エギナウド (Eguinaldo)

投稿者: | 2023年3月5日
最新更新日 : 2024/08/22
更新履歴 : 2024/02/18, 2023/07/31
エギナウド・デ・ソウザ・レーモス  若手 ブラジルサッカー ヴァスコダガマ フォワード ウィング センターフォワード

エギナウド・デ・ソウザ・レーモス

Eguinaldo de Sousa Lemos

ポジション:フォワード/アタカンチ

利き足:右

2004年8月9日生まれ

<幼少期>

 ブラジル連邦共和国マラニョン州人口約3万人の小さな町モンソンに生まれる。
 幼い頃から、平日は学校とトウモロコシやマンジョッカの栽培、家畜の世話といった家業の手伝いをし、週末は草サッカーに明け暮れる日々を過ごす。
 サッカーの腕前(?)はちょっとしたもので、近隣のクラブの間で有名になり、週末ごとに各クラブはエギナウドを探し回り、エギナウドは日雇いで少々の出場料やサッカー用具と引き換えに(たいていは何の見返りもなくサッカーがしたいからという理由で)サッカーをする。特定のクラブに所属することはなかったが、地域大会にも出場するようになる。
 2020年、リオデジャネイロ州ノヴァイグアスーに本拠を置くアルチスウFCの目にとまる。サッカー選手になることを夢見るようになっていたエギナウドは16歳で単身、ノヴァイグアスーに向かう決心をする。
 年が明け2021年になると、アルチスウFCでの一定期間のサッカー技術や適性テストが始まる。
 2021年2月、2度目のアルチスウFCでのテストの受けるためマラニョン州都サンルイスに前泊していると、突然叔母から電話を受ける。心臓発作による父の急逝の連絡だった。空虚感に包まれ、父の葬儀のため実家に帰る。一週間が経ち、残された家族と話し合った。そして、リオデジャネイロに戻ることを決断する。

<クラブ経歴>

≪育成時代≫

 アルチスウFCは全国選手権4部に手が届かず、州カップ戦や州選手権下位リーグに参戦する小規模なクラブだが、16歳のエギナウドは入団するとU-20チームでプレー。2か月後にはトップチームでプレーし、スタメンの座を奪うまでになる。
 アルチスウFCでの活躍がヴァスコダガマのスカウト網にかかり、2021年10月、レンタル移籍としてヴァスコ・ダ・ガマU-17チームに加入。加入後間もなく、試合への出場機会を得て、試合経験を積んでいく。
 2022年、17歳ながらU-20チームに昇格。
 U-20州選手権では3月26日の開幕節こそ後半開始時からの途中出場だったが、第2節ボタフォゴ戦でスタメンに起用されると先制点をマーク。第3節以降もスタメンに起用され、5試合連続得点を記録。次の試合で連続試合得点記録は途切れるが、続く4試合で6得点を記録。
 チームはエギナウドの活躍もあり、7月20日アウェイ、8月4日ホームで行われるU-20州選手権決勝に駒を進める。

≪ヴァスコ・ダ・ガマ≫

 2022年7月、18歳の誕生日を目前に、全国選手権2部で昇格争いを繰り広げるトップチームに昇格。
 U-20州選手権決勝を前に、クラブはU-20チームのタイトルよりもエギナウドがトップチームで経験を積むことを優先させる。
 8月4日にはヴァスコ・ダ・ガマへの完全移籍が決定。ヴァスコ・ダ・ガマと契約期間5年のプロ契約を結ぶ。
 7月19日全国選手権2部第19節イトゥアーノ戦、マウリシオ・ソウザ(Maurício Souza)監督のもと、後半22分、交代出場で17歳にしてプロデビューを飾る。
 7月28日第21節CRB戦、後半28分にピッチに立つと、後半45+2分、3週間前にはU-20チームで共にプレーしていたマルロン・ゴメス(Marlon Gomes, 2003)からのアシストでプロ初ゴールを記録。ペナルティエリア僅か外でボールを受けると素早い振りの強烈なシュートでサイドネットを揺らした。
 その後も交代出場での試合出場を続けると、8月31日第27節グアラニー戦ではスターティングイレブンに抜擢。
 後半開始20秒、アンドレイ・サントス(Andrey Santos, 2004)が放ったミドルシュートはディフェンダーにブロックされるが、跳ね返りのボールを左足でゴールネットに突き刺す。
 この試合を機にレギュラーの座を獲得。
 マウリシオ・ソウザ監督解任後に就任したジョルジーニョ(Jorginho)監督のもとでもレギュラーとして試合出場を続ける。しかし、以前の得点力は影を潜め、1部昇格を賭けた最終節ではベンチを温めることになる。
 2023年、規律と運動量を求める戦術を採用するマウリシオ・バルビエリ(Mauricio Barbieri)氏が監督に就任。
 バルビエリ監督の初陣となる1月25日州選手権予選ラウンド第4節ポルトゲーザRJ戦、スターティングイレブンとして起用。
 しかし、この試合を最後にスタメンから外れ、後半からの交代出場が続く。
 2023年4月に開幕した全国選手権も出場機会に恵まれず、7月8日第14節を終えた時点で4試合64分の出場にとどまる。

