最新更新日 : 2024/02/03 更新履歴 : 2024/01/04, 2023/06/16, 03/09
ホベルチ・ヘナン・アウヴェス・バルボザ
Robert Renan Alves Barbosa
ポジション:センターバック/ザゲイロ
利き足:左
2003年10月11日生まれ
<幼少期>
ブラジル連邦の首都ブラジリアを含む連邦直轄区内に位置するセイランジアに生まれる。名前は父ホベルト(Roberto)と母ヘナタ(Renata)のそれぞれの名前から一部をとって名づけられた。
<クラブ経歴>
≪育成時代≫
幼い頃から多くのサッカースクールでプレー。 11歳になりアトレチコ・ミネイロやアトレチコ・パラナエンセなどの多くのクラブの入団テストを受けるようになる。
2017年の13歳の時、ミナスジェライス州に創立されたばかりのノーヴォス・オリゾンテスに入団。このチームでは左サイドバックでプレーしていたが、その素質を見込まれ、同クラブが提携する当時全国選手権4部、サンパウロ州選手権1部に所属していたグレミオ・ノヴォリゾンチーノに移籍。
さらには、ノヴォリゾンチーノでのプレー、特にビルドアップの能力に惚れ込んだ代理人がコリンチャンスと事前契約を結び、2019年、16歳の誕生日を迎えると間もなくコリンチャンスに入団する。
コリンチャンスに入団すると、2020年は、U-17チームを中心にU-20チームでもプレー。
2021年には17歳ながらU-20チームでレギュラーの座を獲得する。
≪コリンチャンス≫
– 2022 –
2022年、年初に開催されるU-20全国大会のカップ戦に出場し、大会終了後にはトップチームに昇格。
しかし、元ブラジル代表で経験豊かなジウ(Gil, 1987)、現パラグアイ代表バウブエナ(Balbuena, 1991)、後にベンフィカ/PORへ850万ユーロで移籍するジョアン・ヴィトル(João Victor, 1998)、2022年前半をレギュラーとして活躍するハウーウ・グスタヴォ(Raul Gustavo, 1999)と充実するCB陣の中、出場機会が訪れない。
2022年4月20日、アウェイでのコパ・ド・ブラジル3回戦ポルトゲーザRJ戦1stレグ。ヴィトル・ペレイラ(Vitor Pereira)監督から左CBとしてスターティングイレブンに抜擢される。立ち上がりからビルドアップに参加。積極的に中央、サイドへパスを通していく。「Footstats」のデータによると、ボール奪取2、インターセプト1、パス成功数67/70。自チームCKからの流れからはゴールラインを割りそうになるボールを相手ディフェンダーを巧みにかわして奪い、クロスボールを供給、あわやゴールかというシーンも作り出す。
その後はベンチを温める試合が続くが、6月22日コパ・ド・ブラジル ラウンド16 サントス戦(ホーム1stレグ)の後半途中に交代出場を果たしアシストを記録。 3日後の6月25日全国選手権第14節でのサントスとの再戦にはスタメン出場。チーム最多のボール奪取を記録するなどの活躍で零封。 翌第15節フルミネンセ戦もスタメン出場を果たすが、その後は再び試合から遠ざかり、一時はU-20チームで試合勘を維持するようになる。
全国選手権での優勝の芽がなくなり翌シーズンに向けた起用法に方針が変更されると、10月2日第31節以降の試合に積極的に起用され、7試合に出場、この期間に出場した試合でチームは4勝2分1敗の成績を収めシーズンを終える。
≪ゼニト≫
– 2022/23 –
2023年1月10日、コリンチャンスよりユーリ・アウベルトの完全移籍が発表された。契約期限は2028年6月。 これに伴い、ホベルチ・ヘナンはゼニト/RUSに移籍。コリンチャンスは引き続きホベルチ・ヘナン選手の保有権を維持する(割合は非公表)
2023年3月4日、ロシアンプレミアリーガが再開される第18節にスターティングイレブンとして出場。レギュラーを務めるブラジル人のホドリガォン(Rodrigão, 1995)とコンビを組む。この試合ではボール奪取、パスカット、パス成功数でチーム1位の記録を残す。
