カウエー・ペサーニャ (Kauê Pessanha)

投稿者: | 2024年3月14日
2024/03/14 新規投稿

若手 逸材 ブラジルサッカー ボタフォゴ ボランチ 

カウエー・ホドリゲス・ペサーニャ

Kauê Rodrigues Pessanha

ポジション:ボランチ

利き足:右

2004年10月22日生まれ

<幼少期>

 ブラジル連邦共和国リオデジャネイロ州、州都リオデジャネイロから海岸沿いに東北東へ約250㎞隔てた人口約25000人の小さな町キサマンに生まれる。
 カウエーが今でも良く覚えている幼い頃のサッカーの思い出は、9歳の頃、夕方に仕事帰りの叔父と近所の小さな空き地で一緒にボールを蹴って遊んだこと。カウエーは叔父が迎えに来るのを毎日のように待ちわびていた。叔父とボールを蹴りあうことが楽しく、サッカー選手になる夢が芽生え始めると、その夢を叔父にも話し、叔父の薦めもあり地元のサッカースクールに入団した。
 突然、悲しい知らせが舞い込んだ。叔父がバイク事故でこの世を去った。叔父とボールを蹴りあった楽しい日々が忽然と消え去ってしまった。カウエーにとってこの事実を受け入れることは難しかった。しかし、少しずつ現実を受け入れ、そして、叔父が楽しさを教えてくれたサッカーでプロ選手になるという叔父に語った夢を、以前に増して強く意識するようになった。
 2017年、12歳の時、地元から約50㎞離れたマカエーという町で開催された少年サッカー大会でボタフォゴのスカウトの注目を受け、セレクションを受けることを勧められる。
 キサマンの実家からリオデジャネイロのセレクション開催地までの距離は約250㎞。リオデジャネイロ市の病院まで患者を送迎するキサマン市運営のバンに同乗させてもらい、夜が明ける前に家を出て、夜中にキサマンに帰り着く日々を繰り返し、数日間に渡り行われるセレクションに参加した。

<クラブ経歴>

≪育成時代

 2018年、13歳の時に、ボタフォゴ下部組織に入団。U-15チームからのスタート。
 2019年(年初14歳)、飛び級でU-17チームに昇格。同年11月に開幕したU-15南米ジュニアユース選手権にブラジルU-15代表として出場。
 2020年(年初15歳)はU-17チームでスタートしたものの、コロナ感染症拡大による自粛期間明けにはU-20チームに合流し、U-17チームの試合(6試合出場)と並行して、U-20チームの試合にも12試合出場。
 11月16日にボタフォゴとプロ契約を締結。4500万ユーロの契約違約金が付された。
 2021年(年初16歳)、再び飛び級でU-20チームに昇格。間もなくボランチとしてレギュラーの座を獲得し、チーム年間53試合のうち45試合(うち先発40試合)に出場。チームのコパ・ド・ブラジル準優勝、州カップ戦優勝に大きく貢献する。
 2022年(年初17歳)もU-20チームの不動のレギュラーとして、チーム年間39試合のうち34試合(すべて先発)に出場し、州カップ戦を連覇。
 U-20チームの公式戦がすべて終えるとポルトガル国籍のルイス・カストロ(Luís Castro)監督率いるトップチームのトレーニングに合流。監督とはトレーニング中の指導以外に言葉をかわす機会はなかったものの、これまでに経験したことのないトレーニング、サッカーに強く感銘を受けた。
 2023年(年初18歳)、1月15日州選手権開幕節にて遂にトップチームの試合にベンチ入り。しかし、試合への出場機会は訪れず、年間を通じてもベンチ入りはこの試合に限られ、この年もU-20チームで試合経験を積み重ねることになる。
 なお、4月11日にはトップチームでの出場経歴がないまま、2026年4月末まで契約延長された。

