フォルタレーザ (Fortaleza)
正式名称:Fortaleza Esporte Clube
略称:FOR
創立:1918年
本拠:セアラー州 フォルタレーザ
《 主要タイトル 》
タイトル | 優勝回数 | 優勝年 |
---|---|---|
N/A | N/A | N/A |
フォルタレーザは、ブラジル北東部セアラー州のフォルタレーザ市に1918年に創立された地元の名門クラブ。2022年時点ではセアラー州で最多、北東部地域で2位、全国で13位のサポーターを有する人気チームの一つ。古くは1960年と1968年に全国選手権で準優勝の実績を誇る。(当時の全国選手権は、現在の全国選手権とは大きく異なり、州選手権優勝チームが州代表としてノックアウト方式で競う大会形式(日本の全国高等学校サッカー選手権大会のイメージ)で開催されていた。)
しかし、1970年代になり1部(Série A)で下位に低迷するようになると、1980年代は1部リーグと2部リーグ(Série B)を行き来するようになる。1990年代には6シーズンを3部リーグ(Série C)で戦い、2010年に3部リーグに再び降格すると8シーズン停滞。2017年に3部リーグで準優勝を果たし2部リーグへの再昇格を果たすと、クラブ創設100周年を迎える2018年シーズンには、ホジェリオ・セニ氏(Rogério Ceni, GK/GOLとして記録した131得点はギネスブックに認定されている。)を監督に招聘し、2部リーグ優勝を果たし、クラブとして史上初めて全国レベルのタイトルを獲得。
2019年には全国選手権で9位に躍進し、初めての国際大会となるコパ・スウアメリカーナ出場権を獲得。
2021年、コパ・ド・ブラジルで過去最高の準決勝に駒を進めると、全国選手権では4位に食い込みクラブ史上初のリベルタドーレス出場権を獲得し、2022年シーズンを迎える。
《 直近3年成績(2020年-2022年) 》
大会 | 2022年成績 | 2021年成績 | 2020年成績 |
---|---|---|---|
ブラジル全国選手権 | 8位 | 4位 | 16位 |
コパ・ド・ブラジル | 準々決勝敗退 | 準決勝敗退 | ベスト16敗退 |
コパ・リベルタドーレス | ベスト16敗退 | ― | ― |
コパ・スウアメリカーナ | ― | ― | 1回戦敗退 |
セアラー州選手権 | 優勝 | 優勝 | 優勝 |
コパ・ド・ノルデスチ (北東部カップ戦) | 優勝 | 準決勝敗退 | 準決勝敗退 |
各大会の概要は、当ブログ記事「主要大会と年間日程」を参照ください。
《 全国選手権 順位推移(2006年-2022年) 》
現行レギュレーション(20チームによるホーム&アウェア方式2回戦総当たり)で開催された2006年以降の全国選手権順位推移です。
《 2022年 》
<戦績>
大会 | 試合 数 | 勝数 | 引分 数 | 敗数 | 得点 | 失点 | 得失 点差 | 勝点率 (%) | 順位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コパ・リベルタドーレス | 8 | 3 | 2 | 3 | 11 | 13 | -2 | 45.8 | ベスト16敗退 |
全国選手権 | 38 | 15 | 10 | 13 | 46 | 39 | 7 | 48.2 | 8位 |
コパ・ド・ブラジル | 6 | 3 | 1 | 2 | 8 | 4 | 4 | 55.6 | 準々決勝敗退 |
州選手権 | 6 | 5 | 1 | 0 | 13 | 1 | 12 | 88.9 | 優勝 |
コパ・ド・ノルデスチ | 12 | 7 | 5 | 0 | 26 | 8 | 18 | 72.2 | 優勝 |
計 | 70 | 33 | 19 | 18 | 104 | 65 | 39 | 56.2 |
<全国選手権 年間順位推移>
<振り返り>
2022年シーズンは、前年の実績が高く評価され、フアン・パブロ・ボイボダ(Juan Pablo Vojvoda)氏が監督を続投。選手の大きな入れ替えはなく、前年をベースとしたメンバーで2022年を迎える。 年初に開催されるコパ・ド・ノルデスチ(北東部州カップ戦)を5勝1分無敗得点13失点1で制覇すると、全国選手権開幕後まで開催がずれ込むセアラー州選手権もまた7勝5分無敗で優勝を果たす。
【全国選手権】
