ヴァスコ・ダ・ガマ (Vasco da Gama)
正式名称:Club de Regatas Vasco da Gama
略称:VAS
創立:1898年
本拠:リオデジャネイロ州 リオデジャネイロ
《 主要タイトル 》
タイトル | 優勝回数 | 優勝年 |
---|---|---|
ブラジル全国選手権 | 4 | 2000, 1997, 1989, 1974 |
コパ・ド・ブラジル | 1 | 2011 |
コパ・リベルタドーレス | 1 | 1998 |
《 直近3年成績(2020年-2022年) 》
大会 | 2022年成績 | 2021年成績 | 2020年成績 |
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ブラジル全国選手権 | ― | ― | 17位 |
ブラジル全国選手権2部 | 3位 | 10位 | ― |
コパ・ド・ブラジル | 2回戦敗退 | ベスト16敗退 | 4回戦敗退 |
コパ・スウアメリカーナ | ― | ― | ベスト16敗退 |
リオデジャネイロ州選手権 | 準決勝敗退 | 6位 | 予選R敗退 |
各大会の概要は、当ブログ記事「主要大会と年間日程」を参照ください。
《 全国選手権 順位推移(2006年-2022年) 》
現行レギュレーション(20チームによるホーム&アウェア方式2回戦総当たり)で開催された2006年以降の全国選手権順位推移です。
《 2022年 》
<戦績>
大会 | 試合数 | 勝数 | 引分数 | 敗数 | 得点 | 失点 | 得失点差 | 勝点率(%) | 順位 |
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全国選手権2部 | 38 | 17 | 11 | 10 | 48 | 36 | 12 | 56.1 | 3位 |
コパ・ド・ブラジル | 2 | 1 | 1 | 0 | 2 | 1 | 1 | 66.7 | 2回戦敗退 |
州選手権 | 13 | 7 | 1 | 5 | 19 | 13 | 6 | 56.4 | 準決勝敗退 |
計 | 53 | 25 | 13 | 15 | 69 | 50 | 19 | 56.6 |
<全国選手権2部 年間順位推移>
(※)第35節エスポルチ戦にてエスポルチサポーターによるグラウンド内への乱入狼藉があり、最終節終了後、スポーツ裁判所の判決により勝ち点2が加算され最終順位は3位で確定している。
<振り返り>
2020年に2部に降格し、1年での復帰が叶わなかったヴァスコは、2022年の監督にゼ・ヒカルド(Zé Ricardo)氏を招聘する。 ゼ・ヒカルド監督は、相手陣で積極的にプレスをかけボールを奪いに行き、自陣にボールを運ばれた場合は4-4の2ラインで中央を固める。自陣でボールを奪えば素早く前にボールを運び、守備ラインが引いた相手には、前線に5人が広く陣取り敵陣でのサイド深くから幅、奥行に選択肢の多い攻撃を展開する。
【州選手権】
1月26日に開幕を迎えた州選手権は、開幕5試合を4勝1分の幸先のいいスタートを切ると、12チームでのグループラウンドを3位で決勝ラウンドに進む。しかし、順位ではボタフォゴを上回ったものの、グループラウンドではフラメンゴ、フルミネンセ、ボタフォゴとのクラシコでいずれも苦杯を舐める。
決勝ラウンド1回戦ヘゼンデ戦に3-0と快勝し、フラメンゴに雪辱を期すべく準決勝に駒を進める。
3月16日ホーム1stレグ、立ち上がりから自陣深く押し込まれる展開が続き、前半終了間際、CKからのプレーでVAR判定によりPKを献上し失点する。後半開始と同時にSB/LATに替えFW/ATAの選手を投入し反撃を試みる。ボールを保持率を高め相手ゴールに迫るが決定的なチャンスを作り出すことができずタイムアップ。0-1でホームでの1stレグを落とす。
3月20日アウェイでの2ndレグ。最低でも引き分けに持ち込みたいヴァスコが攻撃的な布陣で臨むと比較的オープンな試合展開となる。しかし、両チームGK/GOLの好守もあり前半を0-0で折り返す。後半に入り10分、CKからフラメンゴに先制点を奪われる。その後中盤に攻撃的な選手を次々と投入するが相手ゴールを割ることができず、1stレグに続き0-1で試合を落とし、州選手権を終える。
【コパ・ド・ブラジル】
1回戦は、州選手権でのクラシコの連戦となるフルミネンセ戦とフラメンゴ戦に挟まれた3月2日に開催。全国選手権4部のフェホヴィアーリアを相手に控え選手を中心としたメンバーながら1-0のスコアで無難に勝ち上がる。
