ガブリエウ・ヴェロン (Gabriel Veron)

投稿者: | 2023年2月16日
最新更新日 : 2024/08/08
更新履歴 : 2024/01/26

ガブリエウ・ヴェロン  若手 ブラジルサッカー パウメイラス FCポルト フォワード ウィング

ガブリエウ・ヴェロン・フォンセッカ・デ・ソウザ

Gabriel Veron Fonseca de Souza

ポジション:フォワード/アタカンチ

利き足:右

2002年9月3日生まれ

<幼少期>

 ブラジル連邦共和国リオグランデドノルテ州州都ナタウから約200㎞内陸に入った人口約6万人の町、アスーに生まれる。
 両親の知人の勧めで、アルゼンチン代表として1998年、2002年、2010年の3度のワールドカップに出場するフアン・セバスティアン・ベロン(Juan Sebastián Verón)からヴェロンと命名。父カルロスは息子に自らの職業であるカウボーイを継いでもらいたかったが、ガブリエウ自身はボールを蹴ることに夢中、母グラシエリが息子の夢を後押しする。

<クラブ経歴>

≪育成時代

 2015年、13歳でガブリエウはナタウに本拠を持つサンタクルス・デ・ナタウの下部組織に入団。
 2017年、パウメイラスのスカウトの目に留まりパウメイラスU-15チームに入団。
 2018年には、U-17チーム、U-20チームでプレー。
 2019年、U-17代表に招集。U-17W杯ではブラジルの優勝に貢献、自らも大会最優秀選手に選出される。

パウメイラス≫

– 2019 –

 2019年11月25日、U-20全国選手権決勝戦で2得点をマークし優勝を飾ると、翌日11月26日に、マノ・メネゼス(Mano Menezes)監督率いるトップチームへ昇格。
 11月28日全国選手権第35節フルミネンセ戦、後半31分にFWウィリアン(Willian, 1986)との交代出場で17歳にしてプロデビューを飾る。
 12月5日、全国選手権第37節ゴイアス戦、後半13分にMFゼ・ハファエウ(Zé Rafael, 1993)との交代出場で自身の2試合目のピッチに立つ。
 後半25分、ガブリエウ・ヴェロンが攻撃の起点となりルーカス・リマ(Lucas Lima, 1990)にボールを預け自らは縦に走りルーカス・リマを追い越す。ルーカス・リマが左サイドのジアン(Jean, 1986)にボールをはたくと、ジアンはダイレクトにゴール前にボールを供給。そこにガブリエウ・ヴェロンが顔を出し、プロ初ゴールを記録。
 後半37分にはペナルティエリア内をドリブルで仕掛け相手ディフェンダーをかわし中央へクロス、ドゥドゥが難なくボールをゴールへ流し込みガブリエウ・ヴェロンはプロ初アシストを記録。
 後半45分には、お返しにドゥドゥがペナルティエリア内での個人技でディフェンダーをかわし、フリーのガブリエウ・ヴェロンへパス。ヴェロンは落ちるいてゴールにボールを流し込み、この日の自身2点目を記録。この試合はガブリエウ・ヴェロンのプロ2試合目、僅か32分間の出場時間で2ゴール1アシストを記録した。

– 2020 –

 2020年、ヴァンデルレイ・ルシェンブルゴ(Vanderlei Luxemburgo)監督のもと、1月に開幕した州選手権での出場機会は限られたものになる。その後、コロナ感染症拡大をうけた自粛期間後の再開に向けたトレーニング中に太ももに筋肉系のケガを負う。
 9月6日全国選手権第8節RBブラガンチーノ戦、後半21分に約半年ぶりとなるピッチに立つと、1得点1アシストを記録。
 翌9月10日第9節でも後半16分からの出場で1ゴールを記録。徐々に出場時間を伸ばしていく。
 10月14日第16節コリチバ戦の敗戦後に成績不振を理由にルシェンブルゴ監督が解任。ポルトガル人アベウ・フェヘイラ(Abel Ferreira)氏が後任の監督に就任。新監督の下でも出場機会を確保しゴール、アシストを記録していくが、このころからケガによる戦列離脱の時間もまた増えていく。

