《 主要タイトル & クラブ概略 》

タイトル優勝回数優勝年
ブラジル全国選手権31979, 1976, 1975
コパ・ド・ブラジル11992
コパ・リベルタドーレス22010, 2006
コパ・スウアメリカーナ12008
クラブワールドカップ(*)12006
(*)インターコンチネンタルカップおよびトヨタカップを含む
   インテルナシオナウは、リオグランデドスル州ポルトアレグレでグレミオと実力・人気を二分する名門クラブ。この両クラブの対戦は「グレナウ(Gre-Nal)」と呼ばれる伝統的なクラシコで、1909年7月18日に第1回が開催されて以来、2023年10月8日の対戦が第440回目を数えた。成績はインテルナシオナウの161勝138分141敗。
   州選手権の優勝回数45回は、グレミオの42回を上回っている(2023年大会終了時点)。
   チーム、サポータの愛称は『コロラード(Colorado, 緋色の意)』。
   インテルナシオナウ下部組織出身で同クラブからプロデビューを果たした著名な選手の一人は、VOLドゥンガ(Dunga, 1963)。選手として3度(うち1984年は優勝)、監督として1度のW杯出場。1995‐98年はジュビロ磐田でプレー。FWアレシャンドレ・パト(Alexandre, 1989)は17歳でクラブW杯決勝バルセロナ/ESP戦で先発出場を果たし優勝に貢献したものの、度重なるケガに悩まされ続けている早熟で未完の大器。
   2022W杯代表メンバーでは、GKアリソン・ベッケル(Alisson Becker, 1992)、MFフレッジ(Fred, 1993)が該当する。

《 直近3年成績(2021年-2023年) 》

大会2023年成績2022年成績2021年成績
ブラジル全国選手権9位2位12位
コパ・ド・ブラジルベスト16敗退1回戦敗退3回戦敗退
コパ・リベルタドーレス準決勝敗退ベスト16敗退
コパ・スウアメリカーナ準々決勝敗退
リオグランデドスル州選手権準決勝敗退準決勝敗退準優勝
各大会の概要は、当ブログ記事「主要大会と年間日程」を参照ください。

《 全国選手権 順位推移(2006年-2023年) 》

現行レギュレーション(20チームによるホーム&アウェイ方式2回戦総当たり)で開催された2006年以降の全国選手権順位推移。
インテルナシオナウ 全国選手権 ブラジルリーグ 年度別順位推移

《 2023年 》

<戦績>

大会試合勝利引分敗北得点失点得失差順位等
コパ・リベルタドーレス1264219136準決勝敗退
全国選手権38151013464519位
コパ・ド・ブラジル4202660ベスト16敗退
州選手権13661241014準決勝敗退
   67292018957421

<全国選手権 年間順位推移>

インテルナシオナウ 全国選手権 ブラジルリーグ 2023年間順位推移

<振り返り>

【シーズン前・補強】

   2023年シーズンに向けた監督には、2022年全国選手権開幕後に監督に就任し、守備を再構築してチームを立て直し、最終的に全国選手権2位でシーズンを終えたマノ・メネゼス(Mano Menezes)監督が続投。
   登録選手に関しては、2022年の主力、準主力クラスの選手の退団はほとんどなく、加入もシーズン前半のチームを支えることになるFWルイス・アドリアーノ(Luiz Adriano, 1987)が目立つほどで、選手構成に大きな変動はなく2023年を迎える。

【リオグランデドスル州選手権】

   2023年1月21日に開幕したリオグランデドスル州選手権。開幕節ジュヴェントゥージ戦を2-2の引分けに終えると、勝ち切れない試合も多く、予選ラウンド第9節終了時点で5勝4分。
   3月5日第10節アウェイでの「グレナウ」グレミオ戦では、ボールを支配される展開が続き、後半45+5分に決勝点を奪われ1-2の敗戦。予選ラウンドは6勝4分1敗、グレミオに次ぐ2位で決勝ラウンドに駒を進める。
   3月18日決勝ラウンド一回戦(準決勝)、全国選手権4部で予選ラウンドを3位で通過したカシアスとのアウェイでの1stレグ、前半5分に先制するものの前半16分に追いつかれ、相手を上回るチャンスを作り出すがこのまま1-1の引分け。
   3月26日ホームでの2ndレグは、立ち上がりから攻め続け、前半20分にMFマウリシオ(Maurício, 2001)のゴールで先制すると、その後はカウンターを狙った固い守備を敷くが前半45+3分に失点。試合はPK戦にもつれ込むが、すべて成功したカシアスに対しインテルナシオナウは5人目が失敗。州選手権は準決勝での敗退となった。

