ウェズレイ・パタチ (Weslley Patati)

投稿者: | 2024年4月9日
新規投稿 : 2024/04/09

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ウェズレイ・ピント・バチスタ

Weslley Pinto Batista

ポジション: FW、MF/ATA, MEI

利き足:両足

2003年10月1日生まれ

<幼少期>

 ブラジル連邦共和国北東部マラニョン州の人口5万人に満たない小さな町プレジデンチ・ドゥトラに生まれる。
 ウェズレイは地元のアマチュアチームでサッカーを始めるが、貧しいウェズレイの家庭にはサッカー用品を買うゆとりはなく、つも年上の選手にスパイクを借りていた。スパイクはたいていの場合ウェズレイの足には大きく、その姿はピエロのようで、いつの間にか人気子供番組のピエロのデュオ「パタチ・パタター(Patati Patatá)」をもじって「パタチ(Patati)」と呼ばれるようになった。

<クラブ 経歴>

育成時代≫

 クラブでのキャリアは、州都サン・ルイスに本拠を置くアトレチコ・マラニェンセ下部組織に始まる。同クラブは、州内では屈指の強豪ではあるが、全国レベルではほとんど実績のないクラブではあったが、パタチは背番号「10」をつけ大きな期待をかけられた。すると、全国的なビッグクラブサンパウロFCの関心を呼び下部組織に入団。しかし、僅かな期間で放出される。
 サンパウロFCから放出され、パタチはサッカー選手になる夢を諦めかけていたが、2018年、代理人から連絡があり、自宅から2000㎞離れたゴイアス州の片田舎のクラブでのプレーを勧められる。パタチは夢を実現させるためにその誘いを受けた。
 ところが、そのクラブの環境は劣悪、寮生活にも関わらず食事に事欠く時もあり、通信手段も用意されず家族にさえ連絡を取ることができない。パタチは寮を抜け出し、クラブのチームメートの家に世話になりサッカーを続けた。しかし、クラブの環境に嫌気がさし数か月後にクラブを去ることを決意、父に連絡を取り状況を説明してマラニョンに帰ることを伝えた。
 マラニョンに戻ると、サッカー選手になる夢はすでに諦めていたが、趣味の一環として地元のサッカースクールに加入。すると、バイーア州で開催された大会でチームは準優勝。そこでパタチは代理人モーリス・コーヘン氏に見出される。
 2019年7月、代理人モーリス・コーヘン氏の勧めでサントスFCのセレクションを受けると、セレクションでのトレーニング、各種の評価テストをクリアし、試用期間のような形でU-17チームのトレーニングに参加。そして、2019年12月18日、サントスとの育成契約を勝ち取った。
 2020年1月11日には16歳で契約期間3年のプロ契約を締結。U-17を主戦場としながら年終盤にはU-20チームでもプレー。
 2021年U-20チームに昇格すると間もなく、2001年生まれ主体のチームで左ウィングとしてレギュラーの座を獲得する。
 2022年1月のU-20全国大会カップ戦では、8試合に出場し4得点2アシストを記録し、チームの準優勝に貢献。大会閉幕後にはサントスとの契約を更新。契約は2024年末まで延長される。

サントス≫

– 2022 –

 2022年7月13日、トップチームに招集を受け、コパ・ド・ブラジル ベスト16 コリンチャンス戦2ndレグの後半17分にピッチに送り出され18歳でのプロデビューを飾る。
 翌週7月20日全国選手権第18節ボタフォゴ戦では後半24分の途中交代で全国選手権でのデビューを飾った。

– 2023 –

 2023年(年初19歳)はU-20チーム最終年。この年はU-20全国選手権での12試合9得点など、公式戦29試合22得点2アシストを記録。
 前年にデビューを果たしていたトップチームでは、チームが州選手権、全国選手権の両大会で残留争いに巻き込まれる中、責任が重くなる状況での試合出場による精神的な負担を避けたいという首脳陣の方針もあり、多くの出場機会に恵まれず、すべて途中交代によるシーズン前半の12試合の出場に止まった。

