最新更新日 : 2024/01/26 更新履歴 : 2023/11/29, 08/04, 07/13, 06/16
マテウス・ナシメント・デ・パウラ
Matheus Nascimento de Paula
ポジション:フォワード/アタカンチ
利き足:右
2004年3月3日生まれ
<クラブ経歴>
ブラジル連邦共和国リオデジャネイロ州、州都リオデジャネイロ市の対岸の街ニテロイに生まれる。
≪育成時代≫
2015年、ボタフォゴの傘下にあるサッカースクールを経て、ボタフォゴ育成組織に入団。サッカーを始めた当初は楽しみの一つとしてボールを蹴り、本人も家族もサッカー選手になりたいと思っていたわけではないが、クラブで数多くのゴールを記録、数々のタイトルを手にするようになり、サッカーへの取り組み方が変わっていく。
≪ボタフォゴ≫
– 2020 –
2020年6月、ボタフォゴとプロ契約を結ぶ。FIFAの取り決めに定められている初回契約での最長となる3年間の契約。契約違約金として5000万ユーロが設定される。
2020年9月5日、16歳6か月にして、全国選手権第8節コリンチャンス戦の後半35分、マテウス・バビ(Matheus Babi, 1997)と交代でセンターフォワードとしてプロ初出場を飾る。 その後は、ベンチ入りするものの出場機会を得ることができず、10月にはU-17チームで、11月にはU-20チームでそれぞれ4試合ずつ出場し試合勘を維持。 年が明けた2021年1月17日第30節サントス戦で出場を果たすと、1月20日第31節から2月13日第36節までスタメン出場を果たす。
2月2日第33節パウメイラス戦では、後半15分、ドリブルで上がるルーカス・リマ(Lucas Lima, 1990, 代表歴2016コパ・アメリカ1得点ほか)を背後から追いかけ、ボールを奪い取ると、そこからドリブルを仕掛ける。ハファエウ・ナヴァーホ(Rafael Navarro, 2000)にボールを預け、マークにつくフェリペ・メロ(Felipe Melo, 1983, 代表歴2010W杯ほか)を引き連れ自身はゴール前に上がる。ハファエウ・ナヴァーホはマテウス・ナシメントが作り出したスペースを衝きシュート。これが決まり、マテウスはプロ初のアシストを記録。 第37節、最終節と続けて後半途中から試合に出場。9試合連続出場を果たしてプロ1年目のシーズンを終える。
– 2021 –
2020年度全国選手権終了後の翌週に開幕した2021年州選手権。マテウスは開幕節から途中交代で試合に出場。
2021年4月25日、州選手権グループラウンド第11節マカエー戦、試合終了間際の後半43分、ペナルティエリア内をドリブルで仕掛けるエーニオ(Ênio, 2001)からマイナスのパスを受けると、右足を振り抜きゴール右隅にボールを突き刺し、プロ初ゴールを記録。 育成カテゴリーや世代別代表で数多くのゴールをマークするマテウス・ナシメントだが、プロ初ゴールはプロとして自身20試合目で記録。
州選手権が終わり全国選手権2部が始まるが、チームが優勝争いを繰り広げる中トップチームでの出場機会は限られ、2021年は主にU-20チームの試合に出場する。
– 2022 –
2022年、チームはFW陣の補強を積極的に進めず、マテウス・ナシメントを含めた若いアタッカー陣の成長に期待する。マテウスはその期待に応えるかのように、州選手権では10試合に出場、5得点を記録。
しかし、全国選手権では、90分を通して起用されることはほとんどなく、スタメン出場は僅か4試合、後半途中からの出場機会が多くなる。 全国選手権は23試合に出場するが出場時間は599分に限られ、ゴールという結果を残すことができない。 シーズン終了後には、U-20南米ユース選手権に向けた最終の対外試合となるチリ代表との親善試合に招集されるが、トレーニング中に目にケガ(網膜剝離)を負い、手術を受け2022年シーズンを終える。
– 2023 –
前年末の網膜剥離の手術も成功し、2023年1月に開幕する州選手権に出場。州選手権はチーム15試合のうち10試合に出場、1得点1アシストを記録するにとどまる。
ボタフォゴは、2022年に引き続き2023年もまた、若手選手の躍進に期待しFW陣の積極的な補強に動いていなかった。しかし、全国選手権開幕前にFWジュニオール・サントス(Júnior Santos, 1994)を獲得。8月には元スペイン代表FWジエゴ・コスタ(Diego Costa, 1988)を獲得。 マテウス・ナシメントの出場機会は失われ、全国選手権は6月25日の第12節パウメイラス戦、公式戦では8月23日のコパ・スウアメリカーナ準々決勝1stレグ以来、試合から遠ざかることになり、さらには、9月以降はベンチ入りも果たせない。
