【ブラジル全国選手権2024】 クラブ別戦力診断&順位予想(下位6チーム)

投稿者: | 2024年4月13日
2024/04/13 新規投稿

2024年4月13日にブラジル全国選手権が開幕。多くの州で州選手権が終わり、コパ・ド・ブラジルは二回戦、コパ・リベルタドーレス、コパ・スウアメリカーナも予選ラウンドが第2節まで終了しました。今季のこれまでの状況、昨年の実績、選手の移籍、さらには、6月開幕コパ・アメリカにより最大9試合に各国代表選手を欠くことなど踏まえ、戦力診断・予想を行いたいと思います。
今回は、上位進出は厳しく、残留争いに巻き込まれる可能性が高いのではないか?と予想される6チームです。

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15.ヴィトーリア

<直近の成績>
2023年:全国選手権2部優勝
2024年:州選手権優勝
<評価>
   監督は、2023年全国選手権2部開幕を前に監督に就任し、チームを全国選手権2部優勝に導いたレオ・コンデ(Léo Condé)監督が続投。2023年全国選手権2部は開幕5試合を無失点の5連勝。一時期、攻撃面のテコ入れでバランスを崩した時期があったものの、最終的に得点数50は3位、失点数は31は同率3位とチームを攻守にまとめ上げた。
   1部昇格を受け、2024年の選手人件費予算を前年比2倍としたものの、派手さのない堅実な補強を実施。一方で、2023年の主力の待遇を改善し流出を最小限にとどめた。
   守備面では、昨年来、実質的にスリーバックを構成する左SBゼッカ(Zeca, 1994)、CBヴァギネル・レオナルド(Wagner Leonardo, 1999)、CBカムタンガ(Camutanga, 1993)が残留。
   中盤にはVOLドゥドゥ(Dudu, 1999)、VOLホドリゴ・アンドラージ(Rodrigo Andrade, 1997)、MFマテウジーニョ(Matheuzinho, 1997)が残留し、2部降格のゴイアスから獲得したVOLウィリアン・オリヴェイラ(Willian Oliveira, 1993)が加わり競争が激化。
   前線は期限付き移籍加入でFWアレハンドロ(Alerrandro, 2000)がベテランFWオズヴァウド(Oswaldo, 1987)と強力なツートップを形成している。
   移籍金なしで獲得したFWルイス・アドリアーノ(Luiz Adriano, 1987)やMFルアン(Luan, 1993)といった経験と実績の豊かな選手が、全国選手権での経験が浅いチームに、試合やトレーニングの中で経験を落とし込む。
   バイーア州選手権、コパ・ド・ノルデスチでは、予算規模がヴィトーリアの2倍近く、大型補強を実施したECバイーアを相手に2勝1分1敗の勝ち越し。州選手権決勝では1stレグを0-2から後半22分、45分、45+8分のゴールで逆転勝ち。2ndレグはバイーアの猛攻を軽くいなし、相手から退場者が出ると、次々とカウンターからチャンスを生み出す互角以上の内容。チームは2017年以来の州選手権優勝を飾った。
   懸念材料は、センターバックの控え選手の層の薄さと、監督や主力選手の経験の浅さ。一方で、バイーア戦と同様の内容の試合を続けることができれば、クラブが目標とする2025年コパ・スウアメリカーナ出場権を獲得することも十分にあり得るだろう。
   余談だが、今季加入の控えGKムリエウ・ベッケル(Muriel Becker, 1987)は、リヴァプール/ENG所属ブラジル代表GKアリソン・ベッケルの実兄。

