パトリッキ・ランザ (Patryck Lanza)

投稿者: | 2022年11月4日
最新更新日:2024/02/03
情報更新 : 2023/11/29, 05/03, 03/08
パトリッキ ランザ サンパウロ ブラジル サッカー 若手 CBFリスト
サイドバック

パトリッキ・ランザ・ドス・ヘイズ

Patryck Lanza dos Reis

ポジション:左サイドバック/ラテラウ・エスケルド

利き足:左

2003年1月18日生まれ

<幼少期>

 サンパウロ州内陸部のモジミリン市に生まれたパトリッキ・ランサは、物心をつくと叔父とボールを蹴りあっていた。
 やがて地元のスポーツクラブで多くの大会に出場し多くのゴールを奪い地元で知られるようになる。父は「パトリッキはU-11の大会に9歳で出場して、ボレーでゴラッソを決めたんだ。みんなびっくりしていたね。すると、いきなりスポーツクラブの先生が私の方に振り向き、涙ながらに、「あなたの息子は宝だ。そう時間もかからずにきっと代表まで昇り詰めるだろう。」って言うんだ。」と当時を振り返った。

<クラブ経歴>

≪育成時代≫

 その後、パトリッキはサンパウロFCモジミリンサッカースクールに入団する。パトリッキはこのスクールでも多くの大会で得点王となる。そして、サッカースクールの校長の勧めで一度目のサンパウロFC入団テストを受け、サンパウロFCのスカウティングの対象となった。
 2014年、サンパウロFCが提携するアトレチコ・グアスアーノのU-11でプレー。
 2016年、サンパウロFCのU-13チームでデビューを飾る。遂にサンパウロFCの下部組織に呼ばれたのだ。
 サンパウロFCに入ると間もなく左サイドバックにコンバートする。「まだまだ攻撃の才能のすべてを出し切っていない。これからもさらに輝くよ」モジミリンサッカースクールの校長はこう請け負った。
 2018年、左サイドバックとしてU-15代表に自身初の世代別代表に招集。これを機に、2019年南米U-17選手権、同年U-17W杯など、繰り返し世代別代表に招集されることになる。
 2019年11月には、U-17W杯での優勝を手土産にの数日後にはU-17サンパウロ州選手権の優勝をかけたパウメイラスとの試合でペナルティ戦の最終キッカーとしてチームを優勝に導く。
 同年はさらに、トップチームの監督フェルナンド・ジニース(Fernando Diniz)に呼ばれ、12月8日の全国選手権最終節CSA戦に16歳にしてベンチ入りを果たす(出場なし)。2020年、2021年は、トップチームでのベンチ入りの機会はあったが試合に出場する機会に恵まれず、それぞれU-17、U-20のカテゴリーでプレーする。

≪サンパウロ≫

– 2022 –

 2022年7月17日、遂にトップチームでの初出場の機会を得る。相手はフェルナンド・ジニース監督率いるリオデジャネイロの強豪フルミネンセ。左サイドバックとしてスターティングイレブンに名を連ねる。
 5月にフルミネンセの監督に就任したフェルナンド・ジニースは、ボールを握ると相手陣の左右いずれかの半面にコンパクトに選手がポジショニングニングし、有機的に動きながら細かいパスを繋いでゴールに迫る戦術を落とし込んでいた。
 そして、この試合では執拗に右側、つまり、左サイドバックのパトリッキのサイドでボールを繋ぎ、サンパウロを押し込んでいった。
 パトリッキはディフェンスに終始する。10回のパス機会のうち、9本を後ろまたは横にだすという本来の攻撃的なプレーをみせることなく、GKの負傷交代にあわせて前半29分にピッチを去ることとなった。

– 2023 –

 2023年、2月12日のU-20南米ユース選手権決勝ラウンド最終戦を終え帰国すると、2月15日州選手権予選ラウンド第9節にベンチ入り。
 2023年2月21日第10節サンベント戦、後半28分にピッチに立つと、後半45+5分に右サイドライン際のFKのキッカーを務める。左足で繰り出されたボールは前年チーム得点王カレリ(Calleri, 1993)が頭で合わせ得点。パトリッキはアシストを記録。




 2023年全国選手権が開幕すると、4月22日第2節アメリカ・ミネイロ戦に先発起用されるが後半14分に交代。その後は、カップ戦を中心に試合に起用されるが起用数は多くはなく、7月には右足首にケガを負い2か月戦列を離れる。10月にはU-23代表としてパンアメリカン競技大会で全試合フルタイム出場を果たすが、9月13日全国選手権インテルナシオナウ戦の後半開始時の交代出場以来、クラブでの試合からは遠ざかっている。

≪クラブ出場試合記録≫

シーズン所属大会試合出場時間得点アシスト
2022年(19歳)サンパウロ全国選手権12900
 合計12900
2023年(20歳)サンパウロコパ・スウアメリカーナ211000
全国選手権637600
コパ・ド・ブラジル29700
州選手権23001
 合計1261301
2024年(21歳)サンパウロ
 合計
イタリック斜体は、2024年2月3日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<代表(世代別含む)経歴>