2023年初の時点で、まだ18歳とは言え、育成カテゴリーや世代別代表で数多くのゴールを挙げてきた実績に見合った数字を残せていないマテウス・ナシメント。プロ3年目を迎えた2023年は、クラブが期待する成長を遂げることができず、厳しい一年を送ることとなった。
– 2024 –
2024年1月20日リオデジャネイロ州選手権第2節バングー戦の後半23分、FWジャンデルソン(Janderson, 1999)に代わり出場。今季もスタメン争いは厳しい状況が続くが、少しでも多くの時間をプレーし、結果を残したい。
≪シーズン別クラブ出場記録≫
シーズン | 所属 | 大会 | 試合 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2020年(16歳) | ボタフォゴ | 全国選手権 | 11 | 554 | 0 | 1 |
合計 | 11 | 554 | 0 | 1 | ||
2021年(17歳) | ボタフォゴ | 全国選手権2部 | 3 | 79 | 0 | 0 |
コパ・ド・ブラジル | 2 | 91 | 0 | 0 | ||
州選手権 | 10 | 411 | 1 | 0 | ||
合計 | 15 | 581 | 1 | 0 | ||
2022年(18歳) | ボタフォゴ | 全国選手権 | 23 | 599 | 0 | 0 |
コパ・ド・ブラジル | 4 | 302 | 2 | 0 | ||
州選手権 | 10 | 810 | 5 | 1 | ||
合計 | 37 | 1711 | 7 | 1 | ||
2023年(19歳) | ボタフォゴ | コパ・スウアメリカーナ | 1 | 45 | 0 | 0 |
全国選手権 | 5 | 95 | 1 | 0 | ||
コパ・ド・ブラジル | 3 | 155 | 1 | 0 | ||
州選手権 | 10 | 463 | 1 | 1 | ||
合計 | 19 | 758 | 3 | 1 | ||
2023年(19歳) | ボタフォゴ | 州選手権 | 1 | 22 | 0 | 0 |
合計 | 1 | 22 | 0 | 0 |
イタリック斜体は、2024年1月26日現在の記録。 ※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。
<代表経歴>
– 2018 –
2018年9月に2試合開催されたチリ代表とのU-15国際親善試合に招集。 9月27日の試合では、前半37分、空中戦でのこぼれ球に反応し得点。2分後の前半39分、右サイドからのペテルソン(Peterson)のクロスを相手GKが弾いたところを詰め2点目をマーク。 30日の試合では、前半18分、グスタヴォ・バガチーニ(Gustavo Bagatini)からのスルーパスを相手守備ライン裏に抜け出し受けると、ふわりと浮かすシュートでGKの頭上を越し得点。後半6分、自陣からのロングボールに相手ディフェンダーを振り切り、GKの位置を冷静に確認しゴール。 2試合連続で2得点をマークする。
– 2019 –
2019年7月に2試合開催されたパラグアイ代表とのU-15国際親善試合に招集。 7月23日の試合ではスタメン出場から1得点をマーク。26日の試合には後半からの出場。
2019年8月に2試合開催されたチリ代表とのU-15国際親善試合に招集。 8月28日の試合ではスタメン出場。前半16分、後半2分、後半22分の計3得点をマーク。30日の試合にもスタメン出場を果たす。
2019年9月には、ボリビア、ペルー、ウルグアイとのU-15国際親善大会に招集。 この大会では得点をあげることはできなかったものの、3試合すべてに出場。11月に開幕する2019U-15南米ユース選手権に向け一抹の不安を感じ大会を終える。
2019年11月、パラグアイでU-15南米ユース選手権が開幕。 11月23日、招待枠で出場のベルギーとの開幕戦、さっそく2ゴールをマーク。 11月25日第2戦ベネズエラ戦では、0-1でリードされた前半20分、右サイドからのクロスボールにきれいに合わせ同点ゴールを奪う。 11月29日第4戦ペルー戦では、前半5分、左サイドのアンジェロ(Ângelo)からのクロスボールに中央を駆け上がり右足でボレーシュートで先制点。 準決勝、決勝ではゴールを奪うことはなかったが、全7試合中6試合に出場。4得点を記録する活躍でブラジルの大会優勝に貢献する。