16.クルゼイロ

<直近の成績>
2023年:全国選手権14位
2024年:州選手権準優勝
<評価>
   2024年初めから指揮を執っていたニコラス・ラルカモン(Nicolás Larcamón)監督が、ミナスジェライス州選手権決勝アトレチコ・ミネイロ戦(1stレグ:2-2、2ndレグ:1-3)の翌日4月8日に解任。戦績は14戦7勝4分3敗。州選手権は準優勝ながら、コパ・ド・ブラジルは一回戦敗退。
   翌4月9日にフェルナンド・セアブラ(Fernando Seabra)新監督の就任を発表。
   セアブラ監督は2022年からクルゼイロU-20チームの指揮を執り、2023年U-20コパ・ド・ブラジルに優勝。2024年1月開催のU-20全国大会カップ戦において準優勝。その後、サンパウロ州選手権A3リーグのRBブラガンチーノBチームを率い8勝2分5敗の成績を収めていた。クルゼイロU-20チームでは攻撃的なチームを構築。
   2023年には、U-20南米ユース選手権出場のSBカイキ(Kaiki, 2003)、FWエステーニオ(Stênio, 2003)の2選手。MFジャパ(Japa, 2004)、FWフェルナンド(Fernando, 2005)、FWホベルチ(Robert, 2005)などをトップチームに輩出している。
   ホナウド・フェノーメノ(Ronaldo Fenômeno)氏が経営権を取得した2022年以降、選手の入れ替わりが激しく、2023年に1000分以上試合に出場した18選手のうち、GKハファエウ・カブラウ(Rafael Cabral, 1990)、左SBマルロン(Marlon, 1997)、VOLウィリアン・フルタード(William Furtado, 1995)、CBネリス(Neris, 1992)、FWマテウス・ペレイラ(Matheus Pereira, 1996)など9選手が残留、9選手が退団した。
   2024年に入り現在までに800分以上出場した11選手のうち、残留選手7選手、新加入選手4選手。新加入のFWジネーノ(Dinenno, 1994)がチーム最多の5得点を記録。昨年から課題となっている得点力については、途中交代出場のFW陣が3選手で各2得点、サイドバック、中盤の複数選手のゴールもあり、全体として得点力は向上している。しかし、組み立ての場面ではMFマテウス・ペレイラに依存している面が大きく、彼以外に起点となる部分が欲しいところ。また、セットプレーからの得点は多くはない。
   全国選手権を目前に監督が交代し、どのようなサッカーが展開されるか不明。セアブラ監督はU-20チームでは攻撃的なスタイルでボールを支配することで失点を防いでいたが、トップチームでも同様のサッカーが期待されているのだろう。2023年シーズン末は残留争いに巻き込まれたにも関わらず若手選手の起用が増えていたが、2024年に入りその数は減少。U-20チームを率いたセアブラ監督の登用で若手選手の積極的な起用は増えるだろうか。
   監督の手腕が未知数であり、選手層も厚さにも疑問が残り、今季も苦しいシーズンを送るのではないかと思われる。

17.クイアバ

<直近の成績>
2023年:全国選手権12位。州選手権優勝
2024年:州選手権優勝
<評価>
   2024年は2月初めに前年から指揮を執ってきたアントニオ・オリヴェイラ(António Oliveira)監督がコリンチャンスに引き抜かれる形で辞任すると、その後監督人事は難航し、全国選手権開幕を前に監督は未定。
   2024年は、マットグロッソ州選手権、コパ・ヴェルジ(北・中部地域州カップ戦)など、公式戦は13勝6分無敗の成績を残しているが、大会のレベルは低く数字的に当てにならない。前年との対比では、州選手権は12勝1分無敗34得点4失点から9勝4分無敗27得点11失点と、すべての数値で悪化している。
   中盤で攻撃の指揮を執り12アシストを記録したMFセペリーニ(Ceppelini, 1991)、ボール奪取から攻撃陣へボールを供給していたVOLハニエリ(Raniele, 1996)、ガンバ大阪/JPNでのプレー歴もあるスピード豊かなFWウェリントン・シウヴァ(Wellington Silva, 1993)と、前年に中核となった選手が複数退団。さらには、2023年にクラブ史上初めて世代別代表に選出され、パリ五輪南米予選にも出場した左SBヒケウミ(Rikelme, 2003)に対して、コリンチャンス、ボローニャ/ITA、ブラガ/PORからの引き合いがあり、7月にはクラブを離れる可能性が高い。
   一方で、新加入はサンパウロ、グレミオなど直近6年連続で年間40試合以上出場したCBブルーノ・アウヴェス(Bruno Alves, 1991)がリベルタドーレス出場チームの誘いを断りクイアバに加入、最終ラインの統率やセットプレーでの得点源としての活躍が期待される。ボランチにはいずれもセグンドボランチのVOLマックス・アウヴェス(Max Alves, 2001)と2023プスカシュ賞受賞のVOLギリェルミ・マドゥルーガ(Guilherme Madruga, 2000)が加入。プリメイロボランチとして機能することが期待される。
   前線には、前年キャリアハイの17得点を記録したFWデイヴェルソンが現在まで6得点6アシストと健在。共にクラブ二年目となるFWイシドロ・ピタ(Isidro Pitta, 1999)、FWデリキ・ラセルダ(Derik Lacerda, 1999)との連係は深まっている。ポンチプレッタから獲得したFWエリエウ(Eliel, 2003)、2023年途中加入で23試合7得点2アシストを記録したV・ファーレン長崎でのプレー歴のあるFWクレイソン(Clayson, 1995)がサイドから精度の高いクロスボールを供給したい。
   2024年はこれまで、州選手権やコパ・ヴェルジで攻撃陣が機能したものの、全国選手権では攻撃陣に効率よくボールを運ぶことができるかが課題となる。最終ラインはCBブルーノ・アウヴェスの加入が大きいが、その手前のプリメイロボランチが不足しており、セグンドボランチの対応力に賭ける面があり不安材料となる。
   そして、最大の懸念材料は監督の不在。全国選手権ではこれまでのような試合運びも難しくなるだけに、しっかりと統率できる指揮官の就任が待ち望まれる。