その後5月7日第26節までスタメン出場を続ける。第26節を終えるとU-20W杯出場のためチームを離脱。第30節(最終節)をチームで迎えることなく、クラブ一年目の2022/23シーズンを終えた。
– 2023/24 –
2023/24シーズンは2023年7月15日のロシア・スーパーカップで開幕。CBホベルチ・ヘナンは先発フル出場。0-0で迎えたPK戦では、6人目のキッカーを任されると、これを成功させ、チームはその瞬間に優勝が決定。チーム、ヘナンともに幸先のいいシーズン開幕を飾った。
ロシアプレミアリーグも開幕からレギュラーとして試合に出場するが、8月13日第4節を境に控えにまわり、以降はカップ戦要員として2023年末まで僅か3試合、うち2試合は前半のみの出場にとどまる。
≪インテルナシオナウ≫
– 2024 –
2024年1月3日、インテルナシオナウよりホベルチ・ヘナンの一年間の期限付き移籍加入が発表される。 インテルナシオナウの2023年シーズンは、左CBに2018W杯3試合1得点1アシストなどアルゼンチン代表として通算24試合4得点4アシストを記録するガブリエル・メルカド(Gabriel Mercado, 1987)がプレー。CBメルカドは2023年末に契約が満了しているが更新は発表されておらず、また、契約が更新されたとしても年齢的な面で、ホベルチ・ヘナンには控えに止まらずポジション争いが期待される。
≪シーズン別クラブ出場記録≫
シーズン | 所属 | 大会 | 試合 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2022年(19歳) | コリンチャンス | 全国選手権 | 10 | 900 | 0 | 0 |
コパ・ド・ブラジル | 3 | 129 | 0 | 1 | ||
合計 | 13 | 1029 | 0 | 1 | ||
2022/23年(20歳) | ゼニト/ロシア | ロシアンプレミアリーガ | 9 | 807 | 0 | 0 |
合計 | 9 | 807 | 0 | 0 | ||
2023/24年(21歳) | ゼニト/ロシア | ロシアンプレミアリーガ | 4 | 315 | 0 | 0 |
ロシアカップ | 3 | 210 | 0 | 0 | ||
ロシアスーパーカップ | 1 | 90 | 0 | 0 | ||
合計 | 8 | 615 | 0 | 0 | ||
2024年(21歳) | インテルナシオナウ | 州選手権 | 5 | 366 | 0 | 0 |
合計 |
イタリック斜体は、2024年2月3日現在の記録。 ※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。
<代表経歴>
– 2021 –
2021年11月、メキシコで開催されたU-18レヴェレーションズカップに向けた世代別代表に招集。11月13日のメキシコ戦にスタメン出場。
– 2022 –
2022年6月に開催されたパラグアイ代表、エクアドル代表、ウルグアイ代表とのU-20国際親善大会では、全3試合にスタメン出場。チームは3連勝で大会優勝を果たす。
2022年9月に開催されたアルゼンチン代表、ウルグアイ代表、ウズベキスタン代表とのU-20国際親善大会に招集。出場は第2戦のウルグアイ戦の45分のみ。しかし、この試合では後半開始時からキャプテンのベラウド(Beraldo)に代わり出場、キャプテンマークを引き継ぐ。試合ではビルドアップを担い攻撃の起点となると、後半29分には相手GK/GOLの好セーブに阻まれるもののミドルシュートを放つ。後半44分、相手ハンドによりPKを獲得するとホベルチ・ヘナンがこのPKを蹴り、この試合唯一のゴールを奪う。
2022年11月17日、2023U-20南米ユース選手権の向けた親善試合となるチリ代表との試合ではドウグラス・メンデス(Douglas Mendes)とコンビを組み出場。
2022年12月8日には、2023年1月19日に開幕するU-20南米ユース選手権代表メンバーに選出される。
– 2023 –
2023年U-20南米ユース選手権
