最新更新日 : 2024/05/23
更新履歴 : 2023/12/09
エステヴォン・ウィリアン・アウメイダ・デ・オリヴェイラ
Estêvão Willian Almeida de Oliveira
ポジション:フォワード/アタカンチ
利き足:左足
2007年4月24日生まれ
<幼少期>
ブラジル連邦共和国サンパウロ州の内陸部に位置し、ミナスジェライス州に隣接する都市フランカに生まれる。
<クラブ経歴>
≪育成時代≫
2017年、ミナスジェライス州都ベロオリゾンテに本拠を置くクルゼイロに入団。
2018年10歳の時に、世界的なスポーツ用品製造販売のナイキ社とスポンサー契約を締結。(2022年6月に契約更新、契約期間は2026年まで延長されている。) そして、この頃から「メッシーニョ(リトル・メッシ)」のあだ名で呼ばれるようになる。
– 2021 –
クラブとの育成契約が結べるようになる14歳の誕生日(2021年4月24日)に前後して、クルゼイロがFIFA規則に抵触する内容の合意を事前に結んでいたことが発覚、その混乱に乗じてパウメイラスがエステヴォンと育成契約(※)を結ぶ。
※育成契約とは、プロ選手養成を目的として、クラブ等が14歳から20歳のアマチュアスポーツ選手と結ぶ契約。この契約では、選手がプロスポーツ選手、社会人として成長するために要する費用のうち、法律に規定された費用をクラブが負担し、一方でクラブには当該選手とのプロ契約を優先的に締結する権利が付与される旨が取り交わされる。
– 2022 –
2022年、パウメイラスU-15チームで4試合8得点を記録すると、4月にU-17カテゴリーに昇格。 15歳の誕生日を迎えた直後の2022年4月30日には、U-17チームで初出場を果たすとともに初ゴールも記録。このゴールを皮切りに、2022年はU-17カテゴリーで34試合23得点を記録。
– 2023 –
2023年1月に開催されたU-20カテゴリーのカップ戦全国大会では、15歳ながらメンバー登録。チーム9試合のうち7試合に出場、決勝戦では先発に抜擢されるなど、大会を通じて2試合に先発、そして1得点を記録。チームの大会連覇に貢献。
2023年4月24日には、ブラジルで法的に就業が可能となる(プロ契約が効力を持つようになる)16回目の誕生日にあわせ、パウメイラスとプロ契約を締結。
U-20チームで主に活動しながらも、U-17コパ・ド・ブラジルの準決勝ホーム&アウェイ2試合と決勝戦の計3試合に出場。3試合すべてに1ゴールずつマークし、U-17コパ・ド・ブラジル優勝に貢献。
2023年7月に開催されたU-20コパ・リベルタドーレスでは予選ラウンド3試合のうち2試合に出場し1得点を記録。続くU-20全国選手権決勝ラウンドは準々決勝こそホーム&アウェイの2試合とも途中出場だったものの、準決勝ホーム&アウェイ、一発勝負の決勝はスタメンで出場。大会はPK戦の末惜しくも準優勝に終える。
U-20チームの日程が終了すると、U-17チームに復帰。パウメイラスU-17チームの実力が頭一つ抜けていることや、エステヴォン自身のU-20チームの経験などもあり、U-17全国選手権決勝ラウンドの準々決勝(H&A)、準決勝(H&A)、決勝(一発勝負)の5試合で6得点。圧巻は決勝サンパウロ戦でのハットトリック(この試合の様子は元Jリーガー那須大亮氏がYouTubeで取り上げらています(←当該動画へのリンク。ぜひご覧ください))。
≪パウメイラス≫
– 2023 –
2023年11月29日、優勝争いを繰り広げるトップチームの全国選手権第36節アメリカ・ミネイロ戦でベンチ入り。 2023年12月6日、全国選手権最終節クルゼイロ戦、後半33分にピッチに送り込まれ16歳でのプロデビューを飾ると、チームの全国選手権二連覇の瞬間をピッチ上で迎える。
2023年は、U-17チームで12試合831分10得点、U-20チームで18試合807分2得点、トップチーム1試合12分を記録した。
– 2024 –
2024年1月開催のU-20全国大会カップ戦に出場。16歳ながらレギュラーとして参戦するが、チームは準々決勝を前に敗退し三連覇を逃す。同大会での個人成績は5試合382分4得点2アシスト。
U-20カップ戦終了後にはトップチームに昇格。
2024年1月24日州選手権第2節にて後半39分にピッチに立ち、トップチームでの2024シーズン初試合を迎える。しかし、その後は出場機会に恵まれず、3月31日州選手権決勝サントス戦1stレグにて5分間の出場機会が与えられたものの、大会を通じては5試合81分1アシストの記録に終えた。
