フラメンゴ (Flamengo)
正式名称:Clube de Regatas do Flamengo
略称:FLA
創立:1895年
本拠:リオデジャネイロ州 リオデジャネイロ
《 主要タイトル & クラブ概略 》
タイトル | 優勝回数 | 優勝年 |
---|---|---|
ブラジル全国選手権 | 8 | 2020, 2019, 2009, 1992, 1987, 1983, 1982, 1980 |
コパ・ド・ブラジル | 4 | 2022, 2013, 2006, 1990 |
コパ・リベルタドーレス | 3 | 2022, 2019, 1981 |
クラブワールドカップ(*) | 1 | 1981 |
フラメンゴは、ブラジル国内で一、二の人気を誇るビッグクラブ(ブラジルでは一般的にサッカーファンは地元クラブと全国的なビッグクラブを熱烈に応援しているので、フラメンゴサポーターは全国に存在する)。 サポーターやメディアからは『フラー(Fla)』、『メンガォン(Mengão, 偉大なフラメンゴの意)』、クラブカラーをちなんで『フーブロ・ネグロ(Rubro-Negro, 赤黒の意)』と呼ばれる。ファン、サポーターの通称は『フラメンギスタ(Flamenguista)』。
フラメンゴはリオデジャネイロの4大クラブの一つ。リオデジャネイロ州選手権は1967年以降、4大クラブが独占している。フラメンゴの優勝回数33回はリオデジャネイロ州選手権最多記録(2023年末現在)。 全国選手権では、サンパウロFC、昇格3年目のクイアバとともに、2部降格の憂き目に遭ったことのないクラブ。 ここ5年は、パウメイラスとタイトル数で競り合い、また、若手選手の育成面でもパウメイラスと双璧をなしている。
フラメンゴ下部組織出身で同クラブからプロデビューを果たした著名な選手と言えば、MFジーコ(Zico, 1953)が挙げられる。また、日本に馴染みのある選手といえば、もう一人、1994W杯優勝メンバーで鹿島アントラーズでのプレー経歴のあるレオナルド(Leonardo, 1969)。 2000年代半ばのインテルミラノ/ITAの黄金期を支えた一人、皇帝アドリアーノ(Adriano Imperador, 1982)もフラメンゴから旅立っている。
2022W杯や2026W杯南米予選の代表メンバーでは、FWヴィニシウス・ジュニオール(Vinícius Júnior, 2000)、MFルーカス・パケター(Lucas Paquetá, 1997)がフラメンゴ下部組織出身でフラメンゴからプロデビューを果たしている。
《 直近3年成績(2021年-2023年) 》
大会 | 2023年成績 | 2022年成績 | 2021年成績 |
---|---|---|---|
ブラジル全国選手権 | 4位 | 5位 | 準優勝 |
コパ・ド・ブラジル | 準優勝 | 優勝 | 準決勝敗退 |
コパ・リベルタドーレス | ベスト16敗退 | 優勝 | 準優勝 |
リオデジャネイロ州選手権 | 準優勝 | 準優勝 | 優勝 |
ヘコパ・スウアメリカーナ | 準優勝 | ― | ― |
スーペルコパ・ド・ブラジル | 準優勝 | 準優勝 | 優勝 |
クラブW杯2022 | 3位 | ― | ― |
各大会の概要は、当ブログ記事「主要大会と年間日程」を参照ください。
《 全国選手権 順位推移(2006年-2023年) 》
現行レギュレーション(20チームによるホーム&アウェイ方式2回戦総当たり)で開催された2006年以降の全国選手権順位推移。
《 2023年 》
<戦績>
大会 | 試合 | 勝利 | 引分 | 敗北 | 得点 | 失点 | 得失差 | 順位等 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
クラブW杯2022 | 2 | 1 | 0 | 1 | 6 | 5 | 1 | 3位 |
ヘコパ・スウアメリカーナ | 2 | 1 | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 | 準優勝 |
コパ・リベルタドーレス | 8 | 4 | 2 | 2 | 13 | 8 | 5 | ベスト16敗退 |
全国選手権 | 38 | 19 | 9 | 10 | 56 | 42 | 14 | 4位 |
コパ・ド・ブラジル | 10 | 6 | 2 | 2 | 18 | 7 | 11 | 準優勝 |
スーペルコパ・ド・ブラジル | 1 | 0 | 0 | 1 | 3 | 4 | -1 | 準優勝 |
