最新更新日 : 2024/08/30
更新履歴 : 2024/01/16, 2023/08/31, 07/22
ヴィクトル・ウーゴ・ゴメス・シウヴァ
Victor Hugo Gomes Silva
ポジション:ミッドフィルダー/メイオカンピスタ
利き足:左
2004年5月11日生まれ
<クラブ経歴>
≪育成時代≫
リオデジャネイロ市北部のベントヒベイロ地区に生まれる。
6歳でマドゥレイラのサッカースクールでフットサルを始める。後にマラブ、そしてフラメンゴのライバルの一つ、ヴァスコダガマへとスクールを替え、ヴァスコダガマでフットサルからサッカーに転向する。
2017年、12歳の時にフラメンゴの下部組織に入団、それまでは左SBやボランチとしてプレーしていたが、トップ下にポジションを替える。
フラメンゴでは次々とカテゴリーを昇格していき、2020年には16歳にしてU-20チームでプレーし、1得点を記録する。
2021年はU-17カテゴリーの全国選手権とコパ・ド・ブラジルを制覇。 U-17コパ・ド・ブラジルでは2位に5得点の差をつける15得点を記録し得点王に輝くなど、中盤の選手ながら32試合27得点を記録。
≪フラメンゴ≫
– 2022 –
2022年、ポーランド代表を率いていたパウロ・ソウザ(Paulo Souza)氏がフラメンゴの監督に就任すると、1月に開幕した州選手権にベンチ入り(試合出場なし)。 その後、U-20カテゴリーの州選手権で4試合連続得点を記録すると、再びトップチームに招集。
2022年5月1日、コパ・ド・ブラジル3回戦アウトス戦1stレグでプロデビューを迎える。 後半24分、1-1の同点という状況でピッチに送り出される。後半34分、ダヴィ・ルイス(Davi Luiz)が直接狙ったFKはゴールポストに阻まれるが、その跳ね返りのボールがゴールラインを割りそうになるところをヴィクトル・ウーゴが掻き出し、ジョアン・ゴメス(João Gomes)にパス。ジョアン・ゴメスがそのパスをワンタッチでゴールに突き刺し勝ち越し点をあげる。ヴィクトル・ウーゴはプロ出場時間10分にしてプロ初アシストを記録する。
2022年5月11日のアウトス戦2ndレグは後半28分に交代出場。 後半41分、PA内左からのホジネイ(Rodinei)の山なりのクロスボールをファーサイドで後ろに下がりながら頭で合わしプロ初得点を記録。自身の18回目の誕生日を自らのプロ初ゴールで祝う。
その後、6月の初めにパウロ・ソウザが解任。ドリヴァウ・ジュニオール(Dorival Júnior)氏が監督に就任するとしばらく試合から遠ざかる。
7月2日全国選手権第15節アウェイでのサントス戦。 ドリヴァウ・ジュニオール監督のもとでの初めての試合出場はプロ初のスターティングイレブン、本職ではないセグンド・ボランチとして抜擢される。 この試合で攻守のつなぎ役を務め、守備でもマークやスペースを埋めるポジショニングで監督の期待に応えると、以降は、セグンド・ボランチ、スリーボランチの一角として交互に訪れるリベルタドーレス、コパ・ド・ブラジル、全国選手権の連戦にスタメンや途中交代で試合に起用されていく。
7月30日、第20節ホームでのアトレチコ・ゴイアニエンセ戦。 前半20分、ハーフライン付近の右サイドライン際でボールを受けるとライン際をドリブルで駆け上がる。そのままドリブルで相手SBを振り切り中に切れ込むと、中央を駆け上がるラザロ(Lázaro)を見ながら相手GK目掛けてグラウンダーのパス。ラザロが相手GKの手前に入りゴールを決める。ヴィクトルはアシストを記録。 前半ATには自陣からのカウンターで中央を抜け出し、斜め後ろからの速いパスを太ももでトラップ、GKとの一対一をふわりと浮かしたシュートでゴール。大観衆の中、フラメンゴの本拠地・マラカナンでプロ初ゴールを記録。 この日の活躍で全国選手権第20節の最優秀選手に選出。 ヴィクトル・ウーゴは、この試合が監督やチームメイトからの信頼を勝ち得た試合だと後に述懐している。