2024年4月11日リベルタドーレス第2節、前年のウルグアイリーグ王者リベルプール・モンテビデオ戦にて右WGとしてスタメンに抜擢されると、チームはエステヴォンにボールを集め、エステヴォンはドリブル突破やクロス、パス交換など攻撃の起点として奮闘。逆サイドからの攻撃時はサイドライン際に張りつきながらも、クロスを上げれそうなタイミングではペナルティエリア内へ絞り込みゴールを狙う。
後半19分、CBムリーロ(Murilo, 1997)の柔らかい斜めのボールに最終ライン裏へ抜け出しPA内でボールを受けると左足を振り抜く強烈なシュート。これはゴールポストを叩き跳ね返されるが、満員のサポーターから「エステヴォン!エステヴォン!」と大合唱が送られる。
そして、その1分後の後半20分、MFハファエウ・ヴェイガが左サイドからゴール前にクロスを上げると、エステヴォンはファーサイドでDFの前に入りヘディングシュート。今度こそゴールネットを揺らすプロ初ゴール。アベウ・フェヘイラ監督が今まで見せたことのないようなジェスチャーで体全体で喜びを表現、FWエンドリッキ(Endrick, 2006)を含めたチームメート、チームスタッフ、観客席が一体となって、エステヴォンのゴールを祝福する。
この試合を機に先発、途中交代での出場が増え、3日後の4月14日全国選手権開幕節にて先発出場。
5月2日コパ・ド・ブラジル三回戦1stレグでは、試合終了間際後半45+8分、左サイドからのクロスにPA内ファーサイドを駆け上がり、胸トラップからGKのタイミングを外すボールを押し込むシュートで決勝ゴール。
5月5日全国選手権第5節クイアバ戦では、後半13分に交代出場を果たすと、後半26分、右サイドライン際からスピードのあるドリブルでDF2人をかわしPAに侵入。PA内で3人目のDFに倒されPKを獲得。このPKを自らが決め、公式戦2試合連続、全国選手権では初めてのゴールを記録した。
2024年5月17日、2025U-20南米ユース選手権に向けた初めてのブラジルU-20代表合宿への23人の招集メンバーに選出。
5月23日には、チェルシー/ENGとパウメイラスとの間で、移籍に関して大筋で合意した旨が報道された。
≪シーズン別クラブ出場記録≫
シーズン | 所属 | 大会 | 試合 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2023年(16歳) | パウメイラス | 全国選手権 | 1 | 12 | 0 | 0 |
合計 | 1 | 12 | 0 | 0 | ||
2023年(17歳) | パウメイラス | リベルタドーレス | 4 | 223 | 1 | 0 |
全国選手権 | 5 | 237 | 1 | 0 | ||
コパ・ド・ブラジル | 1 | 90 | 1 | 0 | ||
州選手権 | 5 | 81 | 0 | 1 | ||
合計 | 15 | 631 | 3 | 1 |
イタリック斜体は、2024年5月22日現在の記録。
※ シーズン欄の年齢は、12月31日時点の年齢です。
<代表(世代別含む)経歴>
– 2022 –
2022年10月18日、11月上旬に予定されたパラグアイ、チリとの親善試合各2試合に向けたU-17代表に招集。しかし、この4試合での出場機会はなかった。
– 2023 –
2023年8月9日、11月10日にインドネシアでの開幕を控えたU-17W杯を照準にしたU-17代表合宿(2023年8月22日-9月4日)に招集。2023年3月に開幕した南米U-17選手権、6月のU-17代表招集には選外となっており、約10カ月ぶりの世代別代表への選出となった。
【2023U-17W杯】
2023年10月11日、インドネシアで11月10日に開幕する2023U-17W杯代表の21選手の一人として選出。 チームは2006年生まれを主体として編成される中、CBジョアン・ソウザ(João Souza, フラメンゴ)とともに2007年生まれで選出される。
下表「節」欄のリンクは、当ブログの記事にリンクしています。記事内には、当該試合の出場&控えメンバー(ブラジルU-17代表のみ)、試合経過、得点シーン中心の動画、所感を掲載しています。
試合日 | 節 | 対戦 相手 | 試合 結果 | 出場 時間 | 得点 | アシ スト |
---|---|---|---|---|---|---|
2023/11/11 | 予選第1節 | イラン | 2 – 3 | 20 | 0 | 0 |
