エンドリッキ (Endrick)

投稿者: | 2022年12月5日
最新更新日 : 2024/02/17
更新履歴 : 2023/12/26, /03/15

エンドリッキ 逸材 若手 ブラジルサッカー パウメイラス_

エンドリッキ・フェリピ・モレイラ・デ・ソウザ

Endrick Felipe Moreira de Sousa

ポジション:フォワード/アタカンチ

利き足:左

2006年7月21日生まれ

2023年全国選手権でのエンドリッキ選手の全11ゴール。

<幼少期>

 ブラジル連邦の首都ブラジリア、タグアチンガ地区の決して裕福とは言えない一家に生まれる。ブラジリアのアマチュアチームでプレーする父ソウザのもと、4歳でボールを蹴り始める。
 2016年、息子の素質に気づいていたソウザは、サッカースクールの先生たちの感想や多くの称賛の声を聞き、息子エンドリッキにすべてを賭けようと決心する。
 ソウザはブラジリアに支部を持つビッグクラブを訪ね歩きエンドリッキの映像を見せてまわった。そのうち7クラブが反応を見せたが、ソウザはこの段階でサンパウロの4クラブ(パウメイラス、コリンチャンス、サンパウロFC、サントスFC)に候補を絞った。
 すでに映像を入念にチェックしていたパウメイラス下部組織のスタッフは、ブラジリア支部のスカウトから連絡を受けすぐに動いた。ブラジリアに代表を送り、ソウザが要求するサンパウロでの住居、エンドリッキの学費、ソウザの就職を手配する旨を了承した。その後、ソウザは他の3クラブとも接触するが最終的にパウメイラスを選ぶ。

<クラブ経歴>

≪育成時代≫

 エンドリッキはパウメイラスに入団すると、早くもU-11州選手権でゴールを量産する。
 プレーするカテゴリー(年代)を次々と昇格していき、2021年には15歳にしてU-20チームに至り、13試合に出場5ゴールを記録する。
 自分の年齢よりも上のカテゴリーでの活躍は、エンドリッキの技術はもちろんのこと、生まれ持った身体能力(例えばエンドリッキは12歳ですでにスピード面やパワーの面で14、15歳の選手を凌駕するものを持っていた)に基づいたもの。パウメイラスの下部組織では選手たちの肉体面に細心の注意を払っており、グラウンドでのトレーニング以外にもケガ予防のための筋力トレーニングも重視して取り入れている。エンドリッキは、良く食べ良く寝て、上のカテゴリーのスピードや接触に十分に通用する肉体的な成長を日々続けている。
 2022年1月にはU-20全国大会のカップ戦、通称サンパウロ・コピーニャでは、15歳にして背番号9をつけ主力メンバーとして7試合に出場、6得点をマーク。パウメイラスに初のサンパウロ・コピーニャ優勝をもたらすと、自身は最優秀選手賞を受賞。さらにこの大会で見せたシュートがFIFA公式にツイートされ(下のリンクを参照)全世界から注目を浴びることとなった。

≪パウメイラス≫

– 2022 –

 2022年7月21日、法的に就業可能となる16歳の誕生日を迎え、パウメイラスと6000万ユーロの違約金が設定されたプロ契約を締結。
 9月18日第27節サントス戦でプロ初のベンチ入り。
 10月6日第30節コリチバ戦で後半24分にプロ初出場を果たす。
 10月25日第34節アトレチコ・パラナエンセ戦、後半開始時にピッチに立つ。後半14分、相手GK/GOLからのパスを受けたディフェンダーからスライディングでボールを奪うとドリブルでPA内に侵入し、右から駆け上がるホニ(Rony)にパスを送る。ホニがシュートを放つもディフェンダーにブロックされホニの足もとにボールが戻ると、そのボールを中央へグラウンダーのパス。グスタボ・スカルパ(Gustavo Scarpa)のタッチが大きくなったところをエンドリッキが押し込み、プロ初ゴールを記録。
 このゴールで試合を1-1の振り出しに戻すと、11分後の後半25分、左サイドからのホニのクロスをCB/ZAGの間に入り頭で合わせ、この日自身2点目となる逆転ゴールをマーク。
 11月2日第35節フォルタレーザ戦、プロ初のスターティングイレブンに名を連ねる。後半19分、ドゥドゥ(Dudu)が右サイドからゴールラインに平行なグラウンダーのクロスボールを送ると、ゴール前に飛び出し左足を合わせ2試合連続となるゴールをマーク。
 プロデビューを果たした2022年シーズンは、7試合307分の出場で3ゴールを記録。最優秀新人賞を受賞した。
 2022年12月15日、パウメイラスよりレアルマドリード/ESPへの2024年7月をめどに移籍が発表。移籍金は固定3500万ユーロ、ボーナス2500万ユーロ、税金等は別途。ブラジル法令により18歳未満での国外就労は認められないため、レアルマドリードとの契約は2024年7月21日に実効。

