投稿日:2024/02/24
ホージェル・ガブリエウ ・ファリアス・デ・ジェズス
Roger Gabriel Farias de Jesus
ポジション:フォワード/アタカンチ、MF/メイオ・カンピスタ
利き足:両足
2007年2月12日生まれ
<幼少期>
ブラジル連邦共和国北東部に位置するバイーア州の州都サウヴァドールに生まれる。
サッカー選手としてのキャリアは、2018年、10歳の時にスタート。 サウヴァドールの中でも殺人率や貧困率の高いジャルジン・クルゼイロ地区で開催された社会支援プロジェクトの一環のサッカー教室で、その才能がECバイーアのスカウト陣の目に留まり、ECバイーアU-12チームに入団する。
<クラブ経歴>
≪育成時代≫
– 2021 –
ECバイーア加入直後から将来性豊かな才能をプレーで表現、2021年6月には14歳でU-17チームに合流し、U-17全国選手権に出場する。
– 2022 –
2022年(年初14歳)は、U-15、U-16、U-17チームの3つのカテゴリーでプレー、3カテゴリー通算で公式戦29試合に出場し20得点を記録。 中でもU-17チームでは、U-17全国選手権8試合出場(うち先発6試合、チーム全9試合)2得点、U-17コパ・ド・ブラジル7試合出場(うち先発7試合、チーム全7試合)5得点、U-17バイーア州選手権3試合出場(うち先発3試合、チーム全8試合)3得点の成績を残し、2020年生まれが最年長のチームの中で主軸として活躍。チームのU-17コパ・ド・ブラジル準決勝進出の原動力となった。
– 2023 –
2023年(年初15歳)は、1月に開催されるU-20全国大会カップ戦に出場。チーム全5試合のうち4試合(先発3試合)に出場。得点こそ奪えなかったものの、U-20カテゴリーに入っても十分に通用する姿を見せる。
≪バイーア≫
– 2023 –
2023年2月16日、ブラジルでプロ契約締結が可能となる満16歳の誕生日の4日後に、ECバイーアと2026年2月を期限とするプロ契約を締結。
2023年2月26日にはバイーア州選手権第9節イタブーナ戦の後半開始時に交代出場。16歳14日でのプロデビューを果たす。
2023年7月には、シティフットボールグループ傘下のマンチェスターシティ/ENGとジローナ/ESPに短期留学のような形でそれぞれのU-19チームの練習に参加。それぞれのチームでプレシーズンマッチに出場する。
2023年はトップチームでの出場は1試合に終えたものの、上位カテゴリーのU-20チームを中心に試合に出場。 U-17チームで4試合1得点、U-20チームで25試合7得点の成績を残し、U-20チームのコパ・ド・ブラジル準決勝進出に貢献した。
– 2024 –
2024年(年初16歳)は前年に続き年初のU-20全国大会カップ戦に出場。 U-20カップ戦敗退後はトップチームに合流する。
1月17日バイーア州選手権開幕節、1月21日州選手権第2節に先発出場。しかし、この2試合については主力メンバーはプレシーズンのイングランド遠征のため不在。第3節以降、チームの主力メンバーが試合に出るようになると、ベンチを温める試合が続く。
2024年2月4日、(※)コパ・ド・ノルデスチ開幕節エスポルチ戦の後半42分、1-1の状況で交代出場を果たす。
(※)コパ・ド・ノルデスチ : 北東部地域大会。北東部地域は小さな州が多く各州選手権は実力差が大きくなる傾向にあるが、コパ・ド・ノルデスチは北東部地域州の上位クラブが参加するため、個々の州選手権よりも実力は拮抗しレベルも高い。なお、2024年は、バイーア州選手権はECバイーアのみが全国選手権1部に所属するのに対し、コパ・ド・ノルデスチはECバイーアを含めた全国選手権1部所属の3チーム、全国選手権2部所属も3チームが出場している。
すると、後半45+6分、ペナルティエリア手前左サイドでMFヤゴ・フェリピ(Yago Felipe, 1995)がボールを持つと、逆サイドを後方から駆け上がりペナルティエリアに侵入。MFヤゴ・フェリピからのパスを胸トラップで受け、落ちるボールを縦に置きディフェンダーのマークを外すとゴール前ファーサイドへ柔らかいクロス。これをFWハファエウ・ハトン(Rafael Ratão, 1995)が頭でゴールに押し込みチームは勝ち越し。ホージェル・ガブリエウはプロ初の得点関与、アシストを記録。
≪シーズン別クラブ出場記録≫
シーズン | 所属 | 大会 | 試合 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2023年(16歳) | バイーア | 州選手権 | 1 | 45 | 0 | 0 |
合計 | 1 | 45 | 0 | 0 | ||
2024年(17歳) | バイーア | コパ・ド・ノルデスチ | 1 | 3 | 0 | 0 |
州選手権 | 2 | 167 | 0 | 0 | ||
合計 | 3 | 170 | 0 | 1 |
イタリック斜体は、2024年2月23日現在の記録。 ※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。
<代表(世代別含む)経歴>
N/A
<プレースタイル、エピソード、雑感 etc.>
利き足は両足。 身長173㎝、体重67kg。(2024年2月21日サッカーサイト「oGol」参照)