ボタフォゴ≫

– 2024 –

 2024年(年初19歳)、トップチームに昇格。
 2024年1月20日州選手権第2節バングー戦にてボランチとしてスターティングイレブンに抜擢され19歳で念願のプロデビュー。すると、GKに弾かれたものの、いきなりキックオフからの流れでミドルシュートを枠内に飛ばす。さらに2分後の前半3分、左SBマルサウ(Marçal, 1989)が相手ゴールライン際から折り返したボールをゴールエリア入口でコースを変え、ファーサイドのFWジュニオール・サントス(Júnior Santos, 1994)のゴールを呼び込むアシスト。さらには、自陣で相手選手の足元に入ったボールを奪い去ると、そのまま相手陣へと駆け上がり、ペナルティエリア入口から枠を捉えたシュート。最後は少し疲労が見えたものの申し分のないデビュー戦を飾った。
 1月24日第3節で7分間の出場を果たすと、1月27日第4節で再び先発出場。
 その後しばらくは出場機会に恵まれないものの、2月18日第9節クラシコとなるヴァスコ・ダ・ガマ戦で試合終了間際にピッチに送り出されると、一週間後の2月24日第10節アウダックス戦に先発起用され、チームの2得点いずれにも絡む2アシストを記録。
 この試合で監督の信頼を勝ち取ると、以降はリベルタドーレスでの2試合(2月28日、3月6日)に途中出場を果たし、州選手権第11節クラシコとなるフルミネンセ戦(3月3日)、州選手権5-8位決定戦一回戦1stレグ(3月10日)の2試合に連続してスタメンに起用される。(2024年3月14日現在)

≪シーズン別クラブ出場記録≫

シーズン所属大会試合出場
時間
得点アシ
スト
2024年(20歳)ボタフォゴリベルタドーレス23500
州選手権744603
 合計948103
イタリック斜体は、2024年3月14日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<代表(世代別含む)経歴>

– 2019 –

 この年は、2019年11月23日にボリビアで開幕がするU-15南米ジュニアユース選手権が2004年生まれ世代のブラジル代表としての最大の目標となり、パウロ・ヴィクトル・ゴメス(Paulo Victor Gomes)監督がU-15ブラジル代表を率いる
 2019年7月23日、26日に2試合開催されたパラグアイとのU-15国際親善試合、初戦にVOLアンドレイ・サントス(Andrey Santos, 2004, 2024年3月現在ストラスブール/FRA在籍(レンタル元:チェルシー/ENG))とのツーボランチの一角として先発出場(チーム勝敗:〇3-1)。
 2019年8月28日、30日に2試合開催されたチリとのU-15国際親善試合では、初戦にVOLホビーニョ(Robinho, 2004, 2024年3月現在で登録名がルイス・ギリェルミ(Luiz Guilherme)と変更されておりフルミネンセU-20在籍)とのツーボランチの一角として先発出場(〇5-0)。
 2019年9月23日(ボリビア戦)、25日(ペルー戦)、27日(ウルグアイ戦)に試合が開催された4か国による国際親善試合では、初戦ボリビア戦(〇2-1)、3戦目ウルグアイ戦(〇4-0)の2試合でホビーニョとコンビを組み先発出場を果たす。

 U-15南米ジュニアユース選手権本番は、ボランチとしてアンドレイ・サントス、ホビーニョとともに代表に選出。
 11月23日開幕節ベルギー戦(〇6-0)、25日グループラウンド(GR)第2節ベネズエラ戦(△1-1)こそ出場機会は訪れなかったものの、27日GR第3節ボリビア戦(〇3-0)でスタメンに起用され90分間のフル出場。
 29日GR第4節ペルー戦(〇3-0)では2試合連続の先発出場。決勝ラウンド進出が決定していた12月1日GR第5戦コロンビア戦(X0-3)は後半途中から出場する。
 12月5日決勝ラウンド一回戦(準決勝)パラグアイ戦(〇2-0)もまた後半途中出場。
 12月7日決勝アルゼンチン戦(△1-1 PK戦〇5-3)ではスタメンに復帰し90分間のフル出場。PK戦では3人目のキッカーとしてゴール右上隅へPKを成功させた。

