2024/04/13 新規投稿
2024年4月13日にブラジル全国選手権が開幕。多くの州で州選手権が終わり、コパ・ド・ブラジルは二回戦、コパ・リベルタドーレス、コパ・スウアメリカーナも予選ラウンドが第2節まで終了しました。今季のこれまでの状況、昨年の実績、選手の移籍、さらには、6月開幕コパ・アメリカにより最大9試合に各国代表選手を欠くことなど踏まえ、戦力診断・予想を行いたいと思います。
今回は、一長一短があり何かの切っ掛けで上位進出も下位に低迷することも考えられる、中位8チームを予想します。
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7.サンパウロ
<直近の成績>
2023年:コパ・ド・ブラジル優勝。全国選手権11位
2024年:スーペルコパ・ド・ブラジル優勝
<評価>
2023年クラブ史上初のコパ・ド・ブラジル優勝を導いたドリヴァウ・ジュニオール(Dorival Júnior)監督は、ブラジル代表監督の就任により退任。クラブは、2023年に下馬評の高くなかったジュヴェントゥージを1部昇格に導いたチアゴ・カルピーニ(Thiago Carpini)監督を招聘。
主力選手ではCBルーカス・ベラウド(Lucas Beraldo, 2003)が2000万ユーロの移籍金(のうちサンパウロの持ち分相当)を残しパリサンジェルマン/FRAへ移籍。SBハフィーニャ(Rafinha, 1985)の2番手として出場機会の多かった右SBナタン・メンデス(Nathan Mendes, 2002)はRBブラガンチーノへ100万ユーロの移籍金を残し移籍。期限付き移籍でプレーしていた左SBカイオ・パウリスタ(Caio Paulista, 1998)は完全移籍の交渉を進めたものの強奪される形でパウメイラスへ。
センターFWカレリ(Calleri, 1993)のバックアップとしてFWアンドレ・シウヴァ(André Silva, 1997)、人数の足りないセンターバックにベネズエラ代表CBフェラレシ(Ferraresi, 1998)、万能型サイドアタッカーFWフェヘイラ(Ferreira, 1997)などが新たに加入した。
カルピーニ監督はドリヴァウ・ジュニオール監督のスタイルを引き継ぐ形でチーム作りを行い、スーペルコパ・ド・ブラジルではパウメイラスを相手に中盤で優位に立ち、我慢比べの様相となった試合を0-0の引き分けに終え、PK戦の末、タイトルを獲得。
しかし、その後はケガ人が相次ぎ、チーム作りは途上のまま試行錯誤が繰り返されることになる。
州選手権は一発勝負の準々決勝で全国選手権2部ノヴォリゾンチーノを相手に90分間で1-1、PK戦の末、敗退。その2週間後に行われたコパ・スウアメリカーナ開幕節タジェーレス戦では、右SBハフィーニャ、FWルーカス・モウラ(Lucas Moura, 1992)、FWウェリントン・ハット(Wellington Rato, 1992)の前年の主力3選手が前半の内に負傷交代するアクシデントがあり1-2の敗戦。翌週の第2節ではケガ明けのFWカレリ、コロンビア代表MFハメス・ロドリゲス(James Rodríguez, 1991)がスタメンに名前を連らね2-0の勝利を収めたものの、試合内容は決して褒められたものではなかった。
下馬評の低かったジュヴェントゥージを昇格に導いた手腕が評価されサンパウロに招聘されたチアゴ・カルピーニ監督だが、ケガ人が続出している影響でチーム作りが捗らず、今のところ期待に応えているとは言えない結果に終えている。
全国選手権で上位進出を果たすには、先ずはこれ以上ケガ人を出さないこと。そして、初のビッグクラブでの采配となるカルピーニ監督が、サポーターやメディアなどのプレッシャーが大きい中で、クラブのサポートを受け、自身の手腕を遺憾なく発揮することができるか。それが鍵となる。
8.グレミオ
<直近の成績>
2023年:全国選手権2位。州選手権優勝
2024年:州選手権優勝。
<評価>
2022年に1部昇格を決め、昇格1年目の2023年全国選手権でチームを2位に導いたヘナト・ポルタルーピ(Renato Portaluppi)監督が続投。