その後、コパ・ド・ブラジル決勝戦は1stレグ、2ndレグともに難しい試合ながらいずれも途中交代出場、リベルタドーレス決勝戦も途中交代で出場し、いずれの大会も優勝の瞬間をピッチの上で迎える。 全国選手権も、第15節以降の24試合のうち21試合(うちスタメン出場17試合)に出場を果たし、2022年の日程を終了する。
– 2023 –
2023年1月13日、フラメンゴのクラブW杯出場のため繰り上げて開催された州選手権第5節アウダックスRJ戦。 前半19分、空中戦で相手選手と接触、頭部を強打しピッチを退き至急検査が行われる。検査の結果、頭部に異常は見られなかったものの、翌朝右膝と右足に痛みを訴え再検査、その結果右足小指の付け根に骨折が見つかる。
2023年4月1日、リベルタドーレス第1節アウカス/EQU戦で復帰を果たすと、チームの不振もあり若手選手の出場機会は縮小し、チームの不振が続く中、全国選手権第5~7節まで先発に抜擢され3連勝に貢献。 チームは全国選手権で首位ボタフォゴに大きく勝点差を拡げられ、リベルタドーレスとカップ戦に重点を置くようになる。その中、ヴィクトルはリベルタドーレス第5節ラシンクラブ/ARG戦、第6節アウカス戦で2試合連続ゴール。コパ・ド・ブラジルは準々決勝以降のホーム&アウェイの計6試合すべて(うち先発5試合)に出場する。
10月に入ると、ホルヘ・サンパオリ監督が解任され、2022W杯代表監督のチチ(Tite)氏が監督に就任。すると、出場機会は激減。チチ監督が指揮を執った12試合はわずかに5試合(すべて途中出場)123分の出場に止まった。
– 2024 –
2024年1月16日、フラメンゴより2028年末までの契約延長が発表。
監督交代後の起用は少ないものの、チームはMFエヴェルトン・ヒベイロ(Éverton Ribeiro, 1989)が退団。6月開幕のコパ・アメリカでは、ウルグアイ代表MFデ・アラスカエッタ(De Arrascaeta, 1994)、ウルグアイ代表MFデ・ラ・クルス(De la Cruz, 1997)、チリ代表VOLエリキ・プルガール(Erick Pulgar, 1994)のチーム離脱が見込まれるため、2024年はインサイドハーフやセグンドボランチとして多くの出番が期待された。
しかし、1月17日州選手権開幕節では後半24分に交代出場、2月10日第3節にて先発に起用されたものの、以降は準決勝、決勝の各H&Aの試合を含め、7試合に10分前後の出場のみ。
リベルタドーレスでは標高2680mの高地での控え選手主体のアウェイ試合にて先発に起用されたものの、全国選手権開幕後も、コパ・ド・ブラジルでも、出場機会は僅かなものに限られる。
コパ・アメリカ開催期間には同時にケガ人が相次いでいたが、1試合に先発で起用されたものの10分前後のプレーやベンチを温める試合も多く、満足のいくプレー時間を貰うことができない。
2024年8月30日フラメンゴはサウサンプトン/ENGから2023/24年はユヴェントス/ITAでプレーしたMFカルロス・アルカラス(Carlos Alcaraz, 2002)の獲得を発表。それに先立ってヴィクトル・ウーゴのギョズテペ(Göztepe)/TURへの期限付き移籍が結ばれていた。
≪ギョズテペ(Göztepe)/TUR≫
– 2024/25 –
2024年8月30日フルミネンセよりギョズテペへの一年間の期限付き移籍が発表。同契約には満了時の買取オプションが附されている。
≪クラブ試合記録≫
シーズン | 所属 | 大会 | 試合 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2022年(18歳) | フラメンゴ | リベルタドーレス | 8 | 76 | 0 | 0 |
全国選手権 | 21 | 1261 | 2 | 3 | ||
コパ・ド・ブラジル | 8 | 102 | 1 | 1 | ||
合計 | 37 | 1439 | 3 | 4 | ||