– 2022 –

 2022年6月8日~12日に開催されるパラグアイ、エクアドル、ウルグアイとのU-20国際親善大会に向けた代表として招集。しかし、ケガのため、代表辞退。

– 2023 –

 2023年4月15日~27日にかけてスペインで開催されるU-20代表合宿および同期間内に予定される3試合の国際親善試合に向けたハモン・メネゼス(Ramon Menezes)監督率いるU-20代表メンバーに追加招集。この親善試合は5月に開幕するU-20W杯に向けた最後のテストの機会となっていた。
 親善試合は、4月19日ドミニカ共和国戦(〇1-0)途中交代出場。22日ウズベキスタン戦(〇4-1)先発出場。25日イラク戦(△1-1)途中交代出場。
 しかし、本番のU-20W杯は残念ながら代表選外となった。

<プレースタイル、エピソード、雑感 etc.>

 利き足は右。
 身長174㎝、体重不明。(参照元サッカーサイト「oGol」、2024年3月13日閲覧)
 ポジションはボランチ。
 インテンシティ(プレーの強さ、激しさ)が高く、前に出て相手ボールを奪い去ることを得意とし、ボール奪取後はそのまま縦への推進力を生かして攻撃へと転ずる。そして、育成カテゴリーでクラブ幹部や多くの監督、コーチから高い評価を得ていた視野の広い戦術眼で、攻撃を組み立て、前線やサイドへのパス、自らがドリブルでペナルティエリアに迫るなど、次々と好機を生み出していく。
 バイタルエリアなど相手守備ラインの間に現れ、前線の間をゴールライン際に抜け出すなど、攻撃的なセンスが非常に高く、ボランチながらU-20チームでは、2021年42試合6得点2アシスト、2022年34試合7得点1アシスト、2023年21試合3得点3アシストと、多くの得点、アシストを記録している。
 一方、2019年U-15南米ジュニアユース選手権では、カウエーと同様にボックストゥボックスでプレーするタイプのアンドレイ・サントスやホビーニョとコンビを組んで試合に出場すると、チームのバランスを考慮して自らは攻撃を自重することでチームに安定感をもたらした。そして、そのプレースタイルが評価され決勝アルゼンチン戦ではスタメンに抜擢された。

 ボタフォゴ2004生まれ世代は、FWマテウス・ナシメント(Matheus Nascimento)をはじめ、世代別代表に複数の選手を送り込み、2021年時点ではクラブからの期待が高かった世代。
 しかし、FWマテウス・ナシメントこそ2020年9月にトップチームデビューを飾ったものの、他の世代別代表経験者は2023年末までにトップチームデビューを飾ることができず、ある者は全国選手権1部フォルタレーザへ、ある者は全国選手権2部エスポルチへ、国内下位リーグへ、ポルトガル下位リーグへと各々移籍していき、ボタフォゴの下部組織はトップチームへの選手の供給といった面がうまく機能しているとは言い難い。
 カウエーもまた、2023年末までボタフォゴU-20チームや世代別代表で実績を積み、トップチームのトレーニングに参加していたものの、トップチームでのデビューはなく、2024年1月に念願のトップチーム昇格。
 そして、プロデビュー戦では、自身の持ち味である攻撃的センスを前面に出し、ファーストプレーで思い切り良く枠を捉えるミドルシュートを放ち、そして、その2分後にチームの先制点のアシストを記録。この日のプレーでサポーターの心を掴むと、一か月後には、一試合2アシストの活躍で監督の信頼を勝ち取った。

 2024年のボタフォゴのボランチ陣は、前年の主力が残留した上に、新たに補強も進めており、様々なタイプの選手がしのぎを削り合う選手層はかなり厚い。しかし、その中で、カウエーは与えられたチャンスで自分の特長をしっかりとアピールし、それが評価され出場機会が増えていく好循環に生み出すことに成功している。
 チームは、州選手権が終わると全国選手権が始まり、リベルタドーレス予備予選の後には本戦、そして、コパ・ド・ブラジルが並行して開催され、国際Aマッチデー期間を除くと、ほぼ毎週のように2試合をこなさなければならない厳しい日程が続く。この状況で、今後もカウエーの出場機会は少なからず訪れるであろうし、守備強度が高く攻撃的なセンスも高く、試合状況を俯瞰してプレースタイルは、(2024年3月14日現在ボタフォゴはファビオ・マチアス(Fábio Matias)監督代行が指揮を執っているが)、新任監督のもとでも重宝されるに違いない。
 今後の成長、活躍を期待したくなるボランチがまた一人現れた。

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