2023年チーム得点王で個人プレーだけでなくチームプレーでも若手選手の見本となりグレミオ攻撃陣で違いを作り出していたFWルイス・スアレス(Luis Suárez, 1987)が退団。FWフェヘイラ(Ferreira, 1997)、FWギリェルミ(Guilherme, 1995)の両サイドアタッカーもチームを去った。
一方で、元スペイン代表(26試合10得点)FWジエゴ・コスタ(Diego Costa, 1988)、サイドアタッカーには元アルゼンチン代表FWパボン(Pavón, 1996)とベネズエラ代表ソテウド(Soteldo, 1997)を獲得。3選手とも実力実績ともに十分ではあるが、退団した選手とはプレースタイルが異なり、昨年の攻撃面のストロングポイントがやや影を潜めつつある。
ボランチにはコリンチャンスでの実績があるVOLドゥ・ケイロス(Du Queiroz, 2000)がゼニト/RUSから期限付き移籍加入。サントスから柏レイソル/JPNでのプレー歴もあるVOLドッジ(Dodi, 1996)も加入。中盤の選手層は大幅に厚くなった。
2023年は若いゴールキーパーのポジション争いの末、GKガブリエウ・グランド(Gabriel Grando, 2000)が正GKの座を掴んだが、元アルゼンチン代表GKマルチェシン(Marchesín, 1988)が加わり、昨年は4試合出場に終えたGKカイーキ(Caíque, 1997)と出場機会を分け合っている。
ゴールキーパー以外のポジションも、新加入選手や若手選手、昨年控えに甘んじていた選手に多くの機会が与えられ、チームは19試合消化する中、900分以上出場した選手はわずか5名、450分以上出場は21選手、ピッチに立った選手は39選手を数え、リベルタドーレスも照準に選手層の強化が図られた。
州選手権は前年と勝敗数はほぼ変わらず、得点:27→33、失点:9→14。数字の上では、FWジエゴ・コスタが7試合6得点を記録しFWルイス・スアレス(7得点)の穴を埋め、チーム2年目の攻撃の核MFクリスタウド(Cristaldo, 1996)も6得点。チャンスを与えられたフォワードの各選手がコンスタントに得点を積み上げている。一方で守備面では、最終ラインの統率が乱れる場面や、前線のプレスバックが甘くなる場面があり、今後連係を深める必要がある。
新加入のFWソテウドはパス交換などの連係からよりも、むしろ個人技から違いを作り出す選手。同じく新加入のFWパボンは縦の動きでゴールライン際に抜け出すよりも横の動きでチャンスを創出する選手。昨年のグレミオはペナルティエリア近辺でワンタッチのパス交換を行い前後左右に揺さぶりながら守備網を崩すシーンが印象深かったが、今年はそのスタイルが薄れている。
リベルタドーレスでは、2試合を終えた時点で無得点。新加入選手がフィットするスタイルが熟成するには少し時間がかかるように思われた。
9.RBブラガンチーノ
<直近の成績>
2023年:全国選手権6位
2024年:‐
<評価>
監督はポルトガル国籍ペドロ・カイシーニャ(Pedro Caixinha)監督が続投。2023年の前半はケガ人も多くチーム作りに苦しんだが、全国選手権第6節パウメイラス戦をきっかけにチームが急成長を遂げ、終盤には優勝争いに絡んだ。最後は失速したものの、リベルタドーレス予備予選出場権を得てシーズンを終えた。
クラブは若手育成型を標榜しており即戦力を期待されての新加入は僅か。16歳の時にグレミオからプロデビューを果たし、その後サンタ・クララ/PORを経てフェネルバフチェ/TURでプレーしたMFリンコン(Lincoln, 1998)、サンパウロで右SBハフィーニャ(Rafinha, 1985)の控えとしてコパ・ド・ブラジル獲得にも貢献したSBナタン・メンデス(Nathan Mendes, 2002)の2選手を、前者は期限付き移籍、後者は完全移籍で獲得。他にはトップチームでの起用も期待できるU-20カテゴリーの2選手に止まる。