リオデジャネイロ州選手権 | 15 | 10 | 2 | 3 | 28 | 13 | 15 | 準優勝 |
計 | 76 | 41 | 15 | 20 | 125 | 80 | 45 |
<全国選手権 年間順位推移>
<振り返り>
【シーズン前・補強】
フラメンゴは、2022年にリベルタドーレスとコパ・ド・ブラジルの二冠を達成、全国選手権も第10節終了後に就任し、両カップ戦と並行しながらも就任時の14位から5位まで順位を上げてシーズンを終えたドリヴァウ・ジュニオール(Dorival Júnior)監督との契約を更新せず満了。 コリンチャンスの指揮を執り、既に同クラブの監督退任を公表していたポルトガル国籍のヴィトル・ペレイラ(Vitor Pereira)氏を2023年の監督に招聘する。
移籍による選手の出入りは少なく、ウルヴァーハンプトン/ENGへインセンティブ込みの移籍金2000万ユーロ(当時約28億円)で移籍したVOLジョアン・ゴメス(João Gomes, 2001)に代わり、マルセイユ/FRAから2022W杯南米予選への出場歴のあるVOLジェルソン(Gerson, 1997)をインセンティブ込みの移籍金1600万ユーロ(当時約22億4000万円)で獲得。 2022年は下部組織出身(所属)の若手選手の積極的な起用もあり、2023年もほぼ全ポジションで若手選手の台頭が期待できる状況にあり、補強は最小限にとどまった。
【リオデジャネイロ州選手権 予選ラウンド】
2023年1月12日、リオデジャネイロ州選手権第5節の前倒し開催で2023年シーズンがスタートする。 この試合は、先発メンバーの平均年齢が20歳を僅かに越す若手選手による試合だったが、後にクリスタルパレス/ENGへ約2000万ユーロで移籍することになるFWマテウス・フランサ(Matheus França, 2004)のゴールで1-0の勝利を収める。
1月28日スーペルコパ、2月2週目のクラブW杯出場のためモロッコ遠征、2月下旬のヘコパ・スウアメリカーナ(H)&(A)を挟んだものの、州選手権は6勝2分の好成績でクラシコが続く予選ラウンド最後の3節を迎える。
クラシコ初戦ボタフォゴ戦は、ヘコパ・スウアメリカーナの谷間の試合となったが、控え選手中心のメンバーながら、前半1分のFWマテウス・ゴンサウヴェス(Matheus Gonçalves, 2005)のゴールを最後まで守り抜き1-0の勝利。 しかし、続くヴァスコ・ダ・ガマ戦はボールを支配するもののゴール前のアイディアに欠け0-1の敗戦。 予選ラウンド最終節のフルミネンセ戦は前半19分にFWエヴェルトン・セボリーニャ(Everton Cebolinha, 1996)のゴールで先制するものの、後半8分に同点に追い付かれると、そのまま勢いに押され、後半40分に逆転を許し1-2の敗戦。
最終的に州選手権予選ラウンドは7勝2分2敗、フルミネンセ、ヴァスコ・ダ・ガマに次ぐ3位での決勝ラウンド進出となる。
【スーペルコパ・ド・ブラジル】
2023年1月28日、中立地ブラジリアで開催されたスーペルコパ・ド・ブラジル。前年のコパ・ド・ブラジル王者として参戦するフラメンゴの対戦相手は前年の全国選手権王者パウメイラス。
試合は前半26分、MFデ・アラスカエッタ(De Arrascaeta, 1994)が高い位置でのボール奪取からペナルティエリアに侵入したところを倒されPKを獲得。これをFWガブリエウ・バルボーザ(Gabriel Barbosa, 1996)が決め先制。しかし、前半38分に追いつかれると、さらに前半45+4分に逆転ゴールを許す。
後半6分、MFエヴェルトン・ヒベイロ(Éverton Ribeiro, 1989)の縦のスルーパスにFWガブリエウ・バルボーザが反応し同点。後半13分にPKで再びリードを許すが、その3分後の後半16分、左SBアイルトン・ルーカス(Ayrton Lucas, 1997)のゴールライン手前からのマイナスのグラウンダーのクロスにFWペドロ(Pedro, 1997)がアウトサイドのヒールで合わすゴラッソ。再度試合を振り出しに戻す。しかし、後半29分、三たびリードを許すと、その後は同点に追いつくことができず、3-4の敗戦。
スーペルコパ・ド・ブラジルは準優勝に終える。
【クラブW杯】
2022年リベルタドーレス覇者として挑むモロッコ開催のクラブW杯は、シードを受け準決勝からの出場となる。