「oGol」によると利き足は両足とあるが、右足がやや優位で、ドリブルやPKなどのセットプレーでは右足を使うことが多いように見える。ただし、パス、クロス、シュートはいずれの足でも精度が高く、状況に応じて両足を使い分けている。
ボールタッチは柔らかく、足裏を巧みに使い、ボディバランスのいい体をしなやかに動かし、高いボールキープ力を有する。しかし、ひ弱さはなくU-20カテゴリーではフィジカル勝負で劣勢になる場面はあまり見られない。
中盤またはセカンドトップ、ウィングとしてプレーする機会が多いため、クロスやスルーパスといった前線へのボール供給が多くなるが、自らドリブルで持ち込んでのシュートや、ディフェンダーの寄せの甘さをついたミドルシュートなど得点力も高い。
個人的に強く印象に残るのは、ボールを受ける際のプレー。先を読む力と戦術的な視野が備わっており、ワンタッチでディフェンダーのマークを外す位置にボールを置き[予見力]、次のタッチで相手の急所へ決定的なパス[戦術的視野]を送るシーンがしばしば見られる。
2024年2月4日のプロ初アシストのプレー(下記YouTubeの 6:54~ のプレー)が一例となる。
https://www.youtube.com/watch?v=zQy3Mk76nes
このプレーでは、胸トラップからディフェンダーのマークを外し、ゴール前ファーサイドでフリーのFWハファエウ・ハトンへ柔らかいクロス。ボールを受ける際には、頭でダイレクトにゴール前に折り返す選択肢や、ゴール正面へマイナスのボールを送る選択肢もあったが、とっさの判断で胸トラップからの一連のプレーを選択した、と試合後のインタビューで述懐。プレーの選択肢が多く、瞬時の判断力も優れたものを持っていることに感心させられた。
一方、課題としては試合中のポジショニング。 上記のアシストのシーンでは、直前のポジショニングがボランチの選手と重なっていた。また、この場面以外にもトップチームの試合では他選手のポジションを侵し、それを周りの選手が修正しバランスを取ってもらう場面がいくつかあると、ホジェリオ・セニ(Rogério Ceni)監督から注意を受けたそうだ。 このことはホージェル自身も課題として捉えており、トレーニングで修正を図ってくるものと期待したい。
2023年7月中旬から一か月間、上述の通り、シティフットボールグループ傘下のマンチェスターシティとジローナのU-19チームでトレーニングに参加。いずれのチームでもプレシーズンマッチに出場する機会を得た。 これは2023年初めにECバイーアがシティフットボールグループに加わったことから、傘下の非欧州クラブが短期留学のような形で欧州に育成カテゴリーの選手を派遣し、欧州のサッカーを体験させる取り組みのECバイーアでの初ケースとなった。
帰国後のインタビューでホージェルは次のように話している。
「いつも国外に行く機会や、国外でプレーする機会があればいいなと思っていたので、今回の練習参加で夢の一つを叶えることができました。
知らない土地に行き、知らない人々と交流し、異なる文化で生活することなども含め、経験はとても大事だと思います。今回訪れたクラブでは、施設やシステムなどあらゆることが印象に残りました。
マンチェスターシティでプレーすることは大きな夢ですが、そのためには一日一日のサッカーへの取り組み、その積み重ねが重要だと思います。まずはプロサッカー選手となりECバイーアのトップチームでプレーすること。そして、ECバイーアで名前を残すような実績が残すこと。そして、いつかは国外で輝かしい実績を積み重ねたいです」
ECバイーアは、2023年初めのシティフットボールグループ加入により財政面の不安が解消し、2024年トップチームは前年の主力選手の流出を阻止。さらには、2022W杯代表で、クルゼイロやフラメンゴで数々のタイトルを獲得した経験豊かなMFエヴェルトン・ヒベイロ(Éverton Ribeiro, 1989)を獲得、前年フォルタレーザで替えの効かない選手として飛躍したVOLカイオ・アレシャンドレ(Caio Alexandre, 1999)をパウメイラス、コリンチャンスとの競合の末獲得に成功。 全国選手権ではダークホース的な存在となりえる選手層を誇っている。
また、育成カテゴリーからも将来性豊かな才能を輩出するようになってきており、2023年にはSBアンドレ・ドミニーキ(André Dhominique, 2003)がU-20南米ユース選手権とU-20W杯に、VOLシジネイ(Sidney, 2006)がU-17W杯に出場を果たした。
ホージェルは、マンチェスターシティへの留学もあり、一躍ECバイーア育成カテゴリーを代表する逸材として世間からの注目を浴びるようになった。しかし、ホージェル自身は、ホージェル同様2024年初めにトップチームでの出場機会を得ている先述のVOLシジネイやMFジョタ(Jota, 2004)などを含め、育成カテゴリーには才能のある選手が多く在籍し、自分は運よくチャンスを恵まれただけだと謙虚な発言を残している。
2024年は、切磋琢磨しうる同年代の選手と共に、上位を目指せるトップチームの選手層の中でトレーニング参加や試合出場のチャンスを獲た。全国選手権が始まるとU-20カテゴリーでのプレーが中心になると思われるが、常に謙虚な姿勢で周りの選手から多くを学び、トップチームで学んだことを出場試合の中でプレーとして表現し、一日も早くトップチームに再合流、定着することを期待したい。