≪シャクタルドネツク/UKR≫

– 2023 –

 2023年7月31日、シャクタルドネツク/UKRがエギナウドの獲得を発表。契約期間は5年(2028年6月末まで)。移籍金は選手保有権の90%に対して360万ユーロ(約5億6000万円)、残る10%は引き続きヴァスコ・ダ・ガマが保有する。
 2023年9月16日ウクライナリーグ第7節の後半29分に交代出場を果たしクラブデビュー。
 9月19日FIFAチャンピオンズリーグ予選R第1節FCポルト/POR戦、後半36分に交代出場しチャンピオンズリーグデビューを果たす。
 12月下旬に始まるウィンターブレークを前に、9試合に出場するものの先発起用はなく、後半途中からの交代出場に止まる。
 しかし、ウィンターブレーク直前の2023年12月13日FIFAチャンピオンズリーグ予選R第6節FCポルト戦、後半40分にピッチに立つと、3分後の後半33分、チームが相手陣ペナルティエリア手前でボールを繋ぐ中、中盤から右サイドを駆け上がりペナルティエリアに侵入。そのままボールを受けるとディフェンダーの足元を抜くシュートでチャンピオンズリーグ初得点を記録。
 ウィンターブレーク明けの初戦、2024年2月15日FIFAヨーロッパリーグ、マルセイユ/FRAとのプレーオフ1stレグ。この重要な試合で初のスタメンに抜擢されると、後半45+2分、右サイドからのクロスにディフェンダーの前に瞬時に現れヘディングシュート。これがゴールネットを揺らし2-2の同点に持ち込む貴重なゴール。
 2ndレグも90分間のフル出場を果たすが、チームは1-3の敗戦を喫し決勝ラウンド進出を逃す。
 その後、リーグ戦9試合(うち先発2試合)、カップ戦1試合(先発)に出場し、2ゴールを記録。
 最終的に移籍後の半年間をプレーしたシャクタルドネツクでの一年目のシーズンは、21試合579分4得点の記録を残した。

– 2024 –

 2024年8月4日リーグ戦開幕節にて後半18分に途中交代出場。その後はすべて途中交代出場ながら第3節までの全3試合に出場を果たしている。

≪シーズン別クラブ成績≫

シーズン所属大会試合出場
時間
得点アシ
スト
2022年(18歳)ヴァスコ・ダ・ガマ全国選手権2部413230
 合計413230
2023年(19歳)ヴァスコ・ダ・ガマ全国選手権46400
コパ・ド・ブラジル12100
州選手権718301
 合計717001
2023/24年(20歳)シャクタルドネツク/UKRFIFAチャンピオンズリーグ31510
FIFAヨーロッパリーグ218010
ウクライナリーグ1429420
ウクライナカップ29000
 合計2157940
2024/25年(21歳)シャクタルドネツク/UKRウクライナリーグ310000
 合計310000
イタリック斜体は、2024年8月22日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<代表経歴>

– 2022 –

 2022年9月に開催されたアルゼンチン、ウルグアイ、ウズベキスタンとの国際親善大会に向けたU-20代表に招集。クラブでのU-20チームでの得点力、トップチームでの活躍が認められた形となる。そして、この招集は世代別代表への初招集となる。
 背番号9をつけセンターフォワードとして全3試合にスターティングイレブンとして出場。
 相手守備ライン裏への抜け出しやクロスボールのターゲットとなるなど度々チャンスを作り出す。難しい胸トラップからのシュートやクロスバーを直撃するヘディングシュートなど得点チャンスは訪れるが無得点で大会を終える。