2023年2月7日準決勝の対戦相手はアル・ヒラル/KSA。立ち上がり前半3分にPKを献上し先制を許す。前半20分にFWペドロのゴールで同点に追いつくものの、前半45+6分、ペナルティエリア内でVOLジェルソンが相手のふくらはぎを踏みつけるファールをVARが検出し、VOLジェルソンは一発退場、さらにPKがアル・ヒラルに与えられる。これを決められ1-2とリードを許し数的不利にも陥り前半を終了。後半25分に追加点を奪われると、反撃は後半45+1分のFWペドロのゴールによる1点に止まり2-3の敗戦。
2023年2月11日三位決定戦の対戦相手はアル・アハリ/EGY。後半15分の時点で1-2とリードを許すが、後半32分のFWペドロのゴールで同点に追いつくと、後半39分のFWガブリエウ・バルボーザのPKで逆転、さらには後半45+1分のFWペドロのダメ押しゴールで4-2の勝利。
2022クラブW杯は、欧州代表レアルマドリードと対戦することなく、3位で大会を終えた。
【ヘコパ・スウアメリカーナ】
2023年2月21日(A)、2月28日(H)にて開催されるヘコパ・スウアメリカーナ。前年リベルタドーレス王者として出場するフラメンゴの対戦相手は、前年コパ・スウアメリカーナ王者のインデペンディエンテ・デル・バジェ/EQU。
アウェイでの1stレグは、標高2800mの地での一戦。不慣れな環境の中、体力の消耗を防ぐため守備的な戦いで試合に挑む。27本ものシュートを浴びた試合は、後半21分の失点を挽回することができず0-1の敗戦。
2ndレグは打って変わってフラメンゴがボールを支配し右サイドを中心に相手ゴールに迫る。しかし、相手GKの好セーブや2度に渡りゴールポストに嫌われるなど、最後のシュート精度が僅かにずれゴールが奪えない。試合終了間際の後半45+6分、ゴールエリア外左で右サイドからのボールを受けたFWエヴェルトン・セボリーニャがシュートを選択せず中央へのマイナスのボールを送ると、MFデ・アラスカエッタがフリーの態勢でボールをゴールに押し込む。
試合は延長戦に突入するがスコアは動かず、優勝の行方はPK戦に委ねられる。先行のフラメンゴは1人目のキッカーが止められる一方、インデペンディエンテ・デル・バジェは5人が全員成功。ヘコパ・スウアメリカーナもまた、優勝カップを掲げることができずに終えた。
【リオデジャネイロ州選手権 決勝ラウンド】
スーペルコパ・ド・ブラジル、クラブW杯、ヘコパ・スウアメリカーナと、2023年に入り3大会連続でタイトルを逃す結果に終えたフラメンゴだが、ヘコパ・スウアメリカーナ敗戦後に行われた州選手権予選ラウンドの残り2試合も連敗を喫し、嫌な雰囲気で予選ラウンドが終了する。
決勝ラウンド一回戦(準決勝)3月13日1stレグ、ホームにヴァスコ・ダ・ガマを迎える。前半11分に先制点を許したものの、前半の内に逆転。後半に1度は追いつかれたものの、後半28分、CBファブリシオ・ブルーノの勝ち越しゴールで3-2の逆転勝ちを収める。 3月19日2ndレグはアウェイでの試合だったが、前半16分の先制ゴールで2試合合計で2点差にリードを広げると、その後は1失点を許すものの、後半39分のFWペドロのPK、後半45+5分のSBアイルトン・ルーカスのゴールで突き放し、決勝に駒を進める。
決勝戦の相手はフルミネンセ。伝統のクラシコ「フル‐フラ」。 4月1日1stレグは、立ち上がりから両チームともに素早いチェックと、それをかわすための少ないタッチ数のパス回し、個人技で打開するプレーが繰り広げられる白熱した展開。後半6分、右サイドライン際を起点に、斜め前方、斜め後方へと4本のパスをテンポよく繋ぎ、中央を経てペナルティエリア左に送られたボールを左SBアイルトン・ルーカスが思い切りよく足を振り抜きゴールネットを揺らす。後半23分、ペナルティエリア内左をゴールライン際までボールを持ち上がったSBアイルトン・ルーカスのマイナスのクロスをFWペドロがゴールに押し込む追加点。2-0の勝利を収める。
4月9日2ndレグは立ち上がりからボールを支配され防戦一方の展開。前半30分に先制を許すと、4分後の前半34分にもゴールを奪われ、2試合合計で2-2の同点。後半に入っても試合の流れを変えることができず、後半11分に被弾すると、後半20分にダメ押しゴールを奪われる。その後も試合をコントロールされ、後半40分を過ぎて相手ゴールに迫るようになるが、試合終了間際にSBアイルトン・ルーカスがゴールネットを揺らし1点を返すのみ。1stレグ2-0、2ndレグ1-4、2試合合計3-4と逆転を許し、州選手権のタイトルも獲得できずに大会は閉幕を迎えた。
【コパ・ド・ブラジル】
リベルタドーレス出場のため、コパ・ド・ブラジルは三回戦の出場。