– 2023 –

 2023年1月14日、州選手権開幕節にスターティングイレブンとして出場。以降もスタメン起用される。
 1月28日、スーペルコパ・ド・ブラジル、フラメンゴとの一戦。センターフォワードとしてスタメン出場を果たすと、相手センターバックダヴィ・ルイスの厳しいマークにあうが、前後の動きでかいくぐる。
 後半11分にはペナルティエリア内で相手ファールを誘発しPKを獲得。後半19分にベンチに退く。
 州選手権では12試合無得点が続く。今までのキャリアでこれほどの期間ゴールを奪えなかったことはなく、ピッチの上で悔し涙を流すこともあった。そして、準々決勝、準決勝はベンチを温める。
 2023年4月2日、州選手権決勝アグアサンタ戦1stレグ、0-1でリードを許した後半開始時にピッチに投入される。3試合ぶりのピッチ。すると、後半8分、ハファエウ・ヴェイガ(Rafael Veiga, 1995)の左CKをニアでゼ・ハファエウ(Zé Rafael, 1993)が頭ですらす。エンドリッキはファーサイドで左足に合わせ同点ゴール。そして、シーズン初ゴールを決める。
 続く4月9日2ndレグで先発に復帰すると、前半34分にゴール。
 2023年4月14日全国選手権開幕節ホームでのゴイアス戦。前半5分、ペナルティエリア内左を個人技で抜け出したドゥドゥ(Dudu, 1992)からのクロスに左足を合わせゴール。20チーム716名が選手登録された2023年全国選手権のファーストゴールを最年少世代(2006年生まれ)16歳のエンドリッキが決めた。
 全国選手権第2節以降は、リベルタドーレスも含め、途中交代による出場が続く。しかし、5月7日全国選手権第4節ゴイアス戦、6月7日リベルタドーレス、6月10日第10節サンパウロ戦では、途中出場からゴールをマーク。7月2日第13節アトレチコ・パラナエンセ戦では先発出場から1得点。この活躍でアベウ・フェヘイラ監督の信任を得たかと思われた。
 2023年7月5日、13日のコパ・ド・ブラジル準々決勝は両試合で先発に起用されるが、1stレグではボールを持ちすぎてシュートチャンスを逃す場面が見られ、2ndレグではボールを受けに下がり、左右の動きで味方のスペースを作るなど、汗はかいたもののシュートに持ち込む場面が見られず、両試合共に得点に絡むことができず、チームは連敗。
 この試合を機に、出場機会は減少する。
 2023年10月5日、パウメイラスはPK戦の末リベルタドーレスを準決勝で敗退。これを機にアベウ・フェヘイラ監督は試行錯誤を繰り返しパウメイラスの新しい形を模索する。その中でエンドリッキがセンターフォワードとして再び先発に起用されるようになる。
 2023年11月1日全国選手権第31節、勝点差6で追う首位ボタフォゴとの直接対決。試合はボタフォゴに支配され0-3で前半を折り返す。後半に入り、後半4分にエンドリッキが瞬時にトップギアに入るドリブルでディフェンダーの間を抜き、GKと一対一となった起死回生のゴール。このゴールで試合の流れを引き寄せると、後半39分にFKのこぼれ球を速い振りのシュートで1点差に追い上げる。後半44分には、エンドリッキが、右サイドライン際からゴール前ファーサイドへ上げたクロスをCBグスタボ・ゴメスが折り返しFWフラッコ・ロペスが頭を合わせ遂にパウメイラスが同点。
 後半45+9分、実質的に最後のプレーでパウメイラスは逆転に成功、パウメイラスは大事な試合に4-3で貴重な勝利を収めた。
 続く11月4日第32日インテルナシオナウ戦では決勝点、第34節、第36節でもゴールを奪うと、12月6日全国選手権最終節クルゼイロ戦の前半22分にもゴール。
 このゴールでエンドリッキはチームの全国選手権初ゴールと最終ゴールを記録。チームも全国選手権二連覇を達成し、2023年シーズンの幕を下ろした。