– 2024 –

 2024年(年初20歳)はトップチームに昇格。
 2月にカタールで開催されたイクオリティ・カップにサントスU-23チームの一員として出場。この大会は、2022/23期カタールリーグ優勝のアル・ドゥハイル、同ロシアリーグ優勝のゼニト/RUS、2023年中国カップ戦優勝の上海申花/CHN、およびサントスU-23の4チームが参加した大会。
 サントスU-23は1分2敗の成績に終えたが、パタチはアル・ドゥハイル戦で元ブラジル代表ディフェンダーをドリブルで翻弄しPKを獲得。ゼニト戦でも右サイドの攻撃の起点となり複数のチャンスを作り出す活躍を見せる。
 帰国後間もなくトップチームに合流すると、州選手権第10~12(最終)節および決勝ラウンド準々決勝、準決勝の5試合に途中交代ながら連続出場。サイドの左右に関わらず前線や中盤として起用される。決勝パウメイラス戦は、チームが1-0で勝利した1stレグでは出場機会は訪れず連続出場は途切れたが、2ndレグは0-2とリードされた後半41分に交代出場。ボールに触れる機会はほとんどなかったが、得点を奪いに行く局面での選択肢としてピックアップされた。
 ファビオ・カリーリ監督は州選手権では、試合ごと、もしくは試合途中でのフォーメーション変更を行うなど戦術的な引き出しの多さを見せた。パタチはトップチーム合流が遅れたものの、様々なポジション、役割を試合の中で担い、徐々に監督のサッカーに馴染みつつある。
 2024年4月21日にサントスは全国選手権2部開幕節を迎える。現状は途中交代出場が続くパタチだが、一試合、一分でも多く試合に出場し、チームの勝利、一年での1部復帰に貢献したい。

≪シーズン別クラブ出場記録≫

シーズン所属大会試合出場
時間
得点アシ
スト
2022年(19歳)サントス全国選手権12100
コパ・ド・ブラジル12800
 合計24900
2023年(20歳)サントスコパ・スウアメリカーナ23200
全国選手権912700
コパ・ド・ブラジル13500
 合計1219400
2024(21歳)サントス全国選手権2部
州選手権611700
 合計611700
イタリック斜体は、2024年4月9日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

代表世代別含む)経歴

N/A

<プレースタイル、雑感 etc.>

 利き足は両足。
 身長167㎝、体重60kg。(サッカーサイト「oGol」2024年4月9日参照)
 ポジションは両ウィング、両サイドハーフ。
 身体的には小柄だが、そのサイズを生かした小気味のいいドリブルでディフェンダーを翻弄。スピード、巧みな体の使い方、そして、ボールタッチのテンポの良さが小気味のいいドリブルを可能とし、テンポを微妙に崩すことでディフェンダーを翻弄する。
 ドリブルがスピードに乗った際も極端に視野が狭まることがなく、多角的にパスを送り出すことができる。
 瞬発的なスピードがあり、ディフェンダーと対峙した状況からの1~3歩目、ボールを切り返した直後の次のプレーへの展開が非常に速い。
 利き足はやや左足優位の両足のように見えるが、いずれの足からも強烈なシュート、コントロールされたシュート、精度の高いパスやクロスを送ることができる。
 トップチームでは、一試合当たりの出場時間が短いこともあり、ボールに触れる機会が少ない試合も少なからず見られる。オフザボールの動き出しやポジショニング、攻→守、守→攻の切り替えを速め、ボールに触れる機会を増やしていきたい。

 コロナ禍前後からの深刻な財政難と、伝統的に優秀な人材を輩出する下部組織からの人材供給により、ここ数年は下部組織出身の若い選手が主力の一角を占めていたサントスだが、2023年から2024年初めにかけて、FWアンジェロ(Ângelo, 2004)、FWデイヴィジ・ワシントン(Deivid Washington, 2005)、FWマルコス・レオナルド(Marcos Leonardo, 2003)が高額な移籍金を残し欧州ビッグクラブへ移籍。
 資金面に余裕ができたことにより、外部からの補強を強化し、それに合わせるかのように下部組織出身選手がリストラされ、かつてはダイヤの原石と呼ばれた2001年や2002年生まれの選手さえもクラブの構想外となり他クラブへの移籍が模索されている状況となっている。
 その厳しい状況において、トップチームでの出場機会を得ているパタチ。スピードや足元の技術は標準を大きく上回るものを持っているが、現在のサッカーでは長所を磨きながらも、チーム戦術に沿ったプレーがオンザボール、オフザボールに関わらず要求される。また、同時にフィジカルの強さも要求され、この面では小柄なパタチはハンディキャップを背負っているともいえる。
 しかし、幸いにも2023年にはパタチとプレースタイルの似た身長160㎝のベネズエラ代表FWソテウド(Soteldo, 1997)が身近でプレー。
 2024年には数多くのタイトルを保有する身長171㎝の大ベテランのFWウィリアン・ビゴージ(Willian Bigode, 1986)や、ポジションは異なるもののベネズエラ代表VOLトマス・リンコン(Tomás Rincón, 1986)をはじめとした国外でのプレー歴が豊富な選手が数多く在籍しており、手本となる選手にチーム内に溢れている。
 ハイライト動画で見た2024年イクオリティ・カップでのゼニトとの試合では、大柄なロシア国籍ディフェンダーをドリブルで翻弄。ディフェンダーの隙間を通すパスや、右サイドを中央やゴールライン際へ仕掛けるプレーなど、卓越したプレーが多く見られた。
 チーム内の環境に恵まれている2024年をプロサッカー選手としての基礎づくりの一年とし、やがてはサントスを代表する選手となり、遠くない将来には欧州の大舞台で大男たちを手玉に取るような選手へと成長することを期待したい。

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