主な退団選手として、CBレオ・オルティス(Léo Ortiz, 1996)が700万ユーロ相当の移籍金を残しフラメンゴへ移籍。センターバックでは、パリ五輪南米予選に出場したCBルアン・パトリッキ(Luan Patrick, 2002)がレンタル元のアトレチコ・パラナエンセへ復帰。2023年はシーズン半ば過ぎまでセンターバックの相次ぐケガ人に悩まされたが、今年も長期離脱中のCBエドゥアルド・サントス(Eduardo Santos)の復帰や、レンタル帰りの2023年U-20代表CBドウグラス・メンデス(Douglas Mendes, 2004)の成長が待たれる状況となっている。
右サイドバックで2023年チームの最年長SBアデルラン(Aderlan, 1990)が退団。サイドハーフ、ウィングは競争が激しく、2023年に準レギュラーとして活躍したFWアレハンドロ(Alerrandro, 2000)、FWソヒーゾ(Sorriso, 2001)の2選手がそれぞれヴィトーリア、ファマリソン/PORへ期限付き移籍となっている。
監督、コーチ、選手いずれも大きな変動はなく上積みが見込める陣容。しかし、2024年に入り、サンパウロ州選手権は準決勝で全国選手権2部のサントスに敗れ敗退。二回戦からの出場となったリベルタドーレス予備予選はホーム&アウェイの2試合いずれも0-0の引き分けに終わり、PK戦の末、辛うじて三回戦に駒を進めたものの、本戦出場を賭けた三回戦はボタフォゴを相手に1stレグ:1-2、2ndレグ:1-1のスコアで敗退した。
ボール保持率を高め相手陣で試合を展開する攻撃的なサッカーを進めているが、2023年序盤と比べ相手のカウンターへの対処など守備面の改善は進んでいるものの、前年に引き続き、引いた相手を崩すアイディアに欠く試合が多く、勝ち切れない試合も多くなっている。また、ストライカーはFWエドゥアルド・サーシャ(Eduardo Sasha, 1992)には安定感があるものの、FWチアゴ・ボルバス(Thiago Borbas, 2002)は好不調の波が激しく、その後に続く選手の成長が待たれている。
10.ボタフォゴ
<直近の成績>
2023年:全国選手権5位。
2024年:-
<評価>
2023年終盤に監督に就任したチアゴ・ヌーネス(Tiago Nunes)が2024年シーズンも続投となったが、2月22日に成績不振のため解任。その後、ファビオ・マチアス(Fábio Matias)監督代行がチームを立て直し、4月6日、ポルトガルリーグ4位のブラガから引き抜く形でアルトゥール・ジョルジ(Artur Jorge)新監督の就任が発表された。
主力クラスの退団は、オーナーを同じくするリヨン/FRAへ移籍となったGKルーカス・ペリ(Lucas Perri, 1997)、CBアドリエウソン(Adryelson, 1998)の両選手とCBヴィクトル・クエスタ(Víctor Cuesta, 1988)。2024年開幕後にFWヴィトル・サー(Victor Sá, 1994)をクラスノダール/RUSへ150万ユーロで売却。FWマチアス・セゴビア(Matías Segovia, 2003)とFWカルロス・アウベルト(Carlos Alberto, 2002)の2023年に出場機会に恵まれ、印象深いプレーをしていた両選手は、オーナーを同じくするRWDモレンベーク/BELへ期限付き移籍となった(シーズン途中に復帰の可能性あり)。
主な補強は、アトレチコ・パラナエンセからの期限付き移籍で2023年をゴイアスでプレーしU-23代表に選出されたCBルーカス・アウテル(Lucas Halter, 2000)とリベルタ/PARでリベルタドーレスでの活躍が注目を集めたCBバルボサ(Barboza, 1995)の両センターバックを獲得。ゴールキーパーにはサントスから期限付き移籍でバジャドリー/ESPでプレーしていたGKジョアン・ヴィトル(John Victor, 1996)、バイーアで2018‐20年の3年間で167試合出場、インテル・マイアミ/USA移籍後も活躍したものの、2023年は出場機会が減っていたVOLグレゴリ(Gregore, 1994)が入団。レアルベティス/ESPでの17か月間の在籍で64試合4得点10アシストを記録していたFWルイス・エンヒキ(Luiz Henrique, 2001)をクラブ史上最高額の1600万ユーロの移籍金で獲得した。