– 2021 –

 2021年4月11日のスーペルコパ・ド・ブラジルの後半15分に出場。2月28日開催の2020年度コパ・ド・ブラジル決勝グレミオ戦1stレグ以来の試合となる。
 4月14日ヘコパ・スウアメリカーナ、後半18分に途中交代出場を果たすが、後半38分に左太ももを痛め交代。その後7月まで戦列を離脱する。
 7月に戦列復帰を果たすが、スタメンにはスピード豊かなドゥドゥ(Dudu, 1992)とホニ(Rony, 1995)が定着しており、後半からの途中出場が続く。やがて出場時間も失っていく。

– 2022 –

 2022年1月23日、州選手権初戦に後半途中から出場。その後の州選手権の3試合を通じて2月8日に開催されるクラブW杯準決勝に向け体調を整えていくが、1月末にコロナ感染症に感染、クラブW杯に登録外となる。
 2月23日ヘコパ・スウアメリカーナ決勝アトレチコ・パラナエンセ戦1stレグに後半26分に交代出場。
 3月2日2ndレグではドゥドゥ、ホニとの3トップでスタメン出場するが後半開始時に交代。
 その後もドゥドゥ、ホニとの3トップを模索しながら、州選手権やリベルタドーレスに出場。
 4月9日に開幕した全国選手権、3トップがアベウ・フェヘイラ監督の期待通りに機能し始めるようになるが、5月に入り再びケガを負い約1か月の戦列離脱。
 6月の戦列復帰後も3トップの一角としてスタメンに起用される。
 しかし、7月18日全国選手権第17節。ホームでのクイアバ戦がガブリエウ・ヴェロンのパウメイラスでの最後の試合となり、後半4分に決めたこの試合唯一のゴールがパウメイラスでの最後のゴールとなった。

FCポルト≫

 7月20日、ガブリエウ・ヴェロンのFCポルト/PORへの移籍が発表される。契約期間は5年、移籍金は約1000万ユーロ。
 パウメイラスは、会長レイラ・ペレイラ(Leila Pereira)氏がシーズン中の選手の移籍・売却を否定しており、アベウ・フェヘイラ監督もガブリエウ・ヴェロンの移籍を引き留めたものの、ガブリエウ・ヴェロンの強い希望により移籍が合意に達した。
 2022年7月23日、モナコ/FRAとのプレシーズンマッチ後半37分に交代出場。FCポルトでのデビューを飾る。
 リーグ戦では後半途中からの出場が続くが、10月16日のカップ戦でスタメン起用。FCポルトでの初得点初アシストとなる1ゴール1アシストを記録。
 2022年12月28日リーグ戦第14節でリーグ戦では初となるスタメン出場を果たすと1アシストを記録。続く第15節(2023年1月7日)、カップ戦(1月11日)にもまたスタメン起用される。
 しかし、1月31日に足首を負傷。3月に復帰したものの、ベンチを温めることが多く。試合への出場は試合終了間際の僅かな時間に限られる。
 2023/24シーズンを目前にしたブラジルでの休暇中に太ももに筋肉系のケガを発症。さらには、引き続き左太もも内転筋群へのケガを発症。クラブは期限付き移籍でのプレー先を模索するようになる。

クルゼイロ レンタル元:FCポルト≫

 2023年12月27日、2024年末までの一年間の期限付き移籍でクルゼイロへの加入が発表される。
 2024年1月26日、クラブは右足の手術予定を発表。パウメイラスやポルトで悩まされ続けたケガがクルゼイロ加入後も完治しておらず、トレーニングへの参加もその日のコンディション次第という状況が続いていたという。
 2024年4月11日コパ・スウアメリカーナ第2節にて後半39分にピッチに立ちクラブデビュー。約10か月ぶりの試合を迎える。以降は、10~30分間の出場を繰り返し、5月30日コパ・スウアメリカーナ第6節にて初先発。続く全国選手権でも4試合連続で先発出場を果たす。
 しかし、クルゼイロでの試合出場数が13試合を迎えても記録上ゴールに関与することがなく、ホームゲームにて交代でベンチに下がる際にはブーイングを浴びるようになる。
 クルゼイロ、フェルナンド・セアブラ(Fernando Seabra)監督は、辛抱強く先発に起用し続けると、6月23日第11節バイーア戦(A)にてクラブ初ゴールを記録。翌第12節(6月26日)ホームでのアトレチコ・パラナエンセでは前半5分にゴールをマークしサポーターからの信頼も獲得。後半32分の交代時には多くの拍手でピッチから送り出された。
 その後も、先発出場が続き、2得点1アシストを記録。
 ところが、7月20日第18節にて左太ももに違和感を感じ前半でベンチに下がると、後日の検査で筋肉系のケガが診断されチームを離脱。
 2024年8月8日現在、7月20日を最後に試合から遠ざかっている。

