ガブリエウ・ピラーニ (Gabriel Pirani)

投稿者: | 2023年3月3日
最新更新日 : 2024/02/16
更新履歴 : 2023/11/29, 08/04

ガブリエウ・コルデイロ・ピラーニ  若手 ブラジルサッカー サントス クイアバ フルミネンセ トップ下 攻撃的ミッドフィルダー

ガブリエウ・コルデイロ・ピラーニ

Gabriel Cordeiro Pirani

ポジション:ミッドフィルダー/メイアセントラウ

利き足:右

2002年4月12日生まれ

<幼少期>

 ブラジル連邦共和国サンパウロ州内陸部に位置する人口10万人に満たない小さな町ペナポリスに生まれる。
 7歳になると、サッカー選手になることを夢見て、サントスFCやサンパウロFCの入団テストを受け始める。
 どちらのクラブでキャリアを始めるか悩むようになるが、当時サントスFCにはU-11カテゴリーがあり、それが決め手となって、サントスFCへの入団を選択する。
 10歳の時にサントスFC下部組織に入団。
 ペナポリスから約550㎞離れたサントス市での生活が始まる。経済的に恵まれない中、父はガブリエウのサッカー選手になる夢を叶えるため、単身でアフリカのコンゴに赴き、現地で4年間働き、家族のサントスでの生活を支える。

<クラブ経歴>

≪育成時代≫

 サントスFCでは順調にカテゴリーを上げていき、2018年7月、16歳にしてサントスFCとプロ契約を締結。
 2019年は、中盤ながらU-17カテゴリーで27試合11得点を記録。U-20チームの試合にも出場。
 2020年、1月に開催されるU-19全国大会カップ戦に出場。
 2020年5月にはトップチームでの試合出場歴がないものの将来性を期待されプロ契約を更新。
 コロナ感染症拡大による自粛期間が明けると、U-20チーム、U-23チームでスタメンとして試合出場を重ね、13試合で5得点1アシストを記録。

≪サントス≫

– 2021 –

 2021年2月25日、トップチームでの全国選手権最終節バイーア戦で後半開始時に交代出場。プロデビューを果たす。
 コロナ感染症拡大による影響で、2020年全国選手権閉幕の翌週に開幕した2021年州選手権。
 2021年2月28日、予選ラウンド開幕節サントアンドレ戦、マルセロ・フェルナンデス(Marcelo Fernandes)監督代行のもと、プロとして初めてスターティングイレブンに名を連ねる。前半25分、ジアン・モッタ(Jean Mota, 1993)とハーフウェイライン付近からゴールに向け走りながらのパス交換でボールを持ち上がり、プロ初得点となるゴールを決める。
 2021年4月6日、19歳の誕生日を目前にしたコパ・リベルタドーレス予備予選サンロレンソ/ARG戦1stレグ、アリエル・オラン(Ariel Holan)監督のもと、トップ下としてスターティングイレブンに抜擢。
 この試合以降、レギュラーの座を獲得する。
 4月26日、アリエル・オラン監督が辞任するが、続くマルセロ・フェルナンデス監督代行、フェルナンド・ジニース(Fernando Diniz)監督のもとでもスターティングイレブンとして起用が続く。
 5月には、直近の活躍が決め手となり、3度目の契約更新。契約期間は2025年末まで延長され、高額な移籍金が設定される。
 フェルナンド・ジニース監督は、ある日の試合後カンファレンスの場で個別にピラーニの潜在力やプレースタイル、日々成長していく姿を称賛。ピラーニへの信頼が日々増していることを話す。
 しかし、9月4日、全国選手権第19節クイアバ戦に敗れるとフェルナンド・ジニース監督が解任。
 後任にファビオ・カリーリ(Fábio Carille)氏が監督に就任。
 攻撃的でボール保持を優先する戦術を採用するフェルナンド・ジニース監督やアリエル・オラン監督と異なり、守備に重点を置く戦術を採用するファビオ・カリーリ監督のもと、スタメンでの起用が減り、途中交代出場が増えていく状況で2021年シーズンが終える。

– 2022 –

 2022年も傾向は変わらず、州選手権が1月に開幕するが、出場時間は僅かなものになる。
 2022年2月18日ファビオ・カリーリ監督が成績不振を理由に解任。ファビアン・ブストス(Fabián Bustos)氏が監督に就任するが、ファビアン・ブストス監督もファビオ・カリーリ監督同様、守備的に試合に入りボールを奪うと少ない手数で攻める戦術を採用。
 ピラーニの試合出場時間は増えることなく、途中交代での出場機会も減っていき、ついにはファビアン・ブストス監督の構想外となる。そして、7月、下位に低迷するクイアバへレンタル移籍が発表。