– 2023 –

 2023年4月15日~27日に実施された、U-20国際親善試合3試合を含む、U-20代表合宿に招集。国際親善試合はセンターフォワードとして2試合に途中交代出場、1試合に先発出場を果たす。第2戦のU-20アジアユース選手権優勝のウズベキスタン戦では1得点を記録する。
 合宿が終えた翌日の2023年4月28日、U-20W杯に向けた代表メンバー21名の発表が行われたが、残念ながら選外となった。

<プレースタイル、エピソード、所感 etc.>

 利き足は右。
 主にセンターフォワードやウィングとしてプレー。
 下半身が強く、シュート力があり当たりに強い。
 スピードあり、チームをゴールに向かわせるけん引力を持つ。
 16歳でアルチスウFCに見いだされるまでは草サッカーで年上の選手たちとプレー。アルチスウFCやヴァスコ・ダ・ガマの下部組織では天性の才能と素質だけでゴールを量産してきたが、ヴァスコ・ダ・ガマのトップチームでは、少し壁に突き当たった感がある。

 多くのブラジルで将来を嘱望される若手選手と異なりクラブチームでのプレー期間が短いため、戦術的な理解が十分でなく、頻繁な監督交代による戦術や規律の変更により少し混乱しているように思われる。
 2023年のヴァスコ・ダ・ガマは、規律を重視したバルビエリ監督が率いる。バルビエリ監督は前年から所属する選手、新加入選手、若手選手に幅広く試合出場のチャンスを与え、自らが指向するサッカーへの適応性や対応力を試し、戦術理解の深耕を促している。
 エギナウドが主にプレーするポジションであるウイングには、ウクライナや中国で活躍した経験豊かなアレックス・テイシェイラ(Alex Teixeira, 1990)、センターフォワードには、2022年にゴイアスでブレークし、全国選手権ベストイレブン、得点ランキング2位のゴールを記録したペドロ・ハウーウ(Pedro Raúl, 1996)が生きる教科書としてプレーする。
 エギナウドの起用法はこの二人との交代出場が主で、州選手権第8節フルミネンセ戦では0-0の局面で試合の流れを変えるために後半16分にペドロ・ハウーウと交代。(試合は内容的に終始優勢に進めながら、この交代後に2失点し、0-2で敗戦。試合後にはこの交代に賛否両論が巻き起こるがバルビエリ監督は意に介しておらず、チームの進歩を確信する内容のコメントを残している。)
 全国選手権でも対戦することになるクラシコの上記第8節フルミネンセ戦、第9節ボタフォゴ戦のいずれの試合にもバルビエリ監督は途中交代ながらエギナウドを起用。規律性の高い組織としてのサッカーを少しずつ実戦で経験させているように見える。
 しかしながら、ヴァスコ・ダ・ガマ下部組織で育ってきた同年代の多くの有望な選手たちも、監督から与えられたチャンスを逃さぬよう必死に結果を残そうとしている。エギナウドも日々のトレーニングや試合出場を通して学んだことを次の試合にはピッチの上で表現していく必要がある。

 2021年10月にヴァスコ・ダ・ガマU-17チームで彗星の如くブラジルサッカー界に現れ、それから1年も満たない2022年9月には世代別代表としてプレーしたエギナウド。
 その輝きが、このまま消えていくのか、それとも再び取り戻されるのか。
 厳しい競争の中、出場機会に恵まれなくなる時期もあるかもしれないが、日々のトレーニングで戦術、規律を学び、組織としてのサッカーを身につけることができれば、再び輝きを取り戻すに違いない。それだけの素質と能力の片鱗はすでにわずかな期間に表舞台で披露している。

 2023年7月には、ヴァスコ・ダ・ガマを離れ、シャクタルドネツク/UKRへ移籍が決まった。
 2023/24年に向けたシャクタルドネツク/UKRには、前年のリベルタドーレス準優勝を果たしたアトレチコ・パラナエンセで一時はレギュラーの座を掴んだ左SBペドリーニョ(Pedrinho, 2002)、サンパウロFCU-20チームからプロデビューを迎えずエギナウドと同じ360万ユーロ(約5億6000万円)の移籍金で加入したFWネヴェルトン(Newerton, 2005)がチームメートとしてプレーする。
 まずは、今までのサッカーと異なる欧州のサッカー文化を吸収、適応し、自分の長所を伸ばし、クラブでポジションを確保してもらいたい。そして、いずれは欧州ビッグクラブへの移籍を果たし、世界から脚光を浴びる日を迎えてもらいたい。
 

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