– 2020 –
2020年はコロナ感染症拡大による自粛期間終了後の初のU-17代表合宿に招集。
– 2021 –
2021年9月、パラグアイと2試合行われたU-17国際親善試合に出場。9月2日の第1戦で得点を記録。 2021年11月には、メキシコで開催されたU-18レヴェレーションズ杯に選出。11月16日のコロンビア戦で1得点を記録する。
– 2022 –
2022年に入り、6月のパラグアイ、エクアドル、ウルグアイとのU-20国際親善大会に招集。 6月8日のパラグアイ戦では前半23分、ペナルティエリア内で倒されPKを獲得。このPKを自ら決め1点目。前半34分にはカイキ(Kayky)がドリブルでGKをかわしに行ったところを倒されるが、こぼれたボールにマテウス・ナシメントがペナルティエリア外から走り込みゴールネットに突き刺す。 6月10日エクアドル戦は試合開始早々に右サイドヴィトル・ホッキ(Vitor Roque)からのパスを受け、GKの頭を超すシュートで得点。 6月12日ウルグアイ戦では自らのゴールはなかったが、ヒールパスでマルコス・レオナルド(Marcos Leonardo)の3点目を演出するなど、センターフォワードとして全試合出場。全試合で得点に絡む活躍を見せる。
2022年11月、翌年1月に開幕するU-20南米ユース選手権に向けた最後の国際親善試合のチリとの2試合に招集。 11月17日の第1戦にマルコス・レオナルドと交代で試合出場。 11月20日の第2戦に向けたトレーニング中に目に違和感を覚える。検査の結果、網膜剝離と診断。年内に手術を受け成功するも、術後の安静期間を考慮に入れ、U-20南米ユース選手権代表選外となる。
– 2023 –
2023年U-20W杯
2023年4月28日発表の2023U-20W杯代表に招集。
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-20代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日 | 節 | 対戦 相手 | 試合 結果 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2023/05/21 | グループR第1節 | イタリア | 2 – 3 | 26 | 0 | 0 |
2023/05/24 | グループR第2節 | ドミニカ共和国 | 6 – 0 | 24 | 0 | 0 |
2023/05/25 | グループR第3節 | ナイジェリア | 2 – 0 | – | – | – |
2023/05/31 | 決勝R1回戦 | チュニジア | 4 – 1 | – | – | – |
2023/06/01 | 決勝R準々決勝 | イスラエル | 2 – 3 | 43 | 1 | 0 |
合計 | 16 – 7 | 93 | 1 | 0 |
FWマルコス・レオナルドとの交代での出場が続く。 準々決勝イスラエル戦では、延長前半開始直後にセンターフォワードらしいゴールで大会初ゴールを記録。
≪2023年パンアメリカン競技大会≫
2023年9月22日発表の2023パンアメリカン競技大会U-23代表に招集。
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-23代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日 | 節 | 対戦 相手 | 試合 結果 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2023/10/23 | 予選第1節 | アメリカ合衆国 | 1 – 0 | 90 | 0 | 0 |
2023/10/26 | 予選第2節 | コロンビア | 2 – 0 | 87 | 0 | 1 |
2023/10/29 | 予選第3節 | ホンデュラス | 3 – 0 | 45 | 0 | 0 |
2023/11/01 | 準決勝 | メキシコ | 1 – 0 | – | – | – |
2023/11/04 | 決勝 | チリ | 1 – 1 PK: 4-2 | 120 | 0 | 0 |