州選手権はチアゴ・ヌーネス監督のもと、守備的な戦術を採用したものの勝点を伸ばすことができず、フラメンゴ、ヴァスコ・ダ・ガマとのクラシコは連敗。リベルタドーレス予備予選アウロラ/BOL戦1stレグを1-1の引き分けに終え、チアゴ・ヌーネス監督は2月22日に解任。その後、ファビオ・マチアス(Fábio Matias)監督代行が攻撃的な戦術を採用しチームを立て直す。アウロラ/BOL戦2ndレグを6-0、州選手権フルミネンセとのクラシコを4-2、リベルタドーレス本戦出場を賭けたRBブラガンチーノとの対戦では1stレグ:2-1、2ndレグ:1-1とし本戦出場を確定。最後の指揮となったリベルタドーレス開幕戦こそ1-3と黒星を喫したものの8勝2分1敗の成績を残しアルトゥール・ジョルジ監督にバトンを繋いだ。
州選手権は終盤に追い上げたものの決勝ラウンド進出は叶わず、順位決定戦で5位を確保。満足のいく結果ではないが、州選手権5位は終盤まで全国選手権の首位を走った2023年と同じ成績。2023年も州選手権序盤の不振を払拭し10試合以上無敗のまま全国選手権に突入している。2023年と異なる点は、2023年はルイス・カストロ監督が前年から選手獲得や時間をかけた戦術の落とし込みを実施した一方、2024年は好調を引き継ぐ形でブラジル初采配となる新監督が指揮を執ること。
アルトゥール・ジョルジ新監督の初采配試合となった2024年4月11日リベルタドーレス第2節LDUキト/EQU戦は、自陣ペナルティエリア内に人数が足りているにもかかわらずマークが甘く失点。中盤や前線も寄せが甘く試合を通してほとんど改善されなかった。攻撃面では後半はやや改善されたものの個人で打開を図る場面が多く、組織だった連係が見られなかった。海抜2650mという特殊な環境下だったとはいえ、この試合に関しては監督の采配の妙を見ることは出来なかった。
クラブ内部の体質やサポーターによるプレッシャーなど周辺を含めたサッカー文化の違いや、リベルタドーレスでの海抜3600m(ボリビア ラパス)や2850m(エクアドル キト)、2600m(コロンビア ボゴタ)での試合、過酷な日程といったブラジル特有の環境もあり、アルトゥール・ジョルジ監督のブラジルサッカーへの適応力が手腕の前に試される。また、守備陣を中心に前年とはベースとなる選手が異なっており、戦術の継続性は期待できず、2024年は前年のように上位争いに加わるのは難しいと予想する。
11.フォルタレーザ
<直近の成績>
2023年:コパ・スウアメリカーナ準優勝。全国選手権10位。州選手権優勝
2024年:州選手権準優勝
<評価>
2021年5月から指揮を執りクラブと強い信頼関係が築かれているアルゼンチン国籍ボイボダ(Vojvoda)監督が続投。2023年はクラブ史上初となる主要大会、大陸選手権コパ・スウアメリカーナ制覇まであと一歩まで迫り、今年はその雪辱を果たしたい。
主力クラスの退団選手は多くはないものの、バンクーバー/CANからの期限付き移籍加入でMVP級の活躍を見せたVOLカイオ・アレシャンドレ(Caio Alexandre, 1999)の退団が大きな痛手。VOLルーカス・サシャ(Lucas Sacha, 1990)、MFヤゴ・ピカチュー(Yago Pikachu, 1992)や下部組織出身MFカウアン(Kauan, 2005)が空いたポジションを埋めるが、後者2選手はカイオ・アレシャンドレとは少しプレースタイルが異なり、ボール奪取力など守備面でやや劣る。4月9日に2023年アメリカ・ミネイロでの活躍で獲得争いが繰り広げられたMFエマヌエル・マルチネス(Emmanuel Martínez, 1994)を獲得。しかし、やはり攻撃的な選手のため、今季はプリメイロVOLゼ・ウェリソン(Zé Welison, 1995)の相方を務めるボランチが課題となりそうだ。