3月9日、2回戦ジュアゼイレンセ(全国選手権4部)戦は、州選手権でのクラシコ、フラメンゴ戦での敗戦の3日後に開催される。 前半5分に先制点を奪うが、試合は均衡した内容で時間が経過する。前半35分、4-4で中央を固めた2ラインの左外から逆サイドへの高くあげられたクロスに相手FW/ATAが後ろ向きに小さくパスを出すと、そこに後方からマークを振り切り走り込んだ選手が豪快にシュートを放ち、同点に追いつかれる。後半立ち上がり10分は相手のセットプレーで立て続けにピンチを招くが、GK/GOLチアゴ・ホドリゲス(Thiago Rodrigues)の好守で得点を許さない。後半15分を迎えるころには主導権を奪い返し相手ゴールに迫る。しかし、シュート精度が低く得点を奪えない。後半40分を過ぎるとオープンな展開となるがお互いに得点を奪えず、PK戦に突入。PK戦は1人目と4人目が相手GK/GOLに阻まれ、コパ・ド・ブラジルを2回戦で後にする。
【全国選手権2部】
コパ・ド・ブラジルの2回戦での敗退、州選手権でのクラシコの0勝5敗の結果を受け、ゼ・ヒカルド監督はクラブに補強を要請するが、財政面に不安のあるクラブは首を縦に振らない。 サポーターもコパ・ド・ブラジル、州選手権の結果に不満を募らせていく中、全国選手権2部が開幕する。
4月8日の開幕節、4月16日第2節を共に1-1の引き分けに終えると、サポーターはクラブへの抗議をエスカレートさせていく。 4月21日、翌日のアウェイでの試合に向けたチームバスが空港に到着し選手スタッフが下車を始めると、サポーターがゼ・ヒカルド監督やキャプテンのネネー(Nenê)を取り囲み抗議する事態に至る。
自らが望む補強が叶えられず、4月21日の出来事が事前に予測できたにも関わらず警備を蔑ろにしたクラブに、ゼ・ヒカルド監督は不信感を募らせていく。
チームは第4節に初勝利をあげ、6月2日の第10節まで勝ち切れないまでも不敗記録を続けていく。 しかし、第10節終了後、クラブへの不信感が拭えないゼ・ヒカルド監督は清水エスパルスからの監督就任要請を受けヴァスコを辞任。4勝6分、得点8失点3、昇格圏内の4位という成績を残しヴァスコを後にする。
エミーリオ・ファーロ(Emílio Faro)氏が監督代行として第11節(6月7日)ナウチコ戦の指揮を執り、今シーズン初めて3得点を奪い3-2で勝利をあげると、翌第12節(6月12日)の首位クルゼイロとの一戦は1-0で勝利し、首位との勝点差を4に詰める。
クラブは6月14日にマウリシオ・ソウザ(Maurício Souza)氏と契約。マウリシオ・ソウザ氏は、フラメンゴ下部組織の監督を長年務め多くの若手選手を育成しトップチームに送り出してきた一方、トップチームの監督しては経験の浅さが不安として残った。
マウリシオ監督は6月18日の第13節ロンドリーナ戦から指揮を執ると2連勝を飾り幸先のいいスタートを切る。しかし、クラブ幹部やサポーターが望む攻撃的なサッカーを推し進めようとするあまり攻守のバランスが崩れてしまう。6月29日第15節で初黒星を喫すると、7月23日第20節ヴィラノヴァ戦での0-1の敗戦を最後に8試合3勝2分3敗の成績で解任される。
再びエミーリオ・ファーロ監督代行が指揮を執り、もともと20歳前後の若手が多いイレブンに、補強が望めない状況でさらに若手を起用。昇格圏内を維持する3勝1分4敗の成績を収める。
9月8日にクラブはジョルジーニョ(Jorginho, 1994W杯優勝メンバー全試合出場, 1995-1998鹿島アントラーズでプレー, 2012鹿島アントラーズ監督)氏とシーズン終了までの契約を締結。ジョルジーニョ監督もまた若手を多く起用し、より攻撃的な戦い方をみせる。 クルゼイロ、グレミオとの昇格争いの直接対決に敗れはしたが、ジョルジーニョ監督は5勝2分3敗の成績を収め、最終節までもつれ込んだものの昇格を果たしシーズンを終えた。
選手権前半 : 9勝 8分 2敗、得点19失点11 選手権後半 : 8勝 3分 8敗、得点29失点25 選手権合計 : 17勝11分10敗、得点48失点36
<チーム内個人成績・記録>
* 参照元:サッカーサイト「Ogol」
記録 | 選手 | 公式戦計 | 全国選手権 | ブラジル杯 | 州選手権 |
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最多試合出場 (1位タイ) | チアゴ・ホドリゲス (Thiago Rodrigues) – GK/GOL | 50 | 36 | 2 | 12 |
(1位タイ) | コンセイソン (Conceição) – CB/ZAG | 50 | 36 | 2 | 12 |
(1位タイ) | エジマール (Edimar) – 左SB/LTE | 50 | 36 | 2 | 12 |
最多出場時間 | チアゴ・ホドリゲス (Thiago Rodrigues) – GK/GOL | 4500 | 3240 | 180 | 1080 |
(2位) | コンセイソン (Conceição) – CB/ZAG | 4409 | 3149 | 180 | 1080 |
(3位) | エジマール (Edimar) – 左SB/LTE | 4048 | 2881 | 180 | 987 |