【コパ・ド・ブラジル】

   リベルタドーレス出場のため、コパ・ド・ブラジルは三回戦からの出場。
   2023年4月11日三回戦、全国選手権3部CSAとのホームでの1stレグは、前半7分にPKを阻止され、その3分後の前半10分に先制を許したものの、前半24分、後半5分にMFアラン・パトリッキ(Alan Patrick, 1991)が2ゴールを決め逆転。
   4月27日2ndレグは、後半36分に勝ち越しゴールを奪われ1-2の敗戦。2試合合計で3-3の同点となり、PK戦に持ち込まれるが、PK戦ではGKケイレル(Keiller, 1996)が2本のPKを止め辛うじてベスト16に駒を進めた。
   ベスト16の対戦相手はアメリカ・ミネイロ。
   2023年5月17日(A)1stレグ、前半はボールを支配するもののカウンターから多くのピンチを招く。ハーフタイムの修正でシュートに持ち込むシーンも増え、後半20分にゴールネットを揺らす。しかし、ゴールに至るプレーでファールがありゴールは認められない。さらに、このファールがイエローカードの対象となりファールを犯した選手は2枚目のイエローカードで退場。以降は守備を固めるが、後半45+3分、後半45+17分にPKを決められ0-2の敗戦。
   5月31日(H)2ndレグは、前半の内に3ゴールを決め2試合合計で逆転するが、後半32分にサイドライン際で2対1の数的有利を作られ簡単にクロスを上げられるとヘディングシュートを決められ2試合合計で同点に追い付かれる。三回戦に続きPK戦に持ち込まれると、インテルナシオナウは3人目のキッカーが二度蹴りとなりゴールが認められず、全員が決めたアメリカ・ミネイロを前に敗退することになった。

【コパ・リベルタドーレス】

   2023年4月4日リベルタドーレス開幕節アウェイでの試合は、後半7分に先制を許すも後半41分のMFアラン・パトリッキのゴールで1-1の引き分けに持ち込む。
   4月18日ホームでの第2節は、ボールを支配しシュートも多く放ち優位に試合を進めながらもゴールを奪えない。しかし、後半アディショナルタイムに途中交代出場のFWアレモン(Alemão, 1998)がゴールをこじ開け辛うじて勝ち点3を獲得する。
   第3節以降も全国選手権同様もどかしい試合が続くが、3勝3分の成績を残し、首位から3位までが勝点差2内で収まる混戦のグループを首位で通過し決勝ラウンドに進出する。
   決勝ラウンド一回戦(ベスト16)の対戦相手はリーベルプレート/ARG。
   2023年8月1日(A)1stレグは、7月の移籍期間での補強の結果、5か国6人の代表経験者がスタメンに顔を並べる豪華な布陣。前半は押し込まれる時間帯が続くが、前半45+1分に新加入エクアドル代表FWエネル・バレンシア(Enner Valencia, 1989)のゴールでリードを奪う。しかし、後半も自陣に押し込まれる展開は変わらず、後半20分、34分に連続失点を喫し1-2の敗戦。
   8月8日2ndレグは1stレグとは打って変わって、高い位置でのプレスや、ボール奪取後の速い攻撃、ボールを支配した際の人数をかけた攻撃など、選手間の連係は明らかに良くなっており、立ち上がりから試合を優位に進める。後半24分にCKからCBメルカド(Mercado, 1987)のヘディングシュートで2試合合計で同点に追いつくと、後半33分にはMFアラン・パトリッキがFKを直接決め、2試合合計で3-2と逆転に成功。その後もボール支配を続けるが、後半44分にCKから失点を喫し、またもやPK戦に持ち込まれる。
   PK戦は、お互いにミスなく成功を続けるが、リーベルプレートは9人目のキッカーが枠を外す。一方のインテルナシオナウは最後までシュートは枠を捉え9-8で準々決勝進出を決める。
   準々決勝の対戦相手はボリバル/PAR。
   8月22日1stレグ(A)は、前半16分のFWエネル・バレンシアのゴールを最後まで守り抜き1-0の勝利。
   8月29日2ndレグ(H)は、前半10分のFWエネル・バレンシアのゴールによる先制後も高い位置でのプレスで相手に攻撃の糸口を掴ませない展開で前半を終えると、後半15分にまたもやFWエネル・バレンシアのゴールで追加点。その後は守備的になりつつも試合をコントロールし2-0の勝利。危なげなく準決勝に駒を進める。
   準決勝の対戦相手はフルミネンセ。
   9月27日1stレグ(A)は、前半10分にリードを許すが、前半45分に相手から退場者が出ると、前半45+3分、SBウーゴ・マジョ(Hugo Mallo, 1991)のゴールで同点。後半は数的有利をいかし相手をゴール前に押し込むと、後半19分にMFアラン・パトリッキのゴールでリードを奪う。しかし、後半33分にCKから失点。2-2で試合を終える。
   10月4日2ndレグ(H)、前半10分にCKからファーサイドのCBメルカドのヘディングシュートで先制。その後ボールはフルミネンセに支配されるものの、効果的なカウンターで相手ゴールに迫りシュート数は相手を上回り前半を終える。後半も前半同様の展開となり、インテルナシオナウは3度、4度と決定的なシーンを迎えるがゴールは枠を捉えない。すると、後半35分に失点。さらに後半42分にゴールを奪われ試合は終了。リベルタドーレスは準決勝で幕を閉じた。