合計 | 8 – 1 | 342 | 0 | 1 |
体調不良で欠場した準決勝メキシコ戦を除く4試合に出場。 センターフォワードとして、相手ゴール前ではクロスのターゲット、自陣からの攻撃の組み立てではペナルティエリアを離れ、屈強なディフェンダーを抑えながら縦の楔のパスを受けボールを左右に展開し、時には柔らかいボールタッチで前を向いてドリブルを仕掛けるなど、多くのプレースタイルを見せる。 今大会ではサイドに流れるプレーは要求されず、ピッチ中央で存在感を見せつけた。
予選第2節ではMFギリェルミ・ビロの先制点をアシスト。 自らのゴールはなかったが、潜在力の高さを示した大会となった。
<プレースタイル、雑感 etc.>
利き足は右。 身長182㎝の長身ながら細身の体格。足元の技術、パス、シュートの精度が高くアイディアも豊富。
ポジションはセンターフォワード。 ゴール前ペナルティエリアに位置取り、相手ディフェンダーとの空中戦やロングボールのターゲットとなる昔ながらのセンターフォワードではなく、ペナルティエリアからしばしば離れボールを受けに下りたり、ウィングとのパス交換や味方のプレーイングスペースを作るフリーランニングなど、ブラジルよりもヨーロッパで好まれるセンターフォワードのプレーを得意とする。
得点感覚が非常に高く、ゴール前への走り込みやワンプレー先を見据えたポジショニング、こぼれ球への反応で多くの得点をマーク。シュートのアイディアも豊富で、チップキックやGKの股を抜くシュートなどを瞬時に使い分ける。 ペナルティエリア外からは、アウトサイドキックを巧みに使いサイドへボールを供給、中盤の選手とのタベーラや相手の裏をついたヒールキックなど多彩なパスも披露する。
クラブトップチームでは、守備の意識が強すぎるのか、育成カテゴリーや世代別代表でのプレーよりも相手ゴールから離れた位置でのプレーが多いように思われる。しかし、「あと1本パスを出してくれれば」「あのボールがこぼれていれば」と思わせるポジションを取っていることも多く、切っ掛けさえ掴めば得点を量産させていく雰囲気も漂わせている。
ボタフォゴオーナーのジョン・テクスター氏は、傘下のリヨン/FRAやベルギー2部のRWDモレンビークにボタフォゴから複数の若手選手を送り出している。マテウス・ナシメントのセンターフォワードとしてのプレースタイルは、ブラジルよりもヨーロッパで好まれるスタイルだけに、早くボタフォゴで一定の結果を残してヨーロッパ移籍を果たし、ヨーロッパ人監督の就任の可能性が高い、2026年W杯に向けたフル代表への招集を実現させてほしい選手の一人だ。
2023年7月13日の報道によると、ボタフォゴはノッティンガムフォレスト/ENGから獲得オファーを受諾。オーナーのジョン・テクスター氏は移籍金900万ユーロ(約14億円)の条件に満足しておらず、移籍が実現する見込みは低い。 この報道で、ボタフォゴオーナーのジョン・テクスター氏のマテウス・ナシメントへの評価は少なくとも900万ユーロを越えていることが判明。まだ20歳で焦る必要はないが、クラブでも少しずつ結果を残し、自らの市場価値を高め、オーナーが満足するオファーを受けて欧州移籍を叶えたい。 ⇒ 関連記事: 【破談】NフォレストがU-20W杯代表マテウス・ナシメント(Matheus Nascimento)選手の獲得オファー[2023.07.23]
(2023/11/29追記) 2023年のボタフォゴは、センターフォワードではFWチキーニョ・ソアレス(Tiquinho Soares, 1991)の存在が大きく、シーズン途中には元スペイン代表ジエゴ・コスタ(Diego Costa, 1988)が加入、また、スプリントを有効に使う戦術の中で、マテウス・ナシメントのプレースタイルはチーム戦術と乖離する面も多く、2023年はほとんど試合に出場することはなかった。
出場試合数が少ない中、U-20W杯やパンアメリカン競技大会に出場。所々に素質の高さを示すプレーは見せたものの、過去の世代別代表での成績からは大きく見劣る成績で、外部や自分自身の期待をも下回るであろう結果に終えた。
ピッチの中央をプレーエリアとしポジショニングの巧みさからゴールを量産してきたマテウス・ナシメントとプレースタイルは異なるが、サイドに流れ、周りの選手を使いながらも、時には自らがシュートに持ち込むFWチキーニョ・ソアレスのプレーを参考にするなど、2024年はプレースタイルを広げ少しでも出場時間を増やさなければ、高い素質をピッチで披露することはできない。