≪シーズン別クラブ試合記録≫

シーズン所属大会試合出場
時間
得点アシ
スト
2019年(17歳)パウメイラス全国選手権37021
合計37021
2020年(18歳)パウメイラスリベルタドーレス744331
全国選手権2087042
コパ・ド・ブラジル424121
州選手権635001
合計37190495
2021年(19歳)パウメイラスリベルタドーレス43201
全国選手権1447011
ヘコパ・スウアメリカーナ12000
スーペルコパ・ド・ブラジル13000
合計2055212
2022年(20歳)パウメイラスリベルタドーレス531011
全国選手権1257213
コパ・ド・ブラジル316701
ヘコパ・スウアメリカーナ26400
州選手権1345201
合計35156526
2022/23年(21歳)FCポルト/PORチャンピオンズリーグ34400
プリメイラ・リーガ1738602
タッサ・デ・ポルトガル312411
タッサ・ダ・リーガ27101
スーペルタッサ1300
合計2662814
2023/24年(22歳)FCポルト/POR出場履歴なし
2024年(22歳)クルゼイロコパ・スウアメリカーナ512500
全国選手権1688941
合計21101441
イタリック斜体は、2024年8月8日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<代表経歴>

– 2019年U-17南米ユース選手権 –

 2019年3月22日に開幕したU-17南米ユース選手権に招集。
 予選ラウンドの4試合すべてにスタメン起用される。
 2019年3月24日、チーム2戦目のウルグアイ戦では、後半21分、自陣ゴールライン際からのロングカウンター。ハーフウェイライン過ぎ、スピードに乗ったところでボールを受けるとそのままドリブル、相手GK/GOLとの一対一を冷静にゴールに流し込む。

– 2019年親善試合 –

 2019年7月23日、パラグアイとのU-17親善試合にスタメン出場。
 2019年8月17日、チリとのU-17親善試合にスタメン出場。後半6分、ペナルティエリア入口中央から右を駆け上がるヘイニエル(Reinier)へパス。ヘイニエルがゴールを決めアシストを記録。後半34分にはペナルティエリア内左からマルコス・レオナルド(Marcos Leonardo)が送ったクロスボールに右足を合わせゴール。1得点1アシストを記録。
 2019年10月19日、自国開催の2019U-17W杯に向けた最後の対外試合となるアメリカとの親善試合に出場。後半6分、CB/ZAGエンリ(Henri)からのロングボールを相手SB/LATを振り切り右サイドペナルティエリア入口で受けると、内に切り返し相手CB/ZAGをかわす。そのまま左足で放ったグラウンダーのシュートは相手GK/GOLのニアサイドを抜くゴール。