他には、コリチバとのトレードの形でCBベネヴェヌット(Benevenuto, 1996)が退団しCBクスチェヴィッチ(Kuscevic, 1996)が加入。サントスとのトレードの形で左SBエスコバル(Escobar, 1997)が退団し右SBフェリピ・ジョナタン(Felipe Jonatan, 1998)が加入。後者のトレードは4月10日に合意されたため、チームに溶け込むまで少し時間がかかるかも知れないが、右SBフェリピ・ジョナタンは2023年こそケガに苦しんだものの、2022年までの4シーズンはサントスで188試合に出場しており実績に申し分はない。
攻撃陣では、2023年序盤のチームの好調の原動力となったFWモイゼス(Moisés, 1996)をクルス・アスル/MEXから買い戻し、2023年はケガに苦しんだFWペドロ・ホッシャ(Pedro Rocha, 1994)の稼働が増えている。2023年チーム内得点王(24得点7アシスト)のFWルセロもこれまで19試合8得点2アシストと期待通りの活躍。前年途中加入のFWマリーニョ(Marinho, 1990)、FWマチューカ(Machuca, 2000)がポジション争いで若干リードしており、FW陣は実力者が高いレベルの競争を演じている。
2024年最大の注目選手はFWケルビン・アンドラーデ(Kervin Andrade, 2005)。3月24日グアテマラ戦でベネズエラ代表デビュー。代表帰国後に出番はないが、想像力溢れるプレーと絶妙なポジショニングはすでにフォルタレーザサポーターの心を鷲掴みにしている。
前年終盤での活躍が印象深いMFカレビ(Calebe, 2000)は背番号「10」を与えられたものの、これまでの出場時間はさほど多くないが、FWケルビン・アンドラーデとともに個人的に多くのプレーを見たい選手。
全国選手権開幕前の成績は、21戦9勝8分4敗38得点17失点。州選手権は決勝で全国選手権2部セアラーに1stレグ:0-0、2ndレグ:1-1、PK戦の末、苦杯を舐めた。コパ・ド・ノルデスチは予選ラウンドを2勝4分4敗。決勝ラウンド進出を果たしたが、今後の過密日程に拍車がかかる。
2024年の最大の目標は、クラブ史上初の主要大会タイトルの獲得となるコパ・スウアメリカーナ制覇。続いてコパ・ド・ブラジルとなるだろう。全国選手権は優先度が低く、残留争いに巻き込まれることはないだろうが、上位争いに食い込むこともないと思われる。
12.バイーア
<直近の成績>
2023年:全国選手権16位。州選手権優勝
2024年:州選手権準優勝。
<評価>
2023年9月9日の監督就任以降、16試合7勝1分8敗の成績で勝点22を積み上げ、チームを残留に導いたホジェリオ・セニ(Rogério Ceni)が続投。
潤沢な資金を背景に大型補強を実施。2022W杯代表、数多くのタイトルを保有するMFエヴェルトン・ヒベイロ(Éverton Ribeiro, 1989)、フランスで2年半プレーしたMFジアン・ルーカス(Jean Lucas, 1998)、フォルタレーザのコパ・スウアメリカーナ準優勝に多大な貢献を果たしたVOLカイオ・アレシャンドレ(Caio Alexandre, 1999)、2023年ボタフォゴの好調を最終ラインで支えたCBヴィトル・クエスタ(Víctor Cuesta, 1988)、コロンビア代表(56試合)SBサンチアゴ・アリアス(Santiago Arias, 1992)、ポルトガル、イングランド、フランスでのプレー歴のあるコロンビア国籍FWエストゥピニャン(Estupiñán, 1996)など、実績のある選手を獲得。
ブラジル生まれながら幼い頃にドイツに移り住みドイツでプロデビューし、2023年の母国ブラジルで初めてプレーで注目を集め、シーズン後には複数のクラブが獲得に動いたMFカウリー(Cauly, 1995)の流出を阻止。
