フェリピ・アウグスト (Felipe Augusto)

投稿者: | 2023年3月24日
最新更新日 : 2024/08/22
更新履歴 : 2024/03/11, 2023/08/04

若手 ブラジルサッカー コリンチャンス シティグループ センターフォワード アルメリア フェリピ・アウグスト

フェリピ・アウグスト・ダ・シウヴァ

Felipe Augusto da Silva

ポジション:フォワード/アタカンチ

利き足:左

2004年2月18日生まれ

<クラブ経歴>

≪育成時代

 ブラジル連邦共和国サンパウロ州サンパウロに生まれる。
 キャリアは2015年にECUSでスタート。2016年にはサンカエタノでサッカーとフットサルをプレー。
 2017年コリンチャンスに入団。U-13チームでプレー。
 2019年、U-15チームで23試合24ゴールを記録し注目を集めるようになる。
 2020年、U-17カテゴリーの全国選手権で7試合に出場、5得点を記録。16歳ながらU-20カテゴリーの全国選手権で9試合に出場、1得点を記録する。

コリンチャンス≫

– 2021 –

 2021年3月7日州選手権第3節、トップチームに招集されベンチ入りを果たす。
 5月9日州選手権第12節グレミオ・ノヴォリゾンチーノ戦、後半33分に途中交代出場。17歳でトップチームデビューを飾る。
 6月24日全国選手権第6節エスポルチ戦、後半38分に交代出場。全国選手権での初出場を果たす。
 2021年はトップチームで5試合28分出場。他にU-17、U-20、U-23カテゴリーで計31試合に出場し、実戦経験を積んでいく。

– 2022 –

 2022年はU-20チームに昇格。前年に引き続き、U-20カテゴリーでの試合を中心に出場。
 6月4日全国選手権第9節アトレチコ・ゴイアニエンセ戦の後半35分にトップチームでのシーズン初出場。
 6月25日第14節サントス戦で初のスターティングイレブンに抜擢されるなど、少しずつだが出場機会が与えられる。
 しかし、7月にセンターフォワードのユーリ・アウベルト(Yuri Alberto, 2001)がゼニト/RUSからレンタル移籍で加入すると、トップチームへの招集はなくなり、U-20チームに活躍の場を移す。

– 2023 –

 2023年1月に開催されるU-20全国大会カップに出場。前年の9月にケガを負い、約4カ月ぶりの試合出場となる。この大会では5試合225分に出場、4得点1アシストを記録する。2023年は、監督方針やトップチームの州選手権での不振のため、下部組織に籍を置く選手にはトップチームでの出場機会が与えられず、フェリピもU-20カテゴリーでのプレーが続く。
 しかし、2023年5月2日に初采配を迎えたヴァンデルレイ・ルシェンブルゴ(Vanderlei Luxemburgo)監督は、それまでと打って変わって下部組織在籍選手を積極的に起用。就任後は未勝利が続き、サポーターから批判にさらされる中でも方針を変えず、若手選手を日替わりのように次々と試合に投入。フェリピ・アウグストは、U-20チームで15試合13得点1アシストを記録しており、当然のようにトップチームに招集されると、5月14日の全国選手権第6節サンパウロ戦を皮切りに、試合終了間際での途中交代など、少しずつ出場機会を与えられる。
 2023年6月28日、決勝進出の芽は絶たれながらも、コパ・スウアメリカーナプレーオフの権利を得る3位の座を賭けたリベルタドーレス予選ラウンド最終節にルシェンブルゴ監督は若手主体のチームで挑む。フェリピ・アウグストはこの試合で先発に起用されると、後半19分に味方のシュートがゴールポストに弾かれたところをゴールに押し込みプロ初ゴールを記録。チームもグループ3位を確保しコパ・スウアメリカーナプレーオフに進出。
 7月11日コパ・スウアメリカーナプレーオフ1stレグもまたスタメン起用。その期待に応えるかのように、後半34分、ペナルティエリアでヘナト・アウグスト(Renato Auguto, 1988)が仕掛けるドリブルが流れたところを左足を振り抜き、この試合唯一のゴールをマーク。
 7月18日2ndレグでも先発出場を果たし、守備的な戦術の中、味方のクリアボールのターゲットやファーストディフェンダーとして機能。後半14分にベンチに下がるまで精力的に走り回り、チームのコパ・スウアメリカーナ決勝ラウンド進出に貢献した。
 その後もカップ戦を中心に起用されるが次第に出場機会は減少。10月2日に監督が交代するが、マノ・メネゼス(Mano Menezes)新監督のもとでも出場機会は途中交代出場に止まり、シーズンが終了する。