≪クイアバ レンタル元:サントス≫

– 2022 –

 2022年7月21日、クイアバ移籍後初戦となる全国選手権第18節アトレチコ・ミネイロ戦。
 後半18分に途中交代でクラブデビューを果たすと、試合終了間際の後半45+9分、ゴールライン際からのマイナスのグラウンダーのクロスに後方から走り込みゴール。このゴールでチームは同点に追いつき下位に低迷するチームに貴重な勝ち点をもたらす。
 中3日の7月25日第19節コリチバ戦は後半開始時からの出場。
 7月31日第20節フォルタレーザ戦ではスタメンに抜擢。以降連戦でスタメン起用されるが、8月21日第23節アトレチコ・ゴイアニエンセ戦、前半9分、右足首にケガを負い交代。
 約1か月後に戦列に復帰するが以前のキレは戻らす、復帰後は4試合104分の出場にとどまる。

≪サントス≫

– 2023 –

 2022年シーズン終了後に2023年のサントスの指揮が内定していたオダイール・エルマン(Odair Hellmann)氏の要望で、ピラーニはサントスに復帰。
 しかし、州選手権が開幕してもほとんど出場機会が訪れない。
 2月中旬になると、サントスはピラーニと競合するポジションにルーカス・リマ(Lucas Lima, 1990)を獲得。ピラーニの試合出場はさらに遠ざかることになる。

≪フルミネンセ レンタル元:サントス≫

– 2023 –

 2023年2月28日、フルミネンセからガブリエウ・ピラーニのレンタル移籍による加入が発表される。契約は2023年末まで。契約終了時の買取オプションが設定される(金額は非公表)。
 2021年にサントスでピラーニを積極的に起用、試合後カンファレンスでピラーニの成長を称賛したフェルナンド・ジニース監督が、フルミネンセで攻撃の中心としてタクトを振るうパウロ・エンヒキ・ガンソ(Paulo Henrique Ganso, 1989)のバックアップとして獲得を強く要望した結果の移籍となる。
 2023年3月4日州選手権予選ラウンド第10節バングー戦で後半28分にクラブデビューを果たすと、翌3月8日第11節フラメンゴ戦では後半開始時の出場から後半40分に逆転ゴールを記録。満員のクラシコ「フラフル」でクラブ初得点を記録。
 P・H・ガンソとの使い分けが行われる中でもコンスタントに試合に出場。リベルタドーレス、全国選手権、コパ・ド・ブラジルの主要大会では、チーム25試合のうち18試合に出場(うち8試合先発)する。

≪DCユナイテッド レンタル元:サントス≫

– 2023 –

 2023年7月27日、フルミネンセへの期限付き移籍が解除され、DCユナイテッド/USAへの期限付き移籍での加入が両クラブから発表された。期限は2023年末。契約満了時の買取オプションが設定され、移籍金は約200万USドル(約2億8000万円)。MLSは夏の休止期間に入っており、チームは東地区15チーム9位、再開後のDCユナイテッドの初戦は8月20日、往年の面影がすっかり消えてしまったウェイン・ルーニー(Wayne Rooney)監督の下でのプレーとなる。
 8月20日NYレッドブル戦、トップ下でのスタメン起用でクラブデビューを飾ると、シーズンの残り9試合すべてに先発出場。9月20日アトランタ戦ではクラブ初ゴールを記録。
 2023年10月10日の報道によると、DCユナイテッドは買取オプションを行使する予定とのことだが、2023年11月29日現在、この件に関する続報は見当たらない。

– 2024 –

 2024年1月1日、DCユナイテッドは買取オプションを行使し、ガブリエウ・ピラーニの獲得を発表。契約期限は2025年末、ただし、2026年末、2027年末までのオプション付き。移籍金は130万USドル(約1億9000万円)。

≪シーズン別クラブ成績≫

シーズン所属大会試合出場
時間
得点アシ
スト
2020年(18歳)サントス全国選手権14500
合計14500
2021年(19歳)サントスリベルタドーレス1064211
コパ・スウアメリカーナ418000
全国選手権32178533
コパ・ド・ブラジル641200
州選手権857811
合計60359755
2022年(20歳)サントスコパ・スウアメリカーナ413200
全国選手権34500
コパ・ド・ブラジル11301
州選手権510500
合計1329501
クイアバ全国選手権1043910
合計1043910
2023年(21歳)サントス州選手権22500
合計22500
フルミネンセリベルタドーレス511200
全国選手権939610
コパ・ド・ブラジル415100
州選手権613610
合計2479520
DCユナイテッド/USAメジャーリーグ・サッカー1083710
合計1083710
2024年(22歳)DCユナイテッド/USA
合計
イタリック斜体は、2024年2月16日現在
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<代表(世代別含む)経歴>