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-20代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日 | 節 | 対戦 相手 | 試合 結果 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2023/01/19 | 予選R第1節 | ペルー | 3 – 0 | 90 | 0 | 0 |
2023/01/23 | 予選R第3節 | アルゼンチン | 3 – 1 | 90 | 0 | 0 |
2023/01/25 | 予選R第4節 | コロンビア | 1 – 1 | 90 | 0 | 0 |
2023/01/27 | 予選R第5節 | パラグアイ | 2 – 1 | 32 | 0 | 0 |
2023/01/31 | 決勝R第1節 | エクアドル | 3 – 1 | 90 | 0 | 0 |
2023/02/03 | 決勝R第2節 | ベネズエラ | 3 – 0 | 90 | 0 | 0 |
2023/02/06 | 決勝R第3節 | パラグアイ | 2 – 0 | 90 | 0 | 0 |
2023/02/09 | 決勝R第4節 | コロンビア | 0 – 0 | 90 | 0 | 0 |
2023/02/12 | 決勝R第5節 | ウルグアイ | 2 – 0 | 90 | 0 | 0 |
19 – 4 | 752 | 0 | 0 |
2023年U-20南米ユース選手権では、4バック、左サイドのセンターバック/ZAEとして、全9試合に出場し(うちスタメン8試合)、チーム最多の752分の出場時間を記録。CBウェヴェルトンが初戦で骨折し戦列を離脱した苦しい台所事情の中、警告を1枚にとどめる。
ゴール前からの攻撃ではビルドアップを担い、プレスにも慌てることなく、細かなボールタッチと大きなボールタッチを織り交ぜ、巧みな身のこなしでプレスをかわしていく。プレスをかわすと、ボランチへ預けるパスや、中盤から前線への楔や裏抜けの縦パス、左奥や右サイドへのロングパスなどを駆使、自らドリブルで持ち上がりロングシュートを狙うなど、引いた相手守備陣のほころびを探し出すプレーを数多く見せる。
守備では、左SBパトリッキとアンドレイ・サントスとの連携が機能。 パトリッキが攻めあがった際にはそのスペースをしっかりとカバー。長い足を活かしたスライディングタックルでピンチの芽を摘む。ホベルチがサイドにつり出された場面も、戻ってきたパトリッキやアンドレイ・サントスがCBのポジションに入りスペースを埋める。ゴール前2ラインで構えた守備ではアンドレイ・サントスがふるい役となり、こぼれてきたボールや相手選手をホベルチが対応。
大会を通じてのチームの失点は僅かに4。ホベルチ・ヘナンがピッチに立つ時間帯は3失点。 唯一左サイドが起点となった失点は、中盤でボールを奪いに行ったアンドレイ・サントスが交わされ、その空いたスペースを起点に、ホベルチとパトリッキの間に人とボールを通され、クロスをあげられた場面。ボランチがボールを奪いに前に出た場合のカバーリングの問題で最終ラインの選手の責は問われない内容だが、チームとしてU-20W杯に向け修正が必要になるだろう。
2023年U-20W杯
2023年4月28日発表の2023U-20W杯代表に招集。
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-20代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日 | 節 | 対戦 相手 | 試合 結果 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2023/05/21 | グループR第1節 | イタリア | 2 – 3 | 90 | 0 | 0 |
2023/05/24 | グループR第2節 | ドミニカ共和国 | 6 – 0 | 90 | 0 | 0 |
2023/05/25 | グループR第3節 | ナイジェリア | 2 – 0 | 90 | 0 | 0 |
2023/05/31 | 決勝R1回戦 | チュニジア | 4 – 1 | 45 | 0 | 0 |