三回戦の対戦相手は全国選手権4部マリンガ。2023年4月13日三回戦1stレグは、ヴィトル・ペレイラ監督解任後の最初の試合、マリオ・ジョルジ監督代行のもとでの試合となるが、まさかの0-2の敗戦。 しかし、4月26日2ndレグは前半2分のVOLチアゴ・マイア(Thiago Maia, 1996)のゴールを皮切りに8ゴールの猛攻で8-2の快勝。
ベスト16はフルミネンセとのクラシコ。 5月16日1stレグは高い位置でプレスを仕掛け、掻い潜られた時にはファールで試合を止めることでフルミネンセの長所を消していく。後半7分に相手から退場者が出ると、相手陣でボールをまわす展開となるが、ゴール前に人数をかけるフルミネンセゴールを最後までこじ開けることができず0-0の引き分け。
6月1日2ndレグ、前半32分、CKの流れからVOLジェルソンがセンターサークル手前からゴール前左にボールを送ると、CBファブリシオ・ブルーノが中央に折り返し、MFデ・アラスカエッタがダイヴィングヘッドで先制ゴール。先制後も高い位置に最終ラインを敷き中盤をコンパクトにしてフルミネンセのパス回しを抑えると、カウンターで相手ゴールに迫る展開。後半45+1分にカウンターからFWガブリエウ・バルボーザがダメ押しゴールを決め、2-0の勝利。州選手権決勝の雪辱を果たし、準々決勝進出を決める。
準々決勝の対戦相手はアトレチコ・パラナエンセ。 7月5日ホームでの1stレグは、前半6分に先制を許すが、極端に守備的なアトレチコ・パラナエンセを相手に敵陣で試合を展開。堅固な守備に苦しみながらも後半10分にFWペドロのPKで同点に追いつくと、後半26分、右サイドからMFデ・アラスカエッタが蹴るFKをゴール前ファーサイドでFWブルーノ・エンヒキが頭で合わせる逆転。セットプレーからの2得点で2-1の先勝。
7月12日アウェイでの2ndレグは、守備的ながらも素早くボールを縦に運ぶアトレチコ・パラナエンセに試合の主導権を握られる。しかし、前半45分、左CKからの流れから右サイドに流れたボールをゴール左へ展開、そこから中央に折り返したボールが相手オウンゴールを誘い、この試合もセットプレーを起点にゴールを奪い先制。2試合合計で2点差に開くと、自陣ゴール前に守備を固めカウンターを狙う戦術に転換。27本ものシュートを浴びるが、後半45+3分、左サイドからのクロスにCBレオ・ペレイラが頭で落としたボールをFWガブリエウ・バルボーザがゴールに蹴り込みダメ押し。2ndレグを2-0、2試合合計4-1で準決勝に駒を進める。
準決勝の相手はグレミオ。 7月26日アウェイでの1stレグは、中盤で優位に立ちたい両チームによる激しい攻防が繰り広げられる。両チームとも相手のミスを誘いボールを奪っては手数をかけずゴールに迫る。前半34分、フラメンゴは右SBウェズレイがハーフライン上で相手のパスをインターセプト。そのまま縦に持ち上がり、左サイドのFWブルーノ・エンヒキにボールを送ると、FWブルーノ・エンヒキはダイレクトにボールをゴール前に折り返し、そこにFWガブリエウ・バルボーザが飛び出しワンタッチのゴール。後半14分にグレミオから退場者が出ると、後半24分のVOLチアゴ・マイアのゴールで2-0とリードを拡げ1stレグを終える。
8月16日の2ndレグ、フラメンゴは守備的になることなくゴールを奪いに行き、一進一退の攻防となる。後半に入り2点を追いかけるグレミオが攻撃の厚みを加えるがGKマテウス・クーニャ(Matheus Cunha, 2001)を中心にフラメンゴ守備陣がゴールを守り抜くと、後半26分、CKからのゴール前の混戦でグレミオにハンドの反則がありPKを獲得。MFデ・アラスカエッタが落ち着いてPKを決め万事休す。 2試合合計3-0の快勝でフラメンゴは2年連続の決勝戦に駒を進めた。
決勝の対戦相手は、前年フラメンゴでコパ・ド・ブラジルを制したドリヴァウ・ジュニオール監督率いるサンパウロ。 2023年9月17日ホームでの1stレグは静かな立ち上がり。両チームとの中盤の寄せが速く、ボールを奪っては手数をかけず相手ゴールに迫るが、守備陣も相手のカウンターにしっかりと対応。決定機の数では僅かにフラメンゴが上回るが、互いに最後は守備陣が守り抜く。前半45分、左サイドでのマークミス、ゴール前ではディフェンダーが駆け引きに敗れ、GKの躊躇したポジショニングの3つのミスが重なり失点。後半はボールを支配するが、ミドルシュートが増えるなど、ゴール前のアイディアに欠け無得点で1stレグを終了。