【全国選手権】

   全国選手権開幕節は4月15日アウェイでのフォルタレーザ戦。この試合は1-1の引分けに終えたものの、州選手権での想定外の準決勝敗退からチームはしっかりと立て直されており、第2、3節のホームゲームでは連勝を飾る。
   しかし、ここから一気に4連敗。0-2のスコアが3試合続き、4試合目は1-3。その後は一度立ち直るものの、第13節からまたもや無得点試合が3試合続き、第15節終了後の7月17日、マノ・メネゼス監督の解任が発表される。
   マノ・メネゼス監督は、全国選手権こそ6勝3分5敗の成績を残していたものの、州選手権の準決勝敗退、コパ・ド・ブラジルのベスト16敗退、リベルタドーレスは僅差での決勝ラウンド進出、得点力に欠ける試合ぶりは、クラブ、サポーターの期待に沿うことができず監督解任に至った。
   7月17日にはエドゥアルド・クーデ(Eduardo Coudet)監督の就任も発表。
   エドゥアルド・クーデ監督は、相手陣でボールを持つ選手に前を向かせないプレスを仕掛け、そこからのショートカウンターと、前後左右にワンタッチで揺さぶるボール回しを使い分けた攻撃をチームに落とし込む。また、優勝の望みがほとんどない全国選手権ではなく、リベルタドーレスに重点を置いた選手起用法を採用する。
   クラブは、監督交代と並行して7月の移籍ウィンドウで大型補強を敢行。チリ代表VOLアランギス(Aránguiz, 1989)、エクアドル代表FWエネル・バレンシア、ウルグアイ代表GKロチェ(Rochet, 1993)、育成からセルタ・デ・ビーゴ/ESP一筋のSBウーゴ・マジョ、コリンチャンスやパウメイラスで主力としてリベルタドーレスや全国選手権の優勝経歴を持つMFブルーノ・エンヒキ(Bruno Henrique, 1989)を獲得。   
   エドゥアルド・クーデ監督のもと、目論見通り、リベルタドーレスは順調に勝ち上がるものの、全国選手権は初采配となる第16節からリベルタドーレス敗退直前の第25節までを1勝4分5敗。順位は14位まで転落。勝ち点も降格圏まで3ポイント差にまで迫る。
   しかし、リベルタドーレス敗退後は、リベルタドーレスを中心に起用してきた選手を全国選手権で起用。控え選手や若手選手も幅広く試合に投入し、次第に監督の戦術もチームに浸透していき、第26節以降は8勝2分3敗。最後は4連勝で締めくくり、2024年への展望も明るく2023年シーズンの幕を下ろした。
   選手権前半 :   6勝 6分 7敗、得点17失点23
   選手権後半 :   9勝 4分 6敗、得点29失点22
   選手権合計 :  15勝10分13敗、得点46失点45
   選手権ホーム  :   9勝 5分 5敗、得点30失点21
   選手権アウェイ :   6勝 5分 8敗、得点16失点24
   得点数46  :  リーグ11位
   失点数45  :  リーグ10位(の多さ)

【主力選手・7月補強】

   シーズン終盤の主力を構成した選手は、先述の7月の大型補強の各選手と、CBヴィトン(Vitão, 2000)、アルゼンチン代表歴のあるベテランCBメルカド、SBヘネー(Renê, 1992)、VOLジョニー(Johnny, 2001)、MFマウリシオ(Maurício, 2001)、WGヴァンデルソン(Wanderson, 1994)、MFアラン・パトリッキ。
   控えの若手選手ではVOLマテウス・ジアス(Matheus Dias, 2002)、FWルーカ(Lucca, 2003)、VOLホムロ(Rômulo, 2000)が、エドゥアルド・クーデ監督の下で少なからず出場機会を得た。