– 2019年U-17W杯 –

 2019年10月26日に開幕した2019U-17W杯。
 カナダ、ニュージーランド、アンゴラとのグループラウンドでは全3試合にスタメン出場。
 10月26日カナダ戦、前半17分、ペナルティエリア内右サイドで相手選手3人を交わし中央へクロスボールを供給。縦に走り込んだジョアン・ペグロウ(João Peglow)がこれをダイレクトに決めガブリエウ・ヴェロンはアシストを記録。後半22分、ペナルティエリア内右サイドでの相手SB/LATとのイーブンボールの奪い合いに勝ち右足でシュート。ボールはゴールネットを揺らし、この試合1得点1アシストを記録。
 10月29日ニュージーランド戦。前半19分、ペナルティエリア内右サイドでドリブルからディフェンダーを振り抜き中央へクロス。そこに走り込んだカイオ・ジョルジ(Kaio Jorge)がダイレクトに決めアシストを記録。
 11月1日アンゴラ戦。後半31分、ハーフウェイライン付近でドリブルを始めると4人をかわし、GK/GOLと一対一に。冷静にボールをゴールネットに突き刺すゴラッソ。
 11月6日決勝トーナメントベスト16チリ戦。1-2のビハインドで迎えた前半45分、ヴェロンが放ったシュートはGK/GOLに止められるが、そこに詰めたカイオ・ジョルジがGK/GOLに倒されPKを獲得。このPKをカイオ・ジョルジが決め同点。後半20分にジエゴ・ホーザ(Diego Rosa)がミドルシュートのゴラッソを決めチームは準々決勝に進出。
 11月11日準々決勝イタリア戦。後半17分に右サイドからグラウンダーのシュートを放つが相手GK/GOLの好守に防がれる。
 11月14日準決勝フランス戦。0-2で迎えた後半17分、左CKから流れたボールを頭でカイオ・ジョルジに繋ぎアシストを記録。後半30分、ヤン・コウト(Yan Couto)の強烈なシュートをGK/GOLが両手で防ぐ。そのこぼれ球をガブリエウ・ヴェロンがダイレクトにゴールに突き刺し同点。試合は後半44分、途中出場のラザロ・ヴィニシウス(Lázaro Vinícius)がペナルティエリア入口左サイドで切り返しから強烈なシュートを放ち決勝点をあげたブラジルが決勝に進出する。
 11月17日決勝メキシコ戦。前半13分、右ヤン・コウトからのワンバウンドするクロスに右足を伸ばすがうまく合わずボールはゴールを超える。前半29分、左パトリッキからのマイナスのクロスに合わせるが相手ディフェンダーに当たりGK/GOLにキャッチされる。試合は後半21分にメキシコが均衡を破る。後半39分、ブラジルがPKで追いつくと、後半45+2分、右ヤン・コウトからのクロスに途中出場のラザロ・ヴィニシウスが走り込み右足をダイレクトに合わせ逆転。ブラジルが優勝を果たす。
 ガブリエウ・ヴェロンは全7試合に出場、3得点2アシストを記録。
 大会最優秀選手賞を受賞し2019U-17W杯は幕を下ろす。

– 2020年 –

 2020年10月6日および11月24日、2021年2月に開幕が予定されていたU-20南米ユース選手権に向けた代表合宿に招集。(その後、南米ユース選手権は開催中止。)

<プレースタイル、雑感 etc.>

 利き足は右。
 フットサル仕込みの足元の技術を持つ。
 ドリブルはスピードがあり、U-17W杯ではドリブルからのゴラッソを披露。
 スプリント的なスピード、瞬間的なスピードに優れる。
 ペナルティエリア近辺でのポジション取りの動きが巧み。
 相手ゴール近くでの視野も広く、アシストも多く記録。
 自陣深くまでディフェンスに戻る守備への献身性もある。
 頻発するケガ、主に脚部の筋肉系のケガに悩まされている。

 FCポルト移籍後、数試合目の試合後インタビューでセルジオ・コンセイソン(Sérgio Conceição)監督は、ガブリエウ・ヴェロンのスピードやポジショニング、ライン裏やゴールライン際への飛び出しのタイミングなどを褒め称えた。
 しかし一方で、「ブラジル人選手らしいフットサル的な、いわゆる魅せるプレー、派手なプレーを好むが、あまり効率的でない。インサイドキックができる場面ではフットサルのようにスパイク裏を使う必要はない。ブラジルとヨーロッパのサッカー文化は異なるので学んでいく必要がある。」と諭される。
 ブラジル人が好む魅せるプレーは、自己満足のプレー、勝利に直接結びつかない非効率的なプレーとみなす監督はヨーロッパに多く存在する。勝利にのみ邁進するのもプロフェッショナルであれば、観客、サポーターを魅了するプレーを披露するのもプロフェッショナルであると筆者は考えるので、いわゆるブラジル人的なプレーを好むか好まざるかは、まさにブラジルとヨーロッパのサッカー文化、サッカー観の違いだと思う。しかし、事実としてヨーロッパで指揮する多くの監督はいわゆるブラジル人的なプレーをあまり好まない。
 少なからぬブラジル人選手、特にブラジルでサポーターからの支持が厚かった若い選手は、この文化、好みの違いを認識できずに、試合出場の機会に恵まれず、不満を募らせクラブを後にする。
 ガブリエウ・ヴェロンは移籍後間もない時点でコンセイソン監督から厳しいコメントを受けたが、これはヨーロッパのサッカー文化に早く適応することへの期待の表れであり、その猶予を与えられたということだろう。
 コンセイソン監督もプレーヤーとしての資質を認める中、ガブリエウ・ヴェロンにはいち早くヨーロッパのサッカー文化に溶け込み、ヨーロッパ人監督から好かれるプレーを身につけ、ヨーロッパクラブリーグの最前線で活躍する姿をを期待したい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です