9月24日アウェイでの2ndレグは、立ち上がりこそ相手ゴールに迫ったものの、時間が経過するにつれ中盤のボールの奪い合いで劣勢となりゴールに迫られる。しかし、前半44分、ハーフライン上で相手のプレスをかわしたVOLジェルソンを起点に右サイドを縦にボールを繋ぎ、最後はVOLエリキ・プルガール(Erick Pulgar, 1994)がシュート。GKの手を掠めたボールにFWブルーノ・エンヒキが詰め、2試合合計で同点に迫るゴール。しかし、前半45+5分、CKの流れからペナルティエリア外からのミドルシュートを浴び再度リードを許す。後半に入り、人数をかけ相手ゴールに迫るが、サンパウロの堅固な守備陣を前にほとんどのシュートは枠を捉えず、試合はタイムアップ。
またしてもタイトルは手のひらから滑り落ち、コパ・ド・ブラジルもまた準優勝に終えた。
【リベルタドーレス】
優勝がミッションとなっている州選手権決勝戦の谷間の2023年4月5日に迎えたリベルタドーレス開幕節。リベルタドーレス初出場となるアウカス/EQUとの標高2800mの地で開催されたアウェイの一戦は、主力選手を温存した先発メンバーで臨む。前半39分、MFマテウス・フランサがドリブルでスルスルと抜け出しペナルティエリアに侵入、ディフェンダーをかわしつま先でGKのタイミングをずらすゴラッソで先制するものの、後半13分、後半40分に失点を喫し逆転負け。リベルタドーレス開幕節を落とす。
4月19日第2節は、ホルヘ・サンパオリ(Jorge Sampaoli)新監督の初采配試合。右SBにCBファブリシオ・ブルーノを置いた4バックの布陣を敷く。また、2019年にサントスFCでの教え子でしばらく試合から遠ざかっていたFWマリーニョ(Marinho, 1990)を右ウィングでスタメンに起用すると、FWマリーニョは前半15分、38分と相次いでFWペドロのゴールをアシスト。サンパオリ監督の采配が見事的中し2-0の勝利を収める。
第3節、第4節は共にアウェイの試合を引き分けに終えグループラウンド突破が懸念されたが、第5節ラシンクラブ/ARG戦を前半35分の右SBウェズレイ(Wesley, 2003)、後半38分のVOLヴィクトル・ウーゴ(Victor Hugo, 2004)の下部組織出身の若手選手によるゴールで2-1の勝利を収めると、第6節アウカス戦はアウェイでの雪辱を果たす4-0の勝利で終え、グループラウンドをグループ2位で通過する。
ベスト16の対戦相手は、グループHを首位通過のオリンピア/PAR。 8月3日(H)1stレグは、FWガブリエウ・バルボーザのアシスト、FWブルーノ・エンヒキ(Bruno Henrique, 1990)のゴールという、FWブルーノ・エンヒキが大ケガを負う前に良く見られたコンビによる久しぶりのゴールシーンで1-0の先勝。
8月10日(A)2ndレグは、立ち上がりから得点を奪いに行き、前半8分、左サイド深い位置でのMFデ・アラスカエッタのFKをFWブルーノ・エンヒキがつま先でボールのコースを変えるゴール。フラメンゴはゲームプラン通り先制する。しかし、前半11分に左サイド奥へボールを蹴り込まれ、そのままゴール前へのクロスを許すと、フリーの状態で頭を合わされ、2試合合計で2-1の1点差に詰め寄られる。するとその後はフラメンゴがオリンピアの攻撃を受ける形で試合が展開。後半23分、右CKからヘディングで失点すると、後半35分にも再び右CKからヘディングでゴールに叩き込まれ2試合合計で2-3の逆転。後半45+1分にゴール前の混戦から相手ゴールネットを揺らすが、VARの介入によりオフサイドが検出され判定はノーゴール。
2023年リベルタドーレスはベスト16で姿を消すことになった。
【全国選手権】
2023年4月16日全国選手権開幕節はホームでのコリチバ戦。4つの大会で一つもタイトルを獲得できず、クラブはヴィトル・ペレイラ監督を解任。直前のコパ・ド・ブラジル三回戦1stレグも0-2で敗れる嫌な流れで試合を迎えたが、マリオ・ジョルジ(Mário Jorge)監督代行のもと、3-0の勝利を収める。
4月23日第2節からホルヘ・サンパオリ新監督が指揮を執る。4バックと3バックを試合ごとや試合途中に変更、そして、様々な選手の組合せを試す。第4節まではいずれの試合もボールを支配し相手を上回る枠内シュートを記録するものの3連敗。
5月10日第5節ゴイアス戦は、GKマテウス・クーニャ(Matheus Cunha, 2001)を先発に抜擢。途中交代出場が多かったMFデ・アラスカエッタ、MFヴィクトル・ウーゴも先発に抜擢すると2-0の完勝。サンパオリ監督は全国選手権初勝利。GKマテウス・クーニャはこの試合を機にポジションを獲得する。