【代表・世代別代表】

<フル代表>
〇GKロチェ(Rochet, 1993)ウルグアイ代表 … 2026W杯南米予選5試合出場、 国際親善試合2試合出場
〇VOLアランギス(Aránguiz, 1989)チリ代表 … 2026W杯南米予選4試合出場
〇VOLジョニー(Johnny, 2001)アメリカ代表 … 中南米カリブ海ネーションズリーグ3試合出場、 国際親善試合2試合出場
〇FWエネル・バレンシア(Enner Valencia, 1989) … 2026W杯南米予選4試合出場、 国際親善試合2試合出場2得点
<U-23代表>
〇CBヴィトン(Vitão, 2000) … 9月親善試合(離脱)
〇MFマウリシオ(Maurício, 2001) … 9月親善試合
〇SBタウアン・ラーラ(Thauan Lara, 2004) … 10月開幕 パンアメリカン競技大会
〇VOLマテウス・ジアス(Matheus Dias, 2002) … 10月開幕 パンアメリカン競技大会、 2024年1月開幕 パリ五輪南米予選
<U-17代表>
〇CBダラ・コルチ(Dalla Corte, 2006) … 3月開幕 南米U-17選手権
〇FWヒカルド・マチアス(Ricardo Mathias, 2006) … 3月開幕 南米U-17選手権

<チーム内個人成績・記録>

* 参照元:サッカーサイト「Ogol」

記録選手




















最多試合出場アラン・パトリッキ
Alan Patrick
MF, 1991
623431312
(2位)ヴァンデルソン
Wanderson
FW, 1994
613241312
(3位)カルロス・デ・ペニャ
Carlos de Peña
MF, 1992
542741211
最多出場時間アラン・パトリッキ
Alan Patrick
MF, 1991
4797246120311001033
(2位)ヴァンデルソン
Wanderson
FW, 1994
45382350330960898
(3位)ヘネー
Renê
SB 1992
43912283270938900
最多得点アラン・パトリッキ
Alan Patrick
MF, 1991
164345
(2位)エネル・バレンシア
Enner Valencia
FW, 1989
139004
(3位)ペドロ・エンヒキ
Pedro Henrique
FW, 1990
123180
最多アシストマウリシオ
Maurício
MF, 2001
116032
(2位タイ)ヴァンデルソン
Wanderson
FW, 1994
102053
(2位タイ)アラン・パトリッキ
Alan Patrick
MF, 1991
105005
最多デュエル勝利アラン・パトリッキ
Alan Patrick
MF, 1991
134
(2位)ヘネー
Renê
SB 1992
130
(3位)ファブリシオ・ブストス
Fabricio Bustos
SB 1996
122
最多キーパスアラン・パトリッキ
Alan Patrick
MF, 1991
57
(2位タイ)ヴァンデルソン
Wanderson
FW, 1994
28
(2位タイ)ヘネー
Renê
SB 1992
23
最多CBIヴィトン
Vitão
CB, 2000
117
(2位)ヘネー
Renê
SB 1992
98
(3位)メルカド
Mercado
CB, 1987
90
※
デュエル勝利 : 一対一でのイーブンボールの奪い合いでボールを獲得すること
キーパス : パスの受け手がシュートを打てた時にカウントされる指標
CBI : クリア、ブロック、インターセプト

《 2024年にむけて 》

監督については、12月19日にエドゥアルド・クーデ監督の続投が発表された。
<退団>
   VOLジョニーのレアルベティス/ESPへの移籍が12月27日に発表された。
   MFマウリシオにも国内外から注目が高まっており、コリンチャンスとバイーアがすでにオファーを提示したと報じられている。残留の可能性は五分五分といったところか。
<加入・契約更新>
   CBメルカドとの契約を一年延長。
   12月23日の報道によると、2023年3月にフル代表に招集された2023年U-20南米ユース選手権代表CBホベルチ・ヘナン(Robert Renan, 2003)について、所属元ゼニト/RUSとの交渉が進展し、一年間の期限付き移籍による公算が高まっている。
<展望>
   以上から、2024年は2023年終盤の主力がほぼ残留。2023年終盤は控え選手中心の試合でも、エドゥアルド・クーデ監督の落とし込もうとしているサッカーが根付き始めており、厳しい日程の中、各大会で安定した成績が望めるのではないかと思われる。

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