最新更新日 : 2024/03/11 更新履歴 : 2024/01/10, 2023/06/16, 03/26
ドウグラス・メンデス・モレイラ
Douglas Mendes Moreira
ポジション:センターバック/ザゲイロ
利き足:右
2004年6月13日生まれ
<幼少期>
ミナスジェライス州の人口16500人の小さな町トカンチンスに生まれる。 地元のサッカースクールでサッカーをしていたが、2018年のある日、ポンチプレッタ下部組織の入団テストを受けるために600㎞離れたサンパウロ州カンピーナスへ行く。入団テストから合否判定まで約2週間カンピーナスに滞在。この期間、クラブでは慎重な評価検討が積み重ねられ、最終的に合格判定が通知された。
<クラブ経歴>
≪育成時代≫
2019年、14歳の時にポンチプレッタU-15チームに加入。チーム加入後すぐにレギュラーにつくと、15歳の誕生日直後にはU-17チームの公式戦に出場。やがてU-15チームのキャプテンを任されるようになる。
2020年はコロナ感染症拡大の影響で約1年活動を中止する。
2021年、ポンチプレッタに戻ると、U-23チームに合流。
≪ポンチプレッタ≫
– 2021 –
2021年8月14日、トップチーム全国選手権2部第18節にベンチ入りを果たす(試合出場なし)。 11月26日の選手権最終節ホームでのコリチバ戦、後半20分に途中交代出場。17歳でプロ初出場を果たす。
– 2022 –
2022年は1月に開幕する州選手権にメンバー登録。4月に開幕する全国選手権2部にもメンバー登録されるが、いずれもベンチ入りはするが出場機会に恵まれずU-20チームの試合に出場する。 6月12日のU-20州選手権の試合に出場した4日後、トップチームでの出場機会が訪れる。
2022年6月16日、全国選手権2部第13節、敵地ミネイロンで行われるクルゼイロ戦、右CB/ZADとしてスターティングイレブンに抜擢。60000人近くの大観衆の中ピッチに立つ。観衆の中には、車で4時間以上かけて地元トカンチンスから駆けつけた家族もドウグラス・メンデス(通称”DG”)を見守る。 試合は立ち上がりから対峙するハファエウ・シウヴァ(Rafael Silva, 2014-2016年新潟アルビレックス、2017年浦和レッズ)を封じる。また、攻撃面ではビルドアップやFKで精度の高いキックを駆使しボールを前線に供給。後半に入ると相手FW/ATAが左右を入れ替え新たに対峙するエドゥー(Edu)が度々ドリブルで仕掛けてくるが、ことごとくシャットアウト。 後半24分に足を負傷しそのまま交代するが、この日の活躍を機にレギュラーの座を獲得する。
7月23日第20節まで8試合連続スタメン出場を果たす。
≪RB ブラガンチーノ≫
– 2022 –
2022年8月5日、RBブラガンチーノがドウグラス・メンデスの獲得を発表。選手保有権の70%について移籍金は1050万レアル(約2億8000万円)+ボーナス条項150万レアル(約4000万円)の総額1200万レアル(約3億2000万円)。
9月18日第27節からベンチ入りするが出場機会は訪れない。
11月9日第37節フォルタレーザ戦、クラブ初出場をスターティングイレブンで果たす。しかし、この試合では対峙するペドロ・ホッシャ(Pedro Rocha)に翻弄され、持ち味を発揮することができない。また、PKを与えるなどいいところがなく、後半24分に交代。ブラガンチーノでのデビュー戦は厳しい結果となった。
≪FCリーフェリング(レンタル元:RBブラガンチーノ)≫
– 2022/23 –
2023年2月14日、FCリーフェリングがドウグラス・メンデスの期限付き移籍加入を発表。期限は同年6月末。 FCリーフェリングは、レッドブルザルツブルグの実質的なBチーム。ドウグラス・メンデスはオーストリアでヨーロッパサッカーを学び、選手としての幅を広げる機会を得たことになる。
2023年3月17日、AUTブンデスリーガ2部第20節、試合終了間際の途中出場でクラブデビュー。 4月21日第24節で初のスタメン出場。5月13日第27節もまた先発に起用されると、U-20W杯出場のためチームを離れ、2022/23シーズンは終了。 FCリーフェリングでの3か月半はわずか3試合181分の出場に終えたが、ブラジルとは異なるサッカー文化を持つオーストリアでの貴重な経験を積んだ。
≪FCリーフェリング(レンタル元:RBザルツブルク)≫
– 2023/24 –
2023年7月1日、RBザルツブルク/AUTがドウグラス・メンデスの完全移籍による獲得を発表。契約期間は2028年6月30日。 2023/24シーズンに向け、RBザルツブルクへの期限付き移籍が発表される。 2023年8月11日AUTブンデスリーガ2部第2節でスタメン出場を果たすと、10月28日第12節までに7試合(うち5試合先発)出場を果たす。