5月16日第6節バイーア戦。前半を3-1のリードで試合を折り返すと後半開始時に一気に5選手を交代。GKマテウス・クーニャやゴールに絡んだ3選手をベンチに下げ、布陣も4バックから3バックに変更。後半は相手に主導権を譲ったもののバイーアの反撃を1点にしのぎ3-2の勝利。初采配試合から試合途中の布陣変更や試合途中の交代策、活躍した選手の次節でのベンチスタートなど、素人には理解しがたい采配が続いたが、この試合の采配はフラメンゴサポータの間で多くの議論を巻き起こした。
布陣や選手起用は試行錯誤を続けるもののチーム成績は安定していき、全国選手権前半終了時点で9勝5分5敗、第4節で17位だった順位も最高位2位、19節終了時点で4位まで挽回する。
しかし、7月29日第17節アトレチコ・ミネイロ戦終了後に、控室でFWペドロがフィジカルコーチから顔面を殴打され警察へ通報する事件が発生。それまでもサンパオリ監督率いる首脳陣と選手たちとの間での軋轢が噂されていたが、この事件を機に表面化。さらには、サンパオリ監督はこの事件に関する公式なコメントを発せず、FWペドロとの対話も事件の16日後に初めて交わされるなど、選手の監督への不信、不満は日増しに高まりサンパオリ監督の求心力は衰えていく。
また、サンパオリ監督の強い要望で獲得したMFルイス・アラウージョ(Luiz Araújo, 1996)、VOLアラン(Allan, 1997)はベンチを温める試合が多く、GKロッシ(Rossi, 1995)に至っては監督解任前の2試合で起用されたのみ。VOLアランは、VOLチアゴ・マイアがケガで欠場した試合のスタメンをCBダヴィ・ルイス(David Luiz, 1987)に譲り、後半開始時に交代出場したものの、後半18分にベンチに下げられる屈辱的な起用法を味わう。
コパ・ド・ブラジル決勝戦2ndレグ前日のトレーニング前には、首脳陣を介せず選手だけによるミーティングが行われるほど、首脳陣と選手間の関係は悪化する。
9月24日コパ・ド・ブラジル決勝戦2ndレグを1-1に引き分けに終え優勝を逃すと、クラブはサンパオリ監督を解任。
フラメンゴは10月9日、クラブは前ブラジル代表チチ(Tite)氏の監督就任を発表。 チチ監督は、自身の4-4-2または4-3-3の布陣をベースにした戦術に、それまでの主戦、控えの序列を見直し、適性や選手間の相性をトレーニングだけでなく試合でも試すかのように多くの選手を起用。試合により浮き沈みはあったものの、就任後は7勝1分4敗の成績を残し、最後は混戦となった全国選手権を4位、来季のリベルタドーレス本戦出場権を獲得して2023年を締めくくった。
選手権前半 : 9勝 5分 5敗、得点31失点24 選手権後半 : 10勝 4分 5敗、得点25失点18 選手権合計 : 19勝 9分10敗、得点56失点42
選手権ホーム : 10勝 5分 4敗、得点26失点16 選手権アウェイ : 9勝 4分 6敗、得点30失点26
得点数56 : リーグ4位 失点数42 : リーグ13位(の多さ)
【主力選手】
GKのレギュラー争いは、監督の変遷に伴い前年レギュラーで東京五輪金メダリストのサントス(Santos, 1990)、U-23代表選出マテウス・クーニャ(Matheus Cunha, 2001)、ボカ・ジュニオルスから獲得したロッシ(Rossi, 1995)と交代。
サンパイオ監督の下でレギュラーを務めたGKマテウス・クーニャと右SBウェズレイ(Wesley, 2003)、FWガブリエウ・バルボーザが監督交代後に出場機会を減らす。
相次ぐ監督交代の中、ルイス・スアレスがブラジル国内随一と評したCBファブリシオ・ブルーノ、代表左SBアイルトン・ルーカス、代表VOLジェルソンが年間を通して活躍。 CBレオ・ペレイラ、CBダヴィ・ルイス。中盤の守備的なポジションにはVOLチアゴ・マイア、チリ代表VOLエリキ・プルガール、攻撃的なポジションにウルグアイ代表MFデ・アラスカエッタ、2022W杯代表MFエヴェルトン・ヒベイロ、元代表FWエヴェルトン・セボリーニャが、先発、途中出場で多くの時間に出場。FWは一時控えに回った2022W杯代表ペドロがポジションを取り戻し、膝前十字靭帯断裂のケガから復帰したFWブルーノ・エンヒキが年後半の重要な試合で多くのゴールを奪った。
チームがタイトルを逃し続けたことから、GKマテウス・クーニャ、右SBウェズレイ以外の若手選手、下部組織出身(所属)選手の起用は例年ほど多くなく、8月に2000万ユーロ(当時約32億円)の移籍金でクリスタルパレス/ENGへ移籍したMFマテウス・フランサ(Matheus França, 2004)が27試合1035分、VOLヴィクトル・ウーゴ(Victor Hugo, 2004)が47試合1989分出場したのが目立つ程度に終えた。