最多得点 | ハニエウ (Raniel) – FW/ATA | 16 | 10 | 1 | 5 |
(2位) | ネネー (Nenê) – MF/MEI | 12 | 7 | 0 | 5 |
(3位) | アンドレイ・サントス (Andrey Santos) – VOL | 8 | 8 | 0 | 0 |
最多アシスト | ネネー (Nenê) – MF/MEI | 11 | 7 | 1 | 3 |
(2位) | フィゲイレード (Figueiredo) – FW/ATA | 4 | 4 | 0 | 0 |
(3位) | ガブリエウ・ペッキ (Gabriel Pec) – FW/ATA | 4 | 2 | 1 | 1 |
最多デュエル勝利 | アンドレイ・サントス (Andrey Santos) – VOL | – | 192 | – | – |
(2位) | ユーリ・ララ (Yuri Lara) – VOL | – | 175 | – | – |
(3位) | フィゲイレード (Figueiredo) – FW/ATA | – | 150 | – | – |
最多キーパス | ネネー (Nenê) – MF/MEI | – | 66 | – | – |
(2位) | フィゲイレード (Figueiredo) – FW/ATA | – | 22 | – | – |
(3位) | パラシオス (Palacios) – FW/ATA | – | 20 | – | – |
最多CBI | コンセイソン (Conceição) – CB/ZAG | – | 169 | – | – |
(2位) | キンテロ (Quintero) – CB/ZAG | – | 104 | – | – |
(3位) | ユーリ・ララ (Yuri Lara) – VOL | – | 85 | – | – |
※ デュエル勝利 : 一対一でのイーブンボールの奪い合いでボールを獲得すること キーパス : パスの受け手がシュートを打てた時にカウントされる指標 CBI : クリア、ブロック、インターセプト
《 777パートナーズ資本参加 / 2023年に向けて 》
ヴァスコ・ダ・ガマは、2022年9月の総会で会社組織への改編およびその株式の70%を777パートナーズに売却する決議を採決。 (※777パートナーズ:アメリカの投資会社。2021年にジェノア/イタリアを買収。セビージャ/スペイン、スタンダール・リエージュ/ベルギー、レッドスター/フランスなどに出資。)
2023年の監督として、RBブラガンチーノで攻撃的なチームスタイルを構築し、1部昇格2年目に国際大会コパ・スウアメリカーナ準優勝に導いたマウリシオ・バルビエリ(Mauricio Barbieri)氏を招聘。
2022年全国選手権得点王のFW/ATAペドロ・ハウーウ(Pedro Raul, 1996)を筆頭に、代表招集歴のあるGK/GOLイヴァン(Ivan, 1997)、足元の技術が高くビルドアップに優れたCB/ZAGホビソン・バンブー(Robson Bambu, 1997)、左SB/LAEが本職ながらサンパウロで元代表ミランダの横でCB/ZAGとして急成長したレオ(Léo, 1996)、ナシオナル/ウルグアイでレギュラーとしてリーグ優勝に貢献し高さもある右SB/LADプーミッタ・ロドリゲス(Pumita Rodríguez, 1997)、2022年にコリンチャンスでブレークした左SB/LAEルーカス・ピトン(Lucas Piton, 2000)などを獲得(2023年1月13日現在)。
中盤から前線にかけてはVOLアンドレイ・サントス(Andrey Santos, 2004)がチェルシーへ移籍したものの、2022年全国選手権2部で主力として活躍したMF/MEIマルロン・ゴメス(Marlon Gomes, 2003, U-20南米ユース選手権代表)、FW/ATAフィゲイレード(Figueiredo, 2001)、FW/ATAガブリエウ・ペッキ(Gabriel Pec, 2001)、FW/ATAエギナウド(Eguinaldo, 2004)などの下部組織出身の若い選手のさらなる成長が期待される。
一方で、2022年シーズンのほぼ全試合に出場し守備を支えた左SB/LAEエジマール(Edimar, 1986)、CB/ZAGコンセイソン(Conceição, 1989)、攻撃のタクトを振るいチーム内得点王&アシスト王の活躍をみせたネネー(Nenê, 1981)といったベテランが若いチームを支える。
早くに監督を据え、監督の要望に応じた的確な補強を行い(今後も補強の継続を明言)、2023年1月13日に開幕する州選手権を迎える。 全国選手権2部3位からの昇格ながら、監督の戦術が浸透しチーム内の連携が深まれば、十分に上位に食い込む可能性を秘めている。 2023年の戦いぶりに注目したいチームの一つだ。