シティフットボールグループ傘下に加わった2023年は、シーズン序盤は育成型のクラブを目指すのかと思われたものの、全国選手権開幕に合わせるかのように中堅選手を獲得、成績不振で迎えたシーズン半ばの移籍期間では積極的な補強を進める一貫性のないチーム編成だった。しかし、2024年は全国選手権でリベルタドーレス出場圏の6位以内、あわよくばタイトル争いに絡むことも不可能ではない選手構成を構築した。
ところが、コパ・ド・ブラジルは二回戦を現状のベストメンバーで試合に臨みながら2-2の引き分けに終わり、PK戦の末、辛うじて三回戦に進出。州選手権は決勝ヴィトーリア戦1stレグを一時は2-0とリードしたものの、後半22分、45分、45+8分に失点を喫し逆転負け。2ndレグは圧倒的にボールを支配するものの前半13分に失点。間もなく同点に追いつくが、前半32分にカウンターを受け、得点機会阻止の判定で左SBヘゼンジ(Rezende, 1995)が一発退場。ここでそれまで数多くのチャンスを作り出していたFWビエウ(Biel, 2001)に代えウィングとしてもプレーできるSBルシアーノ・ジュバ(Luciano Juba, 1999)を投入。しかし、この交代で左サイドの攻撃が停滞。左右に広げられた最終ラインの間や、サイドバックの裏のスペースを何度も突かれ、ピンチが何度も訪れ、効果的な反撃も行えずタイムアップ。チーム予算が約半分のヴィトーリアを相手に苦杯を舐めた。
2023年も試合により好不調の波が激しかったが、2024年もその傾向は変わらず、修正力の低いホジェリオ・セニ監督が指揮を執る間は、残留争いに巻き込まれることはないだろうが、上位進出も難しいと思われる。
13.フルミネンセ
<直近の成績>
2023年:リベルタドーレス優勝。全国選手権7位。州選手権優勝
2024年:ヘコパ・スウアメリカーナ優勝
<評価>
2022年4月末から指揮を執るフェルナンド・ジニース(Fernando Diniz)監督。2023年にクラブ史上初のリベルタドーレス制覇。2024年に入り、ヘコパ・スウアメリカーナも優勝を飾る。
チームキャプテンを長らく続けた守備の要CBニノ(Nino, 1997)が移籍退団したものの、移籍退団が確実視されていたVOLアンドレ(André, 2001)が残留。他に主だった選手の流出はなし。
一方の主だった加入選手は、元ブラジル代表33試合6得点のMFヘナト・アウグスト(Renato Augusto, 1988)、元ブラジル代表31試合3得点のFWドウグラス・コスタ(Douglas Costa, 1990)、アトレチコ・パラナエンセで実績を残すMFテランス(Terans, 1994)、パリ五輪南米予選代表FWマルキーニョス(Marquinhos, 2003)。懸念のセンターバックには、2018年にパウメイラスで52試合に出場したCBアントニオ・カルロス(Antônio Carlos, 1993)をオルランドシティ/USAから獲得。
2022年はフェルナンド・ジニース監督の特異なスタイルのサッカーが機能し始め、2023年には州選手権優勝を果たしピークに達すると、リベルタドーレスを制したものの、全国選手権は中盤に失速し16勝8分14敗とほぼ五分の成績の7位で終えた。
2024年に入り、起用選手の固定化、主力選手の高齢化、シュート数の少なさといった2023年の課題は解決できず、リオデジャネイロ州選手権は、フラメンゴに1分2敗(得点0、失点4)、ボタフォゴに1敗(得点2、失点4)、ヴァスコ・ダ・ガマに1分(得点0、失点0)。下位チームは圧倒するものの、戦力が拮抗したチームには苦戦している。
クラブW杯開催時に英紙に「引退選手のクラブ」と揶揄されたが、左SBマルセロ(Marcelo, 1988)、CBフェリピ・メロ(Felipe Melo, 1983)は今季も主力として出場。GKファビオ(Fábio, 1980)は今年も数々のスーパーセーブを披露しチームを救う試合が多いが今年で44歳。FWヘルマン・カーノ(Germán Cano, 1988)もまだまだ高い得点力を有しているものの劣れは隠せない。
ベテランの活躍を否定する気はないが、控え選手や若手選手を起用する機会が、フェルナンド・ジニース監督就任から時間が経つにつれ減少しており、選手構成はかなり歪な年齢構成となっている。