– 2024 –

(To be continued...)

≪シーズン別クラブ成績≫

シーズン所属大会試合出場
時間
得点アシ
スト
2022年(16歳)パウメイラス全国選手権730730
 合計730730
2023年(17歳)パウメイラスリベルタドーレス511510
全国選手権311563110
コパ・ド・ブラジル320200
スーペルコパ・ド・ブラジル16400
州選手権1377820
 合計532722140
イタリック斜体は、2023年12月26日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。

<代表経歴>

≪U-17モンテギュー国際大会≫

 2022年4月に開催されたU-17モンテギュー国際大会に15歳にして出場。
 初戦のメキシコ戦では開始早々にペドロ・エンヒキ(Pedro Henrique)が放ったシュートの跳ね返りを押し込む。
 第2戦のオランダ戦。前半36分、ジョアン・エンヒキ(João Enrique)のクロスが相手のハンドを誘発し獲得したPKを決める。後半、1-2でリードを許すなか、ルイス・ギリェルミ(Luis Guilherme)のスルーパスに抜け出し、相手CB/ZAGの寄せをはじき返し左足でシュート。この日のチームそして自身の2点目をマークする。
 第3戦のイングランド戦、ハーフライン付近左からドリブルで持ち上がり、PA手前中央から利き足ではない右足でミドルシュートを放ちゴール右隅にボールを突き刺す。後半にはペドロ・エンヒキが空中戦で競り勝ったボールをフリーのルイス・ギリェルミに渡しアシストを記録。
 最終戦となる決勝アルゼンチン戦、前半2分、ルイス・ギリェルミのスルーパスに抜け出し相手GK/GOLのクリアをブロック。ボールはゴールに吸い込まれ得点を記録。前半34分にはエンドリッキがPA内で倒されPKを獲得。このPKをルイス・ギリェルミが決める。
 チームは2-1でアルゼンチンに勝利し大会を優勝で飾る。
 エンドリッキは4試合で5得点を記録し、同大会の最優秀選手に選出される。

≪2023U-20南米ユース選手権≫

 2022年12月8日に発表された2023U-20南米ユース選手権代表に選出。しかし、チーム事情により出場を辞退。

≪2026W杯南米予選≫

 2023年11月6日、CBF本部でのフェルナンド・ジニース代表暫定監督により、2026年W杯南米予選第5節コロンビア戦、第6節アルゼンチン戦に向けた代表招集の一人としてエンドリッキの名前が読み上げられる。
 2023年11月16日コロンビア戦、後半37分に交代出場を果たし17歳3か月25日での代表デビュー。続くアルゼンチン戦も後半27分にピッチに立った。