2023/11/14 | 予選第2節 | ニューカレドニア | 9 – 0 | 59 | 1 | 3 |
2023/11/17 | 予選第3節 | イングランド | 2 – 1 | 78 | 0 | 0 |
2023/11/20 | 決勝一回戦 | エクアドル | 3 – 1 | 82 | 2 | 0 |
2023/11/14 | 準々決勝 | アルゼンチン | 0 – 3 | 90 | 0 | 0 |
合計 | 16 – 8 | 329 | 3 | 3 |
予選第1節こそベンチスタートだったものの、予選第2節以降はスタメンとして出場。チームの全5試合すべてに出場。コーナーキックやゴール前でのフリーキックのキッカーを務める。
予選第2節ニューカレドニア戦では、前半39分、ペナルティエリア右手前から左足の外から巻き込むシュートでサイドネットにボールを沈めるゴラッソ。左CK、ゴール前での縦の連係、右サイドからのクロスボールの供給で3アシストを記録。
決勝ラウンド一回戦エクアドル戦では、2列目から前線を比較的自由にポジションを変え、前半14分には守備ライン裏に抜け出しゴール、後半25分にはゴール前やや右のFKを直接決める。
– 2024 –
2024年5月17日、2025U-20南米ユース選手権に向けた初めてのブラジルU-20代表合宿への23人の招集メンバーに選出。U-20代表合宿は国際Aマッチ週間の6月3日~11日に予定されているが、パウメイラスは、この合宿への参加を辞退する方針を表明している。
<プレースタイル、雑感 etc.>
利き足は左。 パウメイラスのオフィシャルサイト2023年版によると、身長170㎝、体重不明。
細かく柔らかいタッチのドリブルは、スピードに乗ってもコントロールを失うことがほとんどない。 利き足の左足からはもちろん、右足からも精度の高いパスやクロスボールを供給し、強烈なシュートを放つ。 シュートレンジが広い。 瞬間的なスピード、加速力が高い。
2023年は、右ウィングや右インサイドハーフでの起用が多かったが、U-17W杯では試合や時間帯によって比較的自由に左サイドや中央へポジションを変え、自らのシュートや味方を使ったプレーも披露。戦術理解度が高く、戦術的な視野の広さを感じさせた。
2024年7月のレアルマドリード加入が決定している一年上のエンドリッキ(Endrick, 2006)は、ゴールゲッターとして類まれなる才能が注目を浴びている一方、エステヴォンは、ゴールに至る過程での視野の広さや優れた戦術眼、さらには、それをプレーで表現する足元の技術において稀有な才能を有している。そのプレースタイルは、リオネル・メッシ(Lionel Messi)選手を彷彿とさせるものがあり、クルゼイロ下部組織在籍時には「メッシーニョ(Messinho, リトル・メッシ)」と呼ばれた。
そして、一部には、エンドリッキ選手を凌駕する潜在能力を秘めているとの評価も得ている。
パウメイラスの育成では、毎年のように中南米や欧州へ遠征をおこなっており、他国のサッカーに触れる機会が多い。 また、16歳の誕生日を迎える以前からパウメイラスのトップチームのトレーニングに参加。パウメイラスは、コパ・リベルタドーレス2020、2021を連覇、2022年ブラジル全国選手権を制するなど、南米有数の実力を持っており、トレーニングを通じてトップクラスのプレーを肌で経験し、成長の糧としている。
2022年末には、パリ・サンジェルマン/FRAが4000万ユーロ(約63億円)の移籍金での獲得オファーをパウメイラスに提示。しかし、パウメイラスはそのオファーを俎上に載せることなく拒否。
パウメイラストップチームのアベウ・フェヘイラ(Abel Ferreira)監督は、2022年12月に故郷のポルトガルで行われたイベントで、パウメイラスの下部組織(出身)の有望な選手たちについて次のように話している。
「近頃はFWエンドリッキ(Endrick, 2006)のことがよく話題になっているね。そして、その次がFWガブリエウ・ヴェロン(Gabriel Veron, 2002年, FCポルト/POR, 2019U-17W杯優勝メンバーで大会最優秀選手賞受賞)とVOLダニーロ(Danilo, 2001, 2023年1月にノッティンガム・フォレスト/ENGに約2000万ユーロ(約31億円)で移籍)かな。」
「でもね、これからはMFルイス・ギリェルミ(Luis Guilherme, 2006)とFWエステヴォン、この二人の名前をよく耳にすることになるよ。」