≪RB ブラガンチーノ(レンタル元:RBザルツブルク)≫
– 2024 –
2024年1月9日、RBブラガンチーノから2024年末までを期限としてドウグラス・メンデスの期限付き移籍加入が発表される。
2024年のRBブラガンチーノは、CBオルティス(Léo Ortiz, 1996)の移籍の可能性が高く、2024年パリ五輪南米予選代表に招集されたCBルアン・パトリッキ(Luan Patrick, 2002)が期限付き移籍満了で2023年末にアトレチコ・パラナエンセに返却、2023年7月の膝前十字靭帯断裂でチームを離脱しているCBエドゥアルド・サントス(Eduardo Santos, 1997)の復帰は5月頃と見込まれており、センターバックは選手層が薄くなっている。オーストリアで習得したプレーをチーム戦術に落とし込み、まずはレギュラー争いに食い込みたい。
≪シーズン別クラブ記録≫
シーズン | 所属 | 大会 | 試合 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2021年(17歳) | ポンチプレッタ | 全国選手権2部 | 1 | 25 | 0 | 0 |
合計 | 1 | 25 | 0 | 0 | ||
2022年(18歳) | ポンチプレッタ | 全国選手権2部 | 8 | 664 | 0 | 0 |
合計 | 8 | 664 | 0 | 0 | ||
RB ブラガンチーノ | 全国選手権 | 1 | 69 | 0 | 0 | |
合計 | 1 | 69 | 0 | 0 | ||
2022/23年(19歳) | リーフェリング/AUT | AUTブンデスリーガ2部 | 3 | 181 | 0 | 0 |
合計 | 3 | 181 | 0 | 0 | ||
2023/24年(20歳) | リーフェリング/AUT | AUTブンデスリーガ2部 | 7 | 324 | 0 | 0 |
合計 | 7 | 324 | 0 | 0 | ||
2024年(20歳) | RBブラガンチーノ | 州選手権 | 5 | 357 | 0 | 0 |
合計 | 5 | 357 | 0 | 0 |
イタリック斜体は2024年3月11日現在の記録。 ※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。
<代表経歴>
≪2022年 世代別代表≫
2022年8月、翌9月に開催されるアルゼンチン代表、ウルグアイ代表、ウズベキスタン代表との国際親善大会に向けたU-20代表メンバーに世代別代表として初めて招集される。 9月6日初戦のアルゼンチン戦に途中交代出場すると、8日ウルグアイ戦、10日ウズベキスタン戦にはいずれもスタメン出場。
2023年U-20南米ユース選手権に向けた最後の対外試合となる2022年11月のチリ代表との親善試合に招集。 2試合が行われたうち、17日の初戦にスタメン出場。
≪2023年 U-20南米ユース選手権≫
2022年12月8日に発表された2023年U-20南米ユース選手権の代表メンバーに選出。
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-20代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日 | 節 | 対戦 相手 | 試合 結果 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2023/01/19 | 予選R第1節 | ペルー | 3 – 0 | 76 | 0 | 0 |
2023/01/23 | 予選R第3節 | アルゼンチン | 3 – 1 | – | – | – |
2023/01/25 | 予選R第4節 | コロンビア | 1 – 1 | 3 | 0 | 0 |
2023/01/27 | 予選R第5節 | パラグアイ | 2 – 1 | 58 | 0 | 0 |
2023/01/31 | 決勝R第1節 | エクアドル | 3 – 1 | 1 | 0 | 0 |
2023/02/03 | 決勝R第2節 | ベネズエラ | 3 – 0 | – | – | – |
2023/02/06 | 決勝R第3節 | パラグアイ | 2 – 0 | – | – | – |
2023/02/09 | 決勝R第4節 | コロンビア | 0 – 0 | – | – | – |
2023/02/12 | 決勝R第5節 | ウルグアイ | 2 – 0 | 90 | 0 | 0 |
19 – 4 | 228 | 0 | 0 |
予選R第1節ペルー戦、前半14分、先発出場ウェヴェルトンがケガを負い交代出場。右サイドのCBを務める。初戦の緊張からかチーム全体が浮足立つ中、ドウグラス・メンデスも交代直後はミスが目立ったが時間の経過とともに落ち着きを取り戻し、チームの零封に貢献。 予選R第5節パラグアイ戦ではスターティングイレブンに名を連ねる。自陣からの攻撃ではビルドアップを務める。