サークル・ブルッヘ≫

– 2023/24 –

 2023年12月18日、コリンチャンスはベルギー1部サークル・ブルッヘとの間にフェリピ・アウグストの移籍を合意。移籍金は選手保有権の80%について300万ユーロ(約4億6000万円)、残りの20%はコリンチャンスが保有を続ける。
 2024年1月26日ベルギーリーグ第22節にて後半35分にピッチに送り出されクラブデビューを飾る。
 その後、途中出場で次第にプレー時間が増えていくと、自身5試合目となる2月18日第26節にて先発に抜擢。翌第27節も先発に起用される。
 2024年3月2日ベルギーリーグ第28節、セカンドトップとして先発に起用されると、1-1で迎えた後半44分、チームが相手陣右サイドからのFKを獲得。ゴール前にファーサイドに蹴られたボールを中央に折り返されたところを、FWフェリピ・アウグストが左足であわせるようにボレーシュート。これがゴールネットを揺らしベルギーでの初得点を記録する。
 フェリピ・アウグスト加入直前の第21節時点でチームは7位。フェリピ・アウグストが出場した第22~30(最終)節では4勝3分2敗の成績を残し、レギュラーシーズンを5位の成績で上位6チームが参加するプレーオフに進出。
 プレーオフでは3勝4分3敗の成績で最終順位は4位となり、翌季のヨーロッパリーグプレーオフ予備予選への進出が決定。フェリピ・アウグストはプレーオフにて9試合(うち先発6試合)1得点の成績を収めた

– 2024/25 –

 2024/25年サークル・ブルッヘはヨーロッパリーグ(EL)プレーオフ予備予選二回戦1stレグで初試合を迎える。
 2024年7月25日ELプレーオフ二回戦1stレグにて後半22分にピッチに立ち自身のシーズンが始まると、7月28日リーグ戦開幕節はスタメン出場。
 その後、ELプレーオフ予備予選二回戦2ndレグに途中出場、三回戦1stレグ、2ndレグでは先発出場を果たすが、チームは三回戦で敗退。
 リーグ戦では、開幕節に続き第2節に出場したものの、EL予備予選、ヨーロッパカンファレンスリーグプレーオフに向け温存され、第3、4節はベンチ入りしたものの出場機会はなかった。
 2024年8月22日現在、2024/25年での公式記録上の得点関与はない。

≪シーズン別クラブ出場記録≫

シーズン所属大会試合出場
時間
得点アシ
スト
2021年(17歳)コリンチャンス全国選手権31600
州選手権11200
合計42800
2022年(18歳)コリンチャンス全国選手権36700
コパ・ド・ブラジル12700
合計49400
2023年(19歳)コリンチャンスリベルタドーレス17910
コパ・スウアメリカーナ316210
全国選手権1531400
コパ・ド・ブラジル21800
合計2157320
2023/24年(20歳)サークル・ブルッヘ/BELベルギーリーグ1890821
合計1890821
2024/25年(21歳)サークル・ブルッヘ/BELヨーロッパリーグ416900
ベルギーリーグ211400
合計628300
イタリック斜体は、2024年8月22日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<プレースタイル、雑感 etc.>

 利き足は左。
 主にセンターフォワードとしてプレー。ウィングとしてもプレーする。
 恵まれた体格を持ち、育成年代から年齢より上のカテゴリーの試合に出場。
 ポストプレーを得意とし、得点感覚が高い。ペナルティエリア外からの強烈なシュートを放つシュート力もある。

 2020年代に入り慢性的にセンターフォワード不足に悩むコリンチャンスにおいて、17歳からトップチームでの出場機会を得る。しかし、育成年代では相手守備陣を圧倒する体格面での優位性をトップチームでは発揮できず、また、トップチーム監督ヴィトル・ペレイラ(Vitor Pereira)氏が要求するプレーに十分に応えることができない。
 2022年7月にユーリ・アウベルトが加入するとケガも重なりトップチームでの出場機会を失う。