例年通りのリベルタドーレス、コパ・ド・ブラジルが同時開催の厳しい日程。さらには、多くの得点に絡むMF,FWジョン・アリアス(Jhon Arias, 1997)のコパ・アメリカ開催時の不在はほぼ確実、7月にはVOLアンドレの移籍の可能性もあり、今季は苦戦が予想される。
14.ヴァスコ・ダ・ガマ
<直近の成績>
2023年:全国選手権15位
2024年:‐
<評価>
2024年は、2023年7月17日に就任したラモン・ディアス(Ramón Díaz)監督が続投。ラモン・ディアス監督は大幅な戦術変更と選手の入れ替えで24試合10勝6分8敗勝点「36」を獲得。一時は19位の降格圏に低迷していたチームを残留に導いた。
2023年にチーム最多出場と最多得点を記録したFWガブリエウ・ペッキ(Gabriel Pec, 2001)がLAギャラクシー/USAへ、中盤の複数のポジションや役割を担ったVOLマルロン・ゴメス(Marlon Gomes, 2003)がシャクタルドネツク/UKRへ、いずれも出場中のパリ五輪南米予選期間中に移籍が決まった。
また、2023年中盤以降の補強で膨れ上がった登録選手を削減するために、監督交代後に出番を失った選手の多くを放出。若手選手は主に期限付き移籍、中堅以上の選手は多くが契約満了に合わせチームを去った。
一方で、ベンフィカ/PORからCBジョアン・ヴィトル(João Victor, 1998)、パラグアイ代表(26試合1得点)CBロベルト・ローハス(Robert Rojas, 1996)、元チリ代表(12試合)VOLガルダメス(Galdames, 1996)、コリンチャンスでの活躍後ナント/FRAに移籍したものの出場機会が乏しかったMFアジソン(Adson, 2000)などの主力級の選手を獲得。さらには、ガブリエウ・ペッキに代わるスピード系のFWデイヴィジ(David, 1995)、若手で成長が期待できるパリ五輪南米予選アルゼンチン代表VOLスフォルツァ(Sforza, 2002)、CFベヘッチ(Vegetti,1988)の控えとしてFWクレイトン・シウヴァ(Clayton Silva, 1999)を獲得。
1月28日の試合中に昨年の途中加入以来替えの効かない働きを続けたMFパウリーニョ・パウラ(Paulinho Paula, 1997)が右膝前十字靭帯断裂、2月4日の試合中には昨年からプリメイロボランチとして多くの出場機会を得ていたVOLジャイール(Jair, 1994)が左膝前十字靭帯断裂を負うアクシデントが連発。特にジャイールに代わるプリメイロボランチは現れず、現在補強選手を模索しているが難航している。
全国選手権開幕前の州選手権やコパ・ド・ブラジルは、7勝6分2敗と勝ち切れない試合が続いた。コパ・ド・ブラジルはPK戦の末辛うじて三回戦へ進出。リオデジャネイロ州選手権は準決勝で全国選手権4部のノヴァ・イグアスに、1stレグ1-1、2ndレグ0-1のスコアで敗退した。
ラモン・ディアス監督は就任以来、自分の眼鏡にかなう選手を獲得しており、チーム力はもう一段高いレベルに到達するかと思われたが、キーとなる中盤の2選手の想定外の大ケガによる長期離脱の影響もあり、もどかしい内容の試合が続いている。
FWガブリエウ・ペッキに代わるFWデイヴィジはFWベヘッチ(6得点)に次ぐ3得点を記録しているものの、今のところFWベヘッチとの相性はいいとは言えず、MFパウリーニョ・パウラとポジション的にかぶる面のあるMFアジソンも周りとの連係がまだ噛み合っていない。
リベルタドーレスやコパ・スウアメリカーナへの出場がないため他チームに比べ日程的な厳しさは少なく、コパ・アメリカ開催による影響もあまりない。しかし、軸になるFWベヘッチ(Vegetti,1988)、MFディミトリ・パイェ(Dimitri Payet, 1987)、VOL,CBメデル(Medel, 1987)はベテランの域に入っており、新加入選手や控え選手、若手選手の底上げがなければ、今年も残留争いに巻き込まれる可能性がある。