2023/06/01 | 決勝R準々決勝 | イスラエル | 2 – 3 | – | – | – |
合計 | 16 – 7 | 315 | 0 | 0 |
2023年フル代表
2023年3月25日開催の親善試合モロッコ戦に向けたハモン・メネゼス監督代行率いるフル代表に招集。 本戦では出場機会なし。
2023年6月17日ギニア戦、25日セネガル戦の両親善試合に向けたハモン・メネゼス監督代行率いるフル代表に招集。CBニノ(Nino, 1997, Fluminense)のケガによる代表辞退を受けての追加招集。
2024年パリ五輪南米予選
2023年12月21日にCBFより発表された2024パリ五輪南米予選(2024年1月20日~2月11日)U-23代表選手、23選手(GKは3選手)の一人として選出された。しかし、チーム事情により代表を辞退。
<幼少期のエピソード>
ホベルチ・ヘナンが生まれ育ったセイランジアは、連邦直轄区の中でも最も人口の多い地区であり、同時に暴力や危険が多い地区でもあった。反暴力、反差別を推進するNPO法人の活動に参加する両親の影響を受けて育ったホベルチ・ヘナンは、13歳の時に所属していたフットサルチームの2人の友人と共に、ギャング間の抗争に反対するビデオを撮影、公開する。
父ホベルトによると、ホベルチ・ヘナンにとっての最重要事項は幼い頃からサッカーだったという。 しかし、その裏では壮絶な出来事を経験している。 11歳の時には差別の対象となり警察に保護されたことがある。 サッカーグラウンドの片隅でギャング間の抗争の流れ弾を受けた友人を目の前にして亡くしたこともある。
心理学を専攻し反差別・反暴力のNPOに従事する父との会話や自らの過酷な経験を通じて彼は社会運動にも深い理解を示し、プロとなった今ではセイランジアの貧しい地区に暮らす100人近くの子供が活動するスポーツクラブに援助を行っている。
<プレースタイル 動画>
プロ初スタメン試合。 ホベルチ・ヘナン選手は、黒主体のユニフォームの背番号30。
<監督評>
プロ初スタメンを飾った試合では、試合開始直後のプレーで、相手FWのチェイシングに慌てることなく、小さな身のこなしでかわし、ボールを受けに下りてきたボランチの足元にパスを通す。この一連のプレーについてヴィトル・ペレイラ監督は試合後に、ホベルチ・ヘナンの落ち着きと、中央へのパスを選択したプレー選択、そのパスを足元に通した技術の高さを絶賛している。
そして、まだ成長の余地はあるものの、技術的にも戦術理解も既に高いレベルにあり、その潜在能力は計り知れないと話している。
<国外移籍、 目標の選手、 雑感 etc.>
2023年1月10日、レンタル加入で活躍したユーリ・アウベルト(Yuri Alberto, 2001)を完全移籍で獲得するための人的補償として、ホベルチ・ヘナン選手のゼニト/RUS行きが発表された。
2022年末にはワトフォード/ENGが、移籍金600万ユーロ、プレミアリーグ昇格時に400万ユーロ、再売却時に100万ユーロ、総額最大1100万ユーロ(金額はすべて推定)のオファーを提示したが、コリンチャンスはこのオファーを拒否している。
ホベルチ・ヘナンの目標とする選手は、チチ(Tite)監督率いるブラジル代表チームの絶対的なレギュラーとしてプレーするマルキーニョス(Marquinhos, 1994, PSG)。足元の技術やパス精度の高さ、これらの要素に基づくビルドアップ能力、ファールも少なく巧みなボール奪取などが、2人に共通するプレースタイルだ。 マルキーニョスもまたホベルチ・ヘナンと同様に、コリンチャンス下部組織出身、コリンチャンスでデビューを果たし、コリンチャンスで13試合に出場し、ヨーロッパに旅立っている。
戦争による影響でゼニトを含むロシアのクラブはUEFAから除外され西ヨーロッパの強豪クラブとの試合が禁止されている。 こういった状況でのゼニトへの移籍が、ホベルチ・ヘナンの今後のサッカー選手としてのキャリアにどのような影響を及ぼすのか、知るすべもない。 しかし、ゼニトで大いに活躍し、その活躍がブラジルへの凱旋もしくは西ヨーロッパの強豪クラブへの移籍へと繋がり、ホベルチ・ヘナンのキャリアが栄光に満ちたものになるよう願わずにはいられない。