【代表・世代別代表】
<フル代表>
〇SBアイルトン・ルーカス(Ayrton Lucas, 1997) … 6月 国際親善試合2試合(うち1試合先発)出場 〇FWペドロ(Pedro, 1997) … 6月 国際親善試合2試合出場 〇VOLジェルソン(Gerson, 1997) … 2026W杯南米予選1試合出場
〇SBバレラ(Varela, 1993)ウルグアイ代表 … 6月 国際親善試合2試合出場 〇VOLアルトゥーロ・ビダル(Arturo Vidal, 1987)チリ代表 … 3、6月国際親善試合3試合出場、 (フラメンゴ退団後)2026W杯南米予選2試合1得点 〇VOLエリキ・プルガール(Erick Pulgar, 1994)チリ代表 … 6月国際親善試合2試合出場、 2026W杯南米予選5試合1アシスト 〇MFデ・アラスカエッタ(De Arrascaeta, 1994)ウルグアイ代表 … 2026W杯南米予選2試合出場
<U-23代表>
〇GKマテウス・クーニャ(Matheus Cunha, 2001) … 9月 国際親善試合 〇VOLイゴル・ジェズス(Igor Jesus, 2003) … 10月開幕 パンアメリカン競技大会、 11月 U-23代表合宿 〇VOLヴィクトル・ウーゴ(Victor Hugo, 2004) … 11月 U-23代表合宿
<U-20代表>
〇GKカウアン・サントス(Kauã Santos, 2003) … 1月開幕 U-20南米ユース選手権、 4月 国際親善試合、 5月開幕 U-20W杯 〇MFマテウス・フランサ(Matheus França, 2004) … 1月開幕 U-20南米ユース選手権(辞退) 〇VOLヴィクトル・ウーゴ(Victor Hugo, 2004) … 1月開幕 U-20南米ユース選手権(辞退)
<U-17代表>
〇GKカイオ・バローネ(Caio Barone, 2006) … 3月開幕 U-17南米ユース選手権(出場機会なし) 〇FWロハン(Lorran, 2006) … 3月開幕 U-17南米ユース選手権、 11月開幕 U-17W杯 〇CBジョアン・ソウザ(João Souza, 2007) … 11月開幕 U-17W杯
<チーム内個人成績・記録>
* 参照元:サッカーサイト「Ogol」
記録 | 選手 | 公 式 戦 計 | 全 国 選 手 権 | ブ ラ ジ ル 杯 | 州 選 手 権 | ス ー ペ ル コ パ | リ ベ ル タ ド ー レ ス | ヘ コ パ ・ ス ー ラ | ク ラ ブ W 杯 2 2 |
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最多試合出場タイ | ファブリシオ・ブルーノ Fabrício Bruno CB, 1996 | 64 | 34 | 10 | 9 | 0 | 7 | 2 | 2 |
最多試合出場タイ | アイルトン・ルーカス Ayrton Lucas SB, 1997 | 64 | 34 | 8 | 10 | 1 | 7 | 2 | 2 |
最多試合出場タイ | チアゴ・マイア Thiago Maia VOL, 1997 | 64 | 32 | 10 | 10 | 1 | 7 | 2 | 2 |
最多試合出場タイ | エヴェルトン・セボリーニャ Everton Cebolinha FW, 1996 | 64 | 33 | 6 | 13 | 1 | 7 | 2 | 2 |
最多出場時間 | ファブリシオ・ブルーノ Fabrício Bruno CB, 1996 | 5519 | 3060 | 900 | 678 | 0 | 536 | 210 | 135 |
(2位) | アイルトン・ルーカス Ayrton Lucas SB, 1997 | 4893 | 2577 | 720 | 702 | 89 | 423 | 202 | 180 |
(3位) | ジェルソン Gerson VOL, 1997 | 4874 | 2695 | 775 | 766 | 80 | 465 | 48 | 45 |
最多得点 | ペドロ Pedro FW, 1997 | 35 | 13 | 5 | 1 | 9 | 3 | 0 | 4 |
(2位) | ガブリエウ・バルボーザ Gabriel Barbosa FW, 1996 | 20 | 5 | 4 | 2 | 5 | 2 | 0 | 2 |