クラブ史上初のリベルタドーレスは、共に優勝実績のあるリーベル・プレート/アルゼンチンとコロコロ/チリ、前年のペルーリーグ優勝のアリアンサ・リマと同組となる非常に厳しいグループ分けとなる。
開幕節コロコロ戦、第2節リーベル・プレート戦に連敗し、早くもグループラウンド突破に黄信号が灯る。後がない第3節ホームでのアリアンサ・リマ戦、1-1の同点で迎えた後半34分、交代出場したばかりのVOLエルクレス(Hércules)が決勝点を決め、リベルタドーレスでのクラブ史上初勝利をあげる。第4節リーベル・プレート戦は先制するもPKを献上し同点に追いつかれると、後半35分に退場者を出し難しい状況に陥るが、何とか引き分けで勝点1を得る。
第5節アウェイでアリアンサ・リマに2-0で完勝し、迎えた5月25日のアウェイでのコロコロ戦。同勝点で得失点差で上回るフォルタレーザは引き分けでもGRを突破できる。前半開始3分に先制すると25分に追加点。前半終了間際にオウンゴールで失点するも2-1で前半終了。後半6分、抜け出したFW/ATAモイゼス(Moisés)を相手ディフェンダーが後ろから倒し得点阻止で退場。数的優位に立ったフォルタレーザはその後2点を追加。勝ちが必要なコロコロの必死の反撃に2点を許すが、4-3で勝ち切り、決勝ラウンドに駒を進める、
決勝ラウンド1回戦(ベスト16)の相手はエストゥジアンテス/アルゼンチン。 6月30日、ホームでの1stレグ。立ち上がりはフォルタレーザが主導権を握るが、効率的なカウンターからゴールを脅かされる。前半25分にフォルタレーザがゴールネットを揺らすもオフサイド。ATにはFW/ATAモイゼスが相手GK/GOLをかわしシュートを放つが相手CB/ZAGの好カバーリングで得点に至らず前半を0-0で終える。後半10分、カウンターからFW/ATAロメロ(Romero)がリベルタドーレス4試合連続となるゴールで待望の先制点をフォルタレーザが奪う。しかし、8分後の後半18分、左サイドから崩され失点。ホームでの1stレグを1-1で終える。
7月7日アウェイでの2ndレグ。前半9分、右からのアーリークロスを頭で決められ早くも失点。22分にはヤゴ・ピカチュー(Yago Pikachu)がブロックにいった際にスパイク裏が相手のスネを削り一発退場。一人少ない中、相手チームが攻勢を保つが守備陣が踏ん張り前半を1-0で終了。しかし、後半2分、12分と立て続けに失点。シュート2本(うち枠内シュートゼロ)と試合を終始支配され、2ndレグを0-3、2試合合計1-4で敗退。フォルタレーザクラブ史上初のリベルタドーレスの戦いは、決勝ラウンド1回戦(ベスト16)で幕を閉じた。
【コパ・ド・ブラジル】
リベルタドーレス出場のため、コパ・ド・ブラジルは3rdラウンドから。
3rdラウンドは全国選手権3部のヴィトーリアを相手に、3-0、1-0、計4-0で退ける。
4thラウンド(ラウンド16)はクラシコ、セアラー戦。 1stレグ(6月22日)。フォルタレーザが立ち上がりから相手陣でプレッシャーかけ開始早々に2度シュートまで持ち込む。セアラーもセットプレーからあわやといったシーンを作るが、フォルタレーザの優勢で前半を折り返す。後半7分、フェリペ(Felipe)のシュートが相手ディフェンダーがブロック。こぼれたボールをヤゴ・ピカチューがダイレクトに右足でゴールネットに突き刺し均衡を破る。後半35分には、ヤゴ・ピカチューがPA内で倒されPKを獲得。ピカチューが自らPKを決め、1stレグを2-0で終える。
2ndレグ(7月13日)。セアラーがボールをキープするがフォルタレーザも高い位置でボールを奪いに行き虎視眈々とカウンターを狙う。すると前半8分、9分、12分と立て続けにゴールに迫りいずれも枠内シュートを放つが相手GK/GOLの好守で得点を奪えない。後半に入ると相手のロングボールを有効に使った攻撃にディフェンスラインが下がり始めると後半15分に失点。試合終了間際のAT+7分には相手ミドルシュートがクロスバーを直撃するも直後にタイムアップ。2ndレグを0-1で敗れるも2試合合計2-1とリードし準々決勝へ進出する。