2024年パリ五輪南米予選

 2023年12月21日にCBFより発表された2024パリ五輪南米予選(2024年1月20日~2月11日)U-23代表選手、23選手(GKは3選手)の一人として選出された。
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-23代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日対戦
相手
試合
結果
出場
時間
得点アシ
スト
2024/01/20予選第1節対戦なし
2024/01/23予選第2節ボリビア1 – 09010
2024/01/26予選第3節コロンビア2 – 07010
2024/01/29予選第4節エクアドル2 – 16701
2024/02/01予選第5節ベネズエラ1 – 34500
2024/02/05決勝第1節パラグアイ0 – 17900
2024/02/08決勝第2節ベネズエラ2 – 19001
2024/02/11決勝第3節アルゼンチン0 – 17300
 合計8 – 751422
チーム初戦となる予選第2節ボリビア戦では、前半4分にFWジョン・ケネジーが空中戦で競り勝ったボールを拾い、ドリブルでペナルティエリアに侵入し得点を記録。
予選第3節コロンビア戦では相手陣でのスライディングタックルでボール奪取。このボールを拾ったFWジョン・ケネジーのシュートのこぼれ球をゴールに押し込み2試合連続得点。
予選第4節エクアドル戦。後半20分にペナルティエリア内でVOLマルロン・ゴメスからのボールを受けるとそのままドリブルで縦に仕掛けゴール前にクロス。これをVOLマルロン・ゴメスが足に合わせる同点ゴール。FWエンドリッキはアシストを記録。
決勝第1節パラグアイ戦。前半26分にペナルティエリア内左での仕掛けからPKを獲得。しかし、このPKを失敗。前半43分にはペナルティエリア内ゴールライン際から決定的なパスを送るがFWジョン・ケネジーのシュートは枠を捉えず。結果的にこの2度の好機を逸したこともあり試合は0-1の敗戦。
決勝第2節ベネズエラ戦では、引き分けでも五輪出場が絶たれる状況の中でチームの2得点に関与。
後半12分、MFガブリエウ・ピラーニの柔らかいクロスをゴール前ファーサイドでボールを落としFWガブリエウ・ペッキのディフェンダーにブロックされたシュートのこぼれ球をMFマウリシオがゴール。
後半44分には、VOLアンドレイ・サントスの縦のボールを相手陣に入ったところで中央に切れ込みながら受けると、相手最終ライン裏を狙うMFギリェルミ・ビロへ縦にボールを送る。これをMFギリェルミ・ビロが決めチームは逆転勝利。
これまで後半での交代が続いたが、この試合では試合終了間際のプレーでチームを窮地から救う。
決勝第3節アルゼンチン戦。立ち上がりのピッチ上ミドルサードでのマークを厳しくするチーム戦術の中で、前半は攻撃面ではいい形でボールを受ける場面はほとんどなかったが、守備面では及第点の働き。後半もアルゼンチン守備陣の執拗なマークに思うようにプレーできないものの、後半13分にFWジョン・ケネジーがピッチに立つと、FWジョン・ケネジーのスペースを作る動きでチームは2度の好機を迎える。
しかし、後半28分にベンチに下がると、チームはその5分後に被弾、五輪出場を逃した。
2001年生まれが最年長となる五輪予選代表の中で、2006年生まれながらチームの攻撃を牽引し、2得点2アシストを記録。パリ五輪で躍動する姿を見ることは出来ないが、コパ・アメリカでの雪辱を果たしたい。

<エピソード、雑感 etc.>

 FIFA2002W杯優勝メンバーで大会得点王ホナウド・フェノーメノ(Ronaldo Fenômeno)は、17歳になる1993年にクルゼイロでデビューし、ブラジル全国選手権で14試合、出場時間1082分、12得点(GOL/90.17分)を記録している。エンドリッキは16歳になる2022年に全国選手権7試合、出場時間307分、3得点(GOL/102.33分)。時代が異なればFW/ATAに求められる役割も異なり、対戦相手も異なるので単純な比較はできないが、数字の上ではあのホナウドに見劣りしない。
 そのホナウドは、2022W杯代表招集メンバー発表後間もなく、ライブストリーミング配信サイトで次のように話した。「私ならエンドリッキを連れていく。エンドリッキはすでにプロとして試合にも出場しているし、彼のような十分に将来性のある選手をW杯に選出することは未来のブラジル代表にとって重要なことだ。1994年大会はペヘイラ(Perreira)監督は私を招集した。2002年、フェリポンはカカー(Kaká)を招集した。今回の招集メンバーにエンドリッキの名前がないのは残念だ。」
 インタビューでホナウドの発言について話を向けられるとエンドリッキは「ホナウドが僕のことについて話すなんて凄いね。ホナウドはW杯でブラジルの歴史を築いたけど、初めての大会は試合に出場してないんだよね。僕は次のW杯に出場するために何でもするよ。何かを犠牲にすること、自分自身を捧げることが要求されるだろう。でも、それこそが僕がすべきことだって分かっているよ。」
 16歳のエンドリッキはすでに4年後のW杯を見据えている。

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