 フェリピ・アウグストのコリンチャンスとの契約は2023年10月まで。2023年4月22日以降は他クラブと移籍金を伴わない事前契約を交わすことができるようになる。このような状況の2023年3月現在、シティフットボールグループ傘下のECバイーア、スペイン1部アルメリアがフェリピ・アウグストの獲得に向けた情報収集を開始したと報道されている。
 コリンチャンスは、U-18代表の国際大会で背番号10を担ったケヴェン(Keven, 2003)、2023U-20南米ユース選手権優勝に貢献し同年3月にフル代表に初招集を受けたホベルチ・ヘナンを凌ぐ評価を得ていたルーカス・ベレージ(Lucas Belezi, 2003)、2022年にサントスFCでレギュラーを掴んだルーカス・ピーレス(Lucas Pires, 2001)などの下部組織出身選手が、契約更新をせずにクラブを退団、移籍していった。
 フェリピ・アウグストの契約が更新されるかどうかは2023年3月24日現在では不透明だが、このままコリンチャンスU-20カテゴリーに在籍しても、今まで同様に恵まれた体格やシュート力を活かしたプレーを続けるならば、おそらく選手としてのプレーの幅が広がることはない。
 クラブ内にはユーリ・アウベルトという見本となる選手がいるが、ユーリのプレーを直に学ぶ機会がないのならば、コリンチャンスを退団し新たな環境でスタートを切るのも一つの選択肢だろう。上述のケヴェンがキャリアを再スタートさせたアルメリアは、今後のキャリア(プレーの幅を広げること、ヨーロッパ市場でキャリアアップすること)を考えると有力な選択肢のように思われる。
 コリンチャンスにとっては移籍金を残さない育成選手の流出は大きな痛手となるが、2023年U-20南米ユース選手権優勝メンバーのギリェルミ・ビロ(Guilherme Biro, 2004)、ジオヴァーニ・ナシメント(Giovane Nascimento, 2003)、ペドロ・エンヒキ(Pedro Henrique, 2006)でさえトップチームではほとんど出場機会が与えられない現状や、選手側の意志による契約非更新が続くこと自体がクラブの組織的な問題だと思われる。数年先を見据えたトップチームの選手構成や下部組織での育成体制を整えるよう、クラブには強く望む。

(2024年3月11日追記)
 フェリピ・アウグストは2024年3月8日に投稿されたスポーツサイト「ガゼッタ・エスポルチーヴァ」のインタビュー記事の中で次のように話している。
 『2017年以降コリンチャンスでのサッカー生活はとても素晴らしいものだった。多くの友人ができ、仲間と共にタイトルも獲得した。クラブもチャンスを与えてくれた。
 しかし、2023年は難しい一年だった。年初のU-20カップ戦で十分な成績を収め、U-20でトレーニングを積み、いいコンディションを保っていたものの、2か月間トップチームに呼ばれることはなかった。4月に入りダニーロU-20監督が監督代行を務めたパウメイラス戦、その後のクーカ監督、ルシェンブルゴ監督と監督が交代し、やっとトップチームでプレーする機会をもらった。しかし、あまりにも監督交代が多すぎて適応するのが難しかったよ。監督によって戦術は異なり、要求されるプレーが変わるからね。
 年の半ばに移籍の話が訪れた。夢の一つである欧州でのプレーを実現するチャンス。しかし、その時はユーリ・アウベルトの控えとして充実した日々を過ごしていたので移籍については何も考えていなかった。先発の機会やゴールも決めていたしね。でも、シーズンが終盤に近づくにつれ出場時間は増えず、サッカー選手として成長するためには試合に出場しなくてはならないと考え出した。
 そして、サークル・ブルッヘへの移籍を決断したんだ。』
 コリンチャンスは、人気、実績共にブラジルを代表するビッグクラブの一つ。そして同時に、育成組織も充実し多くの若手有望選手を輩出している。しかし、ビッグクラブとして毎年タイトル争いが宿命づけられ、即戦力を外部に求めて下部組織から排出される多くの若手選手に機会を与えることができず、また、少しの躓きで監督交代を繰り返すことでチームの方向性が固まらない。
 2023年は全国選手権のタイトル争いから早々に脱落したことで、ルシェンブルゴ監督は若手選手や控え選手に多くの出場機会を与え、そのような選手起用ながら、少し時間がかかったものの、コパ・スウアメリカーナ、コパ・ド・ブラジルでは準決勝に進出するまでチームを立て直した。しかし、コパ・スウアメリカーナ準決勝1stレグでの引き分けを機に解任の憂き目を見る。
 しかし、ルシェンブルゴ監督からチャンスを貰い、その機会を掴んだCBムリーロ(Murillo, 2002)がノッティンガム・フォレスト/ENGへ8月に移籍し、やがてレギュラーの座を獲得。VOLガブリエウ・モスカルド(Gabriel Moscardo, 2005)は2024年に入りパリSG/FRAへ移籍を果たした。 
 そして、フェリピ・アウグストもまた2024年にベルギー1部サークル・ブルッヘへ移籍を果たし、徐々に出場時間を増やしていくと加入後約一か月でレギュラーの座を奪い、今後のキャリアアップも見込まれる活躍を見せている。
 一方のコリンチャンスは、シーズン開幕から一か月を経ずして、マノ・メネゼス監督を解任。州選手権は決勝ラウンド進出を逃す結果に終えている。

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