2023年(19歳) | フラメンゴ | リベルタドーレス | 6 | 263 | 2 | 0 |
全国選手権 | 30 | 1268 | 1 | 2 | ||
コパ・ド・ブラジル | 8 | 360 | 0 | 0 | ||
州選手権 | 2 | 34 | 0 | 0 | ||
合計 | 46 | 1925 | 3 | 2 | ||
2024年(20歳) | フラメンゴ | リベルタドーレス | 2 | 54 | 0 | 0 |
全国選手権 | 10 | 257 | 0 | 0 | ||
コパ・ド・ブラジル | 1 | 1 | 0 | 0 | ||
州選手権 | 9 | 144 | 0 | 0 | ||
合計 | 22 | 456 | 0 | 0 | ||
2024/25年(21歳) | ギョズテペ/TUR | |||||
合計 |
イタリック斜体は2024年8月30日現在の記録
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。
<代表経歴>
2018年9月、14歳ながらU-15カテゴリーで世代別代表として初めて選出される。
2022年11月、翌年のU-20南米ユース選手権に向けた最後の国際試合となるU-20チリ代表との親善試合の2試合に出場。
2022年12月8日に発表された2023年U-20南米ユース選手権の代表メンバーに選出。しかし、チーム事情により代表辞退。
<プレースタイル>
フラメンゴ入団時から身体的に恵まれていたが、フラメンゴでは通常のトレーニングのみならず、筋力トレーニングや心理トレーニングが施される。常に実際年齢よりも上のカテゴリーでプレーするが、フィジカルで当たり負けることもほとんどなく、常に落ち着いたプレーで実力を発揮する下地が培われている。
セグンド・ボランチからウィングまでの攻撃的なポジションをこなす高いユーティリティ性を持つ。 U-17カテゴリーでは中盤のポジションながら多くのゴールを量産。トップチーム昇格後も短いプレー時間でゴールやアシストを記録するなどゴールの嗅覚も高いものを持っている。 パウロ・ソウザ監督からは視野の広さや状況判断力を認められていたが、ドリヴァウ・ジュニオール監督のもとでボランチに起用されたことで守備面でのエリア管理を習得。守備面、攻撃面の両面で試合展開を読む力が養われ、日々成長を遂げている。
<エピソード>
シーズン終了後に受けたインタビューで、プロデビューを果たし、コパ・リベルタドーレスとコパ・ド・ブラジルのタイトルを獲得した2022年について尋ねられると、まだ10%しか目標に到達していないと答えた。 というのも、将来的にはフラメンゴでブラジル全国選手権を制し、ブラジル代表としてW杯に優勝し、世界最優秀選手に選ばれ、世界最高峰に立つ道のりのスタート地点に過ぎないからだ。 夢は限りなく大きいが、その道のりは1日1日の積み重ねで、少しずつでも日々成長することが重要だと話している。
<ダヴィ・ルイスの存在>
フラメンゴでは、下部組織から将来を嘱望される選手が次々にトップチームに昇格し、同年代だけでなくすでに実績を残す選手たちとの熾烈な競争に身を置いている。
その中で、2014W杯ブラジル大会ではレギュラーを務め、チェルシー/イングランドやパリ・サン・ジェルマン/フランス、アーセナル/イングランドなどでプレーしたダヴィ・ルイス(David Luiz, 1987)選手の存在がとても大きいとヴィクトル・ウーゴは話す。
ダヴィ・ルイスは、ヴィクトルがトップチームに昇格するとその日のうちに話しかけたという。そして、ヴィクトルが自分をトップチームに引き上げてくれた監督が解任され、新しい監督が就任し、なかなか試合に出られない不安な状況の時には、ヴィクトルの話に熱心に耳を傾けた。そして、ヴィクトルはそのおかげで、焦燥感から抜け出し、冷静さを保ち、自分や周りへの信頼を忘れずいることができたという。