2023年パンアメリカン競技大会

 2023年9月22日発表の2023パンアメリカン競技大会U-23代表に招集。
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-23代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日対戦
相手
試合
結果
出場
時間
得点アシ
スト
2023/10/23予選第1節アメリカ合衆国1 – 07500
2023/10/26予選第2節コロンビア2 – 08110
2023/10/29予選第3節ホンデュラス3 – 09000
2023/11/01準決勝メキシコ1 – 09000
2023/11/04決勝チリ1 – 1
PK: 4-2
7000
 合計8 – 140610
守備時はセンターフォワードと並び前線でパスコースを切る動きやプレスを仕掛け、攻撃時は2列目で攻撃の指揮を執る。
予選第2節コロンビア戦では、前半14分に相手陣右サイドでボール奪取。そのままドリブルで縦にボールを持ち上がり、FWマテウス・ナシメントを経由し、MFギリェルミ・ビロのゴールの起点となる。
後半6分には、CBミシェウの対角線上のロングフィードを受けたFWマルキーニョスが縦に仕掛け、その背後に出来たスペースに入ると、FWマルキーニョスが戻したボールをワントラップから振りの速いシュートでゴール右隅に流しいれる。
直接ゴールに絡んだのはコロンビア戦だけだったが、大会を通してサイドアタッカーが縦に仕掛けたスペースを埋め、攻撃の厚みを作り出し、ファーストディフェンダーとして相手ボールにアプローチ、押し込まれた場面ではVOLやSBが相手と対峙する場で挟み込むように守備に走るなど、今大会で託された役割に高い適応を見せ、ブラジルの大会制覇に貢献した。

2024年パリ五輪南米予選

 2023年12月21日にCBFより発表された2024パリ五輪南米予選(2024年1月20日~2月11日)U-23代表選手、23選手の一人として選出された。
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-23代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日対戦
相手
試合
結果
出場
時間
得点アシ
スト
2024/01/20予選第1節対戦なし
2024/01/23予選第2節ボリビア1 – 01900
2024/01/26予選第3節コロンビア2 – 02000
2024/01/29予選第4節エクアドル2 – 12310
2024/02/01予選第5節ベネズエラ1 – 34500
2024/02/05決勝第1節パラグアイ0 – 17000
2024/02/08決勝第2節ベネズエラ2 – 18900
2024/02/11決勝第3節アルゼンチン0 – 17300
 合計8 – 733910
 全7試合に出場。予選ラウンドは第5節ベネズエラ戦を除き途中交代出場。決勝ラウンドはすべて先発出場。
 予選第4節エクアドル戦では、後半30分に逆転ゴールを奪いチームの勝利に貢献。
 このゴールで翌節以降スタメンの座を奪うが、自陣に引いて構える守備隊形を構築するチーム戦術のため、ボールを高い位置で受けることがほとんどなく、攻撃面での活躍は限られたものとなった。
 決勝第2節ベネズエラ戦では相手陣高い位置でのボール奪取から危険な位置でのFKを獲得。このプレーはゴール繋がることはなかったが、守備面での成長の跡が見られた。

<プレースタイル>

 利き足は右。
 フェルナンド・ジニース監督が、19歳(2021年)の時点でサッカーセンスや潜在能力高く評価し、21歳(2023年)でパウロ・エンヒキ・ガンソのバックアップに指名し獲得を強く要望。
 昔ながらの背番号10をイメージさせる選手。
 ポジションは、トップ下が主だが、左右のウィング、偽9番としてもプレー。
 足元の技術、ボールコントロール能力が高い。
 ボールを受ける前に周囲の状況を把握するため、ボールを受けてからのドリブル、パス、シュートの判断が早い。
 左右どちらの足からも精度の高いパスやシュートを繰り出す。
 プレー速度が速いため、攻撃のリズムを生み出すことができる。
 相手の激しいプレス受けた場面やゴール前の混戦でも落ち着いたプレーを見せる。
 守から攻への切り替わった場面や味方がボールを保持する局面では、味方がパスを出しやすい(自分がパスを受けやすい)場所への位置取りが上手い。
 自陣深くまで守備に戻ることはあまりなく、一対一の守備強度はあまり高くない。
 しかし、パスコースを消すポジショニング、相手がボールを受けた直後のボール奪取やパスカットなどは得意なように見える。
 監督が採用する戦術によって、監督からの評価や起用有無の振れ幅が大きく変わるタイプの選手。

(2023/11/29追記)
 2023パンアメリカン競技大会では、守備面での成長が見られた。戦術的視野の広さやボールのキープ力はサントスやフルミネンセ当時の輝きを失っておらず、また、DCユナイテッドへの移籍を通して主力選手としての責任感が強く感じられた。
 アメリカメジャーリーグ・サッカー(MLS)に所属する選手が、代表招集や、ヨーロッパ強豪への移籍、ブラジルに帰って活躍する事例はほとんどない。しかし、ヴァスコ・ダ・ガマ下部組織出身でNYシティFCに在籍するFWタレス・マギノ(Talles Magno, 2002)など、潜在力の高い選手もMLSでプレーしている。
 2023年にはリオネル・メッシがマイアミに加入。2023年にはグレミオでプレーしたルイス・スアレスも、2024年のマイアミ加入の可能性が高い。MLSは興行的にも成功しており、今後は世界的な注目を集める可能性がある。その時には、MLSを代表する選手として名前が上げられるような選手へと成長することを期待したい。(欧州ビッグクラブへの転身でも構わないが。。。)

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