準々決勝の相手は全国選手権で好調なフルミネンセ。 1stレグ(7月28日・ホーム)。試合開始から相手にボールを支配される苦しい展開が続き、前半35分に失点。その後2度にわたりホビソン(Robson)が相手PA内で倒れるがいずれもノーファールの判定。後半に入りフォルタレーザが再三相手ゴールに迫るがクロスバーやゴールポストに阻まれるなどゴールが生まれない。その後も再三相手ゴールに迫ると、後半42分、右からのアーリークロスにロメロが右足で相手GK/GOLのニアを抜いてゴールネットを揺らす。しかし、VARによりノーゴールの判定。ホームで行われた1stレグを0-1で落とす。
2ndレグ(8月17日・アウェイ)。前半12分、最終ラインからのロングフィードにFW/ATAチアゴ・ガリャルド(Thiago Galhardo)が相手守備陣をこじ開けるように強引に抜け出しシュートに持ち込むと、ボールは相手ディフェンダーに当たりゴールへ。フォルタレーザが先制。前半ATにはGK/GOLのフィードからダイレクトパスを3本通し、最後は抜け出したロメロがゴールを奪い、2試合合計2-1と初めてリードを奪う。しかし、後半19分にPKで失点、27分には左サイドからのクロスを飛び込まれ2試合合計で2-3と逆転を許す。その後大きなチャンスを迎えることもなく試合終了。コパ・ド・ブラジルは準々決勝で終えた。
【全国選手権】
リベルタドーレス、コパ・ド・ブラジル、州選手権と同時並行で、4月10日に全国選手権が開幕。3月8試合、4月から7月の4カ月は月間9試合、中1日での試合が2試合組まれるなど超過密日程のなか、開幕8試合を勝ち星がないまま2分6敗とスタートで大きく出遅れる。9試合目に初勝利を挙げるものの、7月24日に終わる前半19節を3勝6分10敗の最下位で折り返す。7月にはそれまで攻撃を牽引したヤゴ・ピカチュー(Yago Picachu)や新戦力として年初に獲得したFW/ATAカイゼル(Kayzer)が退団。
しかし、不振のボイボダ監督の要望で適材適所の補強を実施。日程も少し緩やかになると7月31日の第20節から無失点で5連勝を達成。その後も攻守のバランスが改善し後半戦を12勝4分3敗の成績で収め、最終的に8位まで順位を上げ翌年のリベルタドーレス予備予選の出場権を獲得して全国選手権を終えた。
選手権前半 : 3勝 6分10敗、得点15失点23 選手権後半 : 12勝 4分 3敗、得点31失点16 選手権合計 : 15勝10分13敗、得点46失点39
<チーム内個人成績・記録>
* 参照元:サッカーサイト「Ogol」
記録 | 選手 | 公式戦計 | 全国選手権 | リベルタ ドーレス | ブラジル 杯 | ノルデス チーノ杯 | 州選手権 |
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最多試合出場 | モイゼス (Moisés) – FW/ATA | 66 | 37 | 8 | 5 | 10 | 6 |
(2位) | チチー (Titi) – CB/ZAG | 62 | 34 | 7 | 5 | 10 | 6 |
(3位) | ベネヴェヌット (Benevenuto) – CB/ZAG | 60 | 31 | 7 | 6 | 11 | 5 |
最多出場時間 | ベネヴェヌット (Benevenuto) – CB/ZAG | 5207 | 2613 | 630 | 540 | 974 | 450 |
(2位) | チチー (Titi) – CB/ZAG | 5191 | 2799 | 607 | 422 | 823 | 540 |
(3位) | ジュニーニョ・カピシャバ (Juninho Capixaba) – 左SB/LTE | 4371 | 2907 | 357 | 348 | 558 | 201 |
最多得点 | ヤゴ・ピカチュー (Yago Pikachu) – MF/MEI | 17 | 4 | 2 | 3 | 4 | 4 |
(2位) | モイゼス (Moisés) – FW/ATA | 16 | 7 | 3 | 1 | 3 | 2 |
(3位) | ロメロ (Romero) – FW/ATA | 14 | 2 | 4 | 3 | 3 | 2 |
最多アシスト | ジュニーニョ・カピシャバ (Juninho Capixaba) – 左SB/LTE | 9 | 5 | 1 | 0 | 3 | 0 |
(2位) | ヤゴ・ピカチュー (Yago Pikachu) – MF/MEI | 8 | 0 | 4 | 0 | 2 | 2 |
(3位) | モイゼス (Moisés) – FW/ATA | 7 | 3 | 1 | 0 | 2 | 1 |