18.アトレチコ・ゴイアニエンセ

<直近の成績>
2023年:全国選手権2部4位、州選手権優勝
2024年:州選手権優勝
<評価>
   2023年7月に就任し、一時は11位に低迷していたチームを立て直し、4位ながら昇格に導いたジャイール・ヴェントゥーラ(Jair Ventura)監督が引き続き2024年も指揮を執る。ジャイール・ヴェントゥーラ監督のもと、チームは2024年州選手権で三連覇を達成。
   2023年全国選手権2部得点王(14得点)のFWグスタヴォ・コウチーニョ(Gustavo Coutinho, 1999)が退団したものの、2023公式戦チーム内得点王(全国選手権2部:9得点、州選手権:10得点)のFWルイス・フェルナンド(Luiz Fernando, 1996)は残留、今季も州選手権では11得点3アシストを記録しており全国選手権での活躍も期待したい。
   新加入の大ベテランFWヴァギネル・ロヴィ(Vágner Love, 1984)とウルグアイ国籍FWエミリアーノ・ロドリゲス(Emiliano Rodríguez, 2003)が、州選手権でそれぞれ、600分の出場で6得点、12試合7得点2アシストを記録しており、FWグスタヴォ・コウチーニョの穴を埋めている。
   3月にはスピード系のコロンビア国籍FWジョニ・ゴンサーレス(Yony González, 1994)を獲得したが、FW陣の選手層は薄く攻撃面での不安が残る。
   中盤の攻撃的な位置には、サンパウロやバイーアで実績のあるチーム三年目のMFシャイロン(Shaylon, 1997)がこれまで18試合8得点11アシストの成績で攻撃陣を牽引。VOLバラーリャス(Baralhas, 1998)がMFシャイロンとバランスを取り、昨年来のレギュラーVOLハウジネイ(Rhaldney, 1998)と新加入のVOLホニ(Roni, 1999)が砦となり中盤の底を安定させている。
   3月に入りインテルナシオナウからMFカンパニャーロ(Campanharo, 1992)、アメリカ・ミネイロからCBも可能なVOLルーカス・カウ(Lucas Kal, 1996)の両選手が加入、2月のフルミネンセからMFダニエウジーニョ(Danielzino, 1996)の加入など、それぞれ前所属でレギュラーを張ったこともある実績のある選手を獲得している。
   最終ラインには、セットプレーからの得点力も魅力のCBアリックス・ヴィニシウス(Alix Vinicius, 1999)と新加入CBアドリアーノ・マルチンス(Adriano Martins, 1997)が主力を務める。しかし、控え選手は手薄な印象。
   サイドバックは、チーム二年目右SBブルーノ・トゥバラォン(Bruno Tubarão, 1995)と新加入左SBギリェルミ・ホマォン(Guilherme Romão, 1997)が主軸。いずれも今季途中加入の右SBマギーニョ(Maguinho, 1992)とコロンビア国籍左SBホダジェガ(Rodallega, 2000)が控えるが、選手層の薄さは否めない。
   GKはチーム三年目のGKホナウド(Ronaldo, 1996)が昨年に続きゴールマウスを守り。2番手にフルミネンセからの期限付き移籍加入のGKペドロ・ハンジェウ(Pedro Rangel, 2000)控える陣容。
   以上のように各ポジションともシーズン開幕後に試合をこなしながら補強を進めているが、ポジションごとに層の厚さにムラがある。
   ジャイール・ヴェントゥーラ監督は、これまでも全国選手権下位の戦力的に劣るチームで采配を執る機会が多く、つぎはぎ的なチーム作りは経験済み。とは言え、全国選手権序盤をチーム作りに割かなければならず開幕ダッシュは期待しづらい。幸いなことに今季のチームは、中盤に関しては昨年の主力が残留しベースが出来上がっており、また、実績のある選手も加入しており、一日も早くチーム体制を固め、全国選手権を戦っていきたい。