 初めての代表招集は2018年11月、U-15代表として、翌2019年2月に行われる予定のイングランド、スペイン、フランスとの4ヵ国対抗戦に向けた招集だった。しかし、その大会の直前に監督に呼ばれ、U-17代表に呼ばれる可能性があることを告げられた。
 2019年3月、U-17南米ユース選手権の舞台に立った。チームは2勝1敗1引分けで決勝トーナメントに進めず敗退したが、パトリッキは4試合すべての試合にフル出場した。コロンビア戦ではゴールも記録。
 同年10月には、2019 FIFA U-17W杯代表メンバーに選出される。準々決勝のイタリア戦、開始6分に左インサイドハーフのペドロ・ルーカス(Pedro Lucas, 2022年7月26日, 現グレミオ)とのワンツーの戻りをペナルティエリア左外で受けると、そのままエリアに侵入、利き足の左足でゴールネットに突き刺した。
 結局、U-17南米ユース選手権に続き、U-17W杯も全7試合に出場。出場時間は619分、1ゴールを記録し、チームの大会制覇に貢献した。世代代表の初招集から僅か1年で世界一の称号を勝ち取った。
 2021年11月、アメリカで開催されたU-18レヴェレーションズ杯に招集。
 2022年に入ると翌年1月に開幕するU-20南米ユース選手権に向けた代表争いが熾烈になる。
 6月に開催されたパラグアイ、エクアドル、ウルグアイとのU-20国際親善大会代表メンバーに選出。初戦パラグアイ戦、3戦目のウルグアイ戦にスタメン出場。2戦目のエクアドル戦は後半開始時からの途中交代出場。
 9月に開催されたアルゼンチン、ウルグアイ、ウズベキスタンとのU-20国際親善大会代表メンバーに選出。初戦アルゼンチン戦にスタメン出場。2戦目ウルグアイ戦、3戦目ウズベキスタン戦では、いずれも後半開始時からの途中交代出場。
 11月17日、20日に開催された、U-20南米ユース選手権に向けた最後の国際親善試合には招集外となる。
 2022年12月8日、2023年1月19日に開幕するU-20南米ユース選手権代表メンバーが発表。U-20代表に選出される。
≪2023年U-20南米ユース選手権≫
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-20代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日対戦
相手
試合
結果
出場
時間
得点アシ
スト
2023/01/19予選R第1節ペルー3 – 09000
2023/01/23予選R第3節アルゼンチン3 – 18900
2023/01/25予選R第4節コロンビア1 – 1
2023/01/27予選R第5節パラグアイ2 – 1800
2023/01/31決勝R第1節エクアドル3 – 19000
2023/02/03決勝R第2節ベネズエラ3 – 08700
2023/02/06決勝R第3節パラグアイ2 – 09001
2023/02/09決勝R第4節コロンビア0 – 09000
2023/02/12決勝R第5節ウルグアイ2 – 08100
19 – 462501
予選R第1節ペルー戦
 初戦の緊張からかチーム全体にミスが続く不安定な立ち上がりの中、守備では適切なカバーリングや堅実なプレーでチームに落ち着きをもたらす。攻撃面では積極的に攻め上がり、左サイドで中盤のギリェルミ・ビロ、FWアレキサンデルとのパス交換から複数のチャンスを作り出す。
予選R第3節アルゼンチン戦
 試合開始間もなく、逆サイドPA入口に駆け上がるアルトゥールへ、ハーフウェイ付近サイドライン際から得意の精度の高いロングパスを決める。この試合は早い時間帯に先制点をあげたこともあり、初戦に見せた積極的な攻め上がりは自重。守備では一度カウンターからの速い攻撃で裏を取られシュートに持ち込まれるが、危険な場面はこの場面のみ。
決勝R第2節ベネズエラ戦
 前半40分に右サイドからふわりと上げられたクロスに対し走り込んできた相手FWに競り負ける。しかし、それでも腕や体を当て相手FWのバランスを崩しヘディングシュートをジャストミートさせず、ボールは枠外へと流れる。
 前半45分には、サイドライン際からヴィトル・ホッキへクロスを供給。ヴィトル・ホッキはドンピシャのタイミングで頭に合わせたが相手GKの好セーブで得点にならず。
決勝R第3節パラグアイ戦
 前半10分、最終ライン近くまで下りてきたアレキサンデルと替わるようにサイドライン際を高い位置にあがると、アレキサンデルからパスを受ける。ボールを受けるとゴール前逆サイドへクロスボールを供給。鋭角に切れ込んできたジオヴァーニがフリーで頭に合わせ、パトリッキはアシストを記録。
 大会を通じて、左サイドからの攻撃に多く関与。得意のクロスやサイドチェンジで決定的なチャンスを作り出す。
 守備では、CBや中盤の選手と組織的に対応。一対一の守備でも綻びを見せず、セットプレーでは高さはないものの体を上手く使い決定的な場面を許さない。一方で、相手のカウンター攻撃や逆サイドから自身の裏を突かれ、スピードで振り抜かれシュートまで持ち込まれるシーンがいくつか見られた。
 全体的には、ミスが少なく落ち着いたプレーでチームに安定感をもたらす。2019年U-17南米ユース選手権に引き続き、レギュラーとして大会優勝に貢献。攻守にこの世代屈指の実力を見せつけた大会となった。