(3位) | デ・アラスカエッタ De Arrascaeta MF, 1994 | 11 | 7 | 0 | 2 | 1 | 0 | 1 | 0 |
最多アシスト | デ・アラスカエッタ De Arrascaeta MF, 1994 | 13 | 6 | 2 | 3 | 0 | 2 | 0 | 0 |
(2位) | ジェルソン Gerson VOL, 1997 | 11 | 8 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 |
(3位) | エヴェルトン・ヒベイロ Éverton Ribeiro MF, 1989 | 7 | 4 | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 |
最多デュエル勝利 | ウェズレイ・フランサ Wesley França SB, 2003 | – | 177 | – | – | – | – | – | – |
(2位) | ジェルソン Gerson VOL, 1997 | – | 175 | – | – | – | – | – | – |
(3位) | アイルトン・ルーカス Ayrton Lucas SB, 1997 | – | 161 | – | – | – | – | – | – |
最多キーパス | ジェルソン Gerson VOL, 1997 | – | 58 | – | – | – | – | – | – |
(2位) | デ・アラスカエッタ De Arrascaeta MF, 1994 | – | 47 | – | – | – | – | – | – |
(3位) | エヴェルトン・セボリーニャ Everton Cebolinha FW, 1996 | – | 38 | – | – | – | – | – | – |
最多CBI | ファブリシオ・ブルーノ Fabrício Bruno CB, 1996 | – | 164 | – | – | – | – | – | – |
(2位) | レオ・ペレイラ Léo Pereira CB, 1996 | – | 112 | – | – | – | – | – | – |
(3位) | ウェズレイ・フランサ Wesley França SB, 2003 | – | 98 | – | – | – | – | – | – |
※ デュエル勝利 : 一対一でのイーブンボールの奪い合いでボールを獲得すること キーパス : パスの受け手がシュートを打てた時にカウントされる指標 CBI : クリア、ブロック、インターセプト
《 2024年にむけて 》
<監督>
202312月9日にチチ監督の続投が発表された。
<退団>
左SBフィリピ・ルイス(Filipe Luís, 1985)が2023シーズン限りの引退を発表。 MFエヴェルトン・ヒベイロは2024年1月6日にバイーアとの2年契約が発表された。 GKサントスはフォルタレーザへの移籍が大筋で合意。 CBホドリゴ・カイオ(Rodrigo Caio, 1993)は契約完了に伴う退団。2024年所属先未定。
SBウェズレイやSBマテウジーニョ(Matheuzinho, 2000)、VOLチアゴ・マイアはシーズン中に身元照会があり、オファーが届く可能性がある。
<加入・契約更新>
リーベルプレート/ARGからウルグアイ代表MFデ・ラ・クルス(De la Cruz, 1997)を1600万USD(約24億円)で獲得。
チームの成績不振のため出場機会が失われRBブラガンチーノへ期限付き移籍をしていたFWマテウス・ゴンサウヴェス(Matheus Gonçalves, 2005)が復帰。
チチ監督が代表監督時代に何度も代表に招集したRBブラガンチーノ所属CBレオ・オルティス(Léo Ortiz, 1996)の獲得に向け交渉中。
<2024年展望>
チチ監督は、代表監督を務める前には、コリンチャンスで2度の全国選手権制覇やリベルタドーレス制覇、南米大陸チームの直近の優勝となるクラブW杯優勝の実績を持つ。2022W杯は期待を裏切ることになったが、その南米予選では14勝3分無敗でアルゼンチンを上回る成績を残していた。
過去に自らの代表に招集したVOLジェルソンやFWエヴェルトン・セボリーニャは監督の戦術を理解しておりチーム内の戦術浸透の一助となる。また、チチ監督自身もシーズン前のチーム構築に参画、外部からの選手獲得や内部昇格にも関与しており、チーム作りは順調にいくものと思われる。2024年も国内一・二を争う選手層は大きくは変わらず、優勝候補の最右翼の一つになるものと思われる。