最多デュエル勝利 | ジュニーニョ・カピシャバ (Juninho Capixaba) – 左SB/LTE | – | 281 | – | – | – | – |
(2位) | ベネヴェヌット (Benevenuto) – CB/ZAG | – | 155 | – | – | – | – |
(3位) | モイゼス (Moisés) – FW/ATA | – | 118 | – | – | – | – |
最多キーパス | ジュニーニョ・カピシャバ (Juninho Capixaba) – 左SB/LTE | – | 44 | – | – | – | – |
(2位) | ルーカス・リマ (Lucas Lima) – MF/MEI | – | 33 | – | – | – | – |
(3位) | モイゼス (Moisés) – FW/ATA | – | 31 | – | – | – | – |
最多CBI | ベネヴェヌット (Benevenuto) – CB/ZAG | – | 212 | – | – | – | – |
(2位) | ジュニーニョ・カピシャバ (Juninho Capixaba) – 左SB/LTE | – | 142 | – | – | – | – |
(3位) | チチー (Titi) – CB/ZAG | – | 125 | – | – | – | – |
※ デュエル勝利 : 一対一でのイーブンボールの奪い合いでボールを獲得すること キーパス : パスの受け手がシュートを打てた時にカウントされる指標 CBI : クリア、ブロック、インターセプト
《 チームの躍進とクラブ改革 》
8シーズンもの間、3部リーグに低迷したフォルタレーザSCが2部リーグに昇格すると、その年にリーグ優勝を果たし、一年で全国選手権1部リーグに返り咲く。さらにその3年後には全国選手権で4位まで躍進し、クラブ史上初めてリベルタドーレスに出場。
その要因は何だったのか?
2015年、当時32歳のマルセロ・パス(Marcelo Paz)氏がフォルタレーザSCサッカー部門の責任者に就任する。翌年にはクラブの副代表、そして2017年末にクラブ代表に就任。マルセロ氏は、経営陣にプロ意識を植え付け、現場と頻繁にコミュニケーションを取り、計画的に組織を運営し、これらを通してクラブ内の風通しを良くし透明性を高めていく。収支面ではクラブ規模に見合った選手構成を行い収支のバランスをはかる。そして、なによりもサポーターとの”絆”も深めていく。
2018年シーズンの後半、連敗を喫し首位陥落のピンチを迎えると、サポーターの批判が高まる。すると、クラブもサポーターも不満を持つ、審判の判定に関する「要望書」を映像や技術的な指摘を添えてブラジルサッカー連盟(CBF)に提出する。それと同時に、サポーターに対しても翌年の1部リーグで試合を観戦するためにも、インターネットから離れ、スタジアムに足を運んで選手たちの後押しをしてくれるように「要望」を公表。
2020年シーズンにコロナ感染症の拡大によりサッカーの試合が開催不能になると、クラブ経費の50%を占める選手報酬の削減のため、クラブの状況を選手たちに説明し25%の減額を実施(後に一部を除き支給)、また経営陣の給与も15%カットして、クラブ従業員の雇用を守る。
2022年シーズン半ばの補強では、移籍金がかからないように海外のシーズンが終えるタイミングを見計らい海外クラブ在籍の複数の選手を獲得。一方で、グレミオ、フラメンゴといったビッグクラブで複数のタイトルを獲得し、ヨーロッパでのプレー経験もあるペドロ・ホッシャをアトレチコ・パラナエンセから獲得。 移籍交渉では、初めの段階でマルセロ氏が直接代理人と膝を交え、スピーディに交渉を成立させていく。 2022年に移籍加入した複数の選手が、フォルタレーザの選手への待遇の良さや経営陣のプロフェッショナリズム、クラブの方向性について、メディアのインタビューで好意的に話している。
マルセロ氏は下部組織にも経営資源を振り分け、2022年シーズンには下部組織から昇格した選手が試合出場を果たし、U-17チームは全国選手権、コパ・ド・ブラジルで共に準々決勝まで駒を進めるなど、成果が目に見えるようになり始めている。
マルセロ氏の代表権は2022年12月のクラブ総会で2024年末まで延長された。若き経営者が変革を進めるフォルタレーザについては、サッカーチームとしてはもちろん、マルセロ氏の経営手腕もまた今後注目していきたいと思う。