≪2023年パンアメリカン競技大会≫

 2023年9月22日発表の2023パンアメリカン競技大会U-23代表に招集。
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-23代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日対戦
相手
試合
結果
出場
時間
得点アシ
スト
2023/10/23予選第1節アメリカ合衆国1 – 09000
2023/10/26予選第2節コロンビア2 – 09000
2023/10/29予選第3節ホンデュラス3 – 09000
2023/11/01準決勝メキシコ1 – 09000
2023/11/04決勝チリ1 – 1
PK: 4-2
12000
 合計8 – 148000
決勝戦の延長戦を含め、全試合フルタイム出場を記録。攻撃面では戦術上の制約で思い切ったオーバーラップなど攻撃参加の機会は少なかったが、守備に重点が置かれた起用に応え、チームの5試合1失点の堅守に貢献。サイドでの一対一の対応や、逆サイドからの攻撃やセットプレーではゴール前に絞った守備。メキシコ戦前半21分のピンチを防ぐプレーを見せた。

2024年パリ五輪南米予選 (辞退)≫

 2023年12月21日にCBFより発表された2024パリ五輪南米予選(2024年1月20日~2月11日)U-23代表選手、23選手(GKは3選手)の一人として選出された。しかし、クラブ事情により代表辞退。

<エピソード、雑感 etc.>

 下部組織では、代表での試合も含め、フリーキック、コーナーキックのキッカーを務めていた。正確なサイドチェンジや豪快なミドルシュートを打つキック力もある。
 トップチームでのトレーニングを経験してからは、栄養管理士やフィジカルトレーナーをつけ、フィジカルコンディションにも注意を向け始めた。
 2019年には、U-17代表への初招集に続き、レギュラーとしてU-17南米ユース選手権の全試合に出場。FIFA2019U-17W杯でもレギュラーとして全試合に出場し大会制覇を果たすなど、大躍進の一年を過ごす。
 一方、2022年には、スターティングイレブンとして迎えたプロデビュー戦を、前半途中で交代するという屈辱を経験する。
 10代にしてサッカー選手としての栄光と挫折を味わった左利きのサイドバックは、今後どのように成長していくのだろうか。

2023/03/08 追記
 2023年U-20南米ユース選手権では、国を代表する戦いに相応しいプレーでチームの大会制覇に貢献。
 プロデビュー戦でフルミネンセに翻弄された守備が強く印象に残っていたが、U-20南米ユース選手権では守備でのポジショニングや一対一の対応が安定しており、印象が一気に変わった。
 しかし、クラブではあまり出場機会に恵まれていない。個人的な感想だが、ホジェリオ・セニ(Rogério Ceni)監督は、スピードや球際での強さや激しさなどフィジカル面での優位性を求める傾向があるように思われる。そして、ある報道によるとパトリッキは構想外に近い位置づけにあるという。
 クラブ方針、監督が採用する戦術、チームの選手構成や対戦相手との力関係、選手自身の性格やプレースタイル、チーム内での相対的な長所や短所など、選手が試合に出場し活躍するためには多くの要素が強く絡み合う。だから、移籍をきっかけに大きく成長し活躍する選手や、一方で、実績から大きく期待され移籍したものの一気に出場機会を減らし「過去」の選手として世間に扱われるような選手もいる。
 パトリッキは、U-17代表監督ギリェルミ・ダラ・デア(Guilherme Dalla Déa)氏や、U-20代表監督ハモン・メネゼス(Ramon Menezes)氏のもとではひと際大きく花開いた。
 パトリッキは、2019年に飛躍的に成長したが、その成長曲線は鈍ったものの2023年時点でもまだまだ止まっていない。サッカー選手としてさらなるキャリアアップを遂げるために、サンパウロFCを去る時が来ているのかもしれない。

2023/11/29 追記
 2023年パンアメリカン競技大会では、U-20南米ユース選手権に続き、守備面での成長がうかがわれた。
 しかし、チームでは、ドリヴァウ・ジュニオール監督就任後も、超攻撃的なカイオ・パウリスタ(Caio Paulista, 1998)、2023年9月のU-23代表モロッコ戦に出場したウェリントン(Welington, 2001)に次ぐ3番手の位置づけで、試合への出場機会はなかなか巡ってこない。
 クラブは2024年に向け、2023年を期限付き移籍でプレーするカイオ・パウリスタの完全移籍を模索、コパ・ド・ブラジル優勝でドリヴァウ・ジュニオール監督の続投の見込みも高く、パトリッキは引き続き出場機会が限られるだろう。
 同世代の中では抜きんでた実力を有するものの、トップチームでは、フィジカルやプレースピード、判断力のスピードに課題があるのかもしれない。プロと育成カテゴリーの違いを埋めるためにも、実戦経験を増やしたい。

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