19.クリシウーマ

<直近の成績>
2023年:全国選手権2部3位、州選手権優勝
2024年:州選手権優勝
<評価>
   2021年10月に就任し2部昇格を果たしたクラウジオ・テンカチ(Cláudio Tencati)監督が、その2年後には1部昇格をもたらし、2024年も続投。州選手権連覇を達成し、その手腕はクラブやサポーターから信頼を勝ち得ている。
   2024年サンタカタリーナ州選手権(17試合)は得点17→26、失点8→14といずれも増加。
   2023年チーム得点王でイタリア代表26試合6得点の実績を持つFWエデル・シタジン(Éder Citadin, 1986)が4得点、2021年8月から約一年間横浜FCでプレーした経歴を持つFWフェリピ・ヴィゼウ(Felipe Vizeu, 1997)が5得点、新加入FWヘナト・カイゼル(Renato Kayzer, 1996)が4得点と、フォワード陣が満遍なくゴールを決めている。そこに中盤も絡み、セットプレーでの得点も多く、これまでチーム公式戦20試合で12選手が得点を記録している。
   また、全国選手権開幕前に、コンゴ民主共和国代表で52試合9得点、プレミアリーグで長くプレーしたFWヤニク・ボラシエ(Yannick Bolasie, 1989)が加入。攻撃面でのバリエーションの増加が期待される。
   守備面では、最終ラインは2023年とほぼ同じ顔ぶれが主軸となり連係面に不安はない。しかし、3部時代からプレーする選手も複数おり、1部での戦いに若干の不安が残る。ペルー代表75試合のSBトラウコ(Trauco, 1992)、ベネズエラ代表37試合2得点CBウィルケル・アンヘル(Wilker Ángel, 1993)などの新加入選手が徐々に試合に出場しており、その実績や経験をチームに落とせるかがポイントになりそうだ。
   一方で、ボランチは入れ替わりが激しく、新加入のVOLメリトン(Meritão, 1994)、前年途中加入のVOLグスタヴォ・バヘット(Gustavo Barreto)が現在は主力を務めるが、いずれもセグンドボランチのため、プリメイロボランチの獲得、または成長が待ち望まれる。
   2023年は最後まで混戦となった末の昇格、2024年州選手権優勝も州自体のレベルはさほど高くなく、得点力が上がったとはいえ全国選手権では未知数。守備面で強調できる点は少なく、クラウジオ・テンカチ監督の手腕でいかに勝ち点を拾っていくか、という戦い方になりそうだ。

20.ジュヴェントゥージ

<直近の成績>
2023年:全国選手権2部2位
2024年:州選手権準優勝
<評価>
   2023年途中就任からチームを昇格に導いたチアゴ・カルピーニ(Thiago Carpini)監督を慰留することができず、2014年以来二度目の就任となるホージェル・マシャード(Roger Machado)氏を監督に招聘。
   州選手権は、予選ラウンドを4勝3分4敗、12チーム中5位の成績と期待を裏切ったものの、決勝ラウンド準決勝ではインテルナシオナウを相手に2試合2引分けに持ち込み、PK戦の末、決勝戦に進出。決勝グレミオ戦は1stレグを0-0、2ndレグでは先制したものの逆転負けを喫し準優勝に終えた。
   2023年の主力は期限付き移籍でプレーした選手も多く、最終ラインは残留する選手が過半数を占めたが、GK、中盤、前線は選手の入れ替えが激しく、チュニジアやカザフスタンへの移籍や、全国選手権2部チームへ複数の選手が移籍するなど、クラブは監督だけでなく多くの選手を慰留できなかった。
   主な新加入選手は、2023年終盤にクルゼイロと両者合意の上契約を解除していたFWジウベルト(Gilberto, 1989)。シーズンが開幕した1月中旬の加入後13試合7得点と新天地で復活。サントスから期限付き移籍のFWルーカス・バルボーザ(Lucas Barbosa, 2001)もまた17試合5得点2アシストと期待に応える成績を残している。
   新加入選手は他に、右SBジョアン・ルーカス(João Lucas, 1998)、FWエジソン・カリオカ(Edson Carioca, 1997)の期限付き移籍で加入した両選手が州選手権決勝ラウンドでスタメンを務めた。
   ホージェル・マシャード監督は、試行錯誤を繰り返しながらも、守備の構築を優先し、攻撃面ではFWジウベルトを軸にしたチームを作り、州選手権決勝ラウンドではスタメンをほぼ固定しチームを準優勝に導いた。しかし、そのメンバーの中から、すでに複数の選手に複数のクラブから関心が寄せられており、シーズン途中で退団する可能性は高い。
   ジュヴェントゥージは2022年全国選手権において僅か3勝、最下位でシーズンを終えたが、その頃からクラブの財務状況の脆弱さや、期限付き移籍、単年度(もしくは半年)での契約による選手獲得といったクラブ体質はあまり変わっておらず、2024年も2022年と同様の結果に終える可能性が高いだろうと予想する。

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