マテウス・フランサが出場機会が増えつつある中でケガにより戦列を離脱した際にも、相談に乗り交流を深めるなど、ダヴィ・ルイスは若い選手に気をかけ、不安や逆境に苛まれた時には話に耳を傾け、乞えばいつでもアドバイスをしてくれる、父親のような存在だという。
<雑感>
ヴィニシウス・ジュニオール(Vinícius Júnior, 2000)、ルーカス・パケター(Lucas Paquetá, 1997)など、近年多くの将来を嘱望される選手を輩出するフラメンゴの下部組織。通常のトレーニングのみならず、筋力トレーニング、精神面のバックアップ、食事管理など多くの側面で体制が確立されている。
そして、トップチームには、上記のダヴィ・ルイス以外にも、2022W杯ブラジル代表エヴェルトン・ヒベイロ(Éverton Ribeiro, 1989)、同ペドロ(Pedro, 1997)、2022W杯ウルグアイ代表デ・アラスカエッタ(De Arrascaeta, 1994)、スペイン、ドイツ、イタリアのそれぞれでリーグ制覇を経験する元チリ代表アルトゥーロ・ビダル(Arturo Vidal, 1987)など、世界を知る経験豊かな選手が揃っている。
そのフラメンゴにあって下部組織から常に上のカテゴリーに身を置き、中盤ながら類まれな得点感覚を身につけ、トップチームに昇格してからはボランチとして大局的な視野と一対一の接点のその先にあるプレーを読み取る能力にさらに磨きをかけているヴィクトル・ウーゴ。 世界を知る選手のプレーを身近に学び、実際に話をして学ぶ機会にも恵まれている。
1月に足の小指の付け根を骨折し暫く戦線を離脱するが、ボランチのジョアン・ゴメスのヨーロッパ移籍もあり、2023年は試合出場時間も大幅に増えるに違いない。
バロンドールのブラジル人受賞者は、2007年のカカー(Kaká, 1982)以来生まれていない。ヴィクトル・ウーゴ自身は少し冗談気味にブラジル代表としてW杯に優勝し、世界最優秀選手に選ばれ、世界最高峰に立つことが夢だと話すが、今のプレースタイルを日々研ぎ澄まし、今後のチーム経歴次第では単なる夢に終わることのない、それだけの器を持った選手だと私個人は感じている。
<移籍関連情報 2023.08,31> (ブラジル標準時間2023年8月31日12時26分、ブラジル紙「GE」の記事より)
ウルヴァーハンプトン/ENGが、ヴィクトル・ウーゴ選手の獲得に向け、所属先のフラメンゴに対し以下の条件を提示。 〇 移籍金2000万ユーロ(約31億5000万円) 〇 将来的な移籍金差益20%相当の権利
しかし、ヴィクトル・ウーゴ自身が、フラメンゴサポーターの誰からも認められる選手となり、フラメンゴでリベルタドーレスやコパ・ド・ブラジルなど多くのタイトルを獲得したいとの思いがあり、欧州移籍は時期尚早と考えていること。さらには、フラメンゴはクラブとして、ヴィクトル・ウーゴが現在のチームで更なる成長が見込めること、および、2023年の選手売却収入予算を超過達成(予算6140万レアルに対し実績約3億レアル)していることなどを理由に、今回の交渉に断りを入れた模様。
ただし、すでにヴィクトル・ウーゴは英語の習得に向け英会話の勉強中。元チェルシー/ENG所属CBダヴィ・ルイスのアドバイスもあり、フラメンゴ公式サイトの英語版では、自身のプロフィールを英語で紹介。英語の実力は上級者クラスとのこと。
(2024年8月30日 追記)
2024年8月30日に一年間の期限付き移籍が発表された。移籍先はトルコ1部のギョズテペ、契約満了時の買取オプションが附されている。
デビュー以来、多くの監督にその潜在力を認められ、多くの出場機会を得ていたが、チチ(Tite)監督の戦術に約1年弱の期間で自らのプレースタイルを適応させることができなかった形だ。
フラメンゴの現体制では居場所がなくなった現在、トルコで自らのサッカースタイルを前面に出し、その中でチーム戦術に適応し、一年後にはギョズテペに買取オプションが行使されてもらいたい。期限付き移籍時点で弱冠20歳。少し遠回りにはなるが、ギョズテペから西ヨーロッパの強豪クラブへのキャリアアップを果たすことは不可能ではない。