優勝を賭けた決勝R第5節ウルグアイ戦に先発出場。主導権を握られた前半はホベルチ・ヘナンとともに最終ラインを固め、ウルグアイに決定的な場面を作らせない。後半に入り引き分けでも優勝が決まるウルグアイは守備を固めカウンターを狙うようになる。2度最終ライン裏に抜け出される大きなピンチを迎えるが、途中出場のアンドレ・ドミニーキと共に必死の戻りでシュートを打たせない。 その後ブラジルが先制点を奪い2-0で勝利。ドウグラス・メンデスはピッチの上で優勝の瞬間を迎える。
2023年U-20W杯
2023年4月28日発表の2023U-20W杯代表に招集。
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-20代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日 | 節 | 対戦 相手 | 試合 結果 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2023/05/21 | グループR第1節 | イタリア | 2 – 3 | – | – | – |
2023/05/24 | グループR第2節 | ドミニカ共和国 | 6 – 0 | – | – | – |
2023/05/25 | グループR第3節 | ナイジェリア | 2 – 0 | 1 | 0 | 0 |
2023/05/31 | 決勝R1回戦 | チュニジア | 4 – 1 | 45 | 0 | 0 |
2023/06/01 | 決勝R準々決勝 | イスラエル | 2 – 3 | 120 | 0 | 0 |
合計 | 16 – 7 | 166 | 0 | 0 |
<プレースタイル、エピソード etc.>
189㎝の長身を武器にした空中戦はいうに及ばず、一対一での守備でも強さを発揮する。クリアの際は、周りを見て味方の位置を確認し、味方に合わせるように処理する。ビルドアップ時は精度の高い長短のパスを使い分け、最後方から攻撃を組み立てる。
「センターバックは無愛想な顔をしてたらいいんだよ。試合中に笑顔をみせるのは好きじゃない。ピッチの上では相手のフォワードと話をする必要もない。ピッチの外では普通に話したり冗談を言い合ったりするけど、ピッチの上ではお互いに自分の役割を果たすだけ。」 冒頭の写真にあるような顔つきでいつも試合に臨んでいるが、インタビューではまだ幼さの残る18歳の青年らしい笑顔で対応する。
2022年8月、自分では全く思いもしていなかったU-20代表の招集を受ける。招集が発表された時には「アマレリーニャ(Amarelinha, ブラジル代表の黄色いユニフォーム)を着るのは誰もが憧れる夢だからね。ブラガンチーノでいい仕事をして結果を残して、U-20南米ユース選手権にも呼ばれると嬉しいね。」と話していた。 ブラガンチーノでは試合への出場機会は少なかったが、”DG”のプレースタイル、ポンチプレッタでのパフォーマンス、11月のチリ代表との親善試合で確認されたチーム戦術との適合を評価され、2022年12月8日、南米ユース選手権をブラジルを代表して戦うことが決まった。
<雑感>
2022年8月に移籍したブラガンチーノは、2022W杯南米予選では何度も代表に招集されたレオ・オルティス(Léo Ortiz, 1996)、ヴェローナ/イタリアから900万ユーロのオファーを断り、同じくイタリアのローマからも関心が伝えられるナタン(Natan, 2001)、2019U-17W杯アルゼンチン代表のロモナコ(Lomónaco, 2002)など、若く才能あふれるCB/ZAG陣が控える。その中でほとんど試合に出場することなくブラガンチーノでの1年目は終わった。
2023年は監督がポルトガル人のペドロ・カイシーニャ(Pedro Caixinha)氏に代わる。前任のバルビエリ(Barbieri)監督同様、ボール保持率を高め、ラインをコンパクトに保ちアグレッシブにボールを奪いにいくサッカーを標榜している。この戦術では、背後に広がるスペースの管理とクリアやパスを正確に味方に収める技術が重要になる。
世代別代表に限らずブラジル代表は常に、引いて守る相手守備をどのように崩すか、いかに相手のカウンターを防ぐかが課題になる。2023南米ユース選手権では、この課題をクリアするための一つの解として代表に選出された ”DG”ドウグラス・メンデス。
代表の課題はクラブでの新監督の戦術にとっても重要な要素の一つでもある。 2023U-20南米ユース選手権で結果を残し、チーム内での厳しい競争に勝ち抜くことができるか。
その結果次第では、人口僅か16500人の町で生まれ育った青年の歩みが、まだ